一法学生の記録

2014年4月に慶應大学通信部に進んだ法学生の記録である
(更新)2017年4月に神戸大学法科大学院へ進学しました。

親子の物語(担保譲渡)

2016-09-23 18:42:10 | 物権法

親子の物語(担保譲渡)

 (注意)内容の解釈など正確性判断は各自の責任の下で行ってください。

 ここから先は、簡単なストーリーを設定しよう。子供が親に、テレビが欲しいよとねだったとしよう。親は子供に、買ってやってもいいが、宿題をちゃんとするんだよ。もし、やらなかったら、君たちの大事なポケモンGOプラスを、取り上げるよ。と言ったしよう。諾成・不要式により成立したとき、子供たちは、大事なポケモンGOプラスに譲渡担保を設定し、親はテレビを買っていやるかわりに、テレビの代価に相当するだけの宿題をやるという子供たちの約束たる被担保債権を取得したことになる。このとき、この時、ポケモンGOプラスの所有権は、親に移り、子供たちには、設定者留保権が残り、引き続き遊べる。

 だが、子供たちが不注意で、ポケモンGOプラスを小川に落として壊してしまったとしよう。そうすると、目的物保管義務の債務不履行、又は譲渡担保権者たる親の所有権侵害により損害賠償責任を負い、せっかく買ってもらったテレビを返却して、責任を果たすか、あるいはポケモンGOプラスの代りに、すでにGETしたレアポケモン100匹を増担保設定して(親がもトレーナーであった場合には)、急場を凌ぐ必要がある。それが果たせない時は、子供たちは期限の利益を失うので、テレビを買ってもらった分に相当する宿題を一気に終わらせなければならないが、それは、無理だろう。

 一方で、親は、子供たちが真面目に宿題をちゃんとやって、被担保債権を弁済している間は、ポケモンGOプラスを勝手に使って遊んだり、友達にあげたりしてはいけないという義務を負う。もし、親が勝手に使って、壊してしまったら、その分の賠償をしなければならない。すなわち、譲渡担保の目的物たるポケモンGOプラスを買い替えてあげなければならないが、元々中古品だから、新品で買い替える必要はなかろう(処分時の価値基準)。

 さて、子どもたちが親との約束にも関わらず、そのポケモンGOプラスを友達に譲ってしまったとする。このとき、その友達が、親子の担保譲渡契約(宿題をやんなきゃ取り上げる)について、善意無過失であれば、即時取得が成立するが、知っていた場合、あるいは知らないことに過失があった場合にも、子どもたちの設定者留保権が、その友達に移転するに過ぎない。このとき、担保目的物の滅失と同じく、子どもたちの期限の利益は失われるから、譲渡担保権者たる親は直ちに、担保を実行し、その友達の設定者留保権を消滅させることができる。

 なお、親が友達に譲ることは、手元にポケモンGOが無いのであまり考えられないだろうが、ちょっと設定を変えて、こんどは、子どもたちが親に、ポケモンGOプラスではなく、子どもたちのアカウントを担保譲渡の目的物にした場合を考えてみたい。このとき、親は、予め、そのアカウントを子供たちから親名義に変更して、子どもたちはその親名義の下で、遊んでいたとする。そうすると、親は、別のアプリから子供たちに貸している自分のサイトにログインすることができるから、その名義を今度は、子どもたちがちゃんと被担保債権たる宿題をこなしているにも関わらず、勝手に親の友達のポケモントレーナーに譲ってしまったとする(尚、このとき、親の操作が無ければ、子どもたちも、その友人も勝手にパスワード変更をしてアカウントの名義変更ができないとする)。

 このとき、その友人は、親名義のアカウントを信頼して、そのアカウントを取得したのだが、設定者留保権はなお、子どもたちに残っていることになり、したがって、子どもたちが引き続き宿題を果たしおえることで、その所有権を取り戻すことができるはずだ。しかし、友達は、そのアカウントが親のものであることを信じていたのであるから、〔94(2)〕虚偽表示が成立し、結果、第三者は、アカウントについて、完全な所有権を取得することができる。

 なお、いとこがやってきて、いきなりポケモンGOを取り上げ、そのアカウント名義を自分に変更してしまったときには、所有者たる親はもとより、子ども物権たる設定者留保権にもとづいて、返還請求または、アカウント名義の抹消請求が可能である。

 そして、子どもたちが、ついに宿題を果たし終えなかったとき、親は譲渡担保を実行して、ポケモンGOプラスは、親のものになる。親が自分のものにしたいと思えば自分のものになり(帰属型)、それを換金してお金で処理する(処分型)こともできる。このとき、テレビを買うためのお金として1万円を子供に渡しておいて、ポケモンGOの価格も1万円だとしよう。この1万円が、子どもたちの宿題ちゃんとやる100回分に相当するとき、子どもたちがたった20回しかやらなかったときに、担保権を実行して、ポケモンGOを取り上げたらどうなるか?子供たちとしては、すでに1万円の被担保債権のうち、2000円分の宿題はちゃんとやったのだから、1万円のポケモンGOを丸取りされては、不公平であると、主張することができるし、親は、2000円を返却べき清算義務を負う。だが、かりに、ポケモンGOプラスの価格が10万円だったとしよう。親は、9万2千円を子供に支払わないと、ポケモンGOを取り上げることはできない(なぜなら、清算義務と返還義務は同時履行の関係にあるから)。だが、親としても、欲しくもないポケモンGOのために自腹で9万も切りたくない。ならば、それを売却して、そこから被担保債権(1万円ー宿題20回分として2000円=8000円)を差引して子どもたちに渡すことで、清算義務を果たすことができる。

 だが、子どもたちにもチャンスが残されている。親が、とうとう宿題をやらないのだったら、ポケモンGOは取り上げる宣言をしたとしても、そこからでも、あわてて宿題をちゃんとやれば、親の取り上げは執行できないが、これを、受戻権という。このリミットは、帰属型の場合には、親が精算金を子供に支払ったときまで、処分型では、相手方との売買契約の成立など、その目的物が処分されたときまでになろうか。

 以上、アカウントと名義に関してはそれぞれ不動産と登記に代えて理解できる、でも内容はかなり怪しいかも(*'ω'*)かなり長文になり、疲れました。

 以上

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