一法学生の記録

2014年4月に慶應大学通信部に進んだ法学生の記録である
(更新)2017年4月に神戸大学法科大学院へ進学しました。

地役権

2016-09-15 18:10:39 | 物権法
地役権

 地上権に並んで用益物権の代表格と言えようか意外に身近な地役権である。〔280〕地役権とは、一定の目的に従って、自己の土地の便益のため他人の土地を利用することを内容とする権利である。たとえばわが家の近くにはため池がある。ため池の北側に土地が低くなっているところに小農家(その多くが兼業)が集まって野球場一個分ぐらいの畑を耕している。水はため池から引いているのだが、ため池と畑の間で水量を調整する弁の真下には民家が一軒ある。位置関係からしてこの民家の地下を通して畑に水を引いているようである。かりに、ため池は共有だとしたばあいに、畑の農家はため池から水を引くためにはこの民家との間に地役権を設定し、水を通してもらう権利を確保することが必要である。このとき、水を通してもらうという便益を享受する土地を要役地、逆に畑のために地下に水を通すという便益を供する土地を承役地という。

 だが、この様な権利は大方契約書によってなされることはなかろう。奈良にあるため池の多くは奈良時代の高僧、行基が作ったものも多いらしいのであるいは代々受け継がれてきた権利義務として固着しているのかも知れない。また、畑の一番北側には町道から直接畑に繋がる畦道があるけれどもため池に一番近い南側の畑に入るためには、この民家の敷地を通っていくのが便利だとしよう。こうして、通行地役権を設定することもできる。だがかりに、畑に入っていくためにはどうしてもこの民家を通る以外に方法が無いといった場合には、囲繞地たる畑の所有者は民法の相隣関係の規定に基づく権利を有しているといえることもあろう。後者の場合には当然に民家の側は土地所有権の制限を受けなければいけない。

 次に、地役権の付従性・随伴性という性質についての話。〔281(2)〕には、地役権のみを要役地から分離して譲渡したり他の権利の目的とすることはできない、とある。また、〔同(1)〕要役地の所有権が移転するときは、地役権も移転し、要役地が他の権利の目的となるときは、地役権もその目的となる。前者は、つまり、水を引く権利を有するものは畑を所有するものでなければならない、ということ(付従性)で、後者は、要役地たる畑の所有者AがBに畑を譲渡したら地役権もBに譲渡され、Bがその畑にCのために抵当権を設定したら、抵当権は水を引く権利に対しても設定したことになる(随伴性)という意味だろう。尚、後者は登記により第三者に対応可能だ。

 また、このような畑が共有に属することも考えられよう。こうしたばあいには、共有に参加した時期に応じて共有者は承役地所有者との関係で時効の到来期が異なることが想定される。地役権ももちろん時効の対象であるが、たとえばある共有者が20年間にわたり水を引くことがなかったとしても、他の共有者のために、時効は完成しない。逆に、〔284(1)〕土地の共有者の一人が時効により地役権を取得すれば、他の共有者も取得し、〔同(2)(3)〕時効の中断や停止は、共有者の全員について中断や停止の事由がなければ、その効力を生じない。

 また、〔282〔1〕〕要役地の共有者の一人が要役地のために存在する地役権を自己の持分につき消滅させたり、承役地の共有者の一人が承役地の地役権を自己の持分につき消滅させることはできず、〔282〔2〕〕地役権は、要役地の分割・一部譲渡があっても要役地の各部のために、承役地の分割・一部譲渡があっても承役地の各部の上に、それぞれ存続すると、さだめる。ただし、地役権がその性質上、土地の一分のみに係るときは、その範囲内で存続する。畑の引水とは関係の無い土地の分割や一部譲渡にたいしても地役権を存続させる意味はないからである。

 地役権の取得について、判例は、土地の利用権者につき、他人の土地を自己の土地の便益に供するものではないと、これを認めない。だが、学説では、土地利用の調整を図るという地役権の目的に鑑み、可能だとするが、尤もである。

 次に、時効による取得に地役権の特色がある。すなわち、上の例で言えば、民家の地下水道を利用した畑への引水であったとして、その民家の所有者がそれに気づかないか、あるいは、民家の敷地を通行して畑に入る農家に対しては、とくに好意で黙認しているという場合が多々あるから、この様な場合にも時効の取得を当然に認めては、民家の所有者にとっては寝耳に水であったり、好意であったのが仇となる、可能性が有るから、〔283〕は、地役権は、継続的に行使され、かつ、外形上認識できるものにかぎり、時効によって取得されると、定める。だが、時効とは現実の権利関係を尊重して、その上に築かれた新たな権利関係を覆滅させないための制度であると考えれば、寝耳に水も止む無しであるとう考え方もできようが、時効の中断のために何もしなかったことに対する真正権利者の帰責性が低いと、言いたいのだろう。なお、通行地役権においては、都市部においても土地所有者の頻繁な入れ替わりによりこの手のトラブルが多く、〔283〕の「継続」をめぐっては、①承役地たる他人の土地に通路が開設されていること、②その開設が要役地の所有者によってなされたることが、要件として、判例法が定立している。また、地役権には、黙示の設定が認められるが、明示の場合はむしろ少なかろう。

 *通行地役権の第三者の対抗の問題については、登記の欠缺を主張する正当な権利を有するかどうか(177条の第三者に該当するかどうか)をめぐり、背信的悪意者法理の話があったが、悪意ではないケースにおいては単なる信義則違反で処理する判例が出ているようである。(奇しくも僕が物権法のレポートで善意有過失に対する背信的悪意者法理の適用は曲解にすぎるのではという趣旨を書いたのだがその後の最高裁判例をチェックしていないという点で落第の危険が高い(*'ω'*)かも)

 以上
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