ホタルの独り言 Part 2

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アオハダトンボ属

2016-09-24 09:12:53 | トンボ/カワトンボ科

 日本国内にカワトンボ科は5属7種が分布しており、これらのうちカワトンボ属については、過去の記事で紹介した。また、ミヤマカワトンボについても当ブログにて単独で紹介しているが、今回は、アオハダトンボ属としてまとめて紹介したい。尚、ハグロトンボについては、以前はアオハダトンボ属(Genus Calopteryx)に含められていたが、DNA解析の結果、ハグロトンボ属(Genus Atrocalopteryx)が新設され、Atrocalopteryx atrata (Selys, 1853)となっている。本記事においては、形態的に似ていることからアオハダトンボ属2種とともに掲載した。

アオハダトンボ属(Genus Calopteryx

  1. アオハダトンボ Calopteryx japonica Selys, 1869
  2. ミヤマカワトンボ Calopteryx cornelia Selys, 1853

ハグロトンボ属(Genus Atrocalopteryx

  1. ハグロトンボ Atrocalopteryx atrata (Selys, 1853)

アオハダトンボ Calopteryx japonica Selys, 1869

 アオハダトンボは、本州と九州に分布し、成虫の出現期は5月中旬頃から7月上旬頃までであり、近似種ハグロトンボと混生する生息地では、本種の方が出現期が早目である。カワトンボ科で最も生息地が限られる種で、平地や丘陵地の河川中流域でバイカモなど(水生植物の種類は問わない)が生える砂底の清流に生息し、"清流の天使"あるいは"湧水の使者"などと呼ばれるが、水質や周囲の環境に敏感で、河川の水質悪化による水生植物の減少が本種の生息環境を著しく狭めている。
 環境省RDBでは準絶滅危惧に選定、東京都、千葉県で絶滅、青森県、群馬県、兵庫県で絶滅危惧Ⅰ類、神奈川県、新潟県、長野県、鹿児島県で絶滅危惧Ⅱ類、その他、多くの県で絶滅危惧種として選定している。

ハグロトンボ Atrocalopteryx atrata (Selys, 1853)

 ハグロトンボは、本州・四国・九州に分布し、平地から丘陵地の水生植物(特に沈水植物)の茂る安定したゆるやかな流れに生息し、幼虫は水中で植物にしがみついて生活している。住宅地近くの用水路等にも生息し、アオハダトンボに比べて分布域が広く生息地も多い。アオハダトンボと同所的に生息している所もあるが、薄暗い林が隣接した環境がなければならない。羽化後の若い個体は薄暗いところを好み、水域から離れて林の中で生活するためである。成熟すると再び水域に戻り、明るい水辺の石や植物などに止まりナワバリをつくる。形態もアオハダトンボによく似ているが、メスのアオハダトンボには白い偽縁紋があるが本種にはない。
 環境省RDBに記載はないが、東京都で絶滅危惧Ⅱ類、青森県で準絶滅危惧種として選定している。

ミヤマカワトンボ Calopteryx cornelia Selys, 1853

 ミヤマカワトンボは、日本特産種であり、北海道南部から鹿児島県屋久島にいたる本州・四国・九州に分布している。体長は62~78mmほどで日本に生息するカワトンボ科の中では最大の大きさである。主に丘陵地や山地の渓流に生息し、前2種とは生息環境が異なっている。発生期間は長く5月中旬~9月頃まで長い間見ることができる。翅全域が一様に淡褐色に透けており、後翅の先の方にやや濃い褐色帯があるのが特徴であり、最も美しいといわれるカワトンボである。
 環境省RDBに記載はないが、長野県で準絶滅危惧種として選定している。

アオハダトンボ属(Genus Calopteryx)の Calo- は美しい、pteryx は翅を意味している。3種ともに太陽の光に当たった時の翅の輝きは特別であり、また、オスの腹部の金属光沢のある緑色も美しく、清冽な流れの上を翅をヒラヒラと優雅に飛ぶ姿に魅了されるトンボである。
 今後(来年)は、特にミヤマカワトンボが最も美しく見える写真と産卵シーンの撮影を目標としたい。

お願い:写真は、1024*683 Pixels で掲載しています。Internet Explorerの画面サイズが小さいと、自動的に縮小表示されますが、 画質が低下します。Internet Explorerの画面サイズを大きくしてご覧ください。

アオハダトンボ

アオハダトンボ / オス
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO
絞り優先AE F8.0 1/320秒 ISO 640(2012.6.24)

アオハダトンボ

アオハダトンボ / 交尾態
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO
絞り優先AE F8.0 1/320秒 ISO 400(2012.6.24)

アオハダトンボ

アオハダトンボ / 産卵
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO
絞り優先AE F8.0 1/320秒 ISO 800(2012.6.24)

ハグロトンボ

ハグロトンボ / オス
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO
絞り優先AE F3.5 1/320秒 ISO 800(2011.8.20)

ハグロトンボ

ハグロトンボ / メス
EOS 5D Mark Ⅱ / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO
絞り優先AE F6.3 1/125秒 ISO 100 -2/3EV(2010.9.25)

ハグロトンボ

ハグロトンボ / 産卵
EOS 5D Mark Ⅱ / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO
絞り優先AE F6.3 1/15秒 ISO 100 -2/3EV(2010.9.25)

ミヤマカワトンボ

ミヤマカワトンボ / オス
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4
絞り優先AE F5.6 1/500秒 ISO 800(2016.6.12)

ミヤマカワトンボ

ミヤマカワトンボ / メス
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4
絞り優先AE F6.3 1/500秒 ISO 500 +2/3EV(2016.6.12)

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