TOP ABOUT SITEMAP POLICY HELP
ジャーナリスト。1961年生まれ。大手新聞社で警視庁捜査一課、遊軍などを担当し、殺人事件や海外テロ、コンピュータ犯罪などを取材する。その後、1999年10月、アスキーに移籍。月刊アスキー編集部などを経て2003年2月に退社。現在フリージャーナリストとして、週刊誌や月刊誌などで活動中。
2016年9月
1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30
前月 翌月
2006年03月
2006年02月
2006年01月
2005年12月
2005年11月
2005年10月
2005年09月
2005年08月
2005年07月
2005年06月
2005年05月
2005年04月
2005年03月
2005年02月
2005年01月
2004年12月
2004年11月
2004年10月
インターネットの理想と実態
顧客のコアデータに連動させるビジネス
モラル社会を取り戻せ?
国産検索エンジン「マーズフラッグ」にインタビューした
ライブドアへの強制捜査にからんでのうわさ話
『911 ボーイングを捜せ』から見えるもの
ヤフーの社風とweb2.0
ワイヤレスP2Pの行方
進化を模索するラジオ局
世の中の事象をコンピュータ上で可視化する手作業
BLOG


MATRIX

Vol.33 Web2.0的信頼の構築

URLをメールで送信する URLをメールで送信する
(for PC & MOBILE)

XML

Powerd by gooBLOG


※ご意見・ご要望は編集部へ
佐々木俊尚の「ITジャーナル」
Hotwired / Blog / 佐々木俊尚の「ITジャーナル」
 読売新聞東京本社というのは、取材に対して非常に変わった対応をする会社である。

 以前、ある月刊誌に記事を書くため、同社広報室に取材を申し込んだことがある。取材の内容を聞かれ、「企画書を出してほしい」と言われた。ここまではごく普通の対応で、雑誌の取材といえばたいていの企業広報は企画書の提出を求めてくる。私は取材の趣旨と内容、雑誌の名前とどのようなページにどのような記事を書く予定なのかを記し、自分の住所と電話番号、ファクス番号、メールアドレスなどを添えてファクスで広報室に送った。

 なんだか奇妙な対応になってきたのは、その後からだ。企画書を送ったのにもかかわらず返答がないため、広報室に電話をかけてみると、担当者は「面会での取材には応じられません」という。

 「どうしてですか?」
 「取材には、文書で回答することになっているのです」
 「お会いしてお話をぜひ聞きたいのですが」
 「申し訳ないのですが、ちょっと無理なんですよ」
 「じゃあ文書での回答をお待ちするしかないとうことでしょうか」
 「そうですね。回答が用意できたらお送りしますので」

 担当者は決してヘンな人ではなかった。電話での対応自体はとてもきちんとしていた。しかしそうして一週間以上も待っていたのに、返答がない。どうしたんだろうとやきもきしていたところに、当の月刊誌編集部の担当者から電話がかかってきたのである。

 「読売新聞からファクスで回答が来てるんすけど、そちらに転送しましょか?」

 私は読売広報には、月刊誌編集部の連絡先もファクス番号も伝えていない。伝えてあるのは、私個人の仕事場の電話番号とファクス番号だ。読売広報はそれを承知のうえで、わざわざ月刊誌編集部の電話番号を調べ、そしてわざわざ電話をかけてファクス番号を聞き出し、「回答書」を送りつけてきたらしい。私の仕事場のファクス番号に送れば済む話なのに、なぜわざわざそんなことをするのか。不審に思っていたが、後に読売社内のある関係者に聞いて、ようやく理解できた。

 「うちの会社はね、フリーライターみたいな権威のない一個人には正式回答は行わない、っていうスタンスなんだよ。いや佐々木さんのことをバカにしてるっていうわけじゃないんだけどね、そういう基本方針なの」

 思わず私は、「ずいぶん変わった基本方針ですね」と嫌みを言ってしまったのであった。そもそも「夜討ち朝駆け」といわれる取材手法を駆使し、寝ている取材相手を叩き起こしてでもネタを取る新聞記者の会社が、「文書でしか回答しない」「個人の取材には対応しない」というのは、何ともダブルスタンダードに過ぎるのではないか。

