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週刊法律新聞に以下の原稿を書いた。アメリカが共謀罪批准にあたって条約5条を留保していたというのは、驚きというしかない。日本政府が頑なに国際組織犯罪 条約の要求を100%入れて国内法制化を急ごうとしていたが、この事実が明らかになった以上は原点に立ち戻って共謀罪を廃案とし、我が国の刑法体系に外科手術的な変更を強要することのない法整備で条約と向き合うことを考えた方がいい。以下、その原稿だ。

共謀罪の通常国会における審議の中で、もっとも不思議だったのが諸外国の状況について野党側から質問を受けた外務省が、「知りません」と繰り返したことだった。こうした答弁を知ったフランスの友人からメールが届いて、日本では大騒ぎになっているようだが同国では「たったひとつの共謀罪」が国際組織犯罪条約の批准後につくられただけであるというのだ。

フランスには刑法典450-1条「凶徒の結社罪」があり、いわゆる参加罪の類型を選択して条約批准をしてきたと私は理解してきた。ところが、国連の照会対して報告されたフランス政府の回答は、「共謀罪を選択している」とのことだ。友人が知らせてくれた新設された共謀罪とは、「暗殺と毒殺をするよう、誰かに何か報酬や贈り物をあげるか、あげると約束した者は、その犯罪が行われなくても10年の禁固刑と15万の罰金を受ける。犯罪が実行・未遂された場合はこの条項ではなくて、共犯として罰せられる」(04年3月9日刑法改正)というもの。

さらに、日弁連の各国状況の分析の結果、意外な事実も判明した。アメリカ合衆国が国際組織犯罪条約を批准(05年11月)するにあたって、なんと条約5条を留保していたのである。アメリカ州法は、この条約に規定されている全ての行為を犯罪化しているわけではなく、一部の州では「極めて限定された共謀罪」しかない。一方で、連邦刑法には共謀罪が規定されていて、州際的な行為や外国の通商に関わる行為に適用される。しかし、「州内で行われる局地的な共謀」までの連邦法の適用はない。条約を批准するにあたって、アメリカは州内で行われる行為まで犯罪化する立法措置はしないという「留保」を行っている。

国際組織犯罪条約を金科玉条として、この条約に忠実な法整備が要求されているのだと強調して、日本国内に立法事実はないのは重々承知した上で、条約との整合性のために619種類の共謀罪を提案した日本政府の姿勢とはだいぶ違いがあるではないか。アメリカ政府の対応は、むしろ締約国の刑事法制を尊重する世界各国の潮流だということがわかってくる。これは、大谷美紀子日弁連国際室長の調査で明らかになった。

さらに、2004年5月に批准をしたセントクレストファネービスSAINT CHRISTOPHER AND NEVIS(カリブの島国)は、共謀罪が犯罪とされる場合には、国と国をまたぐ「越境性」を帯びている場合のみを要件としている。「そんな国もあったのか」と目から鱗だ。しかも、同国は、批准にあたって条約の留保も解釈宣言も行っていない。民主党が「越境性」を要件に加えた修正案を先の国会に提出したが、外務省・法務省ともに「絶対に無理だ」という姿勢だった。最後に与党の奇策だった「民主党案の丸飲み」に麻生外務大臣が異を唱えたのも、「越境性」を付していては条約を批准できないという点にこだわってのではないかと思われる。

自民党総裁・次期総理が確実視される安倍晋三官房長官は、「共謀罪の整備を急がなければならない」と前のめりの姿勢を示しているが、国会答弁で外務省・法務省が条約締結国の国内法整備についてまったく情報を出さず、「留保」や「解釈宣言」についてもトボケていたのも、天地がひっくり返るような騒動をこの条約の国内法整備にあたって巻き起こした国は日本以外にないということが露わになることを恐れていたからではないか。

秋の法務委員会で、各国の法整備状況を精査し、619種類の共謀罪という途方もない刑法体系を覆す政府案を廃案にして、国際組織犯罪条約の法制化のための「国連立法ガイド」のさし示す「国内の法的な伝統、原則と一致するようにしなければならない」「適切な法的な概念を持たない国」では、共謀罪制度を導入せずに、組織犯罪に対して効果的な措置を講ずる選択肢が許されている」という原則に立ち返って、やり直すべきだろう。秋の国会攻防の最大の焦点は、ここにあると言い切っていい。


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