語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【本】滋味あふれる知恵の書 ~『眠られぬ夜のために』~

2018年02月05日 | 批評・思想
 日記の体裁をとった断章の集成。全編滋味があふれ、知恵の書と呼ぶべきか。
 例えば、今日、2月5日。

 <こころみに、しばらく〈批判すること〉をすっかりやめてみなさい。そして、いたるところでの力のかぎり、すべて善きものをはげまし、かつ支持するようにし、卑俗なものや悪いものを下らぬものかつほろび去るものとして無視しなさい。そうすれば、前よりも満足な生活に入ることができよう。実にしばしば、まさに〈この点に〉一切がかかっているのである。>

 【注】〈〉内は本書では傍点。

□ヒルティ(草間平作、大和邦太郎・訳)『眠られぬ夜のために 第1部』(岩波文庫、1973改訳第1刷)
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 【参考】
【本】モンゴルのユーラシア制覇 ~『モンゴルvs.西欧vs.イスラム 13世紀の世界大戦』~
【本】歴史はどう繰り返すのか ~『歴史からの発想』~
【本】社会変革のヒントを得る ~『フィンランド 豊かさのメソッド』~
【本】時流に流されないために ~『誰か「戦前」を知らないか 夏彦迷惑問答』~
【本】戦争の矛盾がよく理解できる/存在自体が珍しい軍事技術書 ~『兵士を救え! (珍)軍事研究』~
【本】北朝鮮核危機を描く労作 ~『ザ・ペニンシュラ・クエスチョン』~
【本】スウェーデンの高福祉で高競争力、両立の秘密 ~『政治経済の生態学』~
【本】ネット時代のテロリズムはどこから生まれてくるのか ~『グローバル・ジハードのパラダイム: パリを
【本】1920年代の経済報道に学ぶ ~『経済失政はなぜ繰り返すのか メディアが伝えた昭和恐慌』~
【本】朝日新聞・書評委員が選ぶ「今年の3点」(抄)
【本】著者の知的誠実さに打たれる日韓問題を深く理解できる書 ~『「地政心理」で語る半島と列島』~
【本】人の判断はなぜ歪むのか/2人の研究者の友情物語 ~『かくて行動経済学は生まれり』~ 
【本】エネルギーの本質を学ぶ ~『エネルギーを選びなおす』~
【本】JR九州の勢いの秘密を凝縮 ~読んで元気が出る人間の物語~
【本】日本は英国の経験に学べ ~『イギリス近代史講義』~
【本】噴火の時待つ巨額損失のマグマ ~『異次元緩
【本】“立憲主義”の由来を知る ~『立憲非立憲』~
【本】日本語特殊論に与せず ~『英語にも主語はなかった』~
【本】小国の視点で歴史を学ぶ ~『石油に浮かぶ国/クウェートの歴史と現実』~
【本】日本における婚姻を考える ~『婚姻の話』~
【本】元財務官僚のエコノミストが日本経済復活の処方箋を説く ~『日本を救う最強の経済論』~
【本】歴史を知らずに大人になる不幸 ~『戦争の大問題 それでも戦争を選ぶのか。』~
【本】私たちの食卓はどうなるのか ~工業化された食糧生産の脆さ~
【本】歪み増殖していく物語に迷う ~『森へ行きましょう』~
【本】加工食品はどこから来たのか ~軍隊と科学の密な関係~
【本】80年代中世ブームの傑作 ~『一揆』~
【本】万華鏡のように迫る名著 ~『新装版 資本主義・社会主義・民主主義』~
『【本】『世界をまどわせた地図』
【本】率直過ぎる米情報将校の直言 ~『戦場 -元国家安全保障担当補佐官による告発』~
【佐藤優】宗教改革の物語 ~近代、民族、国家の起源~」」
【本】舌鋒鋭く世の中の本質に迫る/地球規模で読まれた洞察の書 ~『反脆弱性』~
【本】【神戸】「自己満足」による過剰開発のツケ ~『神戸百年の大計と未来』~
【本】英国は“対岸の火事”にあらず ~新自由主義による悲惨な末路~
【本】人材開発でもPDCAを回す ~戦略的に人事を考える必読書~
【本】仮想通貨が通用する理屈 ~『経済ってそういうことだったのか会議』~
【本】進化認知学の世界への招待 ~『動物の賢さがわかるほど人間は賢いのか』『動物になって生きてみた』~
【本】「戦争がつくっった現代の食卓」 ~ネイティック研究所~
【本】IT革命、コミュニケーションの変容、家族の繋がりが希薄化 ~『「サル化」する人間社会』~
【本】生命はいかに「調節」されるかを豊富な事例で解き明かす ~『セレンゲティ・ルール』~
【本】メディアの問題点をえぐる ~『勝負の分かれ目 メディアの生き残りに賭けた男たちの物語』~
【本】テイラー・J・マッツェオ『歴史の証人 ホテル・リッツ』
【本】中国から見た邪馬台国とは
【本】核兵器は世界を平和にするか ~著名学者2人がガチンコ対決~
【本】『戦争がつくった現代の食卓 軍と加工食品の知られざる関係』
【本】梅原猛『梅原猛の授業 仏教』
【本】東芝が危機に陥った原因は「サラリーマン全体主義」 ~『東芝 原子力敗戦』~
【本】バブル崩壊後の経済を総括 ~『日本の「失われた20年」』~
【本】20世紀英国は実は軍事色が濃厚 ~通念を覆す『戦争国家イギリス』
【本】時代による変化、方言など ~『オノマトペの謎 ピカチュウからモフモフまで』~
【本】冷笑的な気分に喝を入れる警告と啓発に満ちた本 ~『日本中枢の狂謀』~
【本】物質至上主義批判の古典 ~『スモール イズ ビューティフル』~
【本】日本近現代史を学び直す ~『それでも、日本人は「戦争」を選んだ』~
【本】精神の自由掲げた9人の輝き ~『暗い時代の人々』~
【本】遊牧民は「野蛮」ではなかった ~俗説を覆すユーラシアの通史~
【本】いつも同じ、ブレないのだ ~『ブラタモリ』(1~8)~
【本】分裂する米国を論じた労作 ~『階級 「断絶」社会 アメリカ』~
【本】否応なきグローバル化、つながることの有用性 ~「接続性」の地政学~
【本】読書の効用、ゆっくり丹念な ~より速く成果を出すメソッド~
【本】国谷裕子『キャスターという仕事』

