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 諫早湾干拓の現場を取材した時に驚いたのは、干拓農地を「エコファーム」と呼んで、売り出そうとしていることを知った時だ。有明海に深刻な汚染と漁獲高の減少をもたらした諫早湾干拓・調整池の潮受け堤防の締め切りは「環境破壊のシンボル」として全国的に有名になった。「環境破壊」の烙印は、「環境農地」で打ち返すしかないというのは、イメージ操作が得意な広告代理店のよくある手法だ。干拓地に出来た入植農家は「エコファーム」をめざしているので、潮受け堤防を開門すると農地に悪影響が出て「エコファーム」が危ない。「開門し環境を守れ」という旗を開門派に独占させないために「エコファーム」でイメージを相対化する。

 同じことが、地球温暖化をめぐる原子力発電で起きていないだろうか。1979年のアメリカのスリーマイル事故、1986年のチェルノブイリ事故は、世界中で「脱原発・環境政党」の「緑の党」を急成長させた。「グリーン」「環境」は原子力発電を抑制する大きな旗だった。ところが、2010年の日本では原子力産業が「エコ」「環境」の旗を掲げている。逆説が大手をふってまかり通っている。すなわち「環境にやさしい原子力発電が地球を救う」というイメージが大金をかけた広告で流布されている。

 ところが、日本では3年前に原子力発電所の直下を揺らす中越沖地震が起きた。2007年7月、私たちの目に飛び込んできたテレビニュースは、黒煙をあげて炎上する柏崎刈羽原子力発電所を映し出した。あの衝撃は、忘れられない。数日後、私は社民党視察団として被災現場に入った。黒こげになった施設(幸いにも原子炉建屋の外側だったが)や、敷地ないを鋭く裂いた地割れなどを撮影し、東京電力に情報公開を求めた。この原発被災は「大事故」の一歩手前だったが、いったい何が起きたのか政府も電力会社も積極的に明らかにしようとしなかった。秘密主義、隠蔽体質が残っていると私たちは批判した。



07年7月23日 柏崎草羽原子力発電所で漏れた汚染水除去作業(保坂撮影)

 この史上初の原子力発電所が直下型地震に見舞われたという大事件であったにもかかわらず、日本の国会では「集中審議」も行なわれていないというお寒い事実だ。当時は、参議院選挙中ではあったが、本来であれば衆議院文部科学委員会が閉会中審査をすべきであっただたろうし、直後に招集された特別国会でも審議は可能だった。
しかし、社民・共産の議員がわずかな時間を使ってふれるだけで、国会の議論は著しく低調だった。

 地震直後、柏崎草羽原子力発電所の被災について、メディアは大きく報道したが、国会・政治はまったく動かない。また、そのことを「政治部記者」も当然と考え、違和感を抱かない。残念ながら、自民党と民主党が「原発政策」について推進で一致していることが大きな原因だった。

 2005年に国際原子力機関(IAE)が世論調査をすると、76%の国民が「原発増設には反対」という結果だった。明確に「反対」とは言えなくても、「原子力発電の推進」に疑問を持っている人、原子力発電の現状は認めつつも「段階的縮小」に移行するべきだと考えている人たちも含めれば、かなり多いはずだ。しかし「民意」は小選挙区制度によってねじまげられる。第一党と第二党が共に「原発推進」である場合、多くの人が望んでも原発の安全性の議論は行なわれなし、政治争点化されることはない。

 先日もチリ大地震で日本列島にも津波がやってきた。17年ぶりの大津波警報だったが、日本近海で同レベルかそれ以上の地震がおきる確率は高い。浜岡原発では、昨年8月の駿河湾地震で大きく揺れて5号機がストップする事態となった。
 原子力発電には、通常運転中の事故リスクに加えて、地震・津波などの自然災害リスク、さらに原発依存型社会になれば必然的に出てくる「放射性廃棄物」の処理施設、最終処分場などの見通しが出来ていないなど他の発電と比べようもなく大きなリスクが存在する。

 環境対策であれば、再生可能な自然エネルギーにシフトしていくべきであって、「原発、原発でどんどんやろう」という時代ではないはず。六ヶ所村の再処理工場は事故・トラブル続きで頓挫したままで、湯水のような予算を飲み込んでいる。有害・無謀な公共事業の典型だが、「仕分け」をまぬがれている。15年も休止していた高速増殖炉もんじゅの運転再開が伝えられている。

「地球温暖化対策=原発増設」という図式は、世界的なものだ。今後、この倒錯したイメージ操作の発信源をつきとめ、解析していく作業を進めたい。

 









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