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昨日は、衆議院法務委員会で「犯罪被害者の訴訟参加」を制度化する刑事訴訟法改正案の質疑を40分行った。この最高裁と法務省とのやりとりの中で、裁判員制度の「くじで選ばれる国民の幅広い意見」という根底から揺らぐような事態が明らかになった。検察側が「警察官」を証人として出廷される時に、裁判所に対して裁判員候補に対して「あなたは警察官の捜査を信用していますか」と質問させることが出来る。「いや、信用ならないですね」と答えると「公平な裁判が保障されない」と検察官が判断して最大4人まで理由を示さずに「忌避」の手続きを行うことが出来るというものだ。

「市民の代表」として出てくる6人の裁判員たちは、検察側のフィルタリングにかけられた「警察を疑わない善意の市民」ばかりとなり、「自白の任意性」をめぐって弁護側と激しく争う事件について、大きな影響を与えるのは間違いない。「くじ」で選ばれた裁判員候補を、捜査権力が「警察の捜査への信頼度」「死刑についての考え方」などに対して「思想チェック」をして、理由を述べずに4人まで「忌避」という排除手続きを取るという仕組みが隠れていたことに愕然とする。「官」にとって、都合のいい「官を疑うことなき善良な市民」が国民全体から「くじ」で選ばれたとすれば、これは「市民の司法参加・偽装」そのものである。法曹三者で国民の思想信条の自由を侵すような「許しがたい設問」をつくりあげていたとすれば、看過出来ない。以下に仮記録を示しておく。来週から、国会内で「裁判員制度を問う超党派議員の会」を呼びかけ、司法の変質と暴走にブレーギをかけていきたいと思う。以下、委員会でのやりとりを再現してみよう。

保坂 昨日の新聞に裁判所の裁判員制度の手続きに関する最高裁規則の要綱がまとまったという記事が出ています。そこで、質問を裁判員について口頭諮問というか面接でするわけですが゛、この中に「捜査官証言」、つまり警察官等(※証人)が予定されている事件において、当事者の求めがあった場合(※検察側)、裁判長が口頭で「あなたは警察等の捜査が特に信用出来ると思う事情がありますか。あるいは、逆に特に信用出来ないという事情がありますか」と質問をし、「いいえ」と回答した場合は、何も質問しない。「はい」と回答した場合は、「それはどのような事情ですか」と質問する。その回答によって必要がある時には、「警察官等の証言の内容を検討して公平に判断することが出来ますか」と質問をし、不公平な裁判をするおそれの有無を判断する、とある。どういう意味ですかね。我々は志布志事件などで警察の捜査も行き過ぎがあるということを随分認識しています。たとえば裁判員の候補者がですね、「警察の捜査も時々、密室で行われているから行き過ぎがあるかもしれません」と言うかもしれません。どういう意図でこの設問があるのですか。

小川最高裁事務総局刑事局長 お答えします。公判前整理手続きをやっていく際に、捜査官証人が申請される、また予定される事件があるとわかりました時に、当事者の方から求めがあった場合に「捜査官証人の証言の信用性」について不公平な裁判をするおそれがあるかないかという点を判断をするために、今、委員の御指摘のような質問をさせていただく、ひとつの判断資料となろうかと思います。実際には、裁判体が判断されますから具体的どうなるかというのは裁判体の判断となります。

保坂 法務省刑事局長に聞きたいのですが、今のような捜査官が証人として出てくる場合には、おそらく自白はしている、しかし、その後に否認に転じて、「自白調書」の任意性に疑いがある場合、こういうことが多いんではないかと思います。裁判所が設問していますよね。「警察官の捜査等にどれだけ信用性を置いているかどうか」と。「私は全然信用していないんだ。最近は相当密室でおかしいと思う」と面接で言っていたら、検察官はこの裁判員候補者を忌避出来るんですね。忌避する理由になりますか。

(そんな事が出来るのか? と与党席からの声。「忌避出来るんですよ。理由を示さずに4人まで忌避出来るんです。警察官はどうかなあという人に対して検察側がどう判断するかどうか」と保坂議場の与党議員に説明)

小津法務省刑事局長  この件、検察官がどのような場合に理由を示さないで忌避するかどうかということは、私どもで何も具体的に検討しているわけではないわけで、個々の事件における検察官の判断ということになろうかと思います。

 保坂 法務大臣に感想を求めたいんですよ。裁判員というのはくじで選ばれるんですよね。衆議院選挙の有権者名簿で。しかし、その中で、「警察の捜査はちょっと私は信用出来ないですよ」と言った場合には、検察側から「この人、忌避」と出るかもしれない。……忌避の対象になってくると、本当に国民全体の意見を代表して、まんべんなく汲み上げた制度になるのかどうか、大変不安になってきたんですね。その点、どうですか。

長勢法務大臣 裁判員制度を創設する時、当時は色々な御意見があった事を思い出します。片一方は、「こんなのが入るとみんな無罪になってしまうんじゃないか」「いや、みんな重罪になってしまうんじゃないか」という議論があったことを思い出します。
今の議論もそういうことに関連しているのかなと不安を感じますが、法曹三者において適切にですね、こういうあまり重箱のスミをつつくような法律論じゃなくて、一般の国民の良識が反映されるような裁判員制度にしていきたいと思います。

保坂 重箱のスミをつつくような議論をしているつもりはありません。これは裁判で裁判員制度の中で「被害者」の方が参加されるというトータルなパッケージとしての議論をしなければならない。この「忌避」ということも今、わかってきたわけなので、トータルに議論したい。

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