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 ひさしぶりにSNSによる記事拡散の力を実感したのが「太陽のまちから」の連載の10回目となった3月5日付の記事だった。記事がアップされると、みるみる間に文末にあるFACEBOOK「おすすめ」を押してくれた人が増え続け、翌日に5000、3日で10000を超えた。ツイッターのリツイートも1400となり、一挙に広がった。あまりの反響に4月8日には、追加イベントを打つことになり、地域からのエネルギー転換への強い関心と手応えを感じる。

東京電力をやめて年間6000万円の節約


 ちょうど1年前、世田谷区は111カ所の区施設で使う電気の購入先を東京電力から変更しました。競争入札をして、PPS(新電力=特定規模電気事業者)から購入することにしたのです。それによって、2012年度は東京電力と契約を続けた場合に比べて、2940万円の経費削減が実現することになります。

 この2月、2回目となる競争入札を実施しました。来年度は対象施設を150カ所に広げ、清掃工場に付属する発電事業者も加えると、全体で163施設にまで膨らみます。その結果、2013年度の削減効果額は倍増の6650万円になります。東京電力の電気料金の値上げの影響が効果額をさらに押し上げています。

 世田谷区の施設は全部で約600カ所あり、このうちPPSと契約できると電気事業法で定められた施設(電圧6千ボルト以上で契約電力が50キロワット)は217カ所。今回、その75%をPPSに移行させることになります。心配していたPPSの供給力に見通しが立ったことで、今後のはずみにしたいと思います。

 こうした公共施設の大口契約だけでなく、一般家庭への電力自由化を視野に入れた議論が始まっています。3月2日に開かれた「世田谷発、電力を選べる社会へ」というシンポジウムには、約350人が集まりました。

 実行委員会には、「3・11」以後、エネルギー問題に取り組み始めた生活協同組合や、市民団体、研究者、事業者等が名を連ねました。パネル討論には、経済産業省資源エネルギー庁の担当者も参加しました。消費者の側から電力供給システムに声をあげていこう、という本格的な動きの始まりです。

「電力自由化」のあり方を議論してきた電力システム改革専門委員会が2月にまとめた報告書には、次のように記されています。

<震災を機に「電力を選択したい」という国民意識が高まり、エリアの一般電気事業者から決められた価格で購入することを当然だと考えない需要家が増加した。加えて、節電の実施や計画停電の準備を通じ、多くの需要家がピーク時の電力使用量の抑制が大きな経済価値を持つことに気づくことになった>

 専門委員会の委員として報告書づくりにも関わった富士通総研主任研究員の高橋洋さんはこう語りました。

「電力システム改革のめざすところは、料金規制と地域独占によって行わてれきた電力供給を、国民に開かれた電力システムの下で、事業者や需要家の『選択』や『競争』を通じた創意工夫によって実現することにある、と明記されていることが重要です」

 シンポジウムのなかで発表された「電力自由化に関する意識調査」(対象者665人)によると、「電力自由化の推進」について「大いに期待する」が28.1%、「期待する」が45.3%。合わせて7割以上が期待を寄せていることがわかりました。また、都内2千人の組合員を対象とした東京都生活協同組合連合会の調査では、8割近くが「電力会社を選んでもいい」と考えており、約44%が「再生可能エネルギーを利用した電力であれば、東京電力より価格が多少高くてもかまわない」と考えている、との報告もありました。

 買いたい人がいて、売りたい人もいる。原発によらないグリーン電力のマーケットの裾野は着実に広がっています。しかし、電力会社の地域独占と規制行政の壁によって阻まれているのも事実です。

 3・11の経験をふまえてエネルギーの転換を進めていくには、太陽光発電の普及や省エネの実現などすぐにできることに加えて、「電力供給システム」の改革が不可欠となります。すでに、生協単位で太陽光発電を利用しているほか、風車を建設したり、小水力を電源にしてPPSをたちあげたりといった試みも始まっているようです。

 これまで自分が使う電気の購入先を選ぶことのできなかった消費者が力をあわせて、みずから選んだ「電力」をオーダーする。そんな「電力の共同購入」が近い未来にはあたりまえになっているかもしれません。エネルギー転換が始まる日はそう遠くない――。そう感じさせられたシンポジウムでした。

[太陽のまちから「東京電力をやめて年間6000万円の節約]

3月19日掲載の続編→「太陽のまちから「電力の共同購入」という潜在的市場

 追加イベント「世田谷発 電力を選ぶ社会へ ビジネス編」(4月8日・新電力研究会)



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