ホタルの独り言 Part 2

ホタルの生態と環境を52年研究し保全活動してます。ホタルだけでなく、様々な昆虫の生態写真や自然風景の写真も掲載しています

成虫で越冬するチョウ

2016-04-05 22:52:59 | チョウ

 この時期に見られるチョウは、この春に羽化したスプリング・エフェメラルか春型、もしくは昨年の夏か秋に羽化して成虫で越冬したチョウである。 「スプリング・エフェメラル」と「チョウの季節型」については、それぞれの記事を参照いただき、本記事では、成虫での越冬に関して記しておきたい。
 日本に生息するトンボ類で成虫で越冬する種は、記事「成虫で越冬するトンボ」において3種類のみであると記したが、チョウ類では、全体の約10%の種が成虫で越冬する。キタテハ、ヒオドシチョウ、アカタテハ、ルリタテハ、テングチョウ等のタテハチョウ科が多く、キタキチョウ、ヤマキチョウ等のシロチョウ科の一部やムラサキシジミ、ムラサキツバメ、ルーミスシジミ、ウラギンシジミ等のシジミチョウ科の一部がそれに当たる。本記事では、例としてキタテハ、ヒオドシチョウ、スジボソヤマキチョウの越冬前と越冬後の写真を掲載した。

 このチョウ達は、なぜ成虫での越冬を選んだのだろうか?成虫の目的は、どんな種でもただ1つ「産卵して子孫を残すこと」であるが、越冬態が卵や幼虫、蛹に比べてリスクが高いように思われる。成虫で越冬するチョウは、越冬後に産卵するので、確実に冬を越さなければ種が絶滅してしまうのだ。昆虫は変温動物であるから、寒い冬でも晴れた日などでは太陽光で体が温まり、 飛ぶこともあるが、体温が下がれば動くことができず、葉につかまり、または落葉に横たわってじっとしている。特に、季節型を持たない年一化の種は、夏に羽化しているから翅が痛み、ボロボロの状態になっていることが多い。キタテハには季節型があり、秋に羽化した個体が越冬するので越冬後の翅の傷みは少ないが、ヒオドシチョウとスジボソヤマキチョウは夏に羽化した個体であるため、越冬後には翅はボロボロになり、色もかなり褪せているのが分かる。
 チョウの生態は、幼虫の期間が食樹・食草の食べ頃時期と重なるようになっているが、同じ食樹でも越冬態が異なる。オオムラサキの越冬態は幼虫であるが、同じエノキを食べるヒオドシチョウは成虫である。また、スジボソヤマキチョウと近類種のヤマキチョウは、越冬しても翅がボロにならず色も褪せないから不思議だ。オスは秋に交尾を済ませた後に死んでしまいメスだけが越冬する種もいれば、ムラサキツバメのように同じ種のチョウが集団で越冬するものもいる。ルーミスシジミは、未だ年一化なのか、季節型があるのか不明である。
 昆虫の生態は、不思議な部分がまだまだ多く、私の興味が尽きることはない。

注釈:本記事は、過去に様々な地域や場所において撮影し個別にブログにて公開していた写真を、時節柄の話題として提供するために再現像して編纂したものです。

お願い:写真は、1024*683 Pixels で掲載しています。Internet Explorerの画面サイズが小さいと、自動的に縮小表示されますが、 画質が低下します。Internet Explorerの画面サイズを大きくしてご覧ください。

キタテハ

キタテハ(越冬前)
Canon 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO
絞り優先AE F5.6 1/400秒 ISO 320(撮影地:東京都あきる野市 2011.10.18)

キタテハ

キタテハ(越冬後)
Canon 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO
絞り優先AE F8.0 1/400秒 ISO 200 -2/3EV(撮影地:山梨県上野原市 2012.5.6)

ヒオドシチョウ

ヒオドシチョウ(越冬前)
Canon 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO
絞り優先AE F8.0 1/200秒 ISO 500(撮影地:山梨県北杜市 2013.06.08)

ヒオドシチョウ

ヒオドシチョウ(越冬後)
Canon 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO
絞り優先AE F8.0 1/500秒 ISO 200(撮影地:東京都あきる野市 2012.5.12)

スジボソヤマキチョウ

スジボソヤマキチョウ(越冬前)
Canon 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1
絞り優先AE F5.0 1/500秒 ISO 200 +1EV(撮影地:長野県長野市鬼無里 2014.7.12)

スジボソヤマキチョウ

スジボソヤマキチョウ(越冬後)
Canon 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO
絞り優先AE F8.0 1/640秒 ISO 200 -1/3EV(撮影地:長野県北安曇郡白馬村 2014.5.3)

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