Takekida's log

千里の道も一歩から

宗教オンチ日本人のための入門

2016-06-13 00:12:52 | Books
世界がわかる宗教社会学入門 (ちくま文庫)
クリエーター情報なし
筑摩書房


 多くの日本人にとって宗教というのは盆、正月、クリスマスとイベントでしかお目にかからないものでそれ以外の場所に出てくると胡散臭く感じるというのが正直なところだと思います。自分もその例外ではなく、少し特別なものだと思ってしまうのが事実です。ただ、なんとなく感じているように世界を考えれば生活の規範が宗教という人の方が多いのだと思います。であるからこそ宗教を知ることは社会構造を知ることなのだと思います。この本は宗教の基本的な知識を解説したものですが大学の一般教養での授業をベースに構成されているので非常にわかりやすいです。まず背景を知らないという点で日本人は不利なのかと思いますがその分は勉強するしかないのでしょう。

 
ユダヤ教、キリスト教、イスラム教は発生した順番こそ違いものの同じ神の解釈の違い。
仏教はある程度は根付いていますが世界の仏教の中で日本のものは異質です。特に死んでからの極楽浄土の考え方はそもそもの仏教にはなかったものでした。死んだら天国の日本人の宗教観というのは仏教と並んで日本人のベースにある神さまに関する日本伝統というのがありそうです。他の1神教の神様は生きており、永遠に生き続けているのですが日本の神様というのは日本人の先祖であり、日本人と日本を創った後、死んでいるという解釈なのです。

武士が学んだ儒教も思想だけ取り入れて制度は採り入れませんでした。
またキリスト教に関しても強く否定し、その後宗教の自由が与えられても大きく信者が増えるということはありませんでした。これはお隣の韓国と比較すると好対照。
なぜ日本ではここまで宗教を介在しない社会構造となっていったのかというのが大きなポイントでこの本は世界の宗教について学びながらそのヒントを考えさせてくれます。

ここまで日本人が宗教音痴になってしまった要因は江戸幕府、明治政府と続いた政策が大きいようです。布教活動を禁止して檀家制度が取り入れられたのはこのころで葬式というイベントと宗教が結び付けられました。また明治政府では神道が絶対的なものと推奨されたので生活に入り込む余地がなかったわけです。

 宗教が経済に与える影響に関してマックス・ヴェーバーが研究していますがユダヤ、イスラムという宗教では利子を取るような活動は禁止さえており、酒興的に禁欲というのがある以上なかなか経済活動を正当化するのは難しいようです。ただキリスト教ではプロテスタンティズムによって労働の成果が神のものという思想が現れそれによって資本主義が発生したという見解があります。宗教オンチな日本で資本主義が台頭できたのはこういった宗教での明確な縛りがなかったということもあるのでしょうし、山本七平らの解釈した「日本教」というようなベースがあったからというのもあるのかもしれません。いずれにせよ日本という国は他国の影響を受けながらも良きも悪きも宗教と一歩距離を置いた独自の社会構造が出来ているというのが面白いところだと思います。

 そういった意味で幸せなのかというとどっちもどっちなのかなあとは思いますが客観的に見てどうなのかというのは世界の人と渡り合ううえで知っておいて損は無いと思います。
Comment    この記事についてブログを書く
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« トヨダ製自動車 | TOP | KITTE nagoya »
最新の画像もっと見る

post a comment

Recent Entries | Books