現代を切る  ウィンストン・チャーチルと初代ハリファクス侯爵     

退職から9年。ブログを始めて4年。現実主義者として、歴史を紐解き、英国の二大政治家らの発言を下敷きにして記す。

政治家の質がなぜこれほどまでに落ちているのか  与謝野さんの死去に思う

2017年05月26日 11時32分24秒 | 政治
 与謝野馨さんが亡くなられた。数日前の新聞に掲載されていたが、私的な仕事に追われ、直ぐにブログに書けなかった。2016年6月17日付ブログに与謝野さんについて記した。この数日、この記事が筆者のブログのトップを占めている。それまでは読む読者はほとんどいなかったが、関心があるのだろう。
 前置きが長くなった。与謝野さんが亡くなられ、また一人の真面な保守政治家がいなくなった。真の保守主義者がいなくなった。残念至極だ。ご冥福を祈る。
 与謝野さんは自分の政治信念に生きた人だ。党のボスや党是を無視はしなかったが、自分の信念を曲げてまで、ボスに従うことはなかった。「たちあがれ日本」の結党に参加し、「たちあがれ日本」の仲間と袂を分かって民主党の菅直人改造内閣に入閣、社会保障と税の一体改革に取り組んだ。彼にとり、日本の財政赤字が将来この国の人々に重くのしかかり、人々の生活の安定を脅かすこと憂いたのだろう。それから民主党政権を去り、無所属議員として活動、咽頭がんで声を失い、政界を去った。
 一見、日和見のように見えるが、いつも日本の遠い将来を見つめて行動した。このために自民党を離党したときもあれば、民主党政権に入閣したときもあった。だから近視眼的な政治家や国民から冷ややかな目で見られたのだろう。
 英国の宰相ウィンストン・チャーチルは「演説を書く際の注意点」の中でこう述べている。「たとえ政府や自分が所属する党に打撃を与えても真実を書くこと。野党(他党)の倒閣運動の道具や、選挙での相手候補の攻撃材料にされても気にしない。演説を聞いた国民や有権者が演説を聞いて一時的に離反することがあっても、最後にはその一貫した演説姿勢に信頼を寄せるようになる」
 与謝野さんの心にもチャーチルの政治姿勢を読み取れる。現実を見据えた政治家であり、真の保守政治家だ。安倍晋三首相や日本会議の人々に常にあるよううな情緒的な感情がどこにもない。情緒的感情は冷厳な現実の窓を曇らせ、間違った判断を助長する。
 朝日新聞によれば、中曽根康弘元首相が自ら、新憲法全文の原文を執筆した際、「日本国民は・・・太平洋と日本海の波洗う美しい島々・・・」と書いた際、与謝野さんが「俺が書き直す。情緒的な表現は削る」と話し、臆する風もなく全面的に書き直したという。政治家にとって大切な資質のひとつは、情緒や感情に左右されずに厳しい事実に向き合うことではないのだろうか。
 与謝野さんにも間違いがあった。与謝野さんは「たちあがれ日本」を離党するとき、「私は『打倒民主党』という言葉を使った覚えはない」と弁明しているが、朝日新聞2010年4月7日に掲載されたインタビュー記事では与謝野は「打倒民主党」という言葉を使っており、与謝野のHPにも掲載されている。この点だけは正直に信念を曲げずに堂々と「何が悪いのだ」と開き直ってほしかった。チャーチルを研究しているとつくづく思うのは、政治家は自立心、先見性、議論力、独立心を持たなければならないということだ。与謝野さんには間違いもあったが、チャーチルが言う政治家の資質を備えた政治家だった。誰でも人間は過失、間違いを犯す。大切なことはそれを認め、健全な精神を維持することではないのだろうか。チャーチルの受け売りですみません。
 それにしても、今日の日本政治の体たらく、政治家の質の低下は目を覆いたくなる。今日の新聞一面には、学校法人「加計学園」をめぐって前川喜平・前文部科学事務次官の記者会見が掲載されていた。前川氏が、なぜ記者会見をしたのかはいまひとつ理解できないが、その発表に安部政権の菅義偉官房長官は前川氏の個人攻撃をしている。これは議論ではない。前川氏にもそのような傾向が見られる。この問題の本質は、安倍氏が個人的な感情で親友の認可に手心を加えたのか、それとも粛々と法に基づき処理されたのかではないのか。
 持論を持たず、独立心もなにもない、ボスに異論を浴びせることもない政治家が国会を占拠している。ボスの安倍氏はまるで上意下達の独裁手法を用いた政治家と映る。独裁者とは言わないが・・・。こんな社会・政治風潮の中で与謝野さんがこの世を去った。一年前、事務所に拙書お送りした際、礼状が届いた。市井の人々にも礼を失しなかった与謝野さんの冥福をあらためてお祈りする。合掌。

