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平成のワクチン行政、最大のピンチの夜(という電報、いやメールが)

2013-06-14 | 毎日いんふぇくしょん(編集部)
すでに広く出回った情報なのでブログでも扱うことにしました(あえて書かずにきたことなのでありますが)。


ある小児科の先生からのメール。

"「協力」っていうのはね、お互いそういう気持ちや態度で関係を大切にしあうひとたちの
なかで初めてできるんですよ。
国民や医療者があげた声はどう扱われているんですか。
自分の都合のいいときだけ協力を依頼するんですか。"

本日、厚労省から自治体の担当部署に通知が出ました。
それはMRワクチンの在庫についての連絡。

厚労省は在庫は十分あるのだ、といっていました。
(同時期に、出荷規制がかかるという話も製薬会社ルートで聞いていました)


疑問は出てましたよね。

1歳と就学時の(1期と2期の)「定期のワクチン」をどうやって確保したうえで、大人が使う「任意のワクチン」を確保するか?です。

大人用歯磨き、子供用歯磨きのようにパッケージで違いがあるわけではありませんから。
ここが不足するとなると大混乱。
予防接種行政にあらたな不信がうまれかねません(関係者が一番避けたいことです)。


産婦人科の医師からのメール。

"HPVワクチンがとまるかもしれないと、昨晩(13日の夜)に連絡がまわった。本当に止めるのか。今日も明日も来週もHPVワクチンの予約が入っている。その説明は何をもとにするのか。今日は金曜日である。もしもメディアがセンセーショナルに報じたら、正式な通知の前にまたメディア経由で現場が混乱するのか。在庫はどうするのだ(※通常ワクチンは卸はひきとってくれませんので・・・)"

です。こういったことは「噂」だとしても、どれだけ現場が混乱や困惑する情報か。
感染症に詳しいみなさんなら想像がつきますよね。


それだけではないですね。

MMWRで日本の風疹問題が論じられました。
っていうか日本人の投稿ですけど。

論文掲載とかは成果かもしれませんが、こういった、世界に対して、てへぺろ的な内容を発信せざるを得ない現状を自称専門家はどうみているのでしょうね。


18:10現在、14日の下記の通知は載っていませんが。今夜のうちにのるのかな。

http://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku-kansenshou/rubella/


ところで。不活化ポリオの話を思い出しませんか?

リスク回避のために保護者が高額なワクチンの費用を負担しました。
現場や自治体が不活化ポリオ支援に動きました。

ポリオは日本では流行していません。海外に行かない赤ちゃんたちのワクチンでも、保護者は自腹を切って、現場のドクターが責任をしょいこんで、ワクチンでの発症リスクを回避したという事例はつい最近。

風疹は国内で大流行中で、「そんなかんたんにならないしさー、いらないんじゃ?」とはいえません。
妊婦さんの風疹罹患相談が増えていますので、まさに待ったなしの状態です。

なので調べてみました。

MMRワクチンは国内で輸入ワクチンとして扱っているクリニックがあります。
日本に入れる時の価格は4千円前後のようなので、輸入にかかるお金などを載せると医療機関納入価格は5千円前後ではないかとおもいます。
費用や利益を載せると1万円前後でしょう。これは扱う数によってかわるのでだいたい1-2万円の間くらいなのではないかと想像。

緊急輸入とかになるのでしょうか。

8-9月に市場にまた出回るといっていた風疹単身のワクチンはどうなるんですかね。
しばし報道や発表にご注目ください。




下記の協調は編集部による。

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健感発0614第1号
平成25年6月14日
都道府県
各保健所設置市 衛生主管部(局)長 殿
特別区
厚生労働省健康局結核感染症課長


風しんの任意の予防接種の取扱いについて(協力依頼)

昨年からの風しん患者の増加については、「風しん患者の地域的な増加について」(平成24 年5月25 日付事務連絡)、「風しん対策の更なる徹底について」(平成24 年7月19 日付健感発0719 第2号厚生労働省健康局結核感染症課長通知)及び「先天性風しん症候群の発生予防等を含む風しん対策の一層の徹底について」(平成25 年1月29 日付健感発0129第1号厚生労働省健康局結核感染症課長通知。平成25 年2月26 日一部改正)に基づき、対策をお願いしたところです。



風しんの任意の予防接種の接種者数については、例年、年間30 万回程度(推計)で推移していましたが、本年5月は、月間約32 万回(推計)と急激に増加しています。

厚生労働省としては、予防接種法(昭和23 年法律第68 号)第5条第1項の規定による予防接種(以下「定期接種」という。)で主に使用されている乾燥弱毒生麻しん風しん混合ワクチン(以下「MRワクチン」という。)の製造販売業者に対して予定前倒しの出荷及び増産の対応をお願いしているところですが、現在の接種者数の水準がこのまま続いた場合、今夏以降にMRワクチンが一時的に不足することが懸念される状況となっています。

※ここの意味がよくわかりません。風疹の流行を止めるんじゃなかったのか?補助によって接種率を上げようとしてきたわけで・・・


そのため、厚生労働省においては、安定供給の目途がつくまでの間、効果的な先天性風しん症候群の発生の予防及び今後の安定的な定期接種の実施のため、任意の予防接種について、妊婦の周囲の方、及び妊娠希望者又は妊娠する可能性の高い方で、抗体価が十分であると確認できた方以外の方が優先して接種を実施できるよう、ホームページ等において情報提供と協力依頼を行う予定であり、貴職におかれては、その旨ご承知いただくとともに、貴管内市町村及び関係機関に対し、周知方よろしくお願いします。


※抗体検査をしているうちに発症した場合の責任はだれがおうんですか?
※妊婦の周囲の方、抗体がない人というと職場の34歳男性(風疹罹患歴の証明できな人や未接種の人)ってことですよね?33歳以下は優先順位を落とせという意味ですか?



また、MRワクチンの安定供給のためには、特定の医療機関に偏ることなく、各医療機関に適切な量が提供されることが必要であることから、予約状況等を勘案した上で、必要最低限の量を発注いただくよう、関係医療機関に対し併せて協力依頼をお願いします。

--------

※これ以下には「参考」として在庫の数などの記載があります。関心ある方はもとの通知PDFにあたってください。

で、協力のお願いです。お願いですから命令でも指示でもありません。
"今の"厚労省の担当者のせいともいえません。


2004年に問題指摘されていたことを、なあなあにしてきた、感染症の専門家もその一部じゃないですか。

今回のことは現状をなるべくかえないで適当な解釈や言い訳でごまかしていくとどこかで破たんするという教訓のひとつになるのでしょうね。ほかにもon goingでそういったことがあるんじゃないか。そういう目で改善や提案を続けないといけないのだと痛感しました。


構造的不幸。そしてそのリスクを負うのは一番弱い人たちや現場。

新型インフルだけがうまくいくなんて思うなよ(怒)
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