東日本大震災による福島第一原発事故の衝撃は、当然ながらエネルギー政策について、大きな議論をまきおこした。それは、「原発」への依存度をあげようとしていていた従来の国の路線に根本的な変更を求めただけでなく、電力会社の地域独占と不透明な電力料金(総括原価方式)の見直しをはじめ、再生可能エネルギーの普及拡大に向けても「系統」(発送電システム)のあり方も含めて俎上に乗る議論が始まっている。
世田谷区では1月下旬、区施設111カ所で使用する大口契約(高圧受電施設)の電力購入をPPS(特定規模電気事業者)も含めた「競争入札」により決定することを発表した。東京電力の大口契約17%の値上げが発表されていた直後だったこともあり、大きな反響があった。東京23区でも練馬区など他の自治体でも導入・検討の動きが続いていると聞いている。国内メディアの取材以外にも、海外メディアからも続けて取材が現在も続いている。
PPSはすでに大口契約の事業所や工場などで既に使用されていて、自治体でも政令市である横浜市(600カ所)、名古屋市(450カ所)と使われている。もとより霞が関の経済産業省も含めたほとんどの中央省庁でも既定事実として導入しているから、改めて「新たな取り組み」ではない。したがって、世田谷区が「電力購入の競争入札」を発表したからといって、大きなニュースになるとは思ってはいなかった。
ただ取材を受けてみると、メディアの関心事が「競争入札実施後の展開」にあることが判った。昨年春の選挙で、「脱原発と再生可能エネルギーの拡大」を訴えたことが注目されたこともあり、自治体の現場からどのようなエネルギー政策を発信していくのかについての質問が続いた。
こうして見ると、「エネルギー政策」をめぐる議論は、「国の政策」を経済産業省・資源エネルギー庁、与党を中心とした国会議員、メディアの経済部など専門記者、学者などごく限られた「供給サイド」の範囲で行われてきた。国会に席を置いて、この問題にも関心を持って見てきた私自身がそうだった。
ひるがえってみるなら、消費者・使用者の存在はどこにあったのか。それは、大口契約で年間12億円の電気料を支払ってきた世田谷区をはじめとした自治体も、設計された制度に従い、それを理解する以外の意見表明も、異議申し立ても出来ずに、制度設計からも「除外」されていた。
今回、区民からも多くの反響が寄せられた中に「自分の家でも東京電力以外の電力を購入することは出来ないのか」「何軒かまとまったら、共同購入出来る制度はないのか」などの反響があった。電力自由化は現在、「部分自由化」という大口顧客を対象とする制度の枠内にあり、「一般家庭」への拡大は実現していない。
また、区民の中には「電力の質」を問う人々もいる。コストがたとえ割高になったとしても、地球環境に負荷の少ない再生可能エネルギーを購入し、再生可能エネルギーを開発した事業者を支援し、エネルギー転換をはかるように促したいという声だ。まさに「再生可能エネルギーの共同購入」が可能になれば、大きな転機になるのではないか。
経済産業省・資源エネルギー庁と旧知の枝野幸男経済産業大臣にこれらの点を伝えて、本来は最強の発言権を持つはずの消費者・使用者の立場から「エネルギー政策」への制度要求を始めていきたい。

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