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2010年1月29日開設
読書
大岡昇平+社会問題・社会保障

【佐藤優】二つのプロテスタンティズム ~『牙を研げ』~

2017年05月18日 | ●佐藤優
 (1)プロテスタンティズムは二つに分かれる。
  (a)啓蒙主義以前のプロテスタンティズム。
  (b)啓蒙主義以降の近代プロテスタンティズム。
 (a)は、16世紀から18世紀にかけての古プロテスタンティズム。プロテスタントを生み出した宗教改革運動は、カトリック教会があまりにも理論的に頭でっかちになって、組織が大きくなり過ぎて、腐敗がひどいから、イエス・キリストに戻れと主張した。復古維新運動といえる。乱暴にいえば反動運動だ。難しいことはよくわからないという人たちの運動で、とにかくイエス・キリストの時代に帰れ、というものだ。こういう運動はかつてもあった。〈例〉中世後期のワルドー派。

 (2)中世のカトリック教会では、教会の高位聖職者が「あなたは父なる神を信じますか」という質問をする。キリスト教徒だったら、「はい」と答える。「子なる神を信じますか」、これにも「はい」だ。「聖霊なる神を信じますか」、当然「はい」。
 では、「キリストの母を信じますか」。
 これで「はい」と言ったら火あぶりだ。
 5世紀に、マリアはキリストの母なのか、神の母なのかをめぐる大論争があった。結局、神の母とするテオトコスという立場が正統とされて、キリストの母だというクリストトコスというのは永遠の異端に定められているからだ。

 (3)中世のカトリックは、そういう議論ばかりしていた。だから、それが救済と何の関係があるんだ、と多くのキリスト教徒が頭にきた。
 それから、みんなラテン語がわからない。何でわからない言葉でミサをやっているんだ、しかも、パンだけくれて、ワインを飲ませてくれない。キリストの血を床にこぼしたら失礼だろう、と言って、自分たちだけがガバガバ飲んでいる。それはおかしい、と言ったのが15世紀のボヘミヤのヤン・フスだ。説教は簿へ見たの人々の日常語であるチェコ語でやりましょう、ワインも信者に配りましょう、とやったら大論争になって、フスは火あぶりにされてしまった。

□佐藤優『牙を研げ 会社を生き抜くための教養』(講談社現代新書、2017)の第2章の「⑮二つのプロテスタンティズム」
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【佐藤優】『牙を研げ 会社を生き抜くための教養』 ~各章の小見出し~
【佐藤優】『牙を研げ』 ~まえがき~
【佐藤優】『牙を研げ 会社を生き抜くための教養』 ~目次~

 

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