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弁護士。中央大学法学部兼任講師。1968年生まれ。著作権等の知的財産権、IT関係はとりわけ強い。これまで、中古ゲーム差止訴訟、「mp3.co.jp」ドメイン名訴訟、対WinMXユーザー発信者情報開示請求訴訟などで勝利を収め、ファイルローグ事件では、高裁での逆転勝利をねらう。主な著書として『著作権法コンメンタール』(編著:東京布井出版)、『インターネットの法務と税務』(共著:新日本法規)などがある。
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小倉秀夫の「IT法のTop Front」
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 Winnyの件で何度もコメントを寄せてくれる方がいらっしゃいます。仮名に匿名性を持たせるべきという議論とWinnyの開発者を処罰すべきでないという議論とが矛盾していると感じる方は他にもおられるかもしてないので、若干敷衍して論じてみることとしましょう。

 P2Pであれレンタルサーバ(BLOGサービスを含む。)であれ電子掲示板であれ、マスメディアを利用できない一般市民が不特定人に対して検閲されることなく自由に情報発信することを可能とするという側面と、同時に、一般市民が他人の権利を侵害する情報を流通させることをも可能とするという側面を併有しています。後者の「他人の権利を侵害する情報が流通する」という側面を重視すれば、一般市民が不特定人に対して検閲されることなく自由に情報発信することを可能とするサービス自体やめてしまえという結論に繋がっていきます。しかし、この点については、他人の権利を侵害する情報の流通に用いられるという負の側面があることは甘受してでも、一般市民が不特定人に対して検閲されることなく自由に情報発信することを可能とするサービスはプラスの効果が大きいので、存続・発展させようということで、国民の代表者たる国会議員が集まってプロバイダ責任制限法が制定されたのです。

 しかし、これらのサービス等の提供が社会的に認められたということは、これらのサービスを利用して他人の権利を侵害することを甘受することになってもこれらのサービス等を提供することを適法なものとする社会的コンセンサスが成立したということは、これらのサービス等を利用して他人の権利を侵害することを甘受するとの社会的なコンセンサスが成立したということを意味しません。したがって、これらのサービス等の提供者は、なるべく利用者が自由に情報発信をできるように環境を整える必要があると同時に、できるだけ他人の権利を侵害する情報の流通に利用されないようにする必要があります。そうしなければ、これらのサービス等を提供することを適法とする社会的コンセンサスが覆ってしまう虞があるからです。

 そのための手法として、自分の権利を侵害する情報の流通に利用されているという主張する者のクレームを受けて初めて対処するというシステムを採用するよりは、他人の権利を侵害する情報の流通にサービスを利用した場合は相応の責任を負わされる可能性があるということを示してそもそも権利侵害情報を流通させようという気を起こさせない方が、他人に与える被害を小さくすることが可能です。したがって、このようなサービスの提供者が、現実にできる範囲内で、利用者のトレーサビリティを確保しようとすることはもっと推進されてしかるべきです。

 また、これらのサービスを利用して不特定人に情報発信を行う場合、特に他人の社会的評価を低下させかねない情報を提供する場合、少なくとも真実と信ずるに足りる相当の事由のあることすら示せなかったときには相応の責任を負うように、実名又はトレーサビリティのある仮名を用いるべきです。

 なお、仮名から実名へのトレースは、刑事告訴や民事訴訟を提起することなしに行えるシステムを構築した方が、紛争の訴訟前の解決を図りやすく、おそらく却って情報発信者にとっても利益に繋がります。

 これに対して、どうも仮名にトレーサビリティを持たせることにすら強烈に反対する方々が少なからずおられ、私のブログに連日のようにコメントをつけてくれています。ただ、匿名またはトレーサビリティのない仮名による発言者による他人の権利を侵害する情報の流通(ネット上での誹謗中傷や児童ポルノ等の掲載等)が現実に相当程度頻発しているのに対し、彼らが危惧しているような、仮名にトレーサビリティを持たせることによるデメリットというのは実際にはそんなにありません。大企業が、金にあかせて弁護士を雇い、自分たちを批判する誠実な告発者を裁判で訴えて押し黙らせようとするなんて、実際にはほとんどありません。東芝クレーマー事件ですら、世間からの批判が大きすぎて途中で東芝が仮処分を急遽取り下げざるを得なかったほどですから(この事件の総括は町村先生のこれを参照のこと)、ほとんどの企業は、よほどのことがなければネット上の誹謗中傷等に対しても訴訟等の行動を起こそうとはしません。実際、過去に裁判例が公開された事案は全て、企業等が訴訟を提起するに至るのもやむなしと思われる事案ばかりです。三井検事の例は、世間からの批判を無視したり、マスメディアをコントロールしたりできる検察だからできる技です(そして、三井検事の例は、匿名のままでは告発が十分な効果を持たなかった例の典型でもあります。あのような経歴を持つ三井検事が告発したのだという情報こそが、その信頼性を高めているのです。)。

