冷たい風のような火

メモ書きですが、それにしても何で公開の場で書くんでしょうね。

積雪期の唐松岳 - 強風の中ついに素人ヤマノボラー最高の絶景を堪能

2017-04-01 12:12:29 | 旅行
雪山シーズンに行きたいとずっと思いながらもタイミングが合わずにいた唐松岳。夏山シーズンには2016年9月に五竜岳からの縦走で登りましたが、この山はやはり冬に行きたい。なぜなら、一般登山者でも歩きやすい八方尾根を標高差850メートル程度登ればよいという、北アルプスの山とは思えない簡単なルートだから。ゴンドラとリフトを乗り継いで通年営業の八方池山荘に泊まれば、公共交通機関利用の人でもご来光を見ながら雪に覆われた北アルプスの絶景が楽しめる。同じ後立山連峰にある白馬三山や五竜岳はもちろん、山頂からは剣岳・立山、そして薬師岳や水晶岳、針ノ木岳の奥に槍ヶ岳まで見渡せる。ということで、こうした名山に積雪期に登るスキルがない人にとって、名山を積雪期に直接眺めるために登る山なのです。

いつものように予想天気図や高層天気図を天気予報と併用し、八方池山荘の予約と高速バスのチケットを取るタイミングを計ります。この時期の唐松岳は人気の山で、登山者だけでなく山岳写真を狙う人たちやバックカントリースキーヤーでも混雑します。そのため、土曜日は山荘の予約が取れないことも。今回は3月の連休直前の金曜日に有給休暇を取得し、17日の金曜宿泊、18日の土曜に山頂アタックという予定で臨みました。事前の高層天気図予報では晴れ&強風を確信していたものの、金曜になると他の天気予報サイトでは曇り予報に。ちょっと不安でしたが、結果的には事前の予想通りの展開に。まずは山行のまとめ的な写真をいくつか。







金曜日はバスタ新宿を朝一番の7:35に出発する高速バスで白馬八方に向かいます。新宿と白馬八方の往復は8,520円。ソロで車を運転しないとこういう出費が結構かかりますが、実際には車を買って維持費も考えると、この程度の出費は大したことないと思う。
バスの窓からの風景で意外だったのは、信濃大町あたりまではほとんど雪がなかったこと。今年はだいぶ雪が降った印象がありますが、それは私がよく行く谷川岳などの北関東の話ですね。長野県中部というか、北アルプスの南部にあたる常念山脈あたりは結構雪が少なかったようです。

それはともかく、この日は八方池山荘に泊まるだけの予定なので、八方に着いたらバスを降りて昼食取って白馬の町を横切ってゴンドラ・リフトに向かいます。白馬八方では町にも雪がありましたが、時期的に結構暖かくなってきていてどんどん溶けていました。


山荘まではゴンドラとリフト2つを乗り継いで行きます。往復で2,900円。ゲレンデの横を登山してもいいのですが、無駄な苦労をする気もないしスキーヤーの邪魔になるのも嫌なので素直にゴンドラを利用。標高1,930メートルの山荘まで楽に上がります。
白馬八方尾根スキー場はさすがにちゃんと雪がありました。平日なので空いていましたが。


振り返ると、新潟県の頚城山塊の山々が見えます。山頂にちょっと雲がかかっているプリン型の山が妙高山でしょうか。高山植物の宝庫で湿原もある地帯なので、今年の初夏にテント泊で行ってみたいと思っている所です。


まあ、初夏の高山植物シーズンのターゲットはたくさんあって、お天気と仕事の関係でどこに行けるかは今の段階では分かりません。それこそ白馬岳も行きたい。北岳も形のよいキタダケソウを見ていないから再訪しないといけないし。谷川連峰もちゃんと縦走していないから行っておきたいし、東北地方の飯豊山脈とかにも行きたい。

再びそれはともかく、無事に八方池山荘に到着です。チェックインしてモンベルカードを提示。通常は1泊2食付きで9,800円ですが、カードの割引で500円引きになります。なお、翌朝は夜明け前に出発しようと思っていたので、朝食はお弁当に切り替えてもらいました。夜のうちに受け取ることができるため、出発前に腹ごしらえすることが可能です。


この日は無理せず、基本的に山荘でダラダラする予定でしたが、それでもお天気も悪くはないので八方池まで1時間程度のハイキングをしました。が、ガスがかかっていて白馬三山は見えず。適当に体慣らしをして雪の感触を確かめるだけに終わりました。予想通り、雪はかなり硬くなっていてラッセルはほとんど必要なし。時々埋まっても膝下くらいまでなので、翌日は最初からアイゼンで大丈夫そうです。

