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「かんぽの宿等の一括譲渡」手続きが「一般競争入札」で始まったのか、随意契約で行なわれたのかについて、そうこだわる必要があるのかとの疑問があるだろう。しかし、国民共通の資産が「公正な競争」にもとづいて譲渡されるのか否かについては、慎重で丁寧な手続きとルールが求められる。新聞各紙の報道が一斉に「入札日」「入札箱」「入札札」のある一般競争入札で譲渡先の公募が始まると書いているのを放置して、メリルリンチ日本証券のアドバイスを得た日本郵政は、この譲渡契約に関心・興味を持つ企業に対して交付する「応募要項」に以下のような「随意条項」を忍び込ませていたのである。

 一度、『どこどこ日記』で公開しているが再度、読み返してみることにしよう。

2008年4月1日

メリルリンチ日本証券株式会社
投資銀行部門

かんぽの宿等及びかんぽの宿等を運営する宿泊事業部門のスポンサー選定に関するご案内

[該当個所を以下抜粋]

日本郵政は、本件譲渡の実行を約束するものではなく、その裁量により、いつの時点においても、理由の有無・内容を開示することなく、本プロセス及び本件譲渡を変更又は終了する権利を有し、その単独の意志により、本件譲渡の対象となる施設等の範囲を変更できるものとします。さらに、日本郵政は、理由を明示することなく、いつでも特定の第一次入札参加者又は全第一次入札参加者との交渉を停止する権利を有するものとします。また、日本郵政は、本プロセス中においても、かんぽの宿等事業に関するあらゆる決定を下す権利を有するものとします。本案件について最終契約を締結するまで、貴社の趣意書の内容が日本郵政を拘束することは如何なる意味においてもありません。

日本郵政は、本プロセスにおいて伝達した情報について、書面又は口頭の如何を問わず、随時撤回・変更する権利を有しています。また、日本郵政、メリルリンチ及びこれらの子会社・関連会社並びにこれらの会社の役員・従業員は、本プロセスにおいて提供した一切の資料及び情報等について何らの責任を負うものではなく、貴社及び日本郵政が別途合意した場合を除き、それらが書面又は口頭その他の方法かにかかわらず、その正確性、妥当性、適切性又は完全性について、明示的にも黙示的にも、何らかの表明・保証を行うものではありません。従いまして、本プロセスにおいて提供した一切の資料及び情報等の内容を信頼したことにより貴社が被った損害の賠償を日本郵政、メリルリンチ及びこれらの子会社・関連会社並びにこれらの会社の役員・従業員に請求することはできません。

[引用終了]

ため息が出そうな表記だ。「書面又は口頭の如何を問わず、随時撤回・変更する権利を有しています」ということだから、1ヶ所削るも勝手に出来るんだよといういうことになる。そして、「おいらが言ったことや書面に示したことは、一切保証しないからね。損害を受けたと言っても賠償請求は出来ないよ」と書いてある。さらに末尾に「本書面を受領されることにより、第1次入札参加者は上記の条件及び制限に拘束されることに同意したものと見なされるものとします」とある。文書を受領したら同意手続き終了というスゴイ募集要項だ。

(どこどこ日記からの引用終了)

 何度読んでも身勝手な文章である。「日本郵政はこの譲渡手続きを、いつでも、どこでも、理由を言うことなく、勝手にやめることができますよ。この譲渡手続きにいくらの費用をかけようが、損害賠償請求をすることはできませんよ」という高飛車な条件に、応募要項を読んで応募した人は「合意をしていることとみなす」というものである。日本郵政は法律事務所のアドバイスを得て、この「随意条項」を応募要項に忍び込ませていることを認めている。一方で「一般競争入札」と告知・宣伝して、実際には「オリックス不動産」に一括譲渡を決めたように「会社分割・事業譲渡」の手続きを予定していたし、最終締切り後に「世田谷レクセンター」を外したりした伸縮自在な「商談」で条件を絞り込むことも当初から見込んでいたことになる。そして、「競争入札」という偽装表示を信じて予算と労力を投じた企業から「譲渡対象物件が最後に大きく変更されるなんてルール違反だ」と異議申し立てが出来ないように封じ込めてあるという仕掛けだ。