 では、現在、匿名またはトレーサビリティのない仮名での情報発信を可能とするサービスの提供者は、その利用者による他人の権利の侵害行為の責任を、民事的にまたは刑事的に負わされるべきでしょうか。

 近時の裁判例の流れを前提とすると、負わされる可能性は十分にあると思います。しかし、私は負わされるべきではないと考えます。

 なぜなら、仮名にどの程度のトレーサビリティを要求するかということは、国民の代表者である国会にて議論がなされ、法律化されるべきものと考えるからです。特に、サービス提供者と利用者とがインターネットを介してしか関係を有しないタイプのサービスにおいては、確実性の高い本人確認手段を有していないので、仮名にトレーサビリティを持たせようとしたところで、ある程度のところで妥協せざるを得ないわけです。すると、匿名またはトレーサビリティのない仮名での情報発信を可能とするサービスを提供することを法的に制約することを是認するにしても、トレーサビリティ確保のためどの程度のことをやっておけばよいかは事前に提示されるべきということができます(逆に言うと、トレーサービリティを確保するためになすべきことが具体的に明示されており、かつ、それが技術的に可能でありかつサービス提供者に過度の経済的な負担を課さないものであるならば、トレーサビリティを確保するための特定の行為をサービス提供者に法的に義務づけることに私は反対しません。)。

 そして、現在の日本では、インターネット上での情報発信を可能とするサービスを提供する際に、この程度のトレーサビリティは確保しなければならないとルールは公的に形成されておらず、したがって公に示されていません。このような状況で、利用者のトレーサビリティを断ち切ったということでサービス提供者が民事上又は刑事上の責任を負わされるのはおかしいというべきです。

Comment (10) | Trackback (3)


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コメント
 
 
 
Unknown (Unknown)
2004-12-19 15:34:01
2ちゃんねるで犯行予告をすると追跡されて責任を負わせれるでしょう。

これは現実的なデメリットではないですか。

 
 
 
Unknown (Unknown)
2004-12-21 13:44:20
テーマとして採り上げて下さり、ありがとうございます。



さて、第三段落後半までは全く同感です。つまり「できるだけ他人の権利を侵害する情報の流通に利用されないようにする必要があります。」と言うことです。

ここで、切っ掛けがWinny問題であるにも関わらず、Winny問題やP2Pの話題に進まずに、プロバイダーの登録に進んでしまうのが、小倉氏の主張のまさにウィークポイントです。



WinMXからWinnyの発展は、匿名性の強化は図られたものの、WinMX時代から問題になっていた他者の権利侵害については、一切、考慮されていません。それどころか、結果として、違法コンテンツの流通がしやすくなっています。

他のP2P問題でも同じです。結果的に、コンテンツホルダーからのアイデアに反対するものの、P2P企業は改良を施そうとする姿勢を全く見せない。



つまり、違法コンテンツの大量流通(実に90%以上と言う調査結果もあるようです)と言う極めて深刻な問題がありながら、それへの対処を行わず、逆にサービスの利用を拡大する方向へ行動することは、新しい利用者が違法コンテンツを利用する切っ掛けを作っていると言われても仕方ありません。つまり、著作権法違反のほう助に該当するのです。



法律がなければ無罪と言う硬直した思考をするのが弁護士の仕事でしょうから、ほう助に関しては小倉氏が意見を変えることはないでしょう。

では、質問です。



現在、90%以上が違法コンテンツの流通に使われていると言う調査結果のあるP2Pですが、小倉氏は規制する法律を作るべきとお考えなのでしょうか?

それとも、「鍵の掛かったドアを開けられる拳銃」のようなもので、残り10%の用途のために、コンテンツホルダーは犠牲になり続けるべきとお考えなのでしょうか?
 
