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裁判員制度の知られざる「罠」、裁判員面接での選別の論理
裁判員制度を問う
/
2007年05月27日
昨日のブログには大変な数の反響を頂いた。土・日にも関わらず、弁護士会内部でも賛否両論の議論が起きているようだ。「裁判員制度」の導入が全国民を対象にしているだけに、誰もが「警察官の捜査を信用出来ますか」と裁判官から尋問を受けて、「NO」と答えた人たちはこの質問を要求した検察官から「理由を示さずに忌避」されて不選任となるという事態に正直言って私は驚いた。ところが、裁判員制度に関わってきた関係者からは、「何、今ごろゴタゴタ言ってるの。アメリカの陪審制でも同様の制度があるし、04年の立法当時にもそう議論にならなかったじゃないか」と、「驚いている人たちが出てきたことに驚く」という反応があるらしい。「アメリカでも陪審制…」と言う人たちに聞いてみたい。アメリカの捜査と日本の捜査は透明度は同一なのだろうか、と。陪審員が全員一致で判断するかどうかで有罪・無罪を決める陪審制と、多数決に従う日本の裁判員制度は同一の制度ではない。さらに、そのアメリカでも冤罪事件が後を絶たないことも忘れてはならない。
ここで、「面接・質問」と「忌避」「不選任」の条文を見ておこう。
「裁判員の参加する刑事裁判に関する法律」
(裁判員等選任手続の方式)
第三十三条 裁判員等選任手続は、公開しない。
2 裁判員等選任手続の指揮は、裁判長が行う。
(省略)
(裁判員候補者に対する質問等)
第三十四条 裁判員等選任手続において、裁判長は、裁判員候補者が、職務従事予定期間において、第十三条に規定する者に該当するかどうか、第十四条の規定により裁判員となることができない者でないかどうか、第十五条第一項各号若しくは第二項各号若しくは第十七条各号に掲げる者に該当しないかどうか若しくは第十六条の規定により裁判員となることについて辞退の申立てがある場合において同条各号に掲げる者に該当するかどうか又は不公平な裁判をするおそれがないかどうかの判断をするため、必要な質問をすることができる。
2 陪席の裁判官、検察官、被告人又は弁護人は、裁判長に対し、前項の判断をするために必要と思料する質問を裁判長が裁判員候補者に対してすることを求めることができる。この場合において、裁判長は、相当と認めるときは、裁判員候補者に対して、当該求めに係る質問をするものとする。
3 裁判員候補者は、前二項の質問に対して正当な理由なく陳述を拒み、又は虚偽の陳述をしてはならない。
4 裁判所は、裁判員候補者が、職務従事予定期間において、第十三条に規定する者に該当しないと認めたとき、第十四条の規定により裁判員となることができない者であると認めたとき又は第十五条第一項各号若しくは第二項各号若しくは第十七条各号に掲げる者に該当すると認めたときは、検察官、被告人若しくは弁護人の請求により又は職権で、当該裁判員候補者について不選任の決定をしなければならない。裁判員候補者が不公平な裁判をするおそれがあると認めたときも、同様とする。
(以下省略)
この法律は04年の国会で全会一致で成立している。しかし、この裁判長の質問の具体的な内容と、検察官の「忌避」と不選任の流れが、明確に語られることはなかった。国会審議の議事録で具体的に掘り下げた議論の形跡はない。たしかに「被告人」「弁護士」にも「忌避」の権利が同等にあるじゃないかという指摘もあるだろう。裁判員法は「公平な裁判をするかどうか」で国民を選別しようとしているが、
私たちは「裁判所が公平な裁判をするかどうか」を問うているのである。「公判前整理手続き」という名で「裁判迅速化」が進み、「厳罰主義」の風潮の中で「被告人」「弁護士」は、検察官と対等に選任手続きに臨めるだろうか。たぶん、昨日のブログで紹介した「質問案」を見て、私は背筋が寒くなって鳥肌が立ってしまった。それは「直観的」「感覚的」なものかもしれないが、公権力が国民をくじで呼び出しておいて、「警察を信じるか」「死刑についてどうか」と思想・信条、内面の関わる質問をしようとしていることに拒否感が強いのだ。弁護士の
『ヤメ記者弁護士さんのブログ』
も、さっそく反応してくれた。以下、紹介する。
(引用開始)
これは、大変なことだ。警察官の捜査に対して、批判的な気持ちを持っている人は、裁判からはずしてしまう。少しくらい、警察官が行きすぎたことをしていても、まぁ、悪いことをした奴を自白させるには手荒いこともしないとねって許してしまう人ばかりが、裁判員になるかもしれないということだ。
質問自体は、「警察の捜査は特に信用できると思うような事情、あるいは逆に、特に信用できないと思うような事情がありますか」という一見公平なものであるから、問題ないのではないか、という反論がありそうだが、「特に信用できると思うような事情」がある人なんているだろうか?やはり、具体的には、「特に信用できないと思うような事情」が問題になるケース、例えば、自分の身内が警察の取調で酷い目にあったから信用できない、などというケースがほとんどだろう。
その場合、検察は、裁判員から外してしまうことができるのだ…。あきれはてる。警察を信用する人によってしか裁判ができない、しかも、その裁判は、まさに警察官が証人として採用され、その証人の信用性が問題になろうとしているものばかりというのだ。刑事裁判が市民にさらされ、警察の不適切な捜査が市民によって問題化されることを恐れているのだろう。このような質問を用意すること自体、毛札は信用できないと自白しているようなもんだ。
陪審制を採用している米国でも裁判官の質問制度はあるが、このようなアホな質問は許されない。
例えば、マサチューセッツ州では、①事件の当事者・証人・弁護士を知っているか、②その事件について個人的に知っていたか、又はテレビ・ラジオ、新聞等から知っているか、③当該事件及びこの種の事件に意見を発表したり、又まとめたことがあるか、④どちらかに何らかの先入観又は偏見を持っているか、⑤当該事件に個人的興味・関心を持っているか、⑥その他当該事件に公正に対処できない何らかの事情があるかどうかの6問である(「陪審制度」第一法規)。
まさに、その具体的な事件について、不公平な裁判をするかどうかが、問題とされているのであって、それ以外の政治信条について聞くことはない。
なお、裁判員制度に伴うこの質問制度の問題点は、以上のことだけではない。
死刑の適用が問題となる事件については、「起訴されてる○○罪について法律は、『死刑または無期懲役または○年以上の懲役に処す』と定めています。今回の事件で有罪とされた場合は、この刑を前提に量刑を判断できますか」という質問を裁判官にさせることができる。そのうえ、「できない」と答えた場合、「証拠によってどのような事実が明らかになったとしても、絶対に死刑を選択しないと決めていますか」と聞くというのだ。
はぁ、それじゃあ、死刑積極論者しか残らないではないか!
この質問がもし許されるとしたら、反対の質問として、「人を殺したら原則死刑にするべきだと思うか」という質問をして、するべきだと答えたら、排除する制度がある場合のみだろう(このような質問自体が許されないと考えるが…)。
変な裁判員制度…。(引用終了)
幸いあと2年の時が残されている。今、きちんと議論をし徹底的に制度を検証しておかないと、取り返しがつかなくなってしまうと私は考える。
(昨日に引き続き、引用歓迎です)
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