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安倍政権の支持率が39%に続落し、不支持も37%と迫った(前回調査47%・朝日新聞1月23日) 「憲法改正と日本版NSC(安全保障会議)、共謀罪」を参議院選挙の争点にと拳をあげたところで、世論の要望とは方向違いだということは明らかだろう。佐田行革大臣辞任劇から複数の閣僚に広がる不祥事についても、「実態は解明されていない」という人々が85%だ。一昨日は、宮崎知事選挙では、そのまんま東氏が自民・公明の押す候補をダブルスコアで破って当選した。「選挙の顔」として他に勝る者なしとの認識で自民党総裁に各派相乗りで持ち上げられた安倍総理が、「選挙の壁」になったのだとしたら、自民党も浮足立ち春にかけてバタバタする可能性がある。

その安倍政権だが、支持率アップの「再チャレンジ」のために「教育」をとことん使おうとしている。教育再生会議なるごった煮井戸端会議を打ち上げて、急いだあげくの第一次答申を見て、愕然とした。思いつきの継ぎ接ぎで一貫性がなく、おそろしくレベルの低いものだ。私は教育問題で、歴代政府の「教育改革」をジャーナリスト時代から論じてきたが、中曽根内閣で故香山健一氏らが牽引した「臨時教育審議会」の議論は、まだ議論のしがいがあった。時代の進歩にあわせて、教育という営みを進歩させていこうという意志や論理の体系を感じることが出来たからである。

教育再生会議の第1次報告は、「7つの提言」と「5つの緊急対応」で構成されているという。正式のとりまとめは24日のようだが、安倍総理が、この教育再生の旗印で「教育の安倍」を打ち出そうとしているのは間違いない。新聞に掲載された要旨から骨格となる内容を確認してみよう。


★教育再生会議「第1次報告」要旨
「教育再生のための当面の取り組み」(『七つの提言と五つの緊急対応』)

 《七つの提言》

【1】ゆとり教育を見直し、学力を向上する
「基礎学力強化プログラム」▽習熟度別指導の拡充▽地域の実情に留意のうえ学校選択制の導入

【2】学校を再生し、安心して学べる規律ある教室にする
出席停止制度を活用、警察と連携▽反社会的行動を繰り返す子供に毅然(きぜん)たる指導

【3】すべての子供に規範意識を教え、社会人としての基本を徹底する
「道徳の時間」の確保と充実▽高校での奉仕活動の必修化▽大学の9月入学の普及促進

【4】あらゆる手だてを総動員し、魅力的で尊敬できる先生を育てる
社会の多様な分野から積極的、大量に教員に採用▽メリハリある給与体系で差をつける▽不適格教員は教壇に立たせない

【5】保護者や地域の信頼に真に応える学校にする
「教育水準保障機関」による外部評価・監査システムの導入▽副校長・主幹等の新設▽民間人校長など管理職に外部の人材を登用

【6】教育委員会の在り方そのものを抜本的に問い直す
危機管理チームを設ける▽教職員の人事権は市町村にできるだけ移譲▽教委の基準や指針を国で定めて公表し、第三者機関の外部評価制度を導入

【7】社会総がかりで子供の教育にあたる
「家庭の日」を利用しての多世代交流▽地域リーダー(教育コーディネーター)の育成

《五つの緊急対応》

1、「ゆとり教育」の見直し=早急
2、教育委員会制度の抜本改革=07年通常国会に提出
3、教員免許更新制導入=07年通常国会に提出
4、学校の責任体制の確立等=早急に国会に提出
5、反社会的行動をとる子供に対する毅然たる指導のための法令、通知等の見直し=06年度中

どうだろう。いかにも「箇条書き」風のプログラムに共通点があるとすれば、チーム安倍好みの「出席停止」「警察との連携」「規範意識」「道徳=修身」「高校での奉仕活動義務化」「不適格教員の教壇からの排除」「教育委員会制度への外部評価機関の導入」などの文言が並ぶ。なぜ、このように権威的で外圧に頼る強制措置を好むのか。「平成の教育勅語(=教育基本法改訂)」の後で、断固たる規律と強制で学校現場を統制していく治安維持的な発想が目立つ。子ども自身が豊かな個性を伸ばし、好奇心・探究心を跳躍させていく自由で自律的な教育への余地は、ぐっと狭められてしまう。

東京都教育委員会は「職員会議での挙手採決」も禁止している。教員は校長に従い、校長は区・市教委に従い、かれらは都道府県教委に従い、すべては文部科学省が握る。教育における国家の関与を強めていけば、ただでさえ官僚的な教育行政はより硬直化する。文部科学省だけでなく、警察と自衛隊も積極的に「規範意識「愛国心」を養うために、学校へのコミットを強める。「高校の奉仕活動義務化」の具体策は、自衛隊体験入隊というメニューが用意されるまで、あと一歩だ。

もの言えない教員、もの言わない生徒……だから、いじめが沈殿した子どもたちの人間関係を混線させる。「いじめている生徒」と睨んで教室からつまみ出したら、安全地帯の黒幕的な立場にいる要領のよい子はほくそ笑み、同時に「いじめ被害」を訴えた子への証拠と顔のない報復を指示することだろう。

再生会議に聞きたい。いじめが反社会的な行為だとしたら、断罪されるべきなのはその行為にギャラリーとして加担し、また無関心を装いながら遠巻きに見ている子たちの責任も問わなければならない。クラス40人のうち、25人を出席停止にするような事態を想定しているのか。ひとり、ふたりを教室からつまみ出した後で、彼らを学校から放り出したらどうなるのか。

地域が荒れる。校内暴力時代に学校から放り出された子どもたちは、地域を徘徊し「犯罪」の実行者となったケースも少なくない。「学校」という現場からは問題は消失したが、「地域」に犯罪の種をまくような形で「学校から追い出す」わけにはいかない。とすれば、「いじめに加担する子たち」に対しての家庭や生活全般にわたる社会的支援を怠ってはならない。「ダメな子は放り出せ」というのは即効性があるようにも思えるが、その高すぎる対価を私たちの社会は5年後の「治安の悪化」として引き受けなければならなくなる。

私は日本の教育でもっとも改革しなければならない点は「授業」にあると思っている。10%授業時間を増やしたら学力が向上するというのは、半世紀前の1960年代の感覚だ。多くの学校の授業を見る機会があったが、10年前も20年前も30年前も変わらず、いわば時代と関係なく授業を行っている。これから、意欲的な教員の自主的な努力は管理統制型の学校運営でますます難しくなるから、「授業」の質は劣化の一途をたどるような「教育壊滅」の事態を招いてしまう。このまま、安倍流の教育改革が進めば、公立学校は収容所化して、富裕層は私立学校に逃げこむ。

教育再生会議の「提言」と「対応」については、今後も注視をしていきながら国会論戦で追及したい。

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