 
 
せめて識別可能な固定ハンドルくらいは名乗っても罰が当たらないような (小倉)
2004-12-22 11:34:32
 いろいろな立場の方がunkownで投稿されるので、非常に、わかりにくくなっています。

 どうせgooブログは、コメント投稿者のトレーサビリティを確保できないシステムになっているのですから、せめて識別可能なハンドルネーム(できればそれ自体下品でなくおとなしいものが望ましいです)を名乗ってくれてもいいのではないかと思うのですが。

(コメント規制に関して、gooブログは細かい設定ができないので、下品なハンドル名や下品な投稿があると、コメント投稿自体をできなくするしかないようなので。)
 
 
 
アプローチ (小倉)
2004-12-22 11:42:53
パーセンテージを問題とするのであれば、P2Pで交換されるファイルの90%が違法なファイルであることを知りながら、ファイル交換で用いられるポートを止めないISP、特にADSLや光などを提供しているところも幇助責任を問わないとおかしいですね。



それはともかく、法規制を行うのであれば、規制を望む側と規制をされる側とで話し合って、違法行為を抑制する手段として、技術的、経済的に何が可能であるかあるいは何が困難であるのかを話し合い、規制される側に過度の負担を与えないようにするべきでしょう。



実際、プロバイダ責任制限法はそういうアプローチをとったわけだし、プリペイド携帯電話規制でもそういうアプローチをとったわけで、P2Pについてだって、そういうアプローチがとれない理由はありません。
 
 
 
話し合いですか (P2P)
2004-12-22 14:29:40
しかし、報道を見る限り、米国のP2P企業などは、小児ポルノに関しては流通しなような取り組みを始めても、著作権法に違反するコンテンツについては、区別できないことを理由に一切対応を採らないとされています。

また、小倉さんも「アーティスト名や楽曲名では、同じアーティスト名や楽曲名のフリーの曲を流通させられなくなる」などと言う例を持ち出して、対応を採れないと主張をしているわけですよね。その際に、「話し合い」を主張される小倉さんは対案を示したのでしょうか?



結局、「話し合い」「話し合い」を繰り返し、相手に対案を考えさせては、その対案の欠点を指摘することで、実質的に規制を逃れようとしているだけですよね。



>P2Pについてだって、そういうアプローチがとれない理由はありません。



被害の大きさを無視した話ですね。

プロバイダの利用者の9割が違法行為でもなければ、プリペイド携帯電話の9割が違法行為者でもありません。そして、いずれの場合も、被害が大きくなりつつある段階で対応策を講じています。



技術の進化を止めるべきではないとして、対策に反対なさっていた1人が小倉氏だと認識しているのですが・・・

小倉氏は「現在のP2Pは違法行為に使われるケースが多く、なんらかの法的規制を考慮すべきである。」と言うご主張だと理解してよいのでしょうか?

それとも、「話し合いが結実するまでは、被害者は泣き寝入りしていなさい。」と言う主張でしょうか?
 
 
 
対策に反対はしていないですよ (小倉)
2004-12-22 14:58:26
プリペイド携帯の何割が違法行為に利用されているかは統計がないですね。実は、P2Pについても、ちゃんとした統計はありません。JASRACは一定期間サンプル調査はしたといっていますが、利害当事者がやっていますので、信頼性は落ちます。そのJASRACの調査ですら、mp3ファイル自体がファイルローグで共有状態に置かれているファイル全体の15%程度しかなかったわけです。
 
 
 
対策 (小倉)
2004-12-22 15:03:56
そして、ファイルローグに関していえば、ノーティス・アンド・テイクダウン方式を用意しており、権利侵害ファイルをアップロードがアップロードされていることを権利者が発見した場合には、そのファイル名とユーザー名を申告してくれれば当該ユーザーに意見照会を行い、特に反論がなければ、当該ファイルをアップロードしないように警告し、警告に応じなければ除名処分を行うようにしていたわけで、現実的にとることが可能な対策はとっていたのですよ。

 
 
 
 
ノーティス・アンド・テイクダウン方式の限界 (P2P)
2004-12-24 15:35:39
用意されていても実効性がなければ、意味がありません。



この場合、ノーティス・アンド・テイクダウンによる処理速度が、新規アップロード速度を上回らない限り、権利侵害の拡大は継続します。

そして、両者の手続きを考慮すれば、どちらが上回るかは、考える必要すらありません。



つまり「現実的」ではないんですよ。
 
 
 
Unknown (無七志)
2004-12-24 18:10:03
なんか「警察がいても犯罪は減ってないから意味ない」みたいな感じですね。

 
 
 
企業は大丈夫かも知れないけど (匿名希望)
2005-01-03 15:52:57
「ほとんどの企業は、よほどのことがなければネット上の誹謗中傷等に対しても訴訟等の行動を起こそうとはしません。」企業はそうですけどね。インターネット文化の歴史に詳しい人なら「サイエントロジー」というキーワードが頭に思い浮かぶと思います。調べてみてはいかが?睨まれると怖いので匿名希望。

 
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