伊勢すずめのすずろある記

伊勢雀の漫歩…。
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  感性の趣くままに-。

少年時代からの石の趣味の回想記 & 昭和年代までの石の名著

2017年04月23日 | 随筆・雑感・回想など

写真1「鉱山繪物語」と「地下のたから」

 小学校の半ばになった頃、なぜか少年達の間で蒐集趣味(コレクション)がはやった。集める対象は、記念切手が主流であったが、他に古銭や珍しいコイン、バッジ、マッチ箱のデッテル、グリコのおまけのミニチュア玩具、綺麗な貝殻や小石、鉱石など…。

 そんな昭和の30年代には、近所に駄菓子屋やおもちゃ屋など、子供向けのお店が何軒かあったし、学校が退ける頃になると、紙芝居屋も自転車でしょっちゅうやって来た。
 市街地のインフラ事情も今とは大違いで、街中には見知らぬ世古(小路)や、仲間と探検出来る藪の小道や神社の森、土手の続く小川や池沼、廃墟や空家、草茫々の原っぱなどが至る所にあった。
 さらに、伊勢の市街地の背後には、禿山や切り崩したままの岩山が何箇所かあって、てっぺんまで登りっこをしたり、何人かで秘密の隠れ家を作るなど、遊び場所には事欠かなかった。

 戦後のベビーブーム世代の我輩らは、学校から帰ると原っぱで野球(ソフトボール)もよくやったし、川遊びやチャンバラごっこなど、年がら年中屋外で走り回っていた。
 又、雨の日などは、親にないしょで隠れてマンガを読んだり、コレクションの整理に熱中していたものだ。


写真2 カラー自然ガイド「鉱物」と 理科文庫「地下の宝庫」


 同学年の仲間が石集めに熱中し出したのは、学校の理科の授業で絶えず実物標本を示しながら、子供らに興味を持たせるような講義をしてくれていた、博物知識の豊富な理科の先生の影響が大きかった事と、その頃全国に広まった鉱物趣味者らの集まりである、京都の「日本砿物趣味の会」の会員の方が近所にみえて、石の名前を教えてもらえた事に尽きる。
 我輩も、いつの間にかそのような「理科少年」の一人になっていた。

 暫くは、川原や小山の切通しなどで石を採って来ては、理科の先生や近所の先輩らに名前を付けてもらいながら、集めた石の種類が増えるのを楽しんでいた。
 小石のコレクションが増え、マッチの空き箱に入れてみたり、仕切箱を作って標本を並べて喜んでいた頃、母親が岩石・鉱物のポケット図鑑(掲載写真3参照)を買ってくれた。


写真3 保育社のポケット図鑑「岩石と鉱物」


 又、父親は勤務先であった鉄道の駅近くの山や谷から、石榴石や黒雲母、貝の化石などを採って来てくれたし、生家のある松阪市の美濃田に程近い、堀坂山の雲母谷(きらだに)に、水晶や白雲母を採りによく連れて行ってくれた。


 高学年になり、ポケット図鑑で物足りなくなると、講談社と小学館の学習図鑑のシリーズの中から、以前から欲しかった「岩石と鉱物の図鑑」を、母が2冊共買ってくれた。
写真4 昭和36年・小学館発行の「岩石と鉱物の図鑑」 そして、小学6年生になった頃、保育社の「岩石図鑑」(益富壽之助 著)と「鉱石図鑑」(木下亀城 著)を買い与えてくれた。当時としては、最高レベルの原色図鑑の専門書である。
 この2冊は、市立図書館にも無かったし、石マニアの少年には最高のお宝本であった。

 その当時、伊勢市駅前の商品陳列所の裏にあった、木造二階建ての粗末な市立図書館にもよく通ったものだが、そこで見つけたのは「石の思い出」(フェルスマン 著・堀 秀道 訳、理論社発行)と、櫻井欽一先生の「鑛物の採集と見分け方」(昭和29年、恒星社厚生閣発行)であった。(写真5・6参照)


写真5 フェルスマン著の翻訳本「石の思い出」の初版

写真6 櫻井欽一先生の名著「鑛物の採集と見分け方」


 時には、工事中であった御木本道路沿いの石墨千枚岩の崖の中から、金ピカの粒を成す黄鉄鉱や、白石山の切通しの段丘堆積層から褐鉄鉱を発見した事もあったし、学校の裏地の埋め立て場で木の葉の化石を見つけ、その後、それが市内の徳川山産のものである事が判り、話題になった事もあった。

 しかし、伊勢の市街地の周辺で集められる石の種類が、ごく普通の岩石ばかりであり、少年達にとってあこがれの結晶鉱物であった水晶や黄玉、緑柱石、電気石、蛍石、方解石、蛋白石、玉髄、瑪瑙、翡翠などの、きれいな珍しい石の採れない事を知るに至った。


写真7 少年産業博物館「日本の鉱産物」~ 幻のレア本です


 やがて、コレクションの対象がありふれた岩石や、限られた種類の化石などよりは、図鑑に載っているような金ピカの鉱石鉱物や、珍しい結晶鉱物の美しさに惹かれ、お宝集めは自然と鉱物趣味へと移っていった。