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議論を好まないのか、安倍首相   共謀罪、憲法改正審議に思う

2017年05月12日 09時16分40秒 | 政治
このブログに最後に記したのは先月14日。ほぼ1カ月がたってしまった。退職して退屈な時間をつくらないようにしようと思い、自分で仕事をつくり忙しくしている。。
 わたしは「思い上がった趣味」だとは思うが、若い頃英国に留学中、英帝国の末裔からいろいろ教わったことを少しでも文に残しておこうと思い本を執筆している。次回は「人間チャーチルからわたしたちへの伝言」(仮題)を出版する準備を進めている。
 6年前、ケンブリッジ大学のチャーチル史料館の館長さんとお会いしたおり、チャーチルの話を聞いた。その後、文献をあさっては読んだ。あらためて20世紀の大宰相の人間性に触れた思いだ。チャーチルは好んで政敵と議論した。議論に議論を重ね、国民に現状を語り掛け、説得して自らの思いを実現させた。
 「一番怖いのは、自民党内に全く議論がないこと。僕らの若い頃は、党内の主流派と反主流派、非主流派の違憲のぶつかり合いこそ魅力だった。今は番組に出演する与党議員も番組前には政策に批判的な意見を口にしても、表立っては発言しない。もはや安倍首相のイエスマンになっている」
 今日の朝日新聞で、ジャーナリストの田原総一朗氏がこう語っている。安倍首相はとにかく政敵ととことん議論しない。内閣には自分と同じ考えの人を入閣させるようだ。各紙はこの姿勢を「好きな人物」と呼ぶ。
 これに対してチャーチルは政敵と議論するのを好んだ。チャーチルを20年以上護衛した側近中の側近のトンプソン警部は「チャーチルはイエスマンを信用していなかった」と後年語っている。保守党であるチャーチルが、労働党のアーネスト・ベビィンを心から尊敬していたのは有名な話だ。ベビィンはチャーチルに堂々と理路整然と反対意見を述べた。チャーチルがそれが好きだった。真剣に耳を傾け、良い政策だと思えばちゅうちょなく採用したという。
 ベビィンは、国家の非常時(第2次世界大戦)ではチャーチルの挙国一致内閣に労働大臣として入閣。チャーチルを大いに助けた。
 議論は民主主義制度を維持・発展させる上での根幹のひとつである。国会での民主党議員をはじめとする野党議員の質問にも問題がある(相手の揚げ足取りばかりに狂奔して、問題の核心に迫ろうとする気持ちがない)が、それにもまして安倍首相の答弁には「真摯」に正面から受け答えしていない印象を受ける。その最たるものは「読売新聞を読めば、私の見解が出ている」だ。
 現在、国会で審議している「憲法改正問題」にしても「共謀罪問題」にしても真摯な議論が安倍首相と野党議員にはない。相手の批判や揚げ足取りに終始している観を否めない。
 「戦争を知る最後の世代。表現の自由を命がけで守る」。共謀罪法案をめぐって田原氏はそう強調している。確かに1926年に成立した治安維持法は共産党を取り締まる法律だった。しかし太平洋戦争中、自由民主主義者まで取り締まりの対象になった。
 田原氏はいう。「(共謀罪)は一般人のプライバシーにある程度、手を突っ込まざるをえないはじだ。プライバシーを損ねる可能性があるのか、その点について全く説明がない」。私も同感だ。
 100歩下がって、安倍首相の善意を信じたとしても、後生の指導者がこの法律を悪用する可能性がある。治安維持法がそれを証明している。
 筆者の思い込みかも知れないが、安倍首相はどうも右翼政治家の特徴で「一点だけを見て全体を見れない。全体の中で物事を判断し、最悪の場合を想定して物事を進めることができない」と思う。それは「憲法は米国に押しつけられたから改正すべきだ」などの言葉に表れている。感情優先で物事を判断し、客観的な環境変化を軽視する傾向があるようだ。ここに保守政治家との違いがある。
 「共謀罪法案」も「憲法改正問題」も時間に縛られずに国会で議論し尽くすことが先決であり、安倍首相は自らの感情によって国民に自分の思いを述べるのではなく、刻々と変化する時の流れに基づいて冷静に判断することによって国民を説得すべきだ。
 安倍氏がそんなにこの二つの問題に固執するのなら、国民に「この憲法は押しつけだ」という馬鹿な感情論ではなく、事実を語り続けることである。見方によっては「押しつけ」であろうと、戦後果たしてきた憲法の役割を冷静に見つめ、その事実を踏まえた上で、「なぜ」現在、憲法、とりわけ第9条が歴史の変化により「そぐわなくなった」のはを語り掛けるべきだ。それに基づいて、与野党議員と国民が真摯な議論をすれば、答えは自ずから出てくるだろう。

