語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【保健】携帯電話の電磁波の発癌性 ~新証拠~

2016年07月01日 | 医療・保健・福祉・介護
 (1)米国でのがん研究の最高権威ともいえる国家毒性プログラム(NTP)による動物実験で、
   「携帯電話の電磁波の発癌性がある」
とする研究結果が2016年5月27日に発表された。
 携帯の電磁波の発癌性については、2011年に国際がん研究機関(IARC)が、疫学調査で、携帯電話の使用により脳腫瘍のリスクが増えたという証拠などを基に、「ヒトでの発癌の可能性がある」と評価している。
 今回の米国の実験では、人間で確認されたものと同種の癌が動物実験でも増えた点が画期的だと言える。
  NTPとは、米国の保健福祉省(日本の厚生労働省にあたる)が中心となり、公衆衛生に影響をおよぼすかもしれない環境中の化学物質などの研究・評価を実施する機関だ。

 (2)今回のNTPの実験は、2,500万ドル(27.5億円)をかけた最大規模のもの。米国で実際に携帯電話に使用されているのと同種類の電磁波をラットやマウスに曝露させ、癌が増えるかどうかを調べた。
 曝露した期間も長期に及び、胎児期からほぼ一生涯に相当する2年間。毎日9時間、電磁波を浴びせ続けた。強さは、人間が携帯電話を使う場合に脳が浴びる強さと同程度(1.5W/kg)、2倍(3W/kg)、4倍(6W/kg)の3種類。ただ、人間の場合は電磁波を浴びるのは脳の一部だけだが、この実験ではラットは全身に浴びている。
 その結果、雄のラットで脳および心臓で、電磁波を浴びせたラットにだけ癌が増加した。脳に発生した癌は、神経膠腫で、ヒトに増えたものと同じだ。心臓で増えた癌は神経鞘腫で、ヒトの場合は脳に近い聴神経で増えている。

 (3)今回、人間と同種の癌が増えていることを重視したNTPが、全体の実験計画のその部分だけを先行発表した。この2種類以外の癌や、マウスを使った実験も実施していて、それらを含めた研究全体の結果は2017年末までに公表予定である、とのこと。

 (4)今回発表された結果に対しては、一部の研究者からは、「同じラットの過去の実験での癌の自然発生率は2%程度なので、今回の曝露群の発生率は特別高いとは言えない、雌では増加していない」と批判も出ている。
 同日に開催されたテレブリーフィングでも、研究結果の解釈について、「今回の動物実験での曝露は1日9時間で前身曝露だが、私は1日9時間も通話しないし、全身には浴びない。人間の携帯電話の使用実態に即して危険と言えるのか?」といった質問が出た。
 会見で回答したジョン・ブッカー・NTP副所長は、「今回の実験は、あくまで携帯電話から出る電磁波に発癌性があるかどうかを調べたもので、人間の使用状況との比較は今後の課題だ」としながらも、「ラットの前身の細胞が浴びた電磁波の強さは、ヒトの脳が浴びた強さに相当する。発生した癌が同じ種類であることが重要だ」と回答している。

 (5)携帯電話の電磁波の発癌性は、より一層、証拠が高まったといえる。
 不要な曝露は避けておいたほうが無難だ。

□「携帯電話の電磁波の発がん性に新証拠 ヒトと同種のがんがラットでも増加」(「週刊金曜日」2016年6月17日号)
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 「動物実験で発がん性確認か 携帯電話電磁波の影響研究」(日本海新聞 2016年6月30日)

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