堅持し通す

不思議なのは、どこからか、一秒から、私は全身の痛みが突然消え。

音が聞こえ

2017-06-19 11:00:51 | cellmax科妍美肌再生中心好唔好

した、わたしの父祖たちの真の代理人であると記した。わたしのもどってくることは宿命であり、もっとも深秘《じんぴ》な秘儀はこれからおこなわれるのだとも記した。老人はこういったことをきわめて古風な書体で記し、わたしがなおもためらっていると、ゆったりした外套から印形つきの指輪と懐中時計をとりだした。いずれにもわが一族の紋章があり、老人が記した言葉を証するものだった。しかしそれは実に恐ろしい証拠だった。わたしは古文書を読み、その懐中時計が一六九八年に、六代まえの先祖の亡骸《なきがら》とともに埋められたことを知っていた。
 やがて老人は頭巾をおろし、その顔に一族の特徴があることを示したが、わたしはその顔が呪わしい蝋面にすぎないと確信していたため、ただもう震えあがるばかりだった。翼をはためかせている生物は、いまではおちつかなげに地衣類をひっかいており、老人も同じくらいそわそわしているのがわかった。一匹がよたよた歩いてその場から離れはじめたとき、老人はとめようとしてあわててふりかえった。その突然の動きによって、頭部のあるべきところから蝋面がはずれた。そのせつな、くだりおりた石の階段が悪夢の闇につつまれて見えないため、大洋の裂溝のどこかにむかい泡だちながら流れる、どろっとした地底の大河へと、わたしは身を投じた。わたしの狂おしい絶叫がこの疫《えや》んだ深淵に潜んでいるやもしれぬ魑魅《ちみ》魍魎《もうりょう》を呼び寄せてしまうまえに、地底の恐怖にみちた腐汁のなかへ、身を投じたのだった。
 病院での話によると、わたしは夜明けのキングスポート港で、偶然流れていた船の円材にしがみつき、凍死寸前になっているところを発見されたという。昨夜、丘の上をまちがった方向に進み、オレンジ・ポイントの崖から転落したのだろうといわれた。雪の上に残る足跡からそう判断したそうだ。すべてがちがっているのでわたしには何もいえなかった。何もかもが妙だった。広びろとした窓から屋並が見えたが、古めかしい家は五軒に一軒の割合でしかなく、眼下の通りを走る路面電車や車のてもいた。ここがキングスポートなのだといわれると、わたしには否定することなどできなかった。その病院がセントラル・ヒルの古い教会墓地の近くにあると聞かされて、狂乱状態におちいったわたしは、手厚い看護のうけられるアーカムの聖マリア病院に移された。わたしはこの病院が気にいった。医者たちは寛大で、ミスカトニック大学の付属図書館から、入念に保存されるアルハザードの不埒《ふらち》な『ネクロノミコン』を借りだす際には、大学側に圧力をかけることさえしてくれた。医師たちは〝極度の精神不安〟についてあれこれ話してくれ、心を悩ます妄念は何であれふりはらったほうがいいと、口をそろえていってくれたのだった。
 そしてわたしはあの慄然《りつぜん》たる章を読み、わなわなと身を震わせた。いまやわたしにとってははじめて知ることではないため、その恐ろしさはひとしおだった。わたしはこの目で見たのだ。足跡を調べてみればいい。そしてわたしがそれを目にした場所は、忘れ去るのが最善である場所なのだ。目を覚ましているときに、その記憶を呼びもどすことのできる者など誰もいないが、とても引用する気にはなれない章句のため、わたしの夢は恐怖にみちみちている。思いきってその一節だけを、堅苦しい低ラテン語からわたしにできるかぎりの翻訳をおこない、ここに引用しておこう。狂えるアラブ人はこう記している。
 
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最下《いやした》の洞窟、その驚異こそ奇怪にして恐るべきものなれば、窺《うかが》い見ることを得ず。死せる思念新たに活命し、面妖にも肉をまといし地こそ呪われたり、頭備えぬ魂こそ邪悪なり。賢《さか》しくもイブン・スカカバオ言いけらく、妖術師の横たわらぬ墳墓は幸いなるかな、妖術師なべて屍灰と化せし夜の邑《まち》は幸いなるかな。何となれば古譚《こたん》に曰《いわ》く、悪魔と結びし者の魂、納骨堂の亡骸より急ぐことをせず、遺体をむしばむ蛆《うじ》を太らせ指図すればなり。さるほどに腐敗の内より恐るべき生命うまれ、腐肉をあさる愚鈍なるものども賢しくなりて大地を悩まし、ばけものじみた大きさになりて大地を苦しめん。細孔あるのみにて足るべき大地に、大いなる穴ひそかに穿《うが》たれ、這《は》うべきものども立ちて歩くを学びとりたり。

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