写真は田原総一郎氏

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解決策は朝鮮半島の永世中立化   緊迫増す北朝鮮情勢

2017年04月14日 11時45分58秒 | 東アジアと日本
 アメリカ海軍の第1空母打撃群が今日、明日中に朝鮮半島近海に到着する。朝鮮半島はかつてない緊張に包まれている。嵐の前の静かさなのだろうか。
 シリアのアサド政権が化学兵器を反政府地域に打ち込み、子どもや赤ちゃんまで殺害したのを受け、米国が59発の巡航ミサイルをシリア空軍基地に撃ち込んだ。このことが、朝鮮半島状勢を悪化させている。北朝鮮を疑心暗鬼にさせている。中東の嵐が波紋となって東アジアに及んだ形だ。
 朝鮮半島が緊迫しているのにもかかわらず、日本国民はその緊張を肌で感じていない。「なんとかなる」「米国が北朝鮮を攻撃するはずがない」など楽観的な見通しが大勢を占めている。
 70年以上も戦争を経験していない日本国民がそう感じるのも無理はない。第1次世界大戦から約20年間の平和を享受した英国人もそうだった。
 1939年9月1日に第2次世界大戦が始まった後でさえ、英国民は戦争を自分らの問題とは考えなかった。戦争が始まって9カ月後、ナチス・ドイツ軍がフランスを蹂躙し、英仏連合軍がダンケルクから英本土に退却、チャーチル首相が6月4日に議会で「英国は決して降伏しない。ひとりになっても戦い続ける」と述べて初めて、戦争は英国民とって最大の関心事になったのだ。筆者は日本人が「朝鮮半島問題を最大の関心事」にならずに済むことを祈るばかりだ。
 時は日々変化している。朝鮮半島問題の直接のプレーヤーは日本でも、北朝鮮の脅威を最も身近に受けている韓国でもない。直接のプレーヤーは米国と中国であり、もちろん北朝鮮である。
 中国のリーダーを除いて、米国や北朝鮮のリーダーには長期的な戦略も妥協もないように思える。
 米国のトランプ大統領は商売人だとつくづく思う。昨日、ロシアと仲が良いように見せれば、今日は100年の仇敵のように振る舞う。中国に対しても、為替操作国だと非難していたが、北朝鮮に効果的な圧力を加えれば「為替操作国とは思わない」という。そろばん勘定をはじいてはいるが、長期的戦略に基づいて振る舞ってはいない。
 米大統領は、どうも米国民の国民性を一番持っている人物のようだ。建国の父らが抱いた「ピルグリム精神」を持っている。正義のためには力をも行使する。正義は米国の正義だ。客観的な正義などあろうはずもない。
 一方、北朝鮮の若い指導者、金正恩は太平洋戦争当時の日本の軍部指導者と同じだ。日本の軍部指導者が太平洋戦争前夜、日々強まる米国の経済制裁から米国が攻めてくると信じ込み、ハワイ・真珠湾を奇襲して13倍も国力が違う米国に敗北した。東条英機首相は当時、米国民の孤立主義やルーズベルト大統領の「ヒトラー・ドイツ政権打倒を最優先」する政策を理解していなかった。
 金正恩・国防委員長も「ミサイルと核開発が米国との交渉を開く唯一の道だ」と信じ込んでいる。明日(15日)は彼の祖父である金日成主席生誕105周年。金日成主席は、金正恩や父の金正日と違って、独裁者であることには変わりなかったが、まともな政治家だった。
 金日成主席は自国の国力と米国の国力を客観的に観察することができた。1994年の「北朝鮮核危機」の際、強行一辺倒の長男、金正日を一時、軟禁し、正日の異母弟、金平日を平壌に呼び戻した。そして、訪朝したカーター元米大統領との会談に同席させ、米国との交渉に臨んだ。
 金日成主席は、外交交渉は自らの弱さを体現するのもではないことを理解していたが、息子の金正日も孫の金正恩も国力のすべてが軍事力だと思い込んでいる。非常に危険だ。
 米国と北朝鮮の指導者に比べて、中国の最高指導者、習近平は現実主義者だ。ある意味、中国人の伝統である「権謀術数」に長けた人物であり、冷静に中国の国力を計算し、一歩一歩慎重に漸進している。「戦わずして勝利するは最上の策」は古代中国の兵法家、孫武の兵法書「孫子」の一説だ。
