語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
読書
大岡昇平+社会問題・社会保障

【佐藤優】紅白歌合戦の、カオスからコスモスへ ~『牙を研げ』~

2017年05月15日 | ●佐藤優
 (1)日本の論理であるところの神道は、たしかに言語化するのを嫌う。そのためにひじょうに見えにくい。我らに埋め込まれた宗教というべきものは、わかりやすいところでいうと、〈例〉七五三。宮参りは習慣になっているが、そもそもは汚れているものがあるから祓ってもらう。それによって健康を維持するということだ。

 (2)キリスト教の罪は祓うことができない。
 本物の入れ墨と、プリントしたものを貼りつけただけの入れ墨は、いまの技術をもってすれば、表面上見ただけではあまり違いがない。ただ、本物の入れ墨は、レーザーで落とすのはとてもたいへんだ。キリスト教における罪は、レーザーを使っても落ちない入れ墨のようなものだ。理不尽なことを強いる、論理を超えた、自己責任を超えた責任を負わせるのがキリスト教だ。キリスト教は、絶対に誰も守ることができない倫理を強要して、全員を罪人に陥れていくという傾向がある。

 (3)神道は、そういう理不尽なことはしない。基本的には、みそぎや祓いによって人間の汚れはきれいになるわけだ。
 それがよくあらわれているのが「紅白歌合戦」だ。「紅白歌合戦」自体は、「あの内容でなぜあれだけ視聴率がとれるのか」という意味で、お化け番組だ。習慣だ云々というが、じつはその鍵は、番組が終わる23時45分にある。
 「紅白歌合戦」のポイントは、人為的にカオスをつくり出しているところにある。大昔、とてつもなくフレームのでかい眼鏡をかけたアナウンサーが応援団とかいって視聴者がドン引きするほど騒ぎ立てる。そうしておいて、「蛍の光」を歌って、23時45分になると、画面が切り替わって「滋賀県三井寺です」などというナレーションがあって、鐘の音が鳴る。
 まさにカオスからコスモスを作り出しているわけだ。わざと騒ぎ立てて、その後静かな秩序をつくることによって、創造を繰り返す。
 お正月になると私たちは新しくなる。昔は、大みそかを越えたら借金を返さなくてよかった。だから、大みそかは必死になって借金を取り立てに行った。そういったことを含めて、新しくなるという感覚がある。

 (4)ロシアやヨーロッパや米国も、新年の祝いはするけれども、新しくなったという感覚はない。年をまた一つ越えた。
 日本はこの空気を利用して、学習計画は必ず1月、あるいは新年度の4月に立てる。そういう節目があるというのが、実はその民族集団が持っている宗教性と関わっている。

□佐藤優『牙を研げ 会社を生き抜くための教養』(講談社現代新書、2017)の第2章の「④カオスからコスモスへ--紅白歌合戦」
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 【参考】
【佐藤優】武士政権成立前後のグローバリゼーションと反グローバリゼーション  ~『牙を研げ』~
【佐藤優】プロテスタンティズムという思考の鋳型  ~『牙を研げ』~
【佐藤優】日本兵は捕虜になるとよくしゃべる理由、米軍の日本研究  ~『牙を研げ』~
【佐藤優】ソ連軍の懲罰部隊が強かった理由、日本軍の「生きて虜囚の辱めを受けず」  ~『牙を研げ』~
【佐藤優】『牙を研げ 会社を生き抜くための教養』 ~各章の小見出し~
【佐藤優】『牙を研げ』 ~まえがき~
【佐藤優】『牙を研げ 会社を生き抜くための教養』 ~目次~

 
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