 最初から「競争入札」などとうたわずに、民間企業にある「事業譲渡(M&A)」をこれからやりますよと日本郵政は正直に言えなかったのだろうか。これも、多くのメディアや識者が勘違いしている「日本郵政は民間企業になったのだから」という誤解だ。民間企業で上場していれば、企画提案を経た事業譲渡手続きを「競争入札」と対外的に発表して、
「一般競争入札」と報道させて、正反対の契約手続きを実行していたことが明らかになれば「虚偽事実の公表」として制裁を受ける。国の機関が虚偽の事実を公表すれば「虚偽公文書作成」となり、許されるものではない。以下の日本郵政株式会社法を読めば歴然としているように、日本郵政は国が100%出資する特殊会社なのだ。官から民へ向かう一里塚にある「特殊会社」なら、何でもやれるというのは実におかしいことだ。

日本郵政株式会社法

(報告及び検査)
第十五条  総務大臣は、この法律を施行するため特に必要があると認めるときは、会社からその業務に関し報告をさせ、又はその職員に、会社の営業所、事務所その他の事業場に立ち入り、帳簿、書類その他の物件を検査させることができる。
2 前項の規定により立入検査をする職員は、その身分を示す証明書を携帯し、関係人にこれを提示しなければならない。
3 第一項の規定による立入検査の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解してはならない。

第十八条  会社の取締役、執行役、会計参与(会計参与が法人であるときは、その職務を行うべき社員)、監査役又は職員が、その職務に関して、賄賂を収受し、又はその要求若しくは約束をしたときは、三年以下の懲役に処する。これによって不正の行為をし、又は相当の行為をしなかったときは、五年以下の懲役に処する。
2 前項の場合において、犯人が収受した賄賂は、没収する。その全部又は一部を没収することができないときは、その価額を追徴する。

第十九条 前条第一項の賄賂を供与し、又はその申込み若しくは約束をした者は、三年以下の懲役又は百万円以下の罰金に処する。
2 前項の罪を犯した者が自首したときは、その刑を減軽し、又は免除することができる。

第二十条 第十八条第一項の罪は、日本国外において同項の罪を犯した者にも適用する。
2  前条第一項の罪は、刑法(明治四十年法律第四十五号)第二条の例に従う。

第二十一条  第十五条第一項の規定による報告をせず、若しくは虚偽の報告をし、又は同項の規定による検査を拒み、妨げ、若しくは忌避した場合には、その違反行為をした会社の取締役、執行役、会計参与(会計参与が法人であるときは、その職務を行うべき社員)、監査役又は職員は、三十万円以下の罰金に処する。

(引用終わり)

 この法律を読めば、鳩山邦夫大臣が報告を求めたことは不勉強な新聞の社説ライターが書くような「横やり」ではないことは議論の余地はない。みなし公務員規定も書き込まれている。西川社長は、「日本郵政は会計法の適用がないから」と逃げの答弁を打っているが、ほとんど知られていないが日本郵政は総務省に「規定」を届け出ている。この内容は、会計法に準じたもので、日本郵政の契約手続きは「一般競争入札」「指名競争入札」「随意契約」の3類型に限っている。2月6日 の予算委員会で私の「この規定のうち、どの契約か明らかにしてほしい」との質問に対して、西川社長が「競争入札と企画提案の混合型だ」と苦しい答弁をしたが、「混合型」などは記載されていない。もし、こうした手続きをしたいのなら総務省に「事業譲渡(M&A)」で会社分割という類型を届け出るべきだったのだ。

 今日は契約手続きの基礎となるべきルールが存在したのに無視をして、どさくさ紛れに処分を急いだ事実を書いておいた。



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