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 8月下旬、かねてから、じっくり見て歩きたいと考えていたデンマーク・ロラン島を中心に、取材・調査を行う機会に恵まれた。報告の第1弾は、「太陽のまちから」の最新記事「風力を半分に 藻の活用や糞尿発電所も」(2013年8月27日)にすでに、アップされている。福島第一原発事故の汚染水流出が深刻化する中で、ぜひデンマークの取り組みを見ながら考えてほしい。

デンマーク 「自然エネルギーの島へ」


この夏、私はバルト海に浮かぶデンマークのロラン島を1週間の予定で訪れます。自然エネルギー先進地の視察が目的です。

 ロラン島のことは、このコラムでも「自然エネルギーで収益を生む風車の島」というタイトルで取り上げたことがあります。使用する電力の5倍を風車から生みだし、余剰電力から水素を取り出して家庭用の燃料電池に充填する「水素タウン」や「藻の活用」研究など、多面的な取り組みが際立っています。

 この島で、環境エネルギー政策の牽引役となってきた市会議員のレオ・クリステンセンさんを招いて、「自然エネルギー活用による地域づくり」と題した

シンポジウム(主催:世田谷区 後援:環境省、デンマーク大使館)を開いたのは7月初めのことでした。そのときの講演内容の概略をご紹介します。

    ◇

 離島と呼ばれる地域で「持続可能」という切り口を成長戦略に据えたらどうなったか。「スタンスから行動へ」というテーマでお話したいと思います。

 ロラン島は、デンマークの南部にあり、面積1243km²、人口6万5千人ほどの島です。豊かな土壌と水に支えられ、農業が主力の土地ですが、近代化以降、造船などの産業が生まれ、繁栄に酔っていた時期が長く続きました。石油ショックさえ大きな影響を与えないほど、経済は盤石であるように思えました。

 しかし、1979年からの7年間で、造船所が次々と閉鎖に追い込まれました。それにともなって鉄鋼や食品産業も衰退し、その下請け企業も倒れてしまったのです。失業率は40%に達し、エンジニアや管理職等、インテリ層も島に見切りをつけて離れていきました。以来30年近くにわたって、逆境の時期を迎えることになったのです。出口のないトンネルは絶望の底へと続いているようでした。

 98年、ロラン島が目覚めます。きっかけは、新しいビジョンを持った市長が就任したことでした。新しいビジョンとは、エネルギーと環境の分野において最も持続可能な自治体を目指そう、というものでした。この勇気ある政治的リーダーシップと、積極的に行動しようとする市民がいたことで、いまでは、自分たちの使う電力の5倍のエネルギーを風力で生み出すことができるようになったのです。

 こうしたエネルギー分野で年間300億円を売り上げ、農業分野では500億円の規模を誇ります。彼らは風力発電機を農地に設置して、食糧だけでなくエネルギーも収穫しているのです。

 ロラン島は、地域全体が大規模な研究所となっています。現在、エネルギーや環境の技術革新をはじめ35ほどのプロジェクトが並行して進んでいます。

 たとえば、「R水素」プロジェクト。Rは「Renewable(再生可能)」の頭文字です。風力などの再生可能エネルギーによって水を電気分解して取り出した水素を、パイプラインで各家庭に送り、そこに設置されている水素ユニットを通して熱や電気を取り出すというものです。現在、35軒の家庭で実証実験が進められていますが、近く1万軒に広げることになりました。この実験は将来のスマートグリッド(次世代送電網)の構築に役立つと期待されています。

 また、北西部のオンセヴィ気候パークでは、75haの農地を守るため、新たな堤防をつくることになりました。そこでは、堤防の内側に貯めた水を使って藻の培養実験をしています。藻をバイオマスととらえ、そこからエネルギーを生み出すことができれば収入を得られ、そのお金で堤防建設にかかる費用をまかなおう、という試みです。

 ロラン島はいちばん高いところでも海抜25mしかなく、年間5千~7千万m³の水を汲みだしていますが、ここでも藻によるエネルギー生産が検討されています。

 さて、私が最後にどうしても言いたいのは、「話しているだけでは始まらない、実際にやってはじめて新しいことが学べる」ということです。

    ◇

 このクリステンセンの言葉を世田谷で実践に移すべく、近くデンマークを訪れる予定です。自然エネルギー活用のトップランナーの最新事情についてのレポートを次回以降、お伝えするつもりです。

(「太陽のまちから」2013年8月20日)

 

 



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