日本刀の周辺

日本刀に関連した事物についての随想

ストライク鍛錬法3 DK YOOのインサイドトリガーに学ぶ

2016年10月18日 | 武術

 先ずはおさらいである。
 ストライクの威力を作り出すのは上肢の質量であり(「システマストライクの物理学と生理学」)、ストライクの要は鎖骨だ(「システマストライクの要は鎖骨」)。そして「浮き」と「軸の操作」と「上肢の質量」。これがストライクの主要原理であり、武術を進化させる条件である(「ストライク鍛錬法2 立禅」
 それをDK YOOの動きに見て取る事ができる。

Inside trigger - DK Yoo


 DK YOOは特に強調していないかもしれないが、彼のいわゆる「インサイドトリガー」において鎖骨が重要な役割を担っているのが判る。
 彼の動きからストライク鍛錬法を導き出せる。

 自然体で立ち、天に向かって腕を伸ばし、そのまま重力に従ってストンと落とす。あるいは腕を伸ばしたまま前に振り落とす。両腕同時にやっても良い。この時重要なのは腕を落とす時、鎖骨に浮きを掛ける事である。それによって上肢の質量が身体から分離し、武術的なエネルギーとして使えるようになるのである。
 手先に質量を集めるのではなく、上肢全体が一つの水袋のように質量を帯びるようにしなけれないけない。手先を振るようなやり方だと上肢の質量が肘で分断され、武術的な威力にならない。また肘関節にも負担が掛かり、傷害につながる。王向斎は立禅で腕を一塊のブロンズのようにしなければならないと言っていたそうだが、それと同じ感覚である。
 ここで重要なのは鎖骨への浮きである。
 鎖骨に浮きを掛けないと上肢の質量が身体から分離せず、押すような鈍い力にしかならない。
「浮きを掛ける」とは言葉で説明するのは難しいが、要するに重力に抗して身体を上方へ引き上げる身体操作である。日本の某武術流派は浮きを非常に重視しているが、その流派でも浮きの説明は抽象的かつ神秘的な表現になっている。
 下の動画は手首の重要性を説明している所だが、0:43辺りから始まる椅子を片手で持ち上げる身体の使い方は浮きと言える。

WCS 101 - Verification the power of 內勁


 この種のセミナーの参加者は押し並べてオタク風なのが万国共通のお約束だ。
 また、次の動画の1:07~2:02はDK YOO自身による浮きの説明と見る事ができ、興味深い。

DK Y - Exercises / Video 1


 鎖骨に浮きを掛ける事で、上肢だけでなく身体全体にキレができ、早くて重たい打撃ができるようになる。
 下の動画ではDK YOOがトーマス・ハーンズの動きを模している。確かにハーンズのパンチは凄かった。打撃系が理想とする動きの一つであろう。(本記事公開後、この動画に対して多数の苦情が寄せられ、削除されてしまった。海外でUPされた動画にイチャイチャいちゃもんを付ける女々しい武術愛好家が多いのには笑ってしまう。ハーンズの動画はYouTubeに多数あるのでそれらを参照して貰いたい。)

Dk yoo the jab


 浮きは重力に抗する身体操作なので、意識の上では天に向かう垂直方向のベクトルとして働く。瞬間的に形成される軸と言っても良い。その養成に最適なのが立禅である。
 立禅はただ立っているのではなく、体内に無数の上方向ベクトルの軸を意識し、その軸を拠り所としてインナーマッスルが自由に動くようにするトレーニングである。
 立禅によって意識とインナーマッスルが連動して鍛えられるのである。
 人間の動きには身体の解剖学的構造に制約された常人の動きと、それを超えた超人的な動きがある。後者は意識とインナーマッスルが連動して初めて可能になる。それがDK YOOのスピードとパワーの秘密でありインサイドトリガーだと思われる。
 そして王向斎が言ったとされる言葉、「魚の群れが一瞬に向きを変えるような動き」の意味もそれと同じだろう。





ジャンル:
ウェブログ
この記事についてブログを書く
この記事をはてなブックマークに追加
« 栗原信秀の輝かしい刀匠人生... | トップ | 栗原信秀の輝かしい刀匠人生... »

あわせて読む

武術」カテゴリの最新記事

この記事を見た人はこんな記事も見ています