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ウイルスは語る

2010-02-20 | 毎日いんふぇくしょん(編集部)
HIV感染症はサブタイプで分類することができ、「○○由来のHIVですねえ」あるいは「○○地域で流行しているHIVですねえ」という会話が成り立ちます。もっとも、輸入されてすでに月日が十分たってしまったので、日本土着ともいえますが。

いろいろウイルスが(いや、人間が?)出会う中で複数のHIVタイプの遺伝子をもつ「りこんびなんと」というものもできています。

日本で初期に把握されたのは欧米のゲイコミュニティで流行しているタイプB、それから東南アジアで流行しているタイプEでした。インドやアフリカはまたちょっとちがいます。

ときどき二人とも陽性のカップルが「ボクがうつしちゃっのかも。ごめんね!」とヒシと抱き合うシーンもなくはないですが(いいや、ホントは二人とも別々のタイプよ、などとは医療者は決して明かしたりはしません)。

分子疫学的な情報が把握されると、その国で今ブレイク中なのはどの集団か、予防施策がうまくいっているのか、がわかります。
ヨーロッパですと、東欧やロシアの影響としては薬物使用集団で流行しているHIV、アフリカ系移民で流行しているHIVが相対的にどの程度かをみています。新規に増えているのはどのタイプ?です。

これにちょっと関連するのですが、STDクリニックをされている大阪の谷口先生が書かれた記事がたいへん興味深いです。
「なぜ西洋人や日本人はタイでHIVに感染するのか」         
http://www.npo-gina.org/pasd/GINA/sub4-F.htm

まあ、長野・茨城・千葉・埼玉県的にいえば、なぜタイの女性から日本のおっちゃんは感染するのだろう?です。
女性の私もなんとなくわかります。タイの女性は心根優しくかわゆい。日本のおっちゃんごのみ。はずれ値の人ももちろんいますけど、一般論的には癒し系。


谷口先生は、HIV流行地域にでかけて、そこで防御なしセックスをしたら感染リスクが高くなることは100も承知なのにナゼ皆感染するのか?を問いかけます。

そこに出てくるキーワードは、「親密な友達」(原文はintimate friends)だそうです。

いんやー気持ちいいからだよ、という編集部系ネタはでてきません。
(British Medical Journal掲載だからか?)

アジアには「もろコマーシャルセックスワーカー」とか「風俗!」もありますが、ウエイトレスや、カラオケのお世話をしているお姉さん(おばさん)が時にお客さんとプラスアルファ料金でセックスもする、というサービス形態があります。
Direct Sex Workと比較するためにIndirect Sexworkという言い方があります。

瞬間のプチ疑似恋愛的要素があるんでしょう。

恋愛になっちゃうと「相手ともっと近しくなりたい!」モードが働き、タイではピルやインプラント式の避妊も普及しているため、コンドームなしでもセックスダイジョブよ、みたいな話になるのか?

そもそもラブラブになった二人の間にエイズなんて言葉はでてくるわけがありません。

なので、日本のプロモーションはずれているんですね。感染症対策に愛を持ち出すのはリスコミ的には危険なんですよ。

「愛しているならコンドーム」「愛する人を守るためにエイズ検査」

なんでこんなずれたキャッチが出てくるのかと考えると、こういったことを決めている人たちはもうセックスをしていない枯れた人たちだからじゃない?というのが編集部内の仮説。

愛はなくても妊娠するし、愛はあっても感染するのよ、のリアリティに欠ける。
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1 コメント

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HIV (アヤ)
2010-04-16 20:42:57
随分久しくこの名前聞いてはいますが、しかしなかなか昔のように派手な報道ではなくなっていますよね。
下火になったんでしょうか?
どうなんでしょう?
患者数は増えている?
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