語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【原発】放射能と東京オリンピック招致

2013年04月13日 | 震災・原発事故
 (1)招致計画では、東京湾臨海部のお台場海浜公園で、トライアスロン、マラソンおよび水泳が予定されている。海の森水上競技場で、カヌー(スプリント)、ボートが予定されている。

 (2)山崎秀夫・近畿大学教授(環境解析学)は、2011年から12年にかけて、東京湾の26地点で,、海底土のセシウムを測定した。その結果、江戸川や荒川の河口に高濃度の「ホットスポット」が存在することがわかった。
 競技中に、汚染された底泥や海水を飲んでしまった場合の内部被曝は、人体への影響がよく分かっていない。実際に内部被曝を受けているかを評価するのも難しい。
 福島第一原発事故後の2011年3月21、22日に首都圏に降り注いだセシウムなどの放射性物質が江戸川や荒川などから東京湾に流入して海底にどの程度たまるのか、文部科学省のデータをもとにシミュレーションを行ったところ、江戸川・荒川河口でセシウムは平均300Bq/kg、局所的には4,000Bq/kg以上の高濃度になることが予測された。この予測は、実際の観察とおおむね一致する。なお、今後3年間の放射性物質は増加し続ける。【山崎庸亮・京都大学防災研究所准教授】 
 山崎准教授の調査では、ヨットが予定されている荒川河口の若洲海浜公園沖では、552Bq/kgだった。
 ヨット競技では、沈没がよく起き、マストが海底の泥を巻き上げ、セールにも泥が付くことがよくある。その底泥中のセシウム濃度が高ければ、全く安全、とは言えない。【山崎准教授】
 海底の泥の放射性物質の安全基準はない。ガレキやゴミの焼却灰の基準を準用すると、事故前の放射性物質として扱う必要がないクリアランスレベルは100あるいは1,000Bq/kg以下だったので、1,000Bq/kgを超えている東京湾の底泥は「立派な」低レベル放射性廃棄物に相当する。【山崎准教授】

 (3)臨海部の陸域の放射能濃度はどうか【注】。
 東京都内のモニタリングポストはわずか8ヵ所で、オリンピック会場に近いのは江東区青海しか含まれていない。【福田至・東京都スポーツ振興局施設計画担当部長】
 都は、福島原発事故後の2011年6月に都内100ヵ所で測定したが、その時もオリンピック開催予定地に近いモニタリングポストは有明2丁目だけだった。その値は、地上1mで0.09μSv/時だった。これらの数値は、IOCに提出した立候補ファイルには記載されていない。
 「臨界都民連」は、昨年7月、オリンピック会場予定地の放射線量を測定した。地上1mで最高だったのが、水泳、シンクロなどが行われる辰巳の森海浜公園の0.146μSv/時だった。

 (4)(3)の数値をどう評価すべきか。
 東京の場合、もともとの空間線量は0.04~0.07μSv/時だったと考えられ、増加分はセシウムなどの人工放射性核種による汚染と言えるのではないか。【山崎准教授】
 このまま事態が平穏に推移すれば、選手や観客の健康上のダメージは実証不可能なレベルに止まるだろう。しかし、さらなる原発トラブルや、被害が予想される地震が、2020年までえ全く起きない保証はない。特に、外国人は放射線被曝に日本人より敏感な人が多い。地震などは1回も体験していない外国人は稀れではない。これらのパニック要因を軽視し、誘致に狂奔するのは正気の沙汰ではない。危険は危険として立候補ファイルにも載せ、きちんと発信することは招致国としての当然の責任だ。【坂巻幸雄・元通産相工業技術院地質調査所主任研究員】

 (5)なお、都は、2003年度から3年間、お台場海浜公園で、シルトフェンスで仕切った海域に海水浄化プラントで浄化した海水を流し、水質改善の実験をした。一定の効果はあったが、それでも降雨時には糞便性大腸菌が急増し、環境省の海水浴場の基準に適合しなかった。東京湾の筋室に詳しい研究者は、合流式下水道の越流水対策でひどい汚染はなくなったが、今も降雨の時は安心して水遊びができる状況ではない、という。
 2020年のオリンピックとパラリンピックは、7月下旬から9月上旬に開かれる予定だ。1964年の東京大会は10月開催だった。
 放射能と大腸菌の海で泳がせ、酷暑の中で競技をさせる。それが、猪瀬直樹・知事のいわゆる「選手本位」の現実だ。 

 【注】
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□永尾俊彦(ルポライター)「ルポ 問題だらけの東京オリンピック招致」(「世界」2013年5月号)
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