ホタルの独り言 Part 2

ホタルの生態と環境を52年研究し保全活動してます。ホタルだけでなく、様々な昆虫の生態写真や自然風景の写真も掲載しています

人のためか?ホタルのためか?

2007-05-01 21:12:30 | ホタルに関する話題
 昨今、ホタルに関わる活動が日本全国で盛んに行われている。「ホタルの里」や「ホタルの会」もたくさんある。「子ども達にホタルをみせてやりたい・・・」「ご老人にホタルを見せて安らいでほしい・・・」「ホタルを飼育することで自然環境に興味を持ってもらいたい・・・」「減ってしまったホタルを増やしたい・・・」どれもすばらしい活動であると思う。しかし、これら活動の理念や根底には、「人々のため」を優先しているものがあるように思う。「人々のため」を優先した考え方では、決して「ホタルのため」にはならないことを覚えておいてほしい。
 例えば、ホタルを見てほしいがためにホタルの発生状況をネットで公開する。人々は、喜び、その場所へ殺到するであろう。しかし、訪れる人々のホタルを鑑賞するマナーはどうであろうか?ライトを照らし、乱獲していくのである。
 ホテルや旅館や個人の庭にホタルの里づくりを行ってホタルが飛んだとする。人々は大いに喜ぶだろう。しかし、ホタルの生息環境や生態とは関係なく、飼育養殖した(或いは買い求めた)終齢幼虫と採集してきた(或いは買い求めた)カワニナを放流し続けるだけである。ホタルが自然発生できる生態系などない場所で、自然に興味関心を持ち、理解することができるのであろうか?
 「ホタルの会」と名の付く団体は数多くあるが、本当は「人間のためにホタルを利用する会」なのではないだろうか。このままでは、ホタルは里山という自然環境のバロメーターでも、生態系の結晶でもなくなってしまう。本来の環境に自生するホタルは絶滅し、その環境を知る者もいなくなってしまう。ホタルを守ろう!と言いながら、実は「ホタルを滅ぼす会」になってはいないだろうか。
 ホタルに関わる活動は、ホタルが自然発生する生息地を保全したり、ホタルが自然発生できる生態系を復元することであり、何より「ホタルのため」でなくてはならないと思う。人々のためか。ホタルのためか。どちらが優先なのか。今一度、客観的に考え直す必要があると思う。
東京にそだつホタル

最新の画像もっと見る

6 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
参考になりました (fortune)
2006-11-30 02:26:25
ホタル百科事典。とっても参考になりました。ちょっと引用させてもらいました。すみません。私のブログにも書かせてもらいましたが、ある市議会議員さんから住宅地にあるため池にホタルを復活させたいという相談を受けました。私はホテルを人工的に増やし人集めするのには反対だったので、「そんな街灯がある明るい所にはホタルはすめませんよ。ホタルホタルと騒ぐ前に、いろいろな動植物が生息できる環境づくりが大切ですよ」って言ってやった。失礼、言ってあげました。そうですよね。
私は近々ある谷津田を再生するプロジェクトを立ち上げます。そこには豊富な湧水があり、カワニナなどの貝類も沢山確認できました。サワガニもいます。周辺には数は少ないですがホタルの観測例もあります。そこを整備再生すればきっとホタルが戻ってくるはずです。古河さんのHPを見てそう確信しました。有難うございました。また、ちょくちょく来ます。
Unknown (古河)
2006-11-30 20:50:03
ご理解いただきありがとうございます。ホタルのために、すばらしい自然環境を再生してください。それが、結果的には人々のためにもつながるのだと思います。
Unknown (ecodeoyasai)
2007-03-19 20:47:20
コモチカワツボを検索してここに辿り着きました。人間がホタルに関わるのは、昔の思い出をもっていたりすることも理由にありますが、都会に育つものにとってはホタルの光に代表される憧れの念からではないでしょうか?結局、見てみたいという人にとってもそれをゲストとして期待する側にとっても、ホタルの存在は人のためであって、その後にホタル単体のためになっているのかもしれないと感じます。仰られているように環境そっくりを良くしてこそ本当のものと感じます。その実、現実問題として生活廃水の面などもろもろを考えるとホタルには大変申し訳なく感じています。ちなみに文面の最後の箇所ですが、その某氏にお会いした事がありますが閉鎖空間でホタルの生態が簡潔しているような話でしたから、自然の中でホタルの為にと称して、必要以上の餌の採集をしている、或いは餌を購入(別の地域のカワニナが減少)している事例よりはましでは無いかと思いました。
岡山では上陸が始まったよ (soh-01)
2007-03-31 02:14:38
 お久しぶりです。
 岡山では、24日の雨で、上陸が始まりましたヨ。

 今年は、積算有効温度の例数を増やすこととゲンジボタルの生活環のうち、どこで土繭になるのかを探すことを目標にがんばっていきます。
 毎年、ホタルの生活環を観察して、その場所での生息を可能にしている要因と、消滅させる要因を調べて、ゲンジボタルの保護と環境の保全の提案を行っています。そして、いつの日か、住宅地を流れる農業用水路でも、人手を加えることがなくても、ゲンジボタルの生息が持続してくれることを夢みています。
質問ですが (オーロラ)
2008-04-12 00:25:31
小学3年の息子に聞かれたのですが、ホタルは、絶滅危惧生物に入るのでしょうか。現在、メダカも入っているようですが、ホタルはその表には書いてありませんでした。教えていただければと思います。
Unknown (古河)
2008-04-12 17:00:18
 環境省が定める絶滅危惧種、いわゆるレッドデータブックの中に記載されているホタルの仲間は3種で、クメジマボタル、コクロオバボタル、ミヤコマドボタルです。クメジマボタルは、絶滅危惧II類で他の2種は、準絶滅危惧に分類されています。ゲンジボタルやヘイケボタルは含まれていませんが、環境省のレッドデータブックを参考に東京都が定めた「東京都の保護上重要な生物」というリストの中には、ゲンジボタルやヘイケボタルは、絶滅危惧種としてリストアップされています。

コメントを投稿