法とコンピュータ学会で岡山の岡本弁護士が述べるところによれば、プリペイド携帯電話に対する規制は、むしろ日弁連の民暴委員会の方で、自民・公明に陳情に行っていたそうです。
本人確認をしっかり行う携帯キャリアと、しっかりと行わない携帯キャリアとが併存した場合に、本人確認をしっかりと行わない携帯キャリアに利用者の多くが流れ、市場原理により、本人確認をしっかり行う携帯キャリアが淘汰されてしまうとすると、プリペイド携帯電話の匿名性に乗じた犯罪行為・不法行為等が横行するという外部不経済が発生してしまいます。そして、民間部門でこの問題を解決できない、すなわち、いくつかの携帯キャリアが、顧客の要望を重視して、しっかりとした本人確認を行うことをあえて怠り続けた場合に、外部不経済を負わされる側は公権力による規制を要請するようになります。
日本のプリペイド携帯電話問題は、結局のところ、ボーダフォンが折れて、本人確認を今まで以上にしっかり行うというところで落ち着きそうです。
では、レンタルサーバ事業者やBLOG事業者はどうなるでしょうか。
利用者がどこの誰であるかを把握せず、また、利用者が違法な疑いのあるコンテンツを掲載しても極力削除をしないところに顧客が集まり、逆に、利用者がどこの誰であるかを把握しようとし、あるいは、利用者が違法な疑いのあるコンテンツを掲載したときに適宜削除を行おうとしたところが、市場原理により淘汰されるということになった場合、インターネット上には発言の匿名性に乗じた犯罪行為・不法行為が横行するという外部不経済が発生してしまいます。そして、民間部門がこれを解決しようとしない場合、外部不経済を負わされる側は公権力による規制を要請するようになります。
そして、ローレンス・レッシグやデジタルフロンティア財団がいない我が国では、そのような新たな法規制はあっさり成立してしまう可能性が高いといえます(しかも、タイミング的には最悪です。自民党は数年のうちに憲法を改正してしまう気満々ですし、憲法改正に抵抗しそうな政党は抵抗する力をもはや持っていません。)。
民間の通信部門への公権力の介入をなるべく防ぐには、民間部門での自浄作用が必要です。しかし、はてなの規約改正問題やLivedoorの削除問題で利用者がとった行動をみると、他の同種業者は自浄作用を働かせるべく様々な方策を練り実行することを躊躇することでしょう。近視眼的には、何の自浄作用も働かせず、かえって、利用者が匿名性のもとで違法行為をしやすい環境を整えた方が会員も増えるし、コストも抑えられます。そして、一部の煽動者は、そのような違法行為をしやすいサービスへと多くの利用者たちを導こうとすることでしょう。そして、それは、インターネット上での表現行為に対する公的規制への国民の支持を増大させることに繋がります。
大衆は、自分の耳に心地よい煽動にあわせて一緒に踊り、「公権力からの自由」というフィールドを踏みつぶしていく。そして、その踊る大衆の傍らで、その踊りに巻き込まれて踏みつぶされないように、彼らが「公権力からの自由」というフィールドを踏みつぶしていくのを情報産業の担い手はただ手をこまねいてみているしかない。そんな悲劇的な近未来が、今回の一連の騒動からは透けて見えてしまいます。
一部の民間部門の自助努力が利用者の声に押されて失敗に終わった場合、レンタルサーバ事業者かBLOG事業者のうちのどこかが、警察・検察によってスケープゴートとされ、それを契機に、公権力が広範囲に情報産業を規制する立法が推し進められるのではないかということを、私は真剣に危惧してしまいます。
そうならない前に、そうならないために、私たちは一体何をすべきなのでしょうか。
国民の過半数が「多少の不便を我慢してでも匿名性を選ぶ」という状況にするか、
国会議員に働きかけるか、こちらの味方になる議員を送り込むかでしょう。
理想的には国民の過半数を味方につけることですが、現実的にはどうすべきなのか。
有料のコンテンツを販売しているコンテンツホルダーが、まさに外部不経済を負わされている状況ですが、小倉氏は、それでもP2Pをそのまま認めるべきとのご意見だったと思います。
このままでは、小倉氏自身が書いておられるように、国家による規制か、自助努力か。そして、自助努力の方向を是とするのであれば、違法コピー流通に手を貸したWinnyの開発者に対して、小倉氏はいかなる立場に立つべきか。
これを機に、考え直されてはいかがでしょう?
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