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2006年10月24日付け、クリフトン・M・ジョンソン米国国務省法律顧問部法執行及び情報課法律顧問補発在米国日本大使館担当書記官宛て書簡の訳は以下のとおり。

我々は、2006年10月20日付けの貴官の書簡を受領しました。貴官はこの書簡の中で、国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約(国際組織犯罪防止条約)に関わる米国の留保に関する情報の提供を求めてきました。また、その情報を、貴国の国会議員が同条約の批准を検討するに当たり、これらの議員と共有する可能性があるとしています。

 確かに、米国は、批准書の提出に際して、本条約により犯罪とされるべきすべての形態の行為が米国の必ずしもすべての州によって犯罪とされているわけではない可能性があると述べました。しかしながら、この留保は、本条約により犯罪とされるべき行為で米国が犯罪としていない部分が実際にあることが認められるために行なったものではありません。むしろ、合衆国憲法の適用に関する理論上の分析に基づいて行なったものでした。米国では、広範囲に及ぶ連邦法の体系によって極めて多くの犯罪が処罰の対象とされていますが、合衆国憲法は、もっぱら州内において生起する事項であって、連邦が管轄権を有するとの特段の定めのないものについては、個々の州の主権を尊重しているのです。国際組織犯罪防止条約は、金銭的利益その他の物質的利益を得る目的で重大な犯罪を行なうことの共謀であって、共謀を推進する行為を伴うもののすべて、又は組織的な犯罪集団の目的を認識しながら当該組織的な犯罪集団に積極的に参加することのいずれかを犯罪とすることを義務付けています。確かに、ごく少数の州における共謀罪の規定では、重大な犯罪行為を行なうことの共謀のすべてが網羅されていない可能性がありますが、それらの州においてでさえ、かかる行為は、重大な犯罪の実行の幇助、教唆又は援助を禁じる規定などの他の規定により、ほぼ確実に犯罪とされ、したがって処罰し得るものです。

 貴官の個別の質問にお答えします。

1.すべての連邦犯罪の共謀について処罰が可能か。
 処罰可能です。共謀罪に関する一般的規定(合衆国法律集第18編第371条)は、合衆国に対して何らかの犯罪を犯すこと又は合衆国を騙すことについての共謀を処罰の対象としています。

2.すべての州に共謀罪の規定があるか。
あります。すべての州が共謀罪の規定を有しており、ほとんどの州は、一般的に1年以上の拘禁刑で処罰可能な犯罪と定義されている重罪を行なうことの共謀を犯罪としています。

3.限定的な共謀罪の規定を有しており、本条約により禁じられている行為を完全に犯罪としていない州は」どこか。

 アラスカ州、オハイオ州及びバーモント州の3州のみが限定的な共謀罪の規定を有しています。もっとも、仮に犯罪とされていない部分が存在したとしても、連邦刑法は十分に広範であるため、本条約第5条に規定される行為が現行の連邦法の下で処罰されないということはほとんどあり得ません。合衆国の連邦法の構造は他に例を見ないほどに複雑であり、したがって、ある行為を処罰し得るすべての法律を挙げることは実際上不可能です。一般的な共謀罪の規定(合衆国法律集第18編第371条)は、合衆国に対して何らかの犯罪を犯すこと又は合衆国を騙すことについての共謀を処罰の対象としています。他の多くの連邦法にも、個別の共謀罪の規定が設けられており、当該連邦法により禁止されている特定の行為を行なうことの共謀を罰しています。例として、連邦ラケッティアリング規定(RICO法、合衆国法律集第18編第1962条)が挙げられます。

4.本条約で犯罪とすることが義務付けられている行為が連邦法でも州法でも対象とされていない場合は、どの程度珍しいのか。

 確かにそのような場合が存在する可能性は理論的にはありますが、合衆国連邦法の適用範囲が広範であることにかんがみれば、金銭的利益その他の物質的利益のために重大な犯罪を行なうことの共謀的又は組織的な犯罪集団を推進するための行為を行なうことの共謀が何らかの連邦犯罪に当たらない場合はほとんど考えられません。「ラケッティアリング活動(Racketeering activity)」は、連邦法において非常に広く定義されており、一例を挙げれば、贈収賄、恐喝、郵便及び電信の詐欺並びに通商への干渉を含む、極めて広い範囲の重大な犯罪を含んでいます。また、一例を挙げれば、腐敗、州際間又は外国との通商に影響する行為、ラケッティアリング活動に資する移動又は移送、及び資金洗浄のような重大な犯罪は、ホッブス・アクト(合衆国法律集第18編第1951条)及びトラベル・アクト(合衆国法律集第18編第1952条)といった規定によっても処罰の対象にすることが可能です。