 そして、中学時代には、全国各地の鉱山からの「鉱石標本」の取り寄せ方を覚えて、手紙を書いては送って頂いたり、三重県下の鉱産地を巡り回って鉱物採集に熱中していたが、主な産出鉱物を一通り集め終った高校時代の後半からは、昭和の水石ブームの訪れもあって、鉱物と共に水石美の世界を知った。


写真8 水石ブームの頃に出版された「水石の名著」2冊

 こうなると、鉱産地巡りと共に、暇さえあれば伊勢市内や近郊の河川を歩き廻らなくては治まらない。奇形石の珍妙さや、山水景の美観を凝縮した「水石」に嵌ってしまい、石の魔力にとり憑かれたように、休祭日は探石に明け暮れたものだ。

 伊勢市内を流れる宮川や五十鈴川の川原をはじめ、五十鈴川支流の島路川へは、伊勢道路の開通もあって、自転車でよく出かけた。
 朝熊山南麓の島路川は、もちろん伊勢神宮の宮域で、本来は揚石など出来ない場所であったが、曲がりくねった旧道の磯部道(いそべみち)を貫通するように、開通して間もない伊勢道路沿いの渓流でもあり、五十鈴川本流の上流とは違って、当時は今ほど監視がきびしくなく、交通量もさほど多く無くて、比較的自由に遊びに行けた。


写真9 鉱物関係者垂涎の超レア本「石のいろいろ」


 その間、石について書かれた相当数の書物に出会い、いろんな分野の「石の名著」に感銘を覚えたのも事実だ。
 それらの中には、大人になってから探書に10年以上を費やして、やっと入手した程のお宝本も、何冊か蔵書として所有している。


 今に至るまで、感性の趣くままに歩き続けた、「石人独歩」の我が道を振り返りながら、感慨深い愛読書だった石の絶版書や、昭和年代までの鉱物・水石などの石の名著、今となっては幻の稀覯本など、是非知っておいて頂きたい「石についての名著」を、蔵書の中から選んで紹介する事にします。

   古典書の石の名著

 1.日本古典全集 雲根志 上巻 文庫版 木内石亭 著
   昭和5年9月25日、日本古典全集刊行会 発行(定価の記載無し)
 2.日本古典全集 雲根志 下巻 文庫版 木内石亭 著
   昭和5年10月25日、日本古典全集刊行会 発行(定価の記載無し)


写真10 江戸時代の古典書、木内石亭の著書「雲根志」の文庫本(上巻・下巻)


   石全般の名著

 1.石のいろいろ B6版 岡本要八郎 著 昭和22年10月31日、
   西日本新聞社 発行 定価貳拾円
 2.保育社のポケット図鑑5 文庫版 編著者 理科教育研究委員会
   昭和28年3月1日、保育社 発行 定価150円
 3.石の思い出 A5版 フェルスマン 著・堀 秀道 訳
   1956(昭和31)年1月1日(初版)、理論社 発行 定価380円
 4.石-昭和雲根志1- 益富寿之助 著 昭和42年1月1日、
   益富寿之助博士紫綬褒章受賞記念会 発行(定価の記載無し)


写真11 益富寿之助先生の名著「石-昭和雲根志1-」


   鉱物・鉱石・鉱山関係の名著

 1.文化繪話 鉱山繪物語 B6版 吉田忠雄 著
   昭和17年9月20日(初版)、文祥堂 発行 定価一圓30錢
 2.理科文庫21 地下の宝庫 文庫版 今井秀喜 著
   昭和26年4月10日、三省堂出版 定価100円
 3.保育社の小学生全集6 地下のたから B6版 加藤弥三一 著
   昭和27年9月5日(初版)、保育社 発行 定価130円
 4.楽しい理科教室(21)鑛物の採集と見分け方 A5版 櫻井欽一 著
   昭和29年12月30日、恒星社厚生閣 発行 定価150円
 5.少年産業博物館 日本の鉱産物 A5版 吉田国夫 著
   昭和35年8月25日、ポプラ社 発行 定価350円
 6.カラー自然ガイド13 鉱物-やさしい鉱物学- 文庫版
   益富寿之助 著 昭和49年6月1日(初版)、保育社 発行 定価380円


写真12 水石の名著「水石-山水の詩情-」


   水石の名著
  
 1.日本愛石図鑑 A5版 全国石の趣味会 編 昭和39年10月5日、
   徳間書店 発行 定価1,000円 
 2.水石を始める人のために A5版 高橋貞助・村田圭司 共著
   昭和40年8月15日(初版)、池田書店 発行 定価750円
 3. 愛石家の地質教室 B6版 大森昌衛・小林巌雄 共著
   昭和41年6月30日(初版)、徳間書店 発行 定価700円
 4.石を語る-水石の美- 文庫版 林 光則 著 昭和41年11月1日(初版)、
   白川書院 発行 定価350円
 5.山水美の世界 B6版(変寸) 甘露寺雄次郎 著
   昭和41年11月15日、樹石社 発行 定価380円
 6.水石-山水の詩情-「盆栽世界」別冊 B5版 村田圭司 編著
   昭和56年5月20日、樹石社 発行 定価2,000円


写真13 昭和40年代初期の「水石の名著」2冊

写真14 地質学的な唯一の水石解説の名書「愛石家の地質教室」

 
  

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