 米国に協調することをいとわない。だからといってすり寄らない。12日の国連での「化学兵器使用を巡るシリアのアサド政権の調査」決議に棄権した。シリア問題に関する7~8回の決議に対してロシアに同調していたが、今回は棄権した。今まで協調していたロシアを一瞬で見捨て、米国に味方した。それは中国が米国の真剣度を理解し、米国に楯を突いても勝ち目はないと踏んだからだ。まさに戦略的な接近であり、心から米国の政策を支持していない。
 中国のしたたかな計算が目に見える。このしたたかさが、日中戦争において、当時の国民党の指導者、蒋介石の戦略に日本軍部がはまった。中国人を見くびり、根拠のない優越意識を抱いた日本人と軍部が「一撃で中国を懲らしめる」という訳の分からない感情論で中国大陸の奥へ奥へと進撃した。蒋介石は広大な中国大陸を利用して、日本軍を泥沼へと引き込んだのだ。 現在、長期戦略を胸に秘めた中国は米国をなだめ、協力するとトランプ大統領にシグナルを送っている。朝鮮半島をめぐるトランプ大統領の「独断」を押しとどめようとしているようだ。
 習近平や中国指導部にとって、朝鮮半島の安定は最も重視する国益だろう。中国はひとつとする台湾問題と同列だと思う。最重要なのだ。
 中国は、朝鮮半島が混乱し、北朝鮮が崩壊、韓国が朝鮮半島を統一して、米国が中朝国境の鴨緑江まで来ることを脅威と見なしている。中国の視点から見れば、当然の考えである。
 中国は米国が長期的で潜在的な敵だと思っている。習近平が唱える「偉大な中華民族の復興」にとって、米国が大きな障害だと知っている。中国が1839~42年のアヘン戦争以前の状態に戻す「邪魔者」だと見なしている。中華圏をふたたびつくり、東アジアに君臨するのは中国指導部の夢であり、長期戦略だ。
 一方、中国は現在、米国の国力の足下にも及ばないことを理解している。米国との軍事力では以前よりはその格差は縮まったが、まだ大きい。ましてや、半導体などの最先端技術では米国にひじょうな遅れをとっている。中国指導部は、北朝鮮の若き独裁者と違って、国力は軍事力でなく、外交力、経済力、技術力、国民の民度・士気、地勢的な位置などすべての要素から構成されていると骨の髄まで理解している。それは正しい。
 中国は朝鮮半島の安定化と北朝鮮の自国への勢力圏を望み、米国との協力を目指す矛盾した外交政策を当面追求するだろう。このような米中の思惑の中で、将来の朝鮮半島をどうするのか?
 トランプ政権誕生を控えた昨年12月17日、アメリカ国務省でアジア地域を担当するダニエル・ラッセル東アジア太平洋担当国務次官補が、ひっそりと来日した。同氏はオバマ前大統領の幹部の中で、唯ひとりトランプ政権で引き続き仕事をしている。
 ラッセル氏は日本政府首脳にこう述べたという。「朴槿恵大統領の長年の友人で逮捕された崔順実は、北朝鮮出身者の娘だ。彼女は密かに北朝鮮と通じていた。このままでは、韓国が国家的な危機に陥るところだったのだ……」と話した後、「金正恩は暴発するだろう。北朝鮮が暴発する前に、こちらから行動する。そして朝鮮半島を信託統治下に置く」。
 要するに、米中ロの共同管理下に置き、三国が容認する北朝鮮の指導者を選ぶ、ということだ。
 中国がこの提案に乗ってくるのかどうかは疑問符がつく。共同管理下に置いたとしても、いずれ韓国主導の半島統一が交渉のテーブルにのってくる。そのとき、中国は拒絶するのは火を見るより明らかだ。
 筆者は思う。唯一の恒久的な解決策は朝鮮半島の永世中立化だ。日米中ロが保証し、韓国が同意する。朝鮮半島を東アジアの「スイス」にしてこそ、非核化が実現され、日本が長年かかえている「拉致問題」も解決する。そしてなによりも、中国の国益が保証される。それは半島を永続的に緩衝地域にすることができるからだ。また、半島の中立化は平和を維持する観点から、日米の国益にも適う。韓国民にとっても平和を保証される道である。北朝鮮国民は独裁の頸木から解放される。
 半島を恒久的な緩衝地帯にする保証をして初めて、習近平指導部が朝鮮半島問題の解決に真剣に取り組むようになると思う。それが半島を戦火に巻き込むことなく、北朝鮮の金一族の3代支配を平和裏に終わらせる唯一の道ではないだろうか。

