TATSURO SHIBUYA + ARCHITECTURE LANDSCAPE DESIGN STUDIO

アーキテクチュアは建築、ランドスケープは景観。風景を生かす建築環境デザインに取組んでいます。

卒業設計/同時代性と社会的意味、そして締切

2010-12-22 23:28:51 | 地域活動や学会活動などその他の活動
卒業研究の発表会が行われました。
4年間あるいは3年次編入者は2年間の集大成を卒業論文もしくは卒業設計にまとめます。

今年の卒業設計は、建築単体ではなく、都市を公園化するような建築の提案や、農村や中山間地域にランドスケープ的な視点で建築を挿入するような提案が傾向として見られました。これはうちの大学だけでなく、全国的な傾向のように思います。
建築単体では、もはや都市を変えることなどできないということを、学生も知らず知らずのうちに敏感に感じとっているのかもしれません。


卒業設計にあたって、4年生には最初に「同時代性と社会的意味、そして締切」の話をしました。これは、僕が卒業設計に取組んだときに先生からお聞きした話が下敷きになっています。

まず、「同時代性」とは、現在生活する人たちが、歴史、文化、思想など、同時代が共有する経験や問題などをテーマに意識して取組むこと。コンテンポラリーなこと。「今」、現時点で(今年でいうなら2010年)という時代に即した提案をする意義を考えること。
どんなに優れた図面を描いても、それが全く時代錯誤では、見る人たちに伝わりません。

次に、「社会的意味」とは、敷地を大切にするということ。敷地とはコンテクストとも言い換えることができます。基本的に建築は土地に固定されるものですから、否が応でも周辺環境や景観との関係性、つまり、建築のもつ社会的側面を考えなくてはいけません。
サーベイなどを通じて、敷地の持っている歴史や文脈といった情報をくまなく読み込み、提案に活かすこと。サイトスペシフィックであること。
日照や風向き、気象条件なども大切な情報です。敷地から見える風景や近隣との距離感、そして都市の風景の一部として建築というフィジカルな問題を捉えることが必要です。これらを無視して独りよがりなものを作っても、リアリティがありません。
自分で敷地を選べるのが卒業設計の醍醐味です。敷地選びで勝敗の半分が決まるといっても過言ではありません。

最後に、「締切」。これは、時間的制約のこと。
社会に出てからもずっと付きまとう問題ですが、締切を意識するということは、自分を知るということです。
自分が何が得意で、何が不得意なのか。どんな作業にどれくらいの時間がかかるのか。自分を客観的に見て、スケジューリングすることが大切です。
模型が得意な人と、図面が得意な人、絵が得意な人、プランニングが得意な人とでは、最終的なプレゼンテーションは全く違ってくるはずです。



今回残念だったのは、最終的な成果品のボリュームを最初から意識して作業できた人がほとんどいなかったこと。
成果品がA1なら、まず、壁にA1の模造紙をバンバン貼って、できた図面やダイアグラムなどの材料をどんどん印刷してドラテで貼っていくこと。穴ぼこを掘って(レイアウトを先にざっくりやって)、それをバージョンアップしながら埋めていく作業していくクセをつけることが大切です。
とにかく、紙で残すこと。アウトプットを惜しまないこと。

それから、模型は必須条件です。設計をしているのに模型がないのは評価しません。建築はあくまでフィジカルな「ブツ」です。模型は提案する内容に合わせて、できるだけ大きな模型を作ること。模型を作りながら考えないと、ただの「絵に描いた餅」になってしまいます。
とはいえ、学生時代は従順すぎるのも気持ちが悪い。。大いにエネルギーを発散させて取組んでほしいものです。
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