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2010年1月29日開設
読書
大岡昇平+社会問題・社会保障

【佐藤優】仏教や神道とは違う、一神教の思考法 ~『牙を研げ』~

2017年05月15日 | ●佐藤優
 (1)このような特徴をもつ日本人にとって、一神教的な、超越的なものがあると考える人たちの思考法を理解するのは難しいことだ。「イスラム国」(IS)や米国のキリスト教根本主義者(ファンダメンタリスト)の考え方もそうだが、わかりにくいことはほかにもある。
 〈例〉ロックフェラーに代表されるような富豪がなぜあれだけたくさんの寄附をするのか。
 それは、超越的なるものという感覚が理解できてないからだ。

 (2)一神教は偏狭で、多神教は寛容である。あるいは、キリスト教よりも仏教が寛容である。・・・・ということは、まったく言えない。別にイスラムだけが好戦的なわけではない。
 〈例〉オウム真理教も仏教の変種だ。
 〈例〉タイで内乱が起きるけれども、両勢力とも仏教だ。
 〈例〉キリスト教も、北アイルランドにおけるプロテスタントとカトリックの抗争がある。
 〈例〉神道も、朝鮮半島との関係において神社参拝を強要して、それに反対する朝鮮のキリスト教徒たちがたくさんいて、死者まで出た。もし、日本が日韓併合後、朝鮮神宮の祭神を天照大神としないで、朝鮮神話の建国の祖である檀君にしていたら、流れは違っていたかもしれない。日韓併合は、日韓合邦、コンフェデレーション、国家連合だとするシンボル操作ができたかもしれない。 

 (3)朝鮮半島の神話では、檀君が建国の父だ。
 平壌の郊外には檀君陵がある。1990年頃に、古い男女の骨がきれいなかたちで発掘され、北朝鮮は檀君とその妻のものと判定した。いまや北朝鮮では、その檀君陵に拝みに行くことがとても重要になっている。
 金日成の回想録『世紀とともに』(平壌・外国文出版社と雄山閣から邦訳が出ている)に、北朝鮮のキリスト教徒の団体、朝鮮キリスト教徒連盟の人たちが、いままではエルサレムの方角を拝んでいたけれども、これからは檀君陵の方角を拝むことにした、という記述がある。
 北朝鮮のイデオローグたちは、イスラム教徒がメッカに礼拝するように、キリスト教徒はエルサレムに礼拝している、と思っているらしい。北朝鮮はキリスト教徒を徹底的に弾圧したので、キリスト教徒がどういう行動様式をとるのか、わからなくなってしまったのだ。だから、エルサレムの方に向かって拝んでいたのを、拝む方向を檀君陵に変えた、という記述になる。檀君神話を上手に使った国家統合、つまり今の金王朝は檀君という神話上の王様の末裔なのだ、というイデオロギー操作がおこなわれている、ということだ。0

□佐藤優『牙を研げ 会社を生き抜くための教養』(講談社現代新書、2017)の第2章の「⑥一神教の思考法」
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 【参考】
【佐藤優】国教は習慣というかたちをとる ~『牙を研げ』~
【佐藤優】紅白歌合戦の、カオスからコスモスへ ~『牙を研げ』~
【佐藤優】武士政権成立前後のグローバリゼーションと反グローバリゼーション  ~『牙を研げ』~
【佐藤優】プロテスタンティズムという思考の鋳型  ~『牙を研げ』~
【佐藤優】日本兵は捕虜になるとよくしゃべる理由、米軍の日本研究  ~『牙を研げ』~
【佐藤優】ソ連軍の懲罰部隊が強かった理由、日本軍の「生きて虜囚の辱めを受けず」  ~『牙を研げ』~
【佐藤優】『牙を研げ 会社を生き抜くための教養』 ~各章の小見出し~
【佐藤優】『牙を研げ』 ~まえがき~
【佐藤優】『牙を研げ 会社を生き抜くための教養』 ~目次~

 

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