学芸員のちょっと?した日記

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群馬県立館林美術館「清宮質文と版画の魅力」展

2017-02-13 22:37:04 | 展覧会感想
府中市美術館のガラス絵展で、清宮質文(1917~1991)の作品を観ましたが、ちょうど群馬県立館林美術館で清宮の展覧会を開催していることを知ったので早速行ってみました。

清宮は木版画の作家です。大正生まれの清宮が木版画を始めたのは、昭和20年代後半と云われています。この頃の版画を概観して観るに、1951年(昭和26)第1回サンパウロ・ビエンナーレで駒井哲郎と斎藤清が日本人賞、翌年の第2回ルガノ国際版画ビエンナーレで棟方志功と駒井哲郎が優秀賞を受賞するなど、日本の版画が海外に高い評価を受け始めた時期にあたります。特に木版画は作品の大型化が進み、インパクトの強い作品が増えつつあったようです。そうした時代に木版画を始めたのなら、世の潮流に乗りそうなものなのですが、清宮はひたすら我が道を歩みました。(日本版画協会にも日本板画院にも入っていなかったようで、春陽会も途中で辞めて作家としては無所属で作品を発表していたようです)

展示室に入って壁面を眺めると、清宮の作品がずらりと並びますが、作品はいずれも小ぶり(あくまでイメージとしては印刷用紙でいえばA4ほど)で色彩も暗色の印象が強し。けれど、作品の前に立って向き合うと、小さな窓を通して広い景色を観るかのような奥の深さを感じます。清宮はムンクやルドンの影響を受けたようですが、戦前にムンクの影響を受けた永瀬義郎が雑誌『假面』でみせた絶望感や不安感(絶望感風といったら良いのかな)といった要素はほとんどありません。というのは、テーマ自体はそうしたものであったとしても、蝋燭の優しくて淡い光や貝殻のような羽をもつ蝶々のモチーフが希望の象徴のように描かれていて、観る人を苦しくさせないのです。どんな人生にでも希望はある、と云ったところでしょうか。

会場の後半には作品の版木も展示されていました。意外と彫りが浅いな、と思って観ていると、気になっていた作品の版木も展示してあることに気づきました。その作品名は《幼きもの》。子供の顔を描いた作品なのですが、最初に観たときに線の調子が銅版画風だなあと感じたのです。実際に版木を観ると、子供の顔の線が不規則な線で彫られている(というより引っかかれている)のでした。どうもガラスの破片のようなもので傷をつけていったような感じ。銅版画風の作品にしたのは、友人の駒井哲郎との関係があってなのかな、と考えてみました。

展覧会では、このほかに清宮のガラス絵、水彩、手帳なども展示されているほか、清宮が影響を受けたとされるルドンやムンクの作品も観ることができます。とても見ごたえのある展覧会ですので、ぜひ興味のある方はご覧になって観てはいかがでしょうか。

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