現代を切る  英宰相ウィンストン・チャーチルからの批評     

退職から9年。ブログを始めて5年。現実主義者として、歴史を紐解き、英国の大宰相、チャーチルらの発言を下敷きにして記す。

安倍首相の前途は多難 トランプ氏と世界   日米首脳会談に思う

2017年02月13日 11時30分41秒 | 日米と世界
 安倍首相の訪米は終わった。米国内で物議を醸しているイスラム国7カ国からの米国への入国を一時禁止する大統領令を出したドナルド・トランプ米大統領は、前代未聞の厚遇ぶりをみせて日本の首相をもてなした。ワシントンでの首脳会談後、フロリダの大統領が所有する高級リゾート施設「マール・ア・ラーゴ」に招待し、ゴルフを二度もした。安倍首相は2日間もその施設に泊まった。
 英米メディアの多くは安倍首相がトランプ大統領に「おべっか」を使ったと論評し、冷ややかだ。朝日新聞などリベラルな日本の新聞は「予測できないトランプ大統領にあまりにも親しくなりすぎて、これから安倍首相は日本の主張を言い出せず、国益を損なう」と憂慮する。一方、ジャーナリストの有本香氏は産経新聞サイト上で、「アメリカのトランプ大統領に対する大半の報道姿勢について、彼に近づこうとすると、『こびる』とか言う。国同士が理解し合うための行為が、なぜこんな表現になるのか」「『入国禁止令』についても賛否両論あるにもかかわらず、反対が圧倒的のように報道される。正確な事実を伝えず、フェアではない」などとした上で「メディアによる操作は恐ろしい」と話している。
 どれも一見して一理ある。そして筆者はどちらかと言えば、安倍首相があまりにも親しくなりすぎたとする朝日新聞の見解に同調する。前回のブログで記したように、安倍首相の行動だけを見ていると「浅はか」なように映る。ただ、刻々と変化する時の流れの中に身を置いて、世界の動きを見ていると、安倍首相の気持ちは理解できる。
 安倍首相の目は中国に向いている。このため、予想がつかない、時として感情的になるトランプ米大統領に”おべっか”を使ってまでして、日本の安全を守ろうとしていることだけは確かだ。日本が米国の支援なしには中国の脅威に対抗できないのも事実だ。
 それでは中国は脅威なのかという問題が起こる。最近読んだ「米中もし戦わば」でのピーター・ナヴァロの見解を待つまでもなく、中国共産党が東アジアの覇権を求めていることだけは確かだ。既成の大国と、この大国が敷いた国際秩序を覆そうとする台頭する国家とが対立する構図は今に始まったことではない。16世紀前半のポルトガルからオランダ、フランス、英国、米国と覇権国家が移り変わってきた。その転換期には必ず戦争があった。第1次世界大戦前、ドイツ帝国は英国の覇権を奪おうと戦争をはじめ惨敗した。第1次、第2次世界大戦の戦間期にはドイツ、イタリア、日本は「持たざる国」として英国や米国に挑戦して惨敗した。
 シカゴ大学教授のジョン・ミアシャイマー氏は中国の平和的な台頭はあり得ないという。筆者もそう思う。もし中国が三権分立の民主主義国家であったら、平和裏に米国から中国へ覇権が移ったかもしれない。それは大英帝国から米国に平和裏に覇権が移ったことを考えるからだ。
 東アジアの平和は維持されるのか。ナヴァロは「70%の確立で米中は戦う可能性がある」と断じている。1500年以降、新興勢力が、世界や地域を支配する国家に対峙した15例のうち11例で戦争が起きている。
 日本一国で中国の膨張を押さえられない。そして中国の潜在的な脅威が増している。この国際環境の中で、安倍首相がトランプ氏の懐に深く入り込み、日本の安全保障を約束させたこと自体は大きい。ただ、潜在的に大きな代償をともなっていることを忘れてはならないと思う。
 英国のファイナンシャル・タイムズは、安倍首相は米大統領から日本の安全保障への確約を手に入れたが、その分だけトランプリスクが大きくなった、と報道している。
 トランプ大統領はビジネスマンだということを決して忘れてはならない。日中が固有の領土と主張している尖閣諸島を日米安保条約第5条に基づいて米国は護る、と今回の首脳会談後の会見でトランプ氏は述べた。それは経済・貿易問題との取り引きと引き替えではなかろうか。トヨタや日産などからなる日本の自動車産業を犠牲にする可能性を秘めている。
 トランプが「米国第一優先主義」と唱えても、建国以来の米国の理念「自由・民主主義」を前面に押し出す人物ではない。「自由、民主主義、人権、自由貿易」という現在の世界共通の価値観より「米国第一」が優先していることだけは確かだ。
 日米の経済問題がこじれれば、「日本から米軍を撤退する」と脅すかもしれない。安全保障を貿易の取り引き材料に使うビジネスマンになる公算が高い。安倍首相の立場は非常に危ういと思う。安倍首相が今までお経を唱えるように公言してきた民主主義の信条を時には世界に吐露すべきだ。
 第2次世界大戦中、英国を率いたウィンストン・チャーチルは「民主主義と自由」の旗を掲げて、日々移り変わる時の流れに対して現実的に動いた。安倍首相のように原理原則をかなぐり捨てて、現実に身をゆだねたわけではない。
 安倍首相がなりふり構わずトランプ大統領に”おべっか”を使っていれば、ある日、トランプ氏にハシゴを外されるかもしれない。そのとき、中国がほくそ笑むだけではなく、欧州諸国やオーストラリア、ニュージーランドなどの民主主義国家からも袖にされるかもしれない。
 安倍首相は難しい舵取りを強いられていることには同情するが、もう少し賢明な戦略を立てる必要があるように思う。それはトランプ大統領に必要以上に深入りするのではなく、親分肌で安倍首相を支配しようとするトランプ氏をあやしながら、欧州やアジア・太平洋の民主主義国家と手を携えて、自由貿易と平和を維持する努力をすべきだ。そして中国とのバランスを取りながら東アジアの平和を維持することだ。平和こそ日本と世界の国民が最も欲している宝物である。
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