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新宿駅東口午後7時。青い旗、青い布やスカーフが波を打っている。ヘリコプターが上空を何機か巡っている。数えてみたら、7機もいた。東西対決の双方を空から撮影しているのだろう。あの「政治の季節」と言われた1960年代、新宿は「若者の街」と呼ばれ、西口には毎週土曜日の夜に「ベトナム反戦」を歌うフォークゲリラが現れた。ゴールデン街に行けば、徹夜の議論につきあうこともあった。新宿の街は、それぞれの「青春」を飲み込んで吐き出していく情熱を消化する巨大な胃袋だった。1967年に20歳だった若者たちは、40年経った今年で60歳となったか、その直前にいる。「団塊ネット」の旗もたなびいている。

ポスト団塊世代の私は、1971年の15歳の春「内申書」が理由で高校入試に5校たて続けに落ちて、2次試験で新宿高校定時制に入学した。午後9時で学校が終わると苦いコーヒー一杯180円で「御苑」というマンモス喫茶に入り、はてしない議論を続けた。胸ときめく恋愛も、重苦しい失恋もこの街とともにあった。ありきたりの表現で「ほろ苦い思い出」などと言うが、「新宿」という街をゆりかごにして自己を形成し、政治的思想信条の基盤を得ていった。互いに分かり合えない苦悩と、学生運動が過激化して袋小路に陥っていく「時代」の出口を求めて試行錯誤した。

しかし、私から「新宿」は遠のいていった。いや、私が「新宿」に立ち寄らなくなって久しい。東京都庁が西口にそびえ立った1991年が、メルクマールだったのか。自由よりは規律、歌ではなく沈黙、表現ではなく権威がこの街を抑え込んだ。あいかわらず人々の数は多く、若者や仕事帰りの人々も新宿を行き交っているが、主張のない透明な商品空間となってしまった気がする。

なぜ、こんなことを書いているのか。私もずっと忘れていた「新宿」の話を、ふと思い出した。思い出したと言うより、記憶の深層で眠っていた情感が一斉に蘇ってきたのだ。小説を読んでも、映画でもなかなか思いおこすことのない根底的な記憶には、光、そして味や匂いをともなって身体全体を熱くしていく。私たちが、強い権威をふりかざす闇に心まで縛られ、抵抗したり抗議しても黙殺されたり、また「生の声」ごと梱包されて放り出された屈辱が、感受性を鈍くさせて身体を硬くしてきたのかもしれない。

その緊張と下向きの諦念を、見事に「解凍」してくれた人がいる。フリーズされてきた「新宿の街」に色を塗り、光を当て、鋭敏な触覚を呼び覚ましてくれた。勝手なことを書いてしまった。しかし、こんな気持ちになったのは何年ぶりだろうか。人間の深いところからしみだしてくる誇り、知らない人々が心をひとつにして手を握る輪、そして手から手に増幅されていく熱が「新宿の街」をスペクタクルに反射した。



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