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 中南米のカリブ海に浮かぶの小さな島国セントクリストファナービスは、英連邦に属する国で2001年に国際組織犯罪条約に署名、04年5月21日に批准している。同国には共謀罪が存在せず条約の批准にあたって、新たに参加罪・共謀罪を制定している。注目を集めるのは、同国の共謀罪は「国境をまたぐ」「越境性を持つ」犯罪のみを対象としてつくられている点だ。日本弁護士連合会国際室の大谷美由紀室長が明らかにしたものだ。「アメリカの条約留保」が6月までの日本政府の答弁を押し流す「ナイヤガラの滝」だとしたら、セントクレストファーネーヴィスは「南十字星を斜めに横切るUFO」か。

 まずは、外務省ホームページから同国の沿革を眺めてみる。

1.面積 262km2(熊本市(266km2)とほぼ同じ)
2.人口 46,710人(2003年 世銀)
3.首都 バセテール
4.人種 アフリカ系が大半を占める
5.言語 英語
6.宗教 カトリック、他に英国国教会等
7.略史 1493年 コロンブスにより「発見」 1623年 英領植民地 1958年 英領西インド連邦に加盟(1962年迄) 1967年 英国自治領 1983年 独立

さっそく、セントクリストファーネーヴィスの創設した条文を見てみよう。

 2000年組織犯罪(防止及び統制法)(2002年大22号法)

第3条組織犯罪活動
(1)次の場合、組織犯罪活動参加罪となる。
 (a)物質的または金銭的な利益を得る目的で重大な犯罪の遂行について他のものと協力する行為を行った場合
  ()組織犯罪集団の犯罪活動 
  ()犯罪の目的に資すると知れている他の活動
 (b)組織犯罪集団の目的または一般的な犯罪活動を知りながら、次の活動に先立つ行為に従事し、または次の活動に参加した場合
 (c)犯罪集団の一員として、犯罪組織の利益のために、または犯罪組織の指示により、または犯罪組織と共に犯罪を行うことを故意に他の者に指示した場合
 (d)他の者に対し組織的な犯罪集団の構成員となるよう、故意に助言し、その原因をつくり、奨励し、または勧誘した場合
(2) (1)項に規定する罪は次の場合のみ犯罪になる。
 (a)2以上の国において行われる場合、または、
 (b)1の国において行われるものであるが、その準備、計画、指示、または統制の実質的な部分が他の国において行われる場合、または
 (c)1の国において行われるものであるが、2以上の国において犯罪活動を行う組織的な犯罪集団が関与する場合、または
 (d)1の国において行われるものであるが、他の国に実質的な影響を及ぼす場合

とある。そして、条約を批准したセントクリストファーネーヴィスは「留保」も「解釈宣言」もしていない。ただ、締約国に加わったにすぎない。共謀罪の論争を見守ってきた人たちにとっては、これは驚くべき事実である。なぜなら、先の国会で民主党が提出した修正案の中に、条約34条「国際的な性質又は組織的な犯罪集団の関与とは関係なく定める」という部分を留保して、「国と国をまたぐ越境性」を要件としていたことに、外務省は激しく反発していたからである。

「そんなこと、できるわけがない」「条約が批准できない」と6月の「民主答案丸飲み騒動」の時に吐き捨てるように言い放ったのは麻生太郎外務大臣だった。私たちは国際条約がどのように批准されるかを、ここで確認しておく必要がある。国連に「条約批准審査」機能はない。条約の批准は主権国家である締約国政府の手続きであって、国際組織犯罪条約締約国会議が設けられてはいるが、この会議は条約32条3項にある「国際協力・情報交換・地域機関・NGOとの協力・実施状況の検討・条約実施の改善勧告」などの範囲であり、批准の適否審査の権能は存在していない。「これでは条約を批准できない」というのは、日本政府が「越境性をつけては、やりたくない」という不快感の表明以外の何物でもなく、国連がはねつけるような事態は制度的にありえないということだ。

『国連立法ガイド』を読まずに、619種類の共謀罪の網をかけようと焦り、与野党攻防の焦点となった国は存在しないようだ。(今のところ、各方面の情報ではとお断りしておくが) どの国も、条約の趣旨と国内法制を睨みながら、どちらかというと条約には柔軟に、国内法制の変更には慎重に臨んでいるように思う。『国連立法ガイド』の次の部分がずばり言い切っているではないか。

「国内法の起草者は、たんに条約文を翻訳したり、条約の文言を一字一句逐語的に新しい法律案や法改正案に盛りこむよう企図するよりも、むしろ条約の意味と精神に主眼を置くべきである。法的な防御や法の法律の原則も含め、新しい犯罪の創設及び実施は、各締約国に委ねられている」(43パラグラフ)

 これだけの矛盾・課題を封印し、臨時国会の冒頭で安倍新内閣が「議論は終了した」と強行採決をはかるかどうかだが、危険性はかえって高まったというべきかもしれない。もう政府には理屈も論理もない。国民の期待値があるうちに、祖父にならって強行突破を計ろうとするのではないか。迎え撃つ世論と市民の声は大きく渦巻くだろうが、結果は予断を許さない。

(お知らせ)
岩波ブックレッド『共謀罪とは何か』(海渡雄一・保坂展人著)10月5日発売予定
予約購入をよろしくお願いします。10月14日にはネイキッド・ロフトで海渡雄一さんとトークライブを行ないます。








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