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 さすがに「密行主義」と言われるだけの法務省である。今日の午前、東京拘置所の刑場が「一部公開」された。何度問い合わせても回答のないフリーランスや海外メディアには黙って、「縛り」のきく記者クラブだけを対象として、「抜き打ち記者クラブ限定取材」をさせたのだ。スチールとムービーカメラは1台づつの代表取材だったようで、撮影は法務省の許可する範囲で行なわれた。

外の見えない黒テープで窓を覆われたマイクロバスで刑場に案内された21人の記者たちは、まず「教誨室」に通されたという。私たち、衆議院法務委員会は03年、07年と2回にわたって東京拘置所の「刑場」を見ているが、一度も案内されたことのない場所だ。そして、死刑囚が拘置所長から「死刑執行命令」を宣告される控室(前室と呼ぶらしい)から、刑壇(下に落下していく踏み板がある)の部屋にも入り、ボタン3つの写真も撮影されている。少し前まで法務省は、ガラスで隔てられた立合席のみ許可するという姿勢だったようだが、ぎりぎりで取材を認める範囲を広げたということだ。

ただし、壁伝いのロープを通す輪と、天井の滑車は写真にあるが、肝心のロープ(絞縄と呼ぶ)はない。死刑執行には不可欠な道具だが、「通常の管理状態では備えられていない」という理由を述べたというが、その状態では「刑場」とは呼べない「刑場準備室」だろう。何人かの人に写真を見せたが、「ピンとこない。意外ときれいな部屋」「言われないと何の写真かさっぱり判らない」というものだった。ここにロープの輪が天井から降りていれば、誰にでもわかる。

 また、報道陣は立合席から地下室へ降りることも禁じられた。「死刑囚が生命を絶つきわめて厳粛な場で、死刑囚やその家族、刑務官などに与える影響を考慮した」ことが、法務省の立ち入り禁止理由のようだ。私は以前から「刑場の公開」と呼べるかどうかは、この地下室に入ることが出来るかどうかによって決まると述べてきた。上層階がジュウタンがしきつめられた部屋であるのに対し、コンクリート打ちっぱなしの地下室は「死の空間」だ。2回の視察で、地下室に入り、ここから上の踏み板が頑丈で堅牢な部品に支えられて、何百回でも開閉し続けるたびに人が死んでいくのだという実感を持って、背筋が凍った。立合室(上層)から見下ろすように移した写真が読売新聞(夕刊)に掲載されている。その下部には「排水口」があって、間近で見ると生々しい。「刑場の露と消える」という言葉がぴったりの黒い鉄格子が不気味だった。

 死刑執行の場となる刑場は、「法と正義」の名の下で「厳粛性」を保つように設計されている。だが、死刑執行は生命断絶のプロセスで、どのように糊塗しようとも「残虐性」を消すことは出来ない。ロープも地下室も、「死刑囚の死」という生々しい現実を物語る。その「残虐性」を出来るだけ消して、「厳粛性」を強調するというのが法務省の方針だった。記者たちは、刑場取材の間、拘置所職員の説明に対して、記者の側から質問することも禁止されたという。

 口も開くな、勝手に撮影するなと制約だらけの「半公開」ではあったが、ツイッターには「日本の死刑執行は絞首刑だったとは知らなかった」などの書き込みもあり、情報開示へ一歩であることも事実だ。千葉大臣は、任期終了までに「国民的議論」を喚起したいのなら、東京拘置所で死刑執行を待つ確定死刑囚の処遇もぜひ見てほしいし、40年以上、冤罪を訴えて獄につながれている袴田巌さんにも面会してほしい。これも、死刑制度をめぐる情報開示としては重要だ。

 今日の「刑場の一部公開」が、死刑制度をめぐる議論の土台になるかどうかは、これからの私たちの議論の深め方にかかっている。千葉法相は、「裁判員制度で国民が究極の選択を迫られる」との認識から「刑場の公開」を考えたと言うが、「裁判員制度」の欠陥の手直しを提言した死刑廃止議員連盟の提案をなぜ受け入れないのか疑問だ。「裁判員裁判における死刑の全員一致制度」と「死刑と無期・懲役の間に終身刑を創設する」というものだ。この点については、明日以降、書く。

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