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北アルプス・立山連峰 小型機墜落事故の考察

2017-06-09 22:52:00 | 航空機

立山連峰・獅子岳(標高2714m)に小型機が墜落して4人が死亡した今回の事故、なんとも不可解なのは、飛行時間1万7000時間のベテランがセフティーパイロットとして同乗していながら、「なぜ山越えの飛行ルートを選んだのか?」ということ。 出発前にフライトプランを提出した後、気象庁富山航空気象観測所で飛行ルート上の最新情報をプリントアウトしてもらい、担当官のブリーフィングも受けたはずだ。 何故なら離陸前の午後2時時点で3000m上空付近には高積雲が広がり、雨も観測していたからだ。 パワーの小さな機体に4人が乗っての山越えだから、慎重にに検討して判断したと思う。 僕もこのルートを何度か飛んでいるが高度が高くなるにつれて上昇率が低くなり、目前に山が迫ってくると、ノンターボの悲しさを痛感しつつヤキモキしたものだ。

「小型単発プロペラ機」を、ひとくくりにして「セスナ機」と思い込んでる人も多いが、機種によって性能に大きな差がある。 例えば4~6人乗りの小型単発機でも「ターボチャージャー」の有る無しで上昇性能が大きく異なるし、「与圧装置」の有・無では酸素を吸わずに上昇できる高度に大きな差が生じる。 さらに上空で翼に氷が付着する(アイシング)状態で氷を除去する「ブーツ」の有無。 こうした装置を備えている機種であれば、悪天候の中でも安全に飛行することが可能だ。 但し計器飛行のライセンスを持つパイロットが必ず搭乗するという条件付でだが。 そして今回の事故機「セスナ・C172P」には、これらバックアップシステムは装備されていない。

墜落地点の標高は2300mと確認されており、この高度から推定して墜落前のフライトレベルは山岳地帯の上空であることを考慮すると、クリアランスを加えて、およそ3000m。 この高度は酸素を吸わずに飛べる限界に近いし、空気密度の低い上空ではパワーも落ちており、これ以上の上昇は性能的にも難しかったはず。 さらにこの高度がオントップ(雲の上に出る)ギリギリの境界線で、その上に雲があればインクラウド(雲中飛行)は避けられないきわどいところ。 高度をやっと維持しながらの飛行で下降気流に遭遇すると機体も一緒に押し下げられ、パワーを入れてもて上昇できず事故につながる恐れがある。 そのため山頂から約300mのクリアランスをとることは常識となっている。

外気温マイナス0度以下でのインクラウドは、翼やキャブレターのアイシング(氷結)が起こりやすく、一刻も早く抜け出なければ極めて危険。 インクラウドの状態から離脱する方法は3つで、 1)雲の上まで上昇する 2)雲の下まで下降する 3)180度転回して引き返す。 事故機の場合、1)は前述のとおり更なる上昇は不可能、2)の下降は山に激突する危険から選択外、3)のみが残された唯一の離脱方法なのだが、富山空港へ戻るためのデストネーションチェンジはリクエストされていない。 視程ゼロの中、強い山岳風で翻弄されながら計器を頼りに正常な姿勢を保ち、さらに方向・高度をキープする操縦は、ベテランパイロットでも至難の業。 故に現状維持で精いっぱいだったのかもしれない。

いずれにせよ事故の最大要因は「飛行ルート選定の誤り」にあり(往路と同じく海岸線を迂回すべきだった)、さらに「引き返す決断」が遅きに失したことが致命傷となった。 墜落現場の写真を見ると、機体は氷河のような雪渓に機首を下方に向けて不時着している。 原型をほぼとどめていることから墜落寸前には視界が開け、機長は着地時のリスクを最小限にするための努力を続けていたと推測される。 またエンジンが別の場所に脱落していたのは、セスナ機の車輪が固定式のため胴体着陸ができず、前のめりに着地したため衝撃が大きく、搭乗者の損傷にもつながったと思われる。 それにしても後席で生存してた若者二人だけでも生きて救出させたかった。 



  











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