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 タイガーマスクで「児童養護施設」の現状にスポットがあたってから1カ月余り。一過性の報道と言えばそれまでだが、話題も下火になりつつある。しかし、戦後長い間、これだけ「児童養護施設」が話題になり、語られたことはあまりなく、実情の改善に結びつけるいいチャンスが続いているのは言うまでもない。「タイガーマスクはマスクを脱いで施設の中に入ってきたほしい」という施設からの呼びかけもあり、もう一度、ここでは課題を考えてみたい。

私は「児童虐待防止法」という法律を2000年に超党派の議員立法で成立させる際に奔走した。現在は、2度の改正が行なわれて、児童虐待の「早期発見・通報・保護」を進める基礎となった。一方で、関係機関は「通報数」のうなぎのぼりに十分対応が出来ずに、いたちごっこのように「体制整備・人員増強」の措置を求めてきた。

 こうして、何年かに一度「児童虐待防止法」の課題を整理し、超党派で議論する作業をやってきて気になるのが、親からの分離・生育が長期にわたる被害児童たちが暮らす児童養護施設の現状と、18歳で施設を出ていく時の支援が十分でないという問題だ。今回、タイガーマスク問題で『週刊朝日』でも取材する機会があり、いくつかの問題点が見えてきた。

 児童福祉法は、児童養護施設で子どもを18歳の高校卒業時までとしている。同法の児童の定義は18歳未満だが、特例措置として20歳までの延長が出来ることになっている。児童養護施設関係者によると、現在施設は定員ぎりぎりのところが多く、「子どもの自立をはかるための継続的な支援が必要とされる場合」という条件が厳しく、原則は18歳で出ることになっている。「19歳で定時制高校卒業時まで在所する」などの事例もあるが、ほとんどの子どもは18歳から20歳までの間を自立・自活して過ごすことになる。

「成年」「未成年」の区切りは20歳である。NTTドコモの携帯電話契約拒否問題は、民法の上で「未成年」である子どもの携帯電話契約にあたって施設長が「保護者代行」で署名・捺印しても、親権者である親が「契約の取り消し」を要求してきた時に対抗措置がないというのが理由だった。他の他の携帯電話会社が」施設長の同意で良し」として契約を結ぶことが可能になったから良かったが、「児童虐待」のケースで裁判所の命令を受けて児童養護施設に入所している子どもが、親の所に印鑑をもらいに行くことは困難である。

 親から追跡され、取り戻されることをおそれて「住民票を移動していない」ケースもあり、金融機関などで預金・貯金通帳をつくることすら困難だという声も聞いた。この春から「子ども手当」を子ども名義の通帳でプールし管理することが出来るようになるが、金融庁が対処策を打つことが求められる。「親と共に暮らす子」が多数派で、「児童養護施設や里親と共に暮らす子」は少数派である。しかし、親が育てることが困難な子どもを、社会的養護の枠組みで育成していくという仕組みの中にいる子どもたちが、社会に出ていく時には様々な社会的契約を果たさなければならない。それが出来ないのは、政治や行政の不備に他ならない。

 18歳の退所時に施設長が保証人となり、アパートの賃貸契約をした場合でも、仕事の都合や転職などで19歳でアパートを引っ越ししなければならない時には、たちまち困惑することになる。20歳を過ぎてからも、この問題は残るが、特に未成年の場合は決定的なハンディとなる。「親に代わって社会が育てる」という枠組みをつくったはずなのに、社会に一歩出ようとすると「少数派ゆえの事情」で排除され、差別されて、社会生活の一歩を記すのにへとへとになるという状況は変えなければならない。

 2000年にはイギリスで法改正があり、施設で暮らす年齢を20歳に引きあげて、大学等に進学する場合は23歳まで在所出来るように変えたという。児童養護施設からの「出口支援」政策で、18歳から20歳までの時期の支援の充実を考える必要がある。さらに、20歳を超えても卒業まで利用出来る「学生寮」が建設出来ないだろうか。新しい箱ものは難しいと言っても、国が管理する土地・建物を利活用して、全国に5~6カ所の学生寮を建設して、「生活の場」が確保されれば進学率も必ずあがる。

 昨年、国が児童養護施設を出る子どもたちに、手渡した支度金は800億円の予算のうち、わずか2億1621万6000円(平成21年度)にすぎない。この進学・就職に対しての支援体制の構築ことが最大の課題だ。

2月11日午後9時より

週刊朝日UST劇場、ゲストは保坂展人さん@。児童養護施設の話を掘り下げます。出演:山口編集長@、成瀬久美@ ( live at )



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