 話を少し戻そう。

 先に書いた読売新聞への取材というのは、「見出し引用裁判」についてのコメントを求めるものだった。この裁判は、読売新聞が2002年12月、神戸のデジタルアライアンス社を相手取って起こした。同社はYahoo!がポータル上で提供しているニュースの見出しとリンクを、バナーの上に電光掲示板状に流すというサービスを提供しており、読売側は「見出しにも著作権があり、勝手に利用するのは著作権侵害である」と見出しの使用差し止めを求めたのである。

 実は読売が小規模なベンチャー企業を相手に裁判を起こした背景には、Googleニュースへの恐怖があったらしい。Googleニュースというのはご存じのように、さまざまなニュースサイトの見出しとリンクを自動収集し、カテゴリ別に並べてひとつの大きなニュースサイトのように見せてしまうGoogleの新サービスである。当時は英語圏だけでこのGoogleニュースは提供されていた。「もしこんなものが流行してしまうと、新聞社のニュースサイトの価値がどんどん下がってしまう」――読売はどうもそう考えたらしく、何とかGoogleニュースの上陸を阻止しなければならないと考え、その牽制球として「見出しには著作権がある」という裁判を起こしたのだ。

 スケープゴートにされたデジタルアライアンス社もたまったものではないだろうが、しかしこの裁判は今年3月、読売の敗訴で終わった。東京地裁は「見出しは客観的事実を記述したか、ごく短い修飾語を付けたもので、創作的表現とは言えない」「ヨミウリオンラインの見出しは全体としてありふれた表現であるから、創作性を認めることはできない」と請求を棄却したのである。

 社内の関係者によれば、この判決に対して、読売社内では「創作的表現ではないとは何ごとだ!」「『ありふれた表現』とは失礼な」と怒りの声が渦巻いたという。そしてその余勢を駆ったのかどうかはしらないが、9月1日からGoogleニュース日本語版がとうとうスタートしたのに対しても、「読売新聞は早速Google日本法人に文句を言ってきて、Google側に見出しとリンクの使用停止を求めたらしい」(検索エンジン業界関係者)という。

 この読売の対応に、全国紙では毎日新聞と産経新聞も追随した。だからGoogleニュース日本語版には、全国紙は朝日新聞と日経新聞しかリンクされていない。英語版のGoogleニュースが主だったニュースサイトのほとんどをリンクしているのと比べれば、かなり物足りない内容になってしまったのである。

 さて、これらの新聞社の対応には、ふたつの問題があると思う。まず第1に、こうした新聞社は、著作権というもののあるべき姿をかなりねじ曲げて理解しているように思えることだ。

 もちろん、「見出しには著作権がない」と断じた裁判所に対する読売の怒りはわかる。新聞社には記事に見出しをつけ、レイアウトを決める「整理部」と呼ばれる部署があり、プロフェッショナルな整理記者は日々、〆切間際に一刻一秒を争いながらも、スマートでわかりやすく、そしてキャッチーな見出しをつけることにこだわっている。その仕事に対して「ありふれた表現」というのは失礼だと思うし、私自身も見出しには著作権があるように感じる。

 でも著作権があるからということと、それを他者に絶対に無料で使わせないように守るというのは、まったく別の話ではないか。言い方を変えれば、著作権があるからといって、必ずしも無断使用を禁じなければならないわけではないだろう。著作権にはフェアユース(公正使用)という概念があって、著作権は守るだけでなく、みんなの共有財産として有効活用していかなければならないという面もある。著作権をガチガチに守るだけというのは、明らかに間違いだ。

 ビートルズだって、50年代のロックンロールの曲を勝手にコピーしまくったから、あれだけいい曲を書けるようになった。プログラムだって、他人の素晴らしいコードを盗んで学んでこそ、次世代の優秀なプログラマーが育ってくるのである。そして日本のいまの著作権の枠組みには、こうしたフェアユースの考え方が徹底的に欠如していると言われている。

 「著作権がある」となったとたん、なりふり構わず「無断利用は許さない」「勝手に使うな」と声高に叫ぶ。そんなスタンスは、絶対に間違っている。著作権があっても、無断利用が許される――そういう考え方がどうして欠如してしまっているのだろう?