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【佐藤優】最後まで残る人間とは ~『武器を磨け』~

2018年02月05日 | ●佐藤優
 <ナチスの強制収容所、アウシュヴィッツでの体験をもとに描かれたヴィクトール・フランクルの『夜と霧』(みすず書房)という作品がある。
 日本でもロングセラーとなって多くの人に読まれているが、単に極限状況の中で人間がどう生きられるかということを示した記録としてだけでなく、どういった資質の人間が過酷な現実を生き抜けたのかという視点でも非常に参考になる。
 私が感じたのはユーモア、情感、センチメンタリズム(感傷的傾向)の三つを持っている人間が極限を生き抜けたのではないか、ということだった。『夜と霧』の中で、明日はガス室に送られるかもしれないという人間同士が、それでも1日に何か一つでもジョークを言って人を笑わせようとする。強制労働中によそ見をするなとぶっ叩かれながら、ふと目にした夕日の美しさに心を動かされる。どこからか聞こえてきた懐かしいメロディに、ここがアウシュヴィッツということを忘れて聴き入るといったような人が結果的に生き抜いているのである。
 こういった人たちは、おそらくどんなに現実が苛酷であっても「何かを感じようとする自分の心」を持ち続けたのだろう。
 極限状態に置かれて自分の厳しい現実しか目に入らない、感じられないようになってしまうと人間はそこから動けなくなってしまう。端的にいえば絶望してしまうわけである。
 そうはいっても現実からは逃げられないではないか、と現代人は考える。だがそこで大事なのは、自分以外のものに目を向けることだ。天を仰ぎ見るのでもいいし、鳥の声に耳を澄ますのでもいい。
 そうすると、何かを感じられることがある。神の啓示や天啓といった言葉があるが、まさに理屈ではなく自分にとって大事なものが「降ってくる」のである。自分にとって大事なものがつかめた人間は自然に力が湧いてくる。
 何にでも論理的な説明を求め、自分は何でも知っていると思っている現代人は、それができない人が多い。そのために、過酷な現実の前に折れてしまってそこで動けなくなるのである。>

□佐藤優/原泰久・原作『武器を磨け 弱者の戦略教科書『キングダム』 』(SB新書、2018)の「第5章 図太く生きる」の「土壇場でこそ「心の声」を聴け」の「最後まで残る人間とは」を引用
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 【参考】
【佐藤優】SNSの価値観を疑え ~『武器を磨け』~
【佐藤優】自分の権限を確認せよ ~『武器を磨け』~
【佐藤優】XYではなくXYZで考える ~『武器を磨け』~
【佐藤優】高めるべき『非認知能力』とは ~『武器を磨け』~
【佐藤優】権力は金で買える ~『武器を磨け』~
【佐藤優】総合力=知恵×力の二乗 ~『武器を磨け』~
【佐藤優】「終わりの絵」を描く ~『武器を磨け』~
【佐藤優】生き抜くための目的思考 ~『武器を磨け』~
【佐藤優】中期展望を描いた者が生き残る ~『武器を磨け』~

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