冬がすべてをのみこんだ
死者に痛みはないとロシヤの作家はいった
庭の枯れたブナの木はどんな色をして
匂わないで乾いたか
わたしは知らなかった
霜と北風がかこんでいる
大過去はストーヴへしずみこむ
呼びかえす声は
冬の飾りに凍結しようとしている
トナカイは姿を消す
夢のなかで夢は凍りかたまった
わたしは獣のように爪でひっ掻く
戸の内側も外側もひっ掻く
吠えろ吠えろ 戸をこわせ!
ヒズメの激しい音はなりやまない
閉ざされている部屋で薪はもえる
オオカミのないている間に
たき火は一握の灰になり
わたしの髪の毛も灰色になり
たちまち夢に封じこめられてしまう
スンガリーが動かなくなる
大地が凍りはじける
まつ毛はかたまり日は傾いてみえる
小さな死体が凍る
恐ろしいマローズの到来だ!
□財部鳥子「凍りついて」(『腐蝕と凍結』、地球社、1968)
↓クリック、プリーズ。↓
【参考】
「【詩歌】財部鳥子「いつも見る死 --避難民として死んだ小さい妹に」」
死者に痛みはないとロシヤの作家はいった
庭の枯れたブナの木はどんな色をして
匂わないで乾いたか
わたしは知らなかった
霜と北風がかこんでいる
大過去はストーヴへしずみこむ
呼びかえす声は
冬の飾りに凍結しようとしている
トナカイは姿を消す
夢のなかで夢は凍りかたまった
わたしは獣のように爪でひっ掻く
戸の内側も外側もひっ掻く
吠えろ吠えろ 戸をこわせ!
ヒズメの激しい音はなりやまない
閉ざされている部屋で薪はもえる
オオカミのないている間に
たき火は一握の灰になり
わたしの髪の毛も灰色になり
たちまち夢に封じこめられてしまう
スンガリーが動かなくなる
大地が凍りはじける
まつ毛はかたまり日は傾いてみえる
小さな死体が凍る
恐ろしいマローズの到来だ!
□財部鳥子「凍りついて」(『腐蝕と凍結』、地球社、1968)
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【参考】
「【詩歌】財部鳥子「いつも見る死 --避難民として死んだ小さい妹に」」