 第2の問題は、新聞社は他人のウエブサイトの画面や見出し、リンク、URLについては何のことわりもなく紙面でさんざん引用しているということだ。新聞社のサイトには、「このホームページの記事、写真、図表などを無断で転載することは著作権法違反になります」と警告文が書いてある。でも新聞紙面には、企業や個人のサイトの画面がひんぱんに無断で転載されている。私の知る限り、ウエブ管理者に許可を得るようなことはいっさい行っていない。

 結局のところ、ダブルスタンダードの問題ではないかという気がする。新聞社は、ダブルスタンダードが大好きなのだ。冒頭に紹介した読売新聞の取材対応を見ても、彼らがいかにダブルスタンダードを愛しているかということがよくわかる。そういえば私が新聞社に勤めていたころも、月に200時間以上の残業時間を強いられながら、眠い目をこすりなが日々の紙面を開くと、「労働時間短縮を」「ゆとりのある生活」なんていう見出しが躍っていたのだった。
Trackback (0)


« Skypeは戦争を...情報システム... »
 
コメント
 
 
 
すべてにいえる気がする (Shinji)
2004-10-11 14:26:40
わたしも自分の素材を提供するホームページが雑誌に掲載されたときに、「素材利用時は許可をとりましょう」と記事には書いてあるのに、わたしへの事前および事後の確認は一切なかた。これは、毎日新聞系の雑誌だった思う。一方で個人のレベルでいうと日本人にはおなじみの「本音と建前」とか「手前みそ」とか「理想と現実」など団体だけでなく個人にも同じことが言えるのではないだろうか。それは、わたしも含めて言えると思う。
 
 
 
著作権を利用している (考える人)
2004-10-15 21:12:25


新聞社の2面性が垣間見えてきてここの新聞社ばかりでなくどこのマスメディアでも同じことをしています。

いったん手から離れたものは人から人へわたっていきます。どこかの音楽業界の団体みたいに著作権を利用して自分たちの正当性を訴えていますがはじめから著作権云々をいってるわけではなく売り上げが落ちたから著作権をいいはじめたわけでこういう著作権を盾にした訴えは如何なものかと思う。

自分個人としては著作権はあるようでないものだと感じています。もしその著作が大事ならば世間に出さなければいいわけでそっと自分のもとにおいとけばいい。

結局金儲けでしている著作なんだからどんな方法で利用されても仕方がないということだとおもいます。特に音楽業界や著作にかかわる組織はいまや媒体はインターネットだという自覚をもって新しい戦略を考えていかなければいずれ破綻します。

業界の言っている「いずれ海賊的なことをしていれば優れたアーティストはいなくなる」といっていますがそれは詭弁でしょう。現にインターネット用(言葉が悪いですが)のアーティストが続々と誕生しています。

これからも著作権という盾を使い弱いものをいじめていくんでしょうね。





 
 
 
日本にフェアユースはある? (klavis)
2004-10-22 11:37:32
>著作権にはフェアユース(公正使用)という概念があって、著作権は守るだけでなく、みんなの共有財産として有効活用していかなければならないという面もある。



フェアユースの概念は,アメリカには法律で明文化されていたと思いますが,日本にはなかったと

思います。(記憶違いで無ければ。)



ただ,フェアユースのあるアメリカでも著作権の濫用が目立つようですね。DMCRA(Digital Media

Consumers' Rights Act)のような法律が,各国で成立することを祈ります。
 
 
 