八方池山荘に戻ると、同室になった30代の男性がいらしたのでいろいろ情報交換しました。山岳会に入られていて私よりもずっと経験がある方だったので、冬のテント泊とか夏の沢登りの話とかを聞くことができて興味深かったです。教えていただいた山岳教室には一度参加してみようかと思いました。私も沢登りでバリエーションルートを行くのは興味があって、それができるようになると高山の稜線風景だけでなく山奥の大きな滝とか深い森の中の絶景に出会うことができるようになると思います。

そして夕食。八方池山荘の夕食はバイキング形式なので、食欲に合わせて結構食べられます。


その後は宿泊者の方々とお話させていただいたのですが、アマチュア写真家の方が大勢いらしていろいろと教えていただきました。写真はたくさん撮りますが、あくまで旅行のスナップ写真や高山植物の写真、あるいは山行で見た景色の記録と思っていました。しかし、本当に写真の好きな人は絵としてどのようなインパクトがあるか、芸術として考えているので、単にきれいな景色の写真だとまったく興味の対象外だということが分かりました。奥が深い世界です。例えば、私の山行の写真では2015年の鬼怒沼の写真などは自分では好きだし4travelのエントリでも好評だったのですが、ある種のルールに反していて芸術点は極めて低いらしいです。難しいもんだ。まあ、面白いお話を聞けて楽しかったです。私と同部屋の方は写真にも興味があるということで、同人会に誘われていました。

そして夜。おきて破りの大吹雪&猛烈な風。山荘が揺れているかと思うほど。今回の山行前には高層天気図を相当丹念に読んで晴れを確信していたのですが、流石に不安になる。さらに、同部屋の方が教えてくれた上空の雲の様子を予想できるサイトによると、翌朝は6時くらいには結構雲が出ているとの予報。ここまで来たらジタバタしても始まらないですけどね。

さて、翌朝は5時に出発です。4時半に出発された方も数名いました。6時少し前が日の出ということで、5時半頃には明るくなるだろうからヘッデンの灯りをつけて歩くのは30分くらいで済ませたいと思ったのです。おにぎりなどのお弁当を食べていざ出発してみると雲はあまり出ていませんが風がもの凄い。高層天気図の分析で予想していたことですが、優に風速15メートルを越え、時には20メートル台だったと思います。積雪期の北アルプスは初めてなので、これまでの経験がなければビビッていたと思います。しかし、八ヶ岳でも谷川岳でもこの程度の風は経験済み。心を強く持って行きます。
徐々に明るくなってきて、八方池の手前から白馬三山を見ると一部に雲がかかっているもののだんだんと晴れていく感じ。




自分の天気図分析が勝利したと確信し、歩みを進めます。下の樺と言われる樹林帯のあたりで日の出となりました。


すると、ピンクに染まる白馬三山。夏に来た時もガスに隠れていましたが、ついに、しかも最高の舞台で絶景を見せてくれました。




左に目を転じると五竜岳。相変わらずゴツくて男性的な山容。






その奥にある後立山連峰の盟主、鹿島槍ヶ岳はこの時点では雲に隠れていました。


ここで4:30に出発した3名の登山者に追いつきましたが、男性2名のパーティは強風に加え体調もよくないということで撤退をされる模様。女性ソロの方が一緒に行こうというので、ここからは二人で登りました。この方、結構頻繁に山に来られているようで、かなりの健脚だし冬の唐松岳も経験ありということで、ルートのアドバイスをいただきながら登りました。写真はその女性登山者です。


前夜が吹雪だったので、トレースは消えてルートがわかりにくいところがありました。それをこの女性に教えていただきましたが、膝上、深いところは腿までラッセルの急斜面を行くことになったので私が先頭で道を作りました。この20~30分くらいの難所は結構やっかいで、一気に体力を使って筋肉疲労が出ましたが、まあこれも雪山の醍醐味です。昨年の硫黄岳の経験がここでも生きていて、このくらいのことではめげずに自信を持って進むことができました。


上の樺と言われるところを過ぎ、難所も切り抜けると風が通り抜けるコルに出ました。相変わらずの強風に煽られますが、白馬三山方面が美しい。雲は完全に取れました。


不帰。ここを冬に行く人はいるのだろうか。




五竜と、相変わらず雲に隠れた鹿島槍。




さらに少しのぼると、丸山というケルンのある場所に出ます。


ここまで来ると目指す唐松岳山頂も視界に入ります。一番左の山です。


さらにこの道を登る。左に五竜岳。正面に唐松岳の稜線に至る丘。


右の谷にはシュカブラが形成されていました。


そして、ついに八方尾根を登り切って稜線に出ました。すると、唐松岳だけでなく、黒部川の向こうの立山連峰の山々も目に飛び込んできます。まさに勝利の瞬間。
目指す唐松岳。


