細越麟太郎 MOVIE DIARY

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●『戦争のはらわた』が飛び散る、あの凄惨戦争映画40年ぶりの復活戦。

2017年06月27日 | Weblog

6月20日(火)13-00 渋谷<映画美学校B-1試写室>

M-070『戦争のはらわた』" Cross of Iron " ( 1977) Rapid Films Productions / An-Anglo German co-productions 英・独

監督・サム・ペキンパ 主演・ジェームズ・コバーン、マクシミリアン・シェル <133分・ビスタサイズ> 配給・コピアポア・フィルム

77年の製作当時、日本でも緊急公開されて、多くのペキンパ・ファンに絶賛された戦争映画の傑作が、なぜかまたリバイバル公開されるのは「ハクソー・リッジ」の連鎖かな? 

それはともかく、当初見たときは、コバーンが苦戦するドイツの伍長なのに、今回その戦場がロシア戦線で、いちばんの敵は、指揮官の上官マキシミリアン・シェルだった、ということが判明。

どこの戦争映画にも、アホな上官が出て来て、戦争している敵国よりも目上の上官の無謀な命令に背くという、内紛状態の実戦映画が実に多かったことを思い出すが、これはその典型だ。

マキシミリアンは、当時人気女優だった「居酒屋」などのマリア・シェルの実の弟で、当時の多くの戦争映画では憎らしいドイツ軍の将校を演じていた憎まれ役者。

あのヒトラーに心酔し尊敬して、いずれはナチスの側近として従軍したいという野望の上官は、とにかく圧倒的な戦力と、厳寒のロシア戦線の不利を承知で、部下にムチャな戦闘を命じるのだ。

ペキンパ監督としては、あの69年の、<ラスト・ウェスターン>と絶賛された「ワイルド・バンチ」や、72年のスティーブ・マックイーンの傑作「ゲッタウェイ」の後の血糊の実感戦争映画。

多くの第二次世界大戦の映画では、ほとんどがフランスのノルマンディや、パリへ向かう内地での戦闘を描いていたが、この作品では激寒のロシアでの激戦を描いていたのがユニークだった。

しかもペキンパらしく、ほとんどが血まみれの兵隊だけで、看護婦のセンタ・バーガーは出るものの、むさくるしく負傷した血だらけの兵隊たちの怒号が、強烈な爆弾炸裂の音でかき消されてしまう。

ハイスピード撮影と、ラフなカットを小刻みにインサートする、あのペキンパらしい演出と視点は、飛び散る腕や首、戦車に二分された死体など、かなり残酷な映像が容赦なく轟音とともに連発。

その過激で残酷な戦闘映像の連続で、77年の公開当時も、映倫や堅物映画評論家の老先生達がしかめっ面をしたというが、北野武さんや、友人だった石上三登志さんは狂喜絶賛していたものだ。

いまでは残酷きわまるバイオレンス・コミックの流行で、このレベルの戦闘や死体の映像には、さほど目線を避けるファンはいなくて、むしろこの血しぶきの戦場には感動するだろう。

ラストで敗色濃厚の戦場で、コバーン伍長が「Ohhh, Shiiiiiiitttt!!!」と吐き捨てる名シーンは、後のクウェンティン・タランティーノ、ジョン・ウーなど多くの監督に影響を与えたという。

 

■強烈なライナーがショートのグラブを弾いて左中間のフェンスを転々の余裕のスリーベース。 ★★★☆☆☆

●8月26日より、新宿シネマカリテ他でロードショー 


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