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老いて元気に生きるには?    老人ホームを訪問して思う

2017年04月12日 10時37分32秒 | 老人社会
歳をとっても元気に生きるにはどうしたらよいか。70歳の峠を目の前にした筆者の最大の関心事のひとつだ。結論を先に言えば①人と話す②運動する③適度に食べる④頭を適度に使うーではないだろうか。
 筆者には95歳の母がいる。幸い認知症もなく頭脳は明晰。ただ、耳が遠く、緑内障で右目が失明し、歩行器を使わなければ歩けない。
 完全退職して約1年半。筆者はほぼ毎日、母が住む老人ホームを訪問する。入居している老人を見ていると3つに大別される。頭脳が明晰で自分の足で歩くことができる人、頭脳が明晰だが、車いすか歩行器の力を借りる人、そして認知症を患い、ヘルパーさんの助けが必要な人だ。
 この中で、頭脳が明晰で、自らの足で歩ける人から、筆者のような老人予備軍が学ぶところは多い。法的規則に照らせば65歳以上は介護保険の対象者であり、老人になる。約半月前、東京へ行く用事でJR神田駅から乗車した折、筆者も人生で初めて若い大学生に席を譲られそうになった。「大丈夫」と笑みを浮かべながら、親切な好青年の申し出を丁重に断ったが、「俺も老人だ」と思った。
 話が脱線したが、元に戻そう。数日前、心身ともに元気な老人と花見見物をした。老人ホームが企画したイベントで、90歳以上の老人が対象だった。母のように歩行器や車いすの助けを借りる老人は、子どもや親戚縁者が付き添った。この企画に参加した老人は6人。そのうち96歳と93歳の女性二人は自力で歩けた。
 筆者が驚いたのは、ホームの従業員や看護婦さんら”若い人”が歩行を速めたとき、老人2人も歩行を速めたことだ。60歳代の介護者に歩行を合わせた二人には心から驚いた。
 あと4年もすれば1世紀を生きる96歳の女性は中学校の元家庭科の教師。本人は「家庭科の授業だけでなくほとんどの授業で先生は立ちっぱなしです。これが良かったのかもしれません」と話す。現在、ホームの長い廊下を歩き、庭を散策するという。またホームの周辺をヘルパーさんと歩く。
 「ここ数年、目が薄く(悪く)なり、新聞を読むことができなくなりましたが、それまでは毎日読んでいました」と笑みを浮かべて語った。
 朝昼夕の食事時には、”若い”同居者にご飯を茶碗についだり、お茶を入れたりして世話している。80歳代後半で車いすに座っている同居者に何くれとなく世話しているのを見かける。筆者の母と同じテーブルで食事するため、母もずいぶんお世話になっている。
 人と楽しく話し、適度の運動を欠かさず、その上、食欲も旺盛だ。この96歳の女性を見ていると、人間という動物が亡くなる兆候を見せるときは食欲が失われていくことだと感じた。ホームで入居者を見ているとつくづくそう思う。
 このホームを観察してもう一つ言えることは、好奇心を失わず、自助に努めることだと思う。栃木県下野市にあるこの老人ホームは、入居老人の自助努力を促している。いろいろな老人ホームを見たり、聞いたりしたが、従業員やヘルパーさん優先のホームが大半だ。つまり、能率的な仕事ができるように従業員優先の仕組みや規則をつくっている。朝食は7時から8時まで、何をしてはいけないなどの規則だ。
 この老人ホームは朝食の時間も「何時まで」としていない。比較的自由だ。ホームから事務所に通っている76歳の労務士もいる。
 ヘルパーさんがすべて介護するようなことはしない。付き添ってはいるが、できるだけ自分のことは自分でするように仕向けている。このため、入居当時、歩けなかった女性老人が歩行器を使い、ヘルパーさんの助けを得て歩くようになった。これも驚きだった。
 ここの34歳の所長の方針だという。「ホームは自由な雰囲気にしなければ、実りある最後の人生を過ごせない」というのが彼の考えだ。
 人間は「人と会話し、適度の運動をし、バラエティーに富んだ食事をする。そして死まで自分の趣味を全うする」中に、実りのある老年期を過ごせるのだと理解した。何よりにもまして、最後の息を引き取るまで、できることは自分でする、できないこともできるようになろうと努力することだと、この老人ホームから学んだ。