立山と剣岳。


立山の奥に薬師岳、そして黒部の山々。


稜線から見た五竜岳。でかい。


一緒に登っていた女性は、あまりの風の強さとトレースがない状態が不安だったのか、山頂は諦めようと提案されました。しかし、私は強気。あと20分程度の道ですから、切り開く覚悟はできていました。


結局、女性も決断して2人で登頂を目指します。右側は雪庇ができているので避けるのですが、左側も雪が安定しない。風が強いので石や岩が露出している所も多く、アイゼンをひっかけて転ばないように気をつけながらルートを探します。山頂直下は前夜の吹雪で積もった柔らかい雪がアイスバーンの上に乗っていて不安定で、さらにかなりの急斜面でトラバースしながら高度を上げるのも困難。アイスバーンに届くようにピッケルを刺し、アイゼンを蹴り込みながら直登で進みました。90度の壁という訳ではないですけれど、それでも壁に張り付いて登るイメージでしたね。そんな中、ちょっと気を抜いてアイゼンの蹴り込みが弱かったら何と2メートルほど滑落。滑落のスピードがゆっくりだったので、焦らずに体を雪面にくっつけて体重を分散しながらピッケルとアイゼンで体を止めて登りなおします。少し後で見ていた女性は声も出せないほど驚いていて、後ほどTwitterでコメントされていました。驚かせてすみません。本人は実はかなり冷静でした。

そして、山頂手前で両足だけで体を支えられるくらいの足場が作れるようになったらピッケルを抜いて立ち上がり、ついに登頂です。結果的にちょうど8時の登頂で、3時間というかなり速いペースでした。強風で必死だったので、逆にバリバリ登ることができたのかも。

ここからは山頂からの大絶景。まずは振り返ると、太陽の下に登ってきた道が。


北には白馬三山。


南には五竜岳の奥に針ノ木岳、そして水晶岳など黒部の山々。ぐるっと回って薬師岳、立山、剣岳など立山連峰。




Google photoのサービスでパノラマ化された写真です。このような絶景が360度広がっています。


取りあえず山頂標識と自撮りをしておく。




ここからは、唐松岳から見える北アルプスオールスターのポートレイト。まずは五竜岳。




後立山連峰の稜線越しに見える槍ヶ岳。稜線右端のちょっと突き出ているのが針ノ木岳。




水晶岳と赤牛岳。黒部最奥の巨大な山々。


黒部のビッグマザー。カールの大きい薬師岳。


岩と氷の殿堂、剣岳。




その奥に連なる3,000メートル峰、立山。




不帰の嶮越しに白馬岳。




最後にパノラマでピッケルと山頂標識。


十分に堪能して下山します。まだ他の登山者は現れず、我々2人だけでこの絶景を占有できました。まずは風を避けて行動食とお茶を取るために唐松岳頂上山荘に向かいました。


休憩をしつつ、剣岳や五竜岳、もちろん唐松岳の稜線からこの日最後の写真を撮りましたが、山頂からのものと似たようなショットなのでここでは省略。
さて、下山ですが、下山開始して30分くらいすると急に風が止んで気温が上がりました。そんな中、シュカブラや不思議な雪の造形を見ながら下りていきます。


スノーシューかワカンで踏み固められたところが残って、あとは風で雪が飛ばされたんでしょうかね。とても不思議です。




下山中に見ると、ついに鹿島槍ヶ岳も姿を見せてくれました。






ゴンドラが動き始めるとバックカントリーの人や登山者が大量に登り始め、早朝に私たちがつけたトレースをたどって無風の中唐松岳に登って行きました。混雑前に凛とした空気の中で景色を楽しむことができ、前夜泊した甲斐がありました。10時過ぎには八方池山荘に戻り、アイゼンなどの装備を外してゴンドラで下山です。白馬の里から見た白馬三山。


麓の温泉でさっぱりして、昼食を取ってビールを飲み、お土産を買って帰ります。早朝登山の戦闘モードから解放され、すっかりバケーションモード。昼食とビールは、八方の湯の斜向かいにあるLion Cafeでハンバーガー。ラーメンやトンカツではなく、バーガーが食べたい気分だったので。


この後、この時期恒例のお土産である信州ナチュラルビールと信州のウイスキーを買って、3時の高速バスで帰りました。
積雪期の唐松岳、本格的に登山をやっている訳ではない一般ヤマノボラーにとって経験できる、最高の雪山風景ではないでしょうか。何だかんだ言っても北アルプスなので、風も含めて楽ではないし危険もあります。全ての人にお勧めはできません。しかし、他の雪山で経験を積んで技術を磨き、クラックを回避したり耐風姿勢をマスターしたりアイゼン・ピッケルワークを普通にこなせるようになれば、挑戦する価値はあるでしょう。
次は積雪期の3,000メートル峰で乗鞍岳か仙丈ケ岳、そしてアルパイン的な要素が入る八ヶ岳の赤岳が目標です。
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