現代を切る  英宰相ウィンストン・チャーチルからの批評     

退職から9年。ブログを始めて5年。現実主義者として、歴史を紐解き、英国の大宰相、チャーチルらの発言を下敷きにして記す。

サントス大統領のノーベル平和賞受賞を祝う  政治にパーフェクトはない 和平実現を願う

2016年10月08日 12時21分35秒 | 世界の動き
 南米コロンビアのフアン・マヌエル・サントス大統領が2016年のノーベル平和賞を受賞した。大統領がリスクをとった勇気を称えての賞だと思う。心から祝福する。
ノルウェーのノーベル委員会のフィーベ委員長は「多大な困難にもくじけず、平和への希望をあきらめなかったコロンビア国民と交渉に貢献した全ての関係者に贈る。とりわけ数え切れない犠牲者の遺族に敬意を表する」と述べた。
 日本の各紙によると、国連のグランディ難民高等弁務官は7日、サントス氏への授与について、「政治的な勇気を本質的に認めた平和賞受賞を心からお祝いする」と述べた。
 コロンビアでは60年代から、コロンビア革命軍(FARC)などの左翼ゲリラや右派民兵組織を交えた内戦が続いてきた。戦闘やテロ、誘拐による死者は約22万人、国内避難民は500万人以上とされる。
 コロンビア政府と左翼ゲリラとの和平合意が9月に成立し、平和賞の発表直前に行われた国民投票で、小差で否決された。サントス大統領は国民投票をする必要はなかったが、あえて国民投票に訴えて国民からの信任を得ようとしたのだろう。
 ネット上でもサントス氏への賛意を示す投稿が多いが、中には「サントス氏が(前任の)ウリベ大統領政権の国防相だった時、軍が殺した市民はどうなるの」と疑問を投げかける投稿もあった、朝日新聞は報じている。
 筆者は大統領が民主主義の手続きを踏むため国民投票を実施したことに対して敬意を表すが、その必要はなかったと信じる。
民主主義制度において大衆や国民は大切な主役の一人であり、重要な役割を演じているが、決して神聖視すべきではない。大衆の欠点は目の前の現象に捕らわれることにある。全体を見て判断ができる大衆が少ない。
 第2次世界大戦中の1941年9月30日、チャーチルは議会下院の首相答弁でこう話した。「ギャロップ(の世論)調査の移り気な状況ほど危険なものはありません。特に戦争中には言えることです。調査はいつもその時々の人々の衝動と気分を表しています。・・・今日、私が英国民から好意的に見られているのなら、それはわたしがこれまで世論に従ってきたからではありません。・・・わたしの政策は職務と職責から生じており、それは唯一の安全な道だと確信するからであります。正しいと考えることを試みているのです。諸君が正しいと信じることに従って行動し、(それについて国民に)話すことを恐れてはなりません。それこそ、この(ヒトラーとの闘いの)難事において偉大な国民(英国民)の信頼を勝ち得ることであり、信頼を得る唯一の道であります」
 「サントス氏が(前任の)ウリベ大統領政権の国防相だった時、軍が殺した市民はどうなるの」と疑問を投げかける投稿をしたコロンビア人の気持ちも理解できるが、政治は遠大な目的のために、時の変化に伴って手段を変えていかなければならない。瞬時、瞬時の気持ちに左右されれば、当初考えていたのとは思わぬ方向に政治は進んでしまう。そのような事態が起これば、遠大な目的を達成できない。
 発表直後に委員会事務局から電話で受賞を告げられたサントス氏は「とても光栄だ。受賞は私たちの国にとっても内戦の犠牲者にとっても非常に大事なことだ。和平に向けて努力を続ける」と喜んだ。
 授賞には、和平に向けた国民を挙げた努力を促す狙いがある。FARCのロンドニョ司令官がノーベル平和賞の共同受賞者でなかったことは政治的な意図があるのだろう。和平合意に反対している勢力に、大統領の受賞を納得させようとした行為だと思う。
 ロンドニョ司令官ら左翼ゲリラが社会主義思想に基づく革命を志した背景にはコロンビアの農村の貧困がある。筆者はゲリラ指導者が少年や少女を戦場に駆り立て、何の罪のない人々を殺害した罪は重大だが、ゲリラ活動をした理由も理解できる。
 国民投票後の10月7日、コロンビア政府とFARCは共同声明を出し、停戦の継続を表明した。また「迅速で効果的なプロセス」によって、合意反対派などの意見を聞くとし、合意内容の修正の可能性を示唆した。和平合意に盛り込まれた行方不明者の捜索や地雷の除去などを実行することで、信頼構築を進めていくともしている。
 人間はとかく100%の解決策を欲しがる。しかし、不完全で複雑な世の中に、パーフェクトな解決策などありはしない。コロンビア国民が大統領とロンドニョ司令官の周りに団結し、平和と言う最終目的のために大同につき小異を捨ててほしい。とりわけ一時的な感情を脇に置いて遠い未来を冷静に考えてほしいものだ。
 それと同時に、大統領と国民は貧困をなくす戦いを繰り広げてほしい。コロンビアの国民が、都市の人々だろうが農村の人々だろうが、人並みに食べられ職を得られれば、ゲリラ活動も自然消滅する。
 コロンビア国民とゲリラ側が過去の行きがかりを捨て、平和と言う大同について和平協定を発効してほしい。そしてゲリラの政治活動を認め、ゲリラはペンと舌で政府を批判し、両者がコロンビアの貧困撲滅という共通の遠大な目的のために団結することを切に望む。

 和平合意を受け、握手するサントス大統領とロンドニョ司令官(右)
『ささやき』 ジャンルのランキング
この記事についてブログを書く
この記事をはてなブックマークに追加
« 地球温暖化対策のパリ協定締... | トップ | 「SMAP」の「キムタク」... »
最近の画像もっと見る

世界の動き」カテゴリの最新記事