写真:母が入居している老人ホーム

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迫りつつある東アジアの危機  朴前大統領の逮捕に思う

2017年04月01日 11時07分16秒 | 東アジアと日本
 韓国検察は31日未明、前大統領の朴槿恵容疑者を収賄や職権乱用などの疑いで逮捕した。朴前大統領がほんとうに収賄と職権乱用にまみれたのかどうかを判断する立場にはない。しかし朴逮捕をめぐってあらためて韓国人の国民性と社会を認識し、この逮捕が東アジアの騒乱の始まりではないかと危惧する。
 きょうから4月。1日はエープリールフールだ。年度の変わり目でもある。このブログをエープリ-ルフールに書く。これから書くことが「フール」であることを祈る。
 総合情報誌「選択」の4月号に「朝鮮半島騒乱『前夜』」との見出しが躍っていた。筆者は息をのんだ。そう思うからだ。
 韓国民の激情とも思える国民性。目の前のことしか理解できず、目の前に起こったことを感情のままに行動に移す国民性がまもなく、「親北・親中」政権の樹立を促す。
 韓国各紙は最大野党の「共に民主党」元代表の文在寅(ムン・ジェイン)候補が最有力だと報じている。支持率は35%前後に達し、2位以下を大きく引き離している。
 文氏は筋金入りの対北・対中宥和主義者だとみられている。対日政策も根本から悪い方向へと変化するだろう。
対米政策についても「ノーと言える韓国にならなければならない」と唱えている。文氏が政権を握れば、トランプ米政府に地上配備型迎撃システム「高高度防衛ミサイル(THAAD=サード)」の在韓米軍への配備決定に対する再交渉を求めてくるだろう。
 「慰安婦」をモチーフにした少女像がソウルの日本大使館前や釜山の日本国総領事館前に設置されたことは、その設置の是非というよりも、東アジアの騒乱の引き金になる危険をはらんでいる。
 韓国国民と文氏ら左派勢力は過去を引きずり、日本による35年間の韓国併合が韓国の未来の窓を曇らせていると言える。日本が韓国にした過酷な植民地政策にばかり目がいって、韓国の危険な未来を見えなくしている。それは日本とロシア、清帝国(中国)の帝国主義諸国の狭間で、内紛にまみれて未来への政策を誤った当時の韓国の為政者とどこか似ているのかもしれない。
 韓国国民が目の敵にしている日本の現状はどうだろうか。日本では、一時の「韓流ブーム」は霧消し、嫌韓ムードが日本列島を覆っている。日本国民の韓国に対する見方は厳しくなっているように思う。これまた遠い未来を見据えて行動しているとは言い難い。
「慰安婦問題」で日韓両政府が合意したにもかかわらず、「罪意識もなく当然のごとくちゃぶ台をひっくり返す」韓国民に日本人は嫌気がさしている。法を尊重する国民と、そうでない国民。そこには長い歴史の相違がある。 
 日本政界も大局を見据えて行動することができる政治家がごく少数しかいない。要するにチャーチルのようなリーダーシップを発揮する指導者がいない。このことも東アジア状勢を悲観視させる原因だ。
