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2010年1月29日開設
読書
大岡昇平+社会問題・社会保障

【佐藤優】キリスト教の特徴、三一論(父・子・聖霊の関係) ~『牙を研げ』~

2017年05月18日 | ●佐藤優
 (1)キリスト教の議論に三一論(三位一体論)がある。三一論はキリスト教の特徴だ。
 三一論が、非キリスト教徒にはよくわからない。また、イエス・キリストは人であり神であるけれども、その両者の関係がどうなっているかも、実はよくわからない。キリスト教の思想の一番根幹であるところの、三一論とキリスト論が曖昧なままなのだ。
 裏返すと、曖昧だからキリスト教という傘が維持され、数億の人たちが傘の下にいることができる。もし、これを明確につき詰めることがあれば、キリスト教はばらばらになって分解してしまうかもしれない。

 (2)フィオリクェといわれる非常に難しい神学的な議論がある。「フィリオ」は「息子」、「クェ」は「アンド」で、「子からも」という議論だ。かいつまんで言うと、キリスト教は、聖霊は父、子(キリスト)から発出するという議論だ。父、子、聖霊がどういう関係にあるか、ということは、過去1,700年ぐらい議論して、暫定的な結論は出ているけれども、最終的な結論は出ていない。

 (3)正統派のキリスト教というのは、もともとは
  (a)ニカイア・コンスタンティノポリス信条
  (b)カルケドン信条
というキリスト教の基本文書を共有していることが条件だ。(a)には「聖霊は父より発出する」と書いてある。父より発出するということならば、父からどこにでも行くわけだ。すると、日本人のほとんどはキリスト教徒ではないけれども、聖霊の力はダイレクトに人々、つまりキリスト教徒以外の人にも働くことになる。

 (4)それに対してカトリック教会は、父だけでなく子からも聖霊が発出する、という立場だ。子というのは、イエス・キリストのことだ。
 しかし、イエス・キリストは死んだ。復活して、一時地上に現れた後、「私はすぐ来る]と言って天に昇っていった。では、子はどこに行っているのか。教会はキリストの花嫁と言われているように、キリストは教会にいる。だから、教会に集まってくる人にしか聖書は適用されない。聖霊は自然には及ばなくなる。自然は歩いて教会に来ることはできない。
 我々は父について直接知ることはできない。子を通じてしか父について知ることができない。キリスト教徒が「この一言の感謝と祈りを、とうとき我らが主イエス・キリストの御名を通して御前におささげします」と言うのは、ストレートに神様におささげすることができないからだ。カトリックでは教会を経由するかたちで聖霊は動く。教会に聖霊は限定されるわけだ。すると、「教会のみ御祓いをなし」で、組織重視になる。

 (4)正教会は、神が人になるということは、人が神になることだと考える。だから、修道の力によって、禁欲生活を続けることによって、神に近づくことは正教会では可能だ。それを世俗化してみると、我々は聖霊を持っているから、我々の力で完全に理想的な社会や国家をつくることが可能になる。人が神になっていくことが可能だからだ。
 こういうかたちでロシア革命のような壮大な実験がおこなわれたのだ。現代のロシアもシリアなどに侵攻していくときには、我々には歴史的な使命がある、という感覚を持っている。特にシリアには同じ正教で、似たような聖霊理解をしているキリスト教徒がいて、そのキリスト教徒を守らないといけない。そうなると、我々は神のためにやらないといけない、といって神に直結していくことになりやすいのだ。

 (5)カトリックは、バチカンを中心として、普遍主義的だ。ミサではラテン語を用いている。
 正教会は昔かr個別の民族の言語に聖書を翻訳して、儀式は全部民族言語でやる。だから国家と結びつきやすい。結論からいうと、国家のサブシステムになりやすい。だから、つねに正教会は自らが属する国家を支持することになるのだ。

□佐藤優『牙を研げ 会社を生き抜くための教養』(講談社現代新書、2017)の第2章の「⑬父、子、聖霊--三一論」
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 【参考】
【佐藤優】キリスト教共同体とローマ法 ~『牙を研げ』~
【佐藤優】復活という現象の科学的説明 ~『牙を研げ』~
【佐藤優】プレモダンとしてのカトリックと正教 ~『牙を研げ』~
【佐藤優】ユダヤ教、キリスト教、イスラムの「罪」 ~『牙を研げ』~
【佐藤優】論理が発達する理由 ~『牙を研げ』~
【佐藤優】天照大神vs.須佐之男命 ~『牙を研げ』~
【佐藤優】仏教や神道とは違う、一神教の思考法 ~『牙を研げ』
【佐藤優】国教は習慣というかたちをとる ~『牙を研げ』~
【佐藤優】紅白歌合戦の、カオスからコスモスへ ~『牙を研げ』~
【佐藤優】武士政権成立前後のグローバリゼーションと反グローバリゼーション  ~『牙を研げ』~
【佐藤優】プロテスタンティズムという思考の鋳型  ~『牙を研げ』~
【佐藤優】日本兵は捕虜になるとよくしゃべる理由、米軍の日本研究  ~『牙を研げ』~
【佐藤優】ソ連軍の懲罰部隊が強かった理由、日本軍の「生きて虜囚の辱めを受けず」  ~『牙を研げ』~
【佐藤優】『牙を研げ 会社を生き抜くための教養』 ~各章の小見出し~
【佐藤優】『牙を研げ』 ~まえがき~
【佐藤優】『牙を研げ 会社を生き抜くための教養』 ~目次~

 

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