こんにちは。
今年は寒い冬ですね。
先日、「わたしが内部被曝についてあまり悲観しない理由」という記事にお寄せいただいたコメント(rinさん)に次のような質問がありまして、今日は、2番目のご質問の方へのお返事をしたいと思います。
1、人工放射線を自然放射線と同列に考えていらっしゃいますが、ではなぜ今まで原子力発電所は人の少ないところに作り、さらに厳しく安全管理し、そして 「原子力ムラ」に保障そのたもろもろで多額のお金をつぎ込んでいたのでしょう。安全ならそういうことする必要はなかったのでは?と素人はどうしても思って しまうのです。なのでやはり人工放射線は怖いと思ってしまうのです。
2、もしかしたら何度も聞かれたことがあるかもしれませんが、もし 10年後に、管理人様のお子様が白血病になったとして、それが今までの日本の発症率から比べて明らかに10倍20倍の発症率だったとして、それでも「放射 能のせいではない」と言い切れますか?そして今の自分の選択を後悔しませんか?
私はこの問いを常に自問自答してしまい、どう考えたらよいのか答えを出せずにいるのです・・・
米子の考えをお聞かせくださいとのことだったのですが、わたしも、医学的な専門知識がそんなにあるわけではないので、まずはツイッターで知り合ったPKAさんという放射線に詳しいお医者さんにお知恵を拝借させていただくことにしました。
そこで、わたしとPKA先生とのツイッターの対話をまとめたものがありますので、次にリンクします。
togetter
10年後にあなたの息子が白血病になったら後悔しませんか?
まずは、rinさんにもこのまとめをお読みいただけたらと思います。
そして、次に、このtogetterまとめを踏まえてわたしの考えを述べます。
■ 放射能のせいではないと言い切れますか?
まず、「放射能のせいではない」と言い切れますか?というご質問については、言い切ることは出来ません。が、「放射能のせいだ」と思い込む必要もないと思っています。なので、結局は、どう思うかは個人の考え次第ということになるのですが、わたしは、とりあえず放射能のせいだと結論出来ないと思っています。その理由については、togetterまとめの中でわたしも書いているのですが、まずは、放射線障害には「非特異性」という特徴があるからです。これについては、安斎育郎著『増補改訂版 家族で語る食卓の放射能汚染』第3章に項を設けて書かれています(p.142〜)ので、一部を引用します。
放射能というと、私たちの日常感覚ではたいへん特殊なものという印象がありますので、放射線障害も、ふつうの障害とは根本的に違う独特の症状を呈するのではないかと感じられます。
ところが、どっこい、現実はそう単純ではないのです。
放射線障害の特徴は、いわば、「特徴がないのが特徴」なのです。
たとえば、放射線を取り扱う作業に従事していた人が白血病になったとします。しかし、白血病は、放射線被曝が唯一の原因ではありません。有機溶媒も原因のひとつかもしれませんし、ある種の白血病はビールスの感染が原因である可能性もあります。
では、放射線を浴びて陥った白血病は、他の原因で陥った白血病とは異なる特有の症状を呈するのでしょうか。
残念ながら、というと妙ですが、放射線を浴びて陥った白血病は、原因が放射線であるがゆえに独特の症状を現すということはないのです。逆の言い方をすれば、症状を観察しただけでは、その白血病が放射線被曝によってもたらされたのか、それとも、ぜんぜん別の原因によってもたらされたのか、区別がつかないのがふつうなのです。これを、放射線障害の「非特異性」と言います。「非特異性」は、「特に異なるところあらざる性質」ということであり、結局のところ、症状から原因をおしはかることができないということです。
10年後、わたしの息子が白血病を発症したところで、その症状から、放射線被曝が原因だとおしはかることができないということは、つまり、もともと、生まれつき白血病になる原因をもって生まれてきていたのかもしれないし、今回の福島第一原発事故が起きても起きなくても被っていた何か別の原因で罹ったのかもしれない以上、何とも言えないということです。
でも、分からない部分を、確率論で考えるならば?ということを、おそらくrinさんはおっしゃっているのだろうと思いますので、それについても考えてみます。
■ 白血病の発症率が従来の10倍、20倍になっていたとしたら?
