ホタルの独り言 Part 2

ホタルの生態や生息環境を研究し保全活動をしていますが、様々な昆虫や美しい日本の四季
自然風景の写真も撮っています。

ゴマシジミ(開翅)

2017-08-12 13:51:55 | チョウ/シジミチョウ科

 ゴマシジミの開翅をようやく撮影できたので紹介したい。

 ゴマシジミ Phengaris teleius (Bergstrasser, 1779) は、シジミチョウ科(Family Lycaenidae)ゴマダラシジミ属(Genus Phengaris)に分類されるチョウで、日本国内では4亜種が生息しており、本記事で取り上げているゴマシジミ本州中部亜種 Phengaris teleius kazamoto (H. Druce, 1875) は、ごく近い将来における野生での絶滅の危険性が極めて高い種として環境省カテゴリにおいては絶滅危惧ⅠA類に選定されており、福島県、新潟県、群馬県、長野県、愛知県のRDBにおいても絶滅危惧Ⅰ類としている。
 ゴマシジミの生活史は特異で、親はワレモコウの花穂に産卵する。 孵化した幼虫は花穂を食べて秋に3齢まで成長し、4齢(終齢幼虫)になると食草から地上へ降り、草原の土の中を好むシワクシケアリによって巣に運ばれてシワクシケアリの幼虫や蛹を餌にして越冬し、翌年の夏にアリの巣の出口付近で蛹化・羽化して地上に出るのである。ワレモコウもなくてはならないが、それ以上にシワクシケアリの存在が重要で、このアリが生息できる環境でなけれればゴマシジミも生息することができず、絶滅・減少の大きな原因になっているのである。
 採集者の乱獲も問題になっているが、ゴマシジミ本州中部亜種は、2016年に「国内希少野生動植物種」に追加指定されたことで、国内のどの地域でも捕ることができない。また、長野県松本市では、特別天然記念物に指定しており、許可を受けずに捕獲したり、譲渡したりすると5年以下の懲役や500万円以下の罰金が科されるので、今後は採集圧による絶滅は防げるであろう。

 ゴマシジミの開翅を撮るために、4年間で9回も生息地に通った。保全地区であるため個体数が多く、翅を閉じて止まっている姿を撮影するだけなら容易だ。しかしながら、ゴマシジミは、なかなか翅を開かないことで知られており、何度挑戦しても、開翅する気象条件が合わず、翅を開く様子をまともに撮影することはできなかった。唯一、2014年8月23日に2頭の開翅を撮影したが、1頭は翅表が暗褐色タイプで、もう1頭は翅が擦れた老個体でり、満足できるものではなかった。
 ゴマシジミの翅の斑紋や色は、地理的並びに個体的な変異が著しく、日本産シジミチョウ科の中でも最も変化に富むチョウの1種で、翅表は黒縁、黒斑を有する青藍色から全面暗褐色のものまで変異が大きいと言われている。この生息地のゴマシジミは、青い鱗粉がのったタイプ(通称:青ゴマ)と青い鱗粉がほとんどない暗褐色タイプ(通称:黒ゴマ)、またその中間タイプも見られる。撮影の目標は、翅表に青色鱗粉が多くのった個体である。
 今回の天気は、曇り時々晴れで、気温は21℃。7時過ぎから探索を始めたが、何と、どの個体も葉に止まると翅を開いた。開翅には、天候と気温が大きく関係しており、やっと条件が合致した。撮影開始から1時間くらい経過すると、オスは草叢の中を探雌飛翔し始め、なかなか止まらなくなるが、時折、花で吸蜜する時には翅を開いてくれた。ただ、どの個体も青色鱗粉が少ないものばかりである。
 探索を続けていると、葉上でじっとしている新鮮な個体が目に入った。飛び立ってもすぐ近くに降り立つ。飛んだ瞬間に見えた翅表は、まさに「青ゴマ」である。この個体に的を絞るが、頑なに翅を開かない。しばらくすると、探雌飛翔してきたオスに絡まれ翅を開いた。羽化後から時間があまり経っていないのであろう交尾も拒否しているようであった。

 参考までに2014年に撮影した、青い鱗粉がほとんどない暗褐色タイプ(通称:黒ゴマ)の写真も掲載した。

お願い:なるべくクオリティの高い写真をご覧頂きたく、すべて1024*683 Pixelsで掲載しています。Internet Explorerの画面サイズが小さいと、自動的に縮小表示されますが、画質が低下します。Internet Explorerの画面サイズを大きくしてご覧ください。

ゴマシジミ開翅の写真

ゴマシジミ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F6.3 1/250秒 ISO 500(2017.8.11 9:32)

ゴマシジミ開翅の写真

ゴマシジミ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F6.3 1/250秒 ISO 640(2017.8.11 9:32)

ゴマシジミ開翅の写真

ゴマシジミ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F6.3 1/320秒 ISO 400(2017.8.11 8:32)

ゴマシジミ開翅の写真

ゴマシジミ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F6.3 1/250秒 ISO 640(2017.8.11 9:12)

ゴマシジミ開翅の写真

ゴマシジミ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F6.3 1/250秒 ISO 640(2017.8.11 7:39)

ゴマシジミ開翅の写真

ゴマシジミ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F6.3 1/320秒 ISO 640(2017.8.11 7:54)

ゴマシジミの写真

ゴマシジミ(暗褐色タイプ)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F6.3 1/320秒 ISO 400(2014.8.23)

ゴマシジミの写真

ゴマシジミ、シワクシケアリとワレモコウ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F6.3 1/250秒 ISO 500(2017.8.11 8:27)

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