 一右翼の情緒に満ちた籠池氏の右翼思想に共鳴した安倍晋三首相と妻の昭恵さん。たとえ首相が述べるように、国有地売却問題にかかわっていないとしても、籠池氏の思想に好感を抱いていたのは確かだ。昭恵さんが新設される予定だった小学校の名誉校長を引き受けていた(この騒動で辞退)ことでも明らかだ。これだけでも安倍氏の情緒的な右派思想の欠陥が露呈している。
 学校法人「森友学園」への国有地売却問題で、事実上国会審議が止まっている。野党4党が求める文部科学省の天下り斡旋問題に関する審議を野党自身が拒んでいる。
 情緒的な特性を持っている日本の右翼勢力を具現し、「教育勅語」を事実上肯定する安部政権と、大局が見れず、大衆迎合的な民進党など野党勢力が東アジア状勢をさらに不安定化させるだろう。
 米国はどうか。これまた情緒的で感情のおもむくままに政策を立案するトランプ大統領がいる。素晴らしい民主主義のチェック・アンド・バランスにより、議会がトランプの暴走を止めてはいるが、先行きは不透明だ。
 トランプ大統領は日々、北朝鮮に対する嫌悪感を強めているという。彼の性格からして、大局的な状況を理解できず、中国の対北朝鮮政策にしびれを切らして衝動的に平壌を攻撃するかもしれない。
 北朝鮮の独裁指導者、金正恩委員長も強硬手段のみが米国の指導者を交渉のテーブルに引き出せる唯一の道だと信じ込み、ミサイルと核爆弾の向上に躍起になっている。これまた過去を学んでいない。米国人の性格を理解せず、自分の窓からしか、朝鮮民族の国民性からしか判断していない。
 権謀術数に長けた中国はどうか。ひたすら国力の増進に努めている。米国の国力に追いつき、追い越すまでは、ひたすら米国に恭順の意を表し、東アジアでの紛争を阻止する努力をするだろう。しかし、北朝鮮の後ろ盾となる限り、努力はうまくいくだろうか。
 北朝鮮は中国に楯を突いている。中国の意向を無視している。それでも金正恩は中国が北朝鮮を守ると踏んでいる。中国は韓国主導の朝鮮半島統一を決して許さないからだ。米国のミサイルが中国ののど元に突きつけられるのを許さない。米国の韓国へのTHAAD配備決定でさえ許さず、中国旅行客を韓国に行かせないなどの嫌がらせをしている。
 東アジアや世界に、チャーチルのようなリスクと勇気を持つ指導者がいないことが、事態をますます悪化させている。
 文氏の韓国大統領就任は中国にとり、願ってもない東アジア環境を作り出すが、米国にとっては最悪のシナリオになる。そのとき、トランプ大統領がどう動くか。性急な動きだけはしてほしくない。
 カギは中国だ。朝鮮半島をめぐる中国の思惑を満たす方法はある。長期的展望に長けたチャーチルなら、きっとこう考えるだろう。「朝鮮半島を東アジアのスイスにする」。それは拉致問題の解決でもあると信じる。しかし、きょうは詳しく書くのを差し控える。
 いずれにしても、今後2~3年間は東アジアから目を離せない。日本と国民の平和な生活が続くことを祈るばかりだ。そして、与野党の政治家にチャーチルが記した政治家の心得を読めと言いたい。それは「Thoughts and Adventures」だ。