今までの日本の発症率から比べて明らかに10倍20倍の発症率だったとしても?ということなのですが、つまり、もし、原発事故後に白血病の発病が10倍、20倍にも増えたとしたら、放射線が原因で陥る白血病である可能性 対 それ以外の原因で陥る白血病である可能性、の比率は9:1とか、19:1になって、それは、もうほとんど放射線が原因だと言えるのではないかという意味だと思います。なるほど、それは、いかにもそんな感じがします。
でも、その前に、そんな、10倍、20倍にも増えるなんてことが実際にあるのかな?ということを、わたしは考えました。
それで、PKA先生にまずお話を聞いてみようと思ったのでした。結論としては、なかなかありそうもないということだったと思うのですが、rinさんは、現在の首都圏の低線量被曝にそうした影響力があるかもしれないということを前提にお話されているのでしょうから、それを仮定してみます。
PKA先生が参照先を教えてくださった白血病に関するWEBページ(わかりやすい白血病の話の中の4.白血病の発生率)に記載によると、白血病の発生率は”2006年では年間人口10万人当り 5.9人”とのことです。これを%の率で表すと、0.0059%ということになります。これを稀な病気と考えるかどうかも、個人差があるのかもしれませんが、わたしはとても稀な病気だと感じます。この稀な病気を10倍、20倍もの発生率に増やしてしまうほどの因子(原因)というのは、なるほど、とてつもない話なのですが(5.9人だった患者が118人に増大するということです)、そんなとてつもない事態に見舞われたとしても、やはり白血病に罹る可能性は0.118%です。
■ 後悔するかどうかについて
わたしの息子が0.118%という確率で白血病に罹ったとして、それが90〜95%の割合で原発事故からきた放射能によるものだとしても、それも”不運”と思う方が先だろうと思います。なぜなら、関東・東北全体に広がった低線量被曝にとてつもない影響力があったとしても、その結果、発生率が0.118%に過ぎないとするならば、被曝したにも関わらず発症しない人の割合の方が圧倒的に多いということだからです。
仮にわたしの息子が白血病に罹ったならば、まずは治療のことを考えるでしょうし、何故そんな不運に見舞われたかについて考える暇があるかどうか分かりません。仮に考えるとしても、同じ環境で同じだけ被曝しながら暮らした子供たちのほとんどは発症しないのに、何故うちの子が?と考えることはあっても、うちの子が白血病に罹ったのは自分が放射線対策を怠ったせいだと考えることはないのではないかと思います。ましてや、白血病の増加が、仮に2〜3倍に留まったとしたら、発症率はおよそ0.012〜0.018%であり、これは本当に不運中の不運としか言いようがないと思います。対策しなかったのに白血病に罹らない割合がもっと増えるわけです。
(現在、放射能対策をさほど熱心にしていない親御さんたちはとても多いですが、それで白血病の増加が10〜20倍で済み、ほとんどの子どもは発症しない、というのであれば、一生懸命対策することに、どれほどの白血病防止効果があるでしょうか?・・・と、こんなことを言うと、いや、被曝防止対策を施されなかった子供たちは確実に病気に陥るのだと言いたくなる人もおられるのかもしれません。とすれば、将来のガン・白血病などの発症・死亡の数の見積もりはどのぐらいなのでしょうか。わたしは、そうした終末思想のような話にはあまり興味がありません。)
ですから、放射能対策を怠っても罹るとは限らない病気に罹ってしまった原因が、やはり放射能のせいである、と言われても、そういうことを思い煩うかと聞かれると、そんなことを思い煩っていたら、他にも思い煩わなくてはいけないことだらけになってしまうでしょう。子どもはこれから他にも病気にかかるでしょうし、大小さまざまな事故にも遭うでしょう。そうした「不運な」出来事すべての原因をいつも追求し、自分を責めていくことは、不可能です。親の子に対する責任の範囲を逸脱していると考えます。
■ ちなみに
こういう質問を既に受けたことはないです。ですが、福島第一原発事故後、もちろん考えたことはあります。でも、「後悔はしない、というより、出来ないじゃないか」という思いを常に抱いてきました。今回考察したほど緻密に考えたことはなかったのですが、だいたい最初からそういう風に思っていました。
個人的には、わたしの息子が身体の病気にかかることより、学校でいじめに遭ったり(逆に誰かをいじめたり)、自殺を図ったり(自殺に追い込んだり)される方がよほど怖いことだと思っていますし、そうしたことこそ、親の責任であると考えているので、そうさせないために方法があるのであれば、そちらに専念したいですので、野菜探しに奔走したりガイガーカウンターでそこらを測って回ったりということに熱中している余力はないと言えます。これは、あくまでわたし個人の育児上の価値観ですが。
以上のような説明で、ご納得いただけるかどうか分かりませんが・・・
ご参考になれば、幸いです。
何か、また補足することもあるかもしれませんが、とりあえずこの辺で一度アップしてみます。
※次回、1つ目のご質問のお返事を書きたいと思います。