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裁判員制度の実施直前に、湯水のような広報費が注がれているが、国民の認知率は向上しても、参加意欲を問われれば「やりたくない」と答える人が8割を超えている。今朝、開催された社民党の常任幹事会でこの秋の臨時国会を前にして、「裁判員制度」について党内の専門部会(内閣法務部会)で議論を開始することになった。裁判員法は衆議院・参議院を全会一致で通過したが、社民党内では次のような論点を確認して議論をしていた。(私は、浪人中だったために判らなかったが、政策審議会のスタッフに昨日、当時の記録を出してもらった)

2003年12月10日社民党政策審議会事務局

裁判員制度について(メモ)

 社民党は、一般国民が裁判官から独立して事実認定を行なう陪審制がのぞましいと考えてきたが、裁判員制度も現状と比較すれば大きな前進として評価している。

●対象について

 10月に公表された裁判員制度・刑事検討会井上座長試案では①死刑又は無期の懲役若しくは禁錮に当たる罪、②法定合議事件で故意の犯罪行為により被害者を死亡させた罪を対象と提起されている。社民党としては刑事事件以外への制度の適用も含めより幅広くこの制度が活用されるべきだと考えているが、当面はこれでかまわない。なお、被告人の同意も要件とするべきである。

●合議体の構成と評決について

 合議体の構成については、裁判官1~2人、裁判員6~9人とするべきである。井上試案の裁判官3人裁判員4人では裁判員側の意見が十分に反映できない可能性がある。また裁判員の要件は満20歳以上の成年であればよく、選挙人名簿からの抽出でかまわないが、本来は定住外国人等も含めた裁判員候補者名簿の作成をめざすべきである。
 評決については、原則として全会一致をめざすべきである。「裁判官と裁判員の合議体の員数の過半数であって、裁判官の1名以上及び裁判員の1 名以上が賛成する意見」でよいとする井上試案では不十分である。

●守秘義務について

 井上試案の罰則つき守秘義務には反対である。職業裁判官と同様の倫理規定でかまわない。プライバシーへの配慮は必要だが、リーガルリテラシーの観点からも裁判の行われ方などについては伝えられても良い。国民の裁判・法的参加を促すという本来の目的を考えても、裁判の進め方をある程度まで伝えるのは、むしろ積極的に行うべきともいえる。

●その他について

 また、裁判員制度を導入は場合によっては被告人の防御権が大きく損なわれるおそれもあり、公正な証拠開示のルール化とともに、公判準備手続の整備や弁護士が個別の事件に専念できる体制の整備などが必要である。

以上 

[引用終わり]

さて、この論点から実施直前に問題点を抽出すると、いくつかの点を議論する必要があることが判る。裁判員裁判の対象事件は「放火・殺人」など重罰が予想される刑事事件である。本来は、刑事でも軽微な事件(いわゆるビラ撒き訴訟なども含める)や、離婚・相続など身近な民事事件、そして国や自治体を相手とした行政訴訟にこそ導入すべきで、対象事件の見直しも必要ではないかという点があげられる。「被告人の同意」も重要な論点で、アメリカの陪審員制度は、裁判官裁判を選ぶのか、裁判員裁判を選ぶのかを選択出来るが、日本は裁判員裁判しか選択出来ないので「被告人の同意」を得るプロセスはない。

「全員一致制」はすでに、死刑廃止議員連盟の法案で世に問うているが、日弁連などが強く求めていた評決の条件だった。裁判官がひとりでも含まれていて多数なら有罪(裁判官3人が無罪・裁判員6人が有罪なら無罪という意味)、無罪は裁判官・裁判員の過半数で決まるというシステムだが、より慎重に議論を尽くすためには全員一致に出来ないのか。

裁判官にも裁判員にも守秘義務があるが、この守秘義務違反の刑事罰は裁判員だけが対象となるのも過剰な規制だ。自分が無罪の心証を持って、多数決の評決に少数意見を持っても重大な疑問を抱き続けていても、生涯他者に語ることを許されず、ブログなどで疑問を呈したりすると処罰対象となるというのは大きな負担となる。

最後に「被告人の防御権」が確保されるのかは大問題で、志布志事件の視察でも明らかになった「捜査の可視化」に対しての頑強な抵抗姿勢を見ると、来年の5月以降の裁判員裁判対象事件で完全可視化が実現するとは思えない。また、裁判員の負担軽減のために裁判員裁判の期間は連続開廷「3日以内」としていることで、公判中に、被告人がこれまで捜査官(警察・検察)にも弁護士にも言わなかった新事実を告白した場合に、新たな「証人申請」が裁判長に認められる可能性は極めて低い。なぜなら、「3日以内」で終わることが出来なくなるからだ。「そういう大事なことがあるのなら、公判前整理手続きでやってくれよ」という話は、この制度を設計した法曹三者の感覚であって、「精密司法から核心司法へ」(これまでの分厚い書類に裁判官が目を通して構築してきた司法判断ではなく、法廷の場に短期間で交わされる裁判での口頭でのやりとりで、法律知識のない裁判員にも事件の争点と判断が可能な状況をつくる)という「3日間裁判」で、無罪を求めて主張する被告人がこれまで脅迫されたり、迷惑をかけまいと口にしてこなかった新事実や新証人を明らかにする可能性はないのだろうか。

私が見学した東京地裁の裁判員裁判は、裁判長が裁判員を相手とした評議の場で終始語り続けていたが、その中で気になることを口にしている。被害者に対して、どのように怪我をさせたかという点についてだが、「捜査段階での被告人は、コロコロと供述を変えているんですよ。こういう人は一般的に言って、信用性が低いとされるんですよねえ」。私は耳がピクンと動いた。何じゃこれは……裁判員の手元には供述調書のカケラもない。読んでいるのは裁判官だけだ。それで、堂々と公開の模擬裁判で「誘導」をかける。「信用性がないんですね」と言われれば、「そうかな」と思い裁判員は「被告人は嘘を言っている」という心証を形成する。私はこのやりとりを見て、深刻の事態が刻々と迫っているなと感じた。裁判長が「疑わしきは被告人の利益に」とは一言も言わなかったことも印象に残った。

被告人の防御権、これも重要な論点である。


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