著作権の本来の意味 (makiko)
2004-10-22 11:43:53
佐々木さんのおっしゃるとおり、著作権のフェアユースの考え方が欠如していると思います。そもそも著作権とは、著者にその著作物がどう扱われるかを決定する権利があるということであり、「著作権がある」=「無断利用禁止」ではないということです。著者がOKすれば、無断転用しまくってもいいことにもなります。たとえば、プログラムのソースをある規定に従えば自由に改変できる「GPL」に近いものがあると思います。日本新聞協会で出している著作権に対する見解を発見したのですが、これは非常に分かりやすく、妥当な内容になっていました。問題は、それを各新聞社が伝家の宝刀のごとくふりかざし、要約紹介も翻案にあたるから無断ではするな(内容を詳細に網羅するものは許可も必要でしょうが、ちょっとした紹介ですらダメ!という姿勢が見える文章に、かなりむっとしました)など、少々度が過ぎると思いました。インターネットの登場で新聞の売上が減少し、その原因の1つとして勝手にコンテンツを利用されているからと考えるのも仕方ないと思います。事実、記事をそのまま掲載(全文掲載は「引用」には当たりませんし)しているWebページもあるので、新聞社の見解も理解できます。だからといって、それをすべて潰すような主張はいかがなものでしょう。著作権は非常に難しい問題ですが、著作物を扱っている新聞社であるからこそ、もう少し柔軟な対応をされてもよいのではないかと思いました。
 
 
 
フェアユース追記 (klavis)
2004-10-22 12:22:08
もう少し追記すると,佐々木さんやmakikoさんのおっしゃっているように,日本の著作権にはフェ

アユースがない。それは法律に明文化されてないのが1番の原因ではないかと思っているのです。



法律の条文にはっきりとした形で明記でもしない限り,フェアユースなどこういう新聞社が好き好んで

用いてくるとはちょっと思えないのですが。



著作権については他にも文句を言いたいことが多々あり,ストレスがたまる一方なので,

最近は「強いものに巻かれる運命」と考えないようにしています。



駄文失礼。
 
 
 
ブランドか中身か (mitsu)
2004-10-29 01:56:10
Googleニュースで見出しが曝されることによって、地方紙のサイトにもトラフィックが向くようになった、という記事がでていましたね。

http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0410/26/news051.html



ヨミウリとかアサヒとかブランドで記事を選ぶのか、ヘッドラインを見て比べて読みたくなった記事を読むのか、ユーザーが選択できるというのは、なんて素敵な技術なんだろうと思います。(私はブランドで特定の社を忌避しそうですが)



地方紙の記事の文章は全国紙のレベルに達していないことも多くて、読んでいるとおかしなところが気になっていちいち引っかかって読みづらかったりもするのですが、全国紙の通り一遍の記事にはない着眼点が新鮮に思えたりすることもしばしばあります。
 
 
 
毎日新聞はどうでもいいけど・・・ (k2)
2004-11-01 13:22:59
 「この読売の対応に、全国紙では毎日新聞と産経新聞も追随した」というのは、どのような事実関係の取材を根拠として判断されたのか気になる。読売のようなスタンスをこれら追随した新聞社もとっている、とつい読者が誘導されてしまいそうな記述なだけに気になる。

 ちなみに今日(11/1)news.google.co.jpを見たら、毎日新聞のリンクが結構目立った。

 貴殿のようなスタンスをお持ちの方なら、このような利用者のある種の判断材料になりそうなコメントは、事実関係に何らかの変更があったら、直ちに修正を入れているはずとおもわれるだけに、奇異に感じた次第。
 
 
 
「グーグルニュース」の動きは早い (Unknown)
2004-11-07 09:09:47
ネットは新聞を殺すのかblog

グーグルニュース、拒否派の勝利?

http://kusanone.exblog.jp/1119880/

この時点(10/3)で、朝日と日経のみになってます。

グーグルニュースに毎日新聞復帰(10/24)

http://kusanone.exblog.jp/1217624

グーグルニュースに反対するもう一つの理由が書かれています
 
コメントを投稿する
 
現在、コメントを受け取らないよう設定されております。
※ブログ管理者のみ、編集画面で設定の変更が可能です。
この他の先端人Web日記

高橋靖子の
「千駄ヶ谷スタイリスト日記」

田中秀臣の「ノーガード経済論戦」
goo
Hotwired Japan