語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【古賀茂明】「リーマン級」という虚構 ~経産官僚が支配する官邸~

2016年06月07日 | 社会
 (1)消費増税延期・・・・その舞台裏から、安倍晋三・政権の究極の暴走メカニズムが見えてくる。
 アベノミクスの効果がいっこうに現れず、経済の主役である消費が停滞するという状況下だから、消費増税が無理なのは誰でもわかる。
 しかし、安倍政権にとって、物事はそう簡単ではない。
 2014年11月に消費増税の延期を発表した際に、安倍総理は、
   増税の「再延期はない!」
と断言した。しかも、アベノミクスで増税でえきる環境を作ると宣言した。今、単純に増税延期と決めると、
   「嘘つき」
と言われ、
   「アベノミクスは失敗だった」
という烙印を押されてしまう。
 失敗した時は謝って過ちを正すのが世の常識だが、永田町や霞が関における常識は、
   「他人のせいにする」
ことだ。

 (2)そこで、「アベノミクスは成功しているが、世界経済は危機にある。この危機打開のために増税延期によって世界景気浮上に協力する」という理屈が考案された。
 主導したのは、経済産業省から来ている今井尚哉・総理秘書官と経産官僚たちだ。
 もともと、安倍総理たちは、こういう時のために「リーマン・ショックや東日本大震災なみの危機」が起きたら延期するという発言をすることで、逃げ道を用意していたので、「リーマン級の危機」がキーワードになった。
 しかし、実際には、世界経済は、中国バブルの後始末や資源に頼る新興国経済の停滞などの不安はあるものの、「リーマン級の危機」と言うには無理がある。

 (3)それでも経済官僚たちは、サミットで「リーマン級の危機」を各国首脳に訴えるための資料を作成し、安倍総理にそれを説明させてしまった。
 首脳宣言では、安倍総理のメンツのために、「新たな危機に陥ることを回避する」という文言が入ったが、「リーマン」の言葉はおろか、「現状が危機だ」ということさえ否定された。
 それでも、厚顔無恥、いや「無知」の安倍総理は、「リーマン・ショック」という単語を連呼し、世界経済危機を何とか国内にアピールしようとした。
 むろん、各国メディアはこの顛末を強烈に批判し、安倍総理の思惑は完全にはずれた。

 (4)なぜ、こんなお粗末なことが起きたのか。
 それは、官邸が経産官僚に支配されているからだ。
 意外かもしれないが、経産官僚の経済に関する見識は極めて低い。「経済音痴」だが、威勢のよさだけで生きているというのが実態だ。
 さらに驚くかもしれないが、これだけの失態を演じても、彼らは意に介さない。厚顔無恥ぶりでは、財務官僚と並ぶ双璧、いや、それ以上だろう。

 (5)今回の騒動で見えてきたのは、官邸が完全に経産省に支配され、内閣府や財務省は完全に「蚊帳の外」状態だということだ。
 加えて、もともと不勉強な上に、安倍政権に完全に押さえ込まれているマスコミも、形ばかりに批判が精一杯だ。
 その結果、経産官僚がその途方もない無知により決定的な間違いを犯し、驚くほど傲慢であるため、それが正されなくてもそのまま放置されてしまう。
   「安倍政権、無知と傲慢の暴走」
 これこそ、今の政治状況をもっとも端的に表すフレーズではないか。

□古賀茂明「「リーマン級」という虚構 ~官々愕々第202回~」(「週刊現代」2016年6月18日号)
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【佐高信】自民党と創価学会、水と油の野合

2016年06月07日 | 社会
 (1)『自民党と創価学会』を刊行した。この水と油の野合を暴こうとした契機は、1994年に自民党の機関紙「自由新報」に20回にわたって激しい公明党=創価学会批判が掲載されたのを知ったことだ。
 それからわずか5年後、自民党と公明党は連立政権を組んだ。野合といえば、これ以上の野合はあるまい。
 これについて、小沢一郎と共に自民党をとびだして、当時、民主党の幹事長となった羽田孜がこう語っている。
 <自民党は、かつて反創価学会を標榜する内藤国夫ら評論家や学者を集め、「四月会」を結成し、創価学会を徹底的に攻撃した。それにもかかわらず公明党と手を組もうとする。だれも自民党を信頼しなくなるのではないだろうか。われわれは、基本的に宗教の自由を認めている。わたしの妻は、クリスチャンだ。が、公明党の議員の選挙の応援にも行っている。しかし、自民党の場合そうではない。あれだけ攻撃し、池田(大作)名誉会長の証人喚問まで要求した。それなのに手を組むなら、公明党の支持者もついていけないのではないか>
 羽田のいうとおりだ。しかし、「だれも自民党を信頼しなく」はならず、「公明党の支持者もついていけな」くなっていない。
 それぞれのトップがいい加減な人間だからだろうか。
 それとも、自民党の支持者や創価学会の信者が自分で判断しないからか。

 (2)1994年11月1日、安倍晋三も学会批判の「四月会」に出た。新人代議士で、おっかびっくりだったが、安倍はこう回想している。
 <ごく内輪の自民党内での会合が開かれた次の日、私の選挙区の公明党の大幹部から電話が入り、「安倍クン、君は創価学会を誹謗中傷する会に出席したそうじゃないか。君の姿勢を変えてもらいたい。慎重に行動してくれ」と。
 その場で私は、これはあまりに危険な団体だ、と思いました。創価学会を除外しようというのではありません。あくまで政治的野望を捨てていただきたいのです>

 (3)しかし、安倍はその「危険な団体のドンの池田」と10年後に極秘会談をすることになる。2006年9月22日に小泉純一郎内閣の官房投函で、首相就任直前の安倍が池田と会った、と全国紙が一斉に報じたのだ。
 国会でそのことを訊かれた安倍は、一応それを否定した。

 (4)自民党と創価学会という水と油は、決して理念におって結びついたのではない。利害によって結びついた。もっとストレートに言えば、学会と公明党は、自民党にスキャンダルを握られて、平和や福祉といった理念を捨て、自ら自民党にすり寄ったのだ。
 日蓮宗の本山、大石寺のある静岡県富士宮市は、山口組きっての武闘派といわれた後藤組の縄張りだった。その後、大石寺と学会はもめて訣別するが、そんなつながりで後藤組が学会のボディーガードとなった。
 しかし、両者の間に食い違いが生じて、後藤組が学会を攻撃し始めた。それを止めるべく、公明党の都議会のボス、藤井富雄が後藤忠政と会った。それをビデオに撮られ、その「密会ビデオ」の存在が、当時野党だった自民党の野中公務らの知るところとなったのだ。
 そのビデオでは、藤井が反学会活動をしている亀井静香ら4人の名を挙げ、「この人たちはためにならない」と、受け取りようによっては後藤に4人への襲撃を依頼したという意味にもとれることを言っている。それで、学会は自民党に全面降伏となったわけだ。

□佐高信「自民党と創価学会、水と油の野合 ~新・政経外科 第71回~」(「週刊金曜日」2016年5月20日号)
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