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 単純所持を取り締まっている海外では、どのようなことが起きているのだろうか。家族と暮らす18歳未満の高校生のもとに、児童ポルノを所持していたとして、警察が家宅捜索に入り、少年は逃げようとしてマンションから転落して死亡する事件が起きているという情報をブログの読者からいただいた(ネット上にも掲載されているとのことだったが、あいにく見つけられなかった)。何とも痛ましい事件だ。警察によって児童ポルノを所持している18歳未満の少年が取り締まられるというのはどう考えればいいのだろうか。むしろ、行政が福祉的な対応をすべきだったのではないか。海外の事例なども参考にしつつ、単純所持の規制・処罰の是非をきっちりと考えていかなければならない。(保坂展人事務所・児童ポルノ問題調査デスク)


 以下、海外で起きた児童ポルノの所持にかかわる捜査事例や裁判事例を法律雑誌やネットの情報などから、ごく一部をまとめてみたものだ。海外では、単純所持の取り締まりがどのように行われ、どのような論議があるのか、参考にしてほしい。

●諸外国における児童ポルノの所持に関する捜査・裁判の事例

時期、国、捜査の端緒、概要、経過、出典の順

1.1985年(第一審判決時) 米国(オハイオ州) 友人の証言 4枚の男子児童(14歳といわれる)のポルノ写真を発見し、押収した。

 児童ポルノ写真などの所持を禁止しているオハイオ州法に違反するとして、第一審で有罪とされた。控訴審も原審を維持し、州最高裁も有罪を認めた。連邦最高裁は(「淫らさの実証の不十分性」を理由に)有罪判決を破棄し、(「各要件を立証した事実認定に基づいて有罪とされるよう新たな審理」を求め)差し戻した。

 児童ポルノの私的所持と修正一条の保護 ジュリスト1993.3.15

(付記)

 連邦最高裁裁判官は全員一致で「もし修正一条が何かを意味するとすれば、それは家で一人いるときにその人に何の本を読み、何のフィルムをみてよいかを告げることは州の仕事ではないことを意味する」とした。

 裁判官の少数意見では「本法は明らかに過度に広汎である。本法は、規定上、児童ポルノの一つの定義として裸を使うが、未成年者を裸で示すあらゆるものの所持などが罪とされる。また、州最高裁のとった限定解釈も新たな曖昧性を生むだけである。すなわち淫らな露出ついても定義がみられず、主観的な判断にならざるをえない」「描写上性器へ焦点を合わすというテストも、アングルとか見る人の主観などにより大きく左右される。従って、限定解釈にみられた淫らな露出も性器へ焦点を合わしたものも、結局、曖昧すぎ、法に対しいかなる有効な限定をかくすにいたらない」「家において私的に問題のあるものを所持することの禁止は修正一条に反すると解される」「州は、実際、児童ポルノの製作・頒布を禁止する一連の法を制定してきた。そこでそれらの法ではなぜ不適当で、なぜ単なる所持を禁止しなければならないかが示されるべきである。

さらに、それらの所持禁止の必要な理由として、「その禁止が製作の減退をもたらすという因果関係が挙げられたが、その立証も十分ではない」「憲法は、本件で問題のものを私的に所持する被告の権利並びに過度の広汎な法により罰せられない権利を保障する」などと記している。

2.2003年1月(逮捕時) 英国(ロンドン) クレジットカード 児童ポルノ・サイトの閲覧料をクレジット・カードを使用して支払ったため、アメリカの児童ポルノ捜査を受けてイギリスの警察が行なった一連の捜査により逮捕された。この捜査では、インターネット上で児童ポルノを購入した人を、支払いに使用したクレジット・カードから追跡し、逮捕に踏み切る方法が取られていたという。

 児童ポルノ画像所持の疑いがあるとして、児童保護法違反容疑で逮捕された。ロンドン警察当局は、1/13午後に自宅を家宅捜索し、夕方には逮捕に踏み切った。その後、ロンドン市内の留置所に身柄を拘束されていたが、保釈されている。
 2003年1月15日 Pete Townshend 児童ポルノ容疑で逮捕
 http://www.vibe-net.com/news/?news=0011590

3.2003年1月(逮捕時) 米国(ロサンゼルス) ?
 1年前に所蔵のポルノコレクション(いずれも昔のゲイ系統の写真類やポルノ・ビデオ類)3万点が押収されたが、中身は60年代ころなら問題にならなかった程度のソフトさなのだそう。地方検事も起訴には持ち込めないと踏み、見送りを決め込んでいた。が、LA市の検事が選挙絡みで名をあげようと、無理に逮捕にもちこんだらしい。
 逮捕
 2003年1月17日 MHT Diary
 http://www.asahi-net.or.jp/~ux4t-smz/diary/diary0301.html

4.2006年10月(捜査時) 米国(ペンシルバニア、ニューヨーク、ネバダの各州) 偽のリンクによるおとり捜査
 米連邦捜査局(FBI)が児童ポルノを交換していると思われる掲示板に「偽のリンク」を貼り、捜査を行ったとのこと。投稿されたリンクは違法なムービーをダウンロードできることを示す文字列で、クリックすると政府の秘密のサーバに訪問したことが記録され、その記録を元にプロバイダなどへ照会をかけて相手の自宅住所などを特定、逮捕したり家宅捜索を行ったりしたようである。

 児童ポルノを「ダウンロードしようとした」という罪で懲役10年に問われ、有罪が2007年11月に確定。(テンプル大学の博士課程にある学生の例)
 2008年3月23日 児童ポルノ画像がダウンロードできない偽リンクをクリックしただけで逮捕、有罪に
 http://gigazine.net/index.php?/news/comments/20080323_fbi_fake_hyperlink/

5.2006年(捜査時) 米国 税関職員が日本からの小包を開梱 税関職員が、容疑者宛ての日本からの小包を開梱したところ、小包の中に入っていた7冊のマンガ本には、未成年者がわいせつな行為を行なっている様子が描かれた図画が含まれていた。児童の性的虐待および獣姦の様子を描写した日本のマンガ本を輸入・所持し、わいせつ物を所持していたとして起訴された。

 わいせつ物の郵送を受け、「児童の性的虐待を視覚的に表現したものを所持」していたと認めた。

 有罪を認めたことにより、同容疑者は、実写による児童ポルノの収集や閲覧という証拠なしで、マンガ本の所持により同法の下で有罪となる最初の人物となる。
 2009年5月29日 日本のマンガを集めていた米国人、児童ポルノ禁止法違反で有罪に

 http://news.goo.ne.jp/article/wiredvision/nation/2009news1-19920.html

付記
 元被告は、司法取引により有罪を認め、減刑を求める選択をしたとみられる。しかし、司法取引による有罪は、判例とはならない。


6.英国 クレジットカード
盗まれたクレジットカード情報が児童ポルノサイトなどで使われ、英最大規模の児童ポルノ摘発捜査であるOperation Oreによって摘発・起訴された。
 後に無実が証明された。
 2008年4月4日
 個人情報を盗まれた結果、職を失い起訴される
 http://slashdot.jp/it/article.pl?sid=08/04/04/0339249

付記
 えん罪の実例。しかし、いったん児童ポルノを理由に摘発されると、以後の生活が成り立たなくなるほどの打撃を受けてしまうということだ。










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