今年の夏、世田谷区にお住まいで亡くなった区民の方から「生前、世田谷区にお世話になっていたので寄付します」と1億円が財産を管理する信託銀行から振り込まれた。生前、公正証書遺言に記した通り、お住まいだったお宅と、高齢者施設の権利などを亡くなった後で処分し、現金1億円を振り込んでいただいたものだった。「生前、世田谷区にお世話になった」とは何を指しているのか。どんな思い出を持って、身辺の財産を区に寄付してくれたのか。ここに、私は大きなヒントが隠されていると感じている。
私が就任してからも、区民から家屋・土地などの寄付の申し出、あるいはその手前の相談などがいくつか続いた。寄付をしたいと考えている区民が、「福祉目的」なのか「子育て支援」なのか、あるいは「文化施設」なのかによって区役所の所管がそれぞれ区民の方に対応してきたという。寄付を考えている方は、家屋や文化財、そして寄付後の利用のされ方に当然ながら大きな思いがある。一方で行政の側は、寄付を受けても維持・管理コストと再利用の仕方が難しいと判断してお断りするケースも決して少なくなかったと聞く。
この数カ月、私は「地域での空き家活用策」を考え続けてきた。世田谷区ではすでに全国的にも注目される活用事例がある。そのひとつが、自宅の「全て、あるいは一部を地域に開放した「地域共生の家」だ。財団法人トラストまちづくりが展開しているのが、「地域共生の家」でまずは、下記をクリックしてユニークな活用事例の写真を見てほしい。
世田谷区「地域共生の家」
また世田谷区社会福祉協議会も「支えあい拠点」として地域スペースを20カ所以上運営している。地域密着で福祉やコミュニティの拠点として区民に親しまれている。これから、区内の地域に根づいたこうしたスペースを見学に出かけようと考えている。地域のスペースに注目し、最近考えていることを次のようにまとめた。
〔引用開始〕
「自治体の力の有限と住民力・自治力の無限」
超高齢化社会を迎え、放置していけば「自治体の膨張」は避けられません。12年前まで介護保険制度はありませんでした。「介護の社会化」についての議論はありましたが、介護保険制度は福祉をめぐる自治体事務の大きなウエイトを占めています。ひとり暮らしのお年寄りの「孤独死」が問題になったこともあり、地域での「見守り活動」も活発に行なわれるようになりました。また、認知症の相談窓口の要望も強くなっています。
これから地域社会の中で高齢化比率は高まり、ますます細部にわたる政策要求が量として厚みを増すのは間違いのないことだと思います。はたして、行政はこれらの需要にあまねく応えきることが出来るでしょうか。
私は行政の力は「有限」だということを示すことも必要なことだと思います。施設建設を次々と行い人員を配置するか民間事業者に運営を委ねるなどして体制を整備していく作業は営々と行なっていかなければなりません。しかし、それだけでは間にあわない福祉や介護の行政需要があると思います。
そこは、無限に行政サービスを膨張させていくのではなくて、住民サービスへと転換をはかることが必要なのではないかと考えます。たとえば、高齢者福祉で言えば「介護予防」「健康づくり」「見守り」といった段階での活動は、地域住民の皆さんの「住民力」「自治力」によってカバァー出来ないでしょうか。
世田谷区内には空き家が35000件あると言われています。マンションなどの空き室が多いにしても、一軒家も相当の数だと思います。夏から秋にかけて、一軒家をお持ちの方からの寄付の申し出がありました。またNPO法が改正となり、運営経費などで苦慮していた市民活動・民間団体が資金調達をしやすくなりました。現在の町会・自治会の単位でも、子育て支援や様々な事業に乗り出しているところが多数あります。
区で場所を提供し、補助金は出さずに、住民に運営を委ねる。ひとつの公共空間には違いはないが役所の運営でも運営委託でもない自治空間であり、相互扶助と協同の機能を持つ空間である。行政は肥大化をせずに、サービスは地域に拡大するという構想です。行政が現在行なっているサービスや近く予定している事業をやめて、切り換えると言っているのではありません。必要な福祉や行政サービスの外側に、自治の力でソーシャルビジネス=社会的事業を展開出来る地域をつくりたいと考えているのです。
今年は「世田谷区政80周年」にあたります。「住民参加」の回路を保証しながら、再生可能エネルギーが区内で飛躍的に拡大することができるように、近く「再生可能エネルギー利用促進地域協議会」の場を開いて準備を始めます。区が土台や基盤を提供して、区民が正確で新鮮な情報を得ることが出来るようにし、事業的な展開は民間事業者やNPOの活力に期待することになると思います。
〔引用終了〕

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