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俳優、渡辺謙さんが好演するミュージカル「王様と私」の虚実を描く書籍「現実主義者の選択」

 「現実主義者の選択」(ホルス出版)を紹介する。渡辺謙さんがブロードウェイで好演しているシャムの国王。ミュージカル「王様と私」は真実を伝えていない。歴代タイ政府はこの半世紀以上にわたって、この物語を描いた映画、演劇などの上映や上演を国内で禁じてきた。  「王様と私」を初めて映画で観賞したのは今から40年以上前。ユル・ブリンナーとデボラ・カーがすばらしい演技を見せていた。渡辺さんが演じているこの王様の名前はモンクット王。吉田松陰が足元にも及ばない当時の国際情勢を認識していた名君だった。タイ人もこの国王を知らないという。名君や名政治家ほど後世の人々に忘れ去られると感じる。  英国の名誉革命を指導者した初代ハリファクス公爵も同じだ。市井の英国人は知らない。17世紀後半に活躍した名政治家の格言や政治家心得を、この書籍は引用する。公私混同で公金を使った舛添要一・東京都知事も彼の書物を読んだほうが良い。彼だけではない、政治モラルとレベルが落ちた多くの日本の政治家も読むべきだ。  もう一人の人物は堀悌吉・海軍中将。このごろ、やっと光が当てられ始めている。NHK出版がこのほど「山本五十六 戦後70年の真実」を出版し、この書籍も読んだ。2011年に日本映画「聯合艦隊司令長官 山本五十六 -太平洋戦争70年目の真実-」が上映された。山本五十六元帥を役所 広司さんが演じ、歌舞伎役者の十代目坂東三津五郎さんが堀悌吉海軍中将を演じた。  堀提督は米英協調を唱えたため、1934年に旧海軍から追われた。彼の生きざまは日本の運命の裏返しだったと思う。日本人はこの立派な人物を知らない。  この頃、日本人は自信をなくし、日本は迷走している。この3人の生きざまを知って、未来に思いをはせてほしいと願う。