 これらの法律の適用範囲の広さにかんがみれば、我々は、お尋ねの留保を行なっていることにもかかわらず、合衆国が本条約上の義務を満たすことができると確信していますし、この留保は合衆国が本条約の義務を満たすことができないことを示す意図でなされたものではありません。我々の留保は、米国の法制度における州と連邦の法律の相互関係に関する問題に対処することを意図したものであり、本条約の中核となる義務の実施を免れようとするいかなる国の試みをも正当化するものではないと確信します。

 我々は、この情報が貴国政府が国際組織犯罪防止条約の批准を検討するに当たり有益であると確信しています。我々は、日本を締約国として迎えることを待ち望んでいます。


[原文]
United States Department of State
Washington,D.C.20520

                  October 24、2006
Embassy of Japan
2520 Massachusetts Avenue,N.W.
Washington, D.C.20008
Attention:Mr.Yoshimitsu Yamauchi
First Secretary and Legal Attache

Dear Mr.Yamauchi,
We are in receipt of your letter of October,20,2006、requesting information related to the U.S. reservation to the United Nations Convention against Transnational Organized Crime(UNTOC) that you might share with members of your Diet as they consider ratification of the treaty.

While it is correct that the United States noted with the submission of its ratification instruments that not all forms of the conduct proscribed by the Convention may be criminalized by all U.S.states、the reservation was not based on an identification of actual gaps in the criminalization of such conduct by the United States, but rather on a theoretical analysis of the application of the U.S. Constitution. Although the U.S. has a far-reaching network of federal laws criminalizing a multitude of offenses, the U.S. Constitution recognizes the sovereignty of the individual states over matters arising solely within their territory that are not specifically subject to general federal regulation. The UNTOC requires criminalization of either all conspiracies to commit a serious crime for the purpose of obtaining financial or other material benefits involving an act in furtherance of conspiracy, or, active participation in an organized criminal group, with knowledge of the aims of the organized criminal group. Although it is possible that the conspiracy laws of a very few states may not encompass all conspiracies to commit serious criminal acts, even in those states the conduct would almost certainly be criminalized and therefore punishable under other statutes, such as those prohibiting aiding, aberting, or facilitating, the commission of serious offenses.

Turning to your specific questions-
1. Is conspiracy of every federal offense punishable?
Yes. Conspiracy is the subject of a general conspiracy statute (18 USC371) that criminalizes conspiracy to commit any offense against the United States or to defraud the United States.

2. Does every state have a conspiracy law?
Yes. Every state has a conspiracy law, and most states criminalize conspiracy to commit felonies, generally defined as offenses punishable by imprisonment of a year or more.

3. Which states have limited conspiracy laws that do not fully criminalize the conduct proscribed by the Convention?
Only three U.S. states, Alaska, Ohio and Vermont, have limited conspiracy laws but the extent that any gap might exist, federal criminal law is sufficiently broad that it is highly unlikely that any conduct described in Article 5 of the Convention would not be punishable under existing federal law. The fabric of U.S. federal law is exceptionally complex, thus it is not feasible to identify all the laws that may criminalize particular conduct. Conspiracy is the subject of a general conspiracy statute (18 USC 371) that criminalizes conspiracy to commit any offense against the United States or to defraud the United States. Many other federal statutes also contain their own conspiracy provisions punishing conspiracies to engage in specific conduct outlawed by those specific statutes, for example the federal racketing statute (RJCO,18 USC 1962).

4. How rare is a case where conduct obligated to be criminalized by the Convention remains uncovered by both U.S. federal and state laws?

While theoretically possible, given the broad arm of U.S. federal laws it is nearly inconceivable that a conspiracy to commit a serious crime for financial or other material gain or to commit an act in furtherance of an organized criminal group would not also be a federal offense. “Racketeering activity” is so broadly defined in federal law that it encompasses an extremely wide range of serious felonies including bribery, extortion, mail and wire fraud, and interfering with commerce, just to name a few. Statutes such as the Hobbs act (19 USC 1951) and the Travel Act (18 USC 1952) provide additional tools to reach serious offenses, such as corruption, acts affecting interstate or foreign commerce, travel or transportation in aid of racketeering activities, and money laundering, again just to name a few.

Given the breadth of these laws, notwithstanding the reservation, we are confident that the U.S. can meet its obligations under the Convention and our reservation is not intended to suggest otherwise. We do not believe that our reservation, which is intended to address issues relating to the interplay of state and federal laws in our system, would justify an effort by a State to exempt itself from implementing a core requirement of the Convention.

We trust this information will be of use to you as your government considers ratification of the UNTOC, and we look forward to welcoming Japan as a State party.

Sincerely,

Clifton M. Johnson
Assistant Legal Adviser
Office of the Legal Adviser
Law Enforcement & Intelligence







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