現代を切る  ウィンストン・チャーチルと初代ハリファクス侯爵     

退職から9年。ブログを始めて4年。現実主義者として、歴史を紐解き、英国の二大政治家らの発言を下敷きにして記す。

解決策は朝鮮半島の永世中立化   緊迫増す北朝鮮情勢

2017年04月14日 11時45分58秒 | 東アジアと日本
 アメリカ海軍の第1空母打撃群が今日、明日中に朝鮮半島近海に到着する。朝鮮半島はかつてない緊張に包まれている。嵐の前の静かさなのだろうか。
 シリアのアサド政権が化学兵器を反政府地域に打ち込み、子どもや赤ちゃんまで殺害したのを受け、米国が59発の巡航ミサイルをシリア空軍基地に撃ち込んだ。このことが、朝鮮半島状勢を悪化させている。北朝鮮を疑心暗鬼にさせている。中東の嵐が波紋となって東アジアに及んだ形だ。
 朝鮮半島が緊迫しているのにもかかわらず、日本国民はその緊張を肌で感じていない。「なんとかなる」「米国が北朝鮮を攻撃するはずがない」など楽観的な見通しが大勢を占めている。
 70年以上も戦争を経験していない日本国民がそう感じるのも無理はない。第1次世界大戦から約20年間の平和を享受した英国人もそうだった。
 1939年9月1日に第2次世界大戦が始まった後でさえ、英国民は戦争を自分らの問題とは考えなかった。戦争が始まって9カ月後、ナチス・ドイツ軍がフランスを蹂躙し、英仏連合軍がダンケルクから英本土に退却、チャーチル首相が6月4日に議会で「英国は決して降伏しない。ひとりになっても戦い続ける」と述べて初めて、戦争は英国民とって最大の関心事になったのだ。筆者は日本人が「朝鮮半島問題を最大の関心事」にならずに済むことを祈るばかりだ。
 時は日々変化している。朝鮮半島問題の直接のプレーヤーは日本でも、北朝鮮の脅威を最も身近に受けている韓国でもない。直接のプレーヤーは米国と中国であり、もちろん北朝鮮である。
 中国のリーダーを除いて、米国や北朝鮮のリーダーには長期的な戦略も妥協もないように思える。
 米国のトランプ大統領は商売人だとつくづく思う。昨日、ロシアと仲が良いように見せれば、今日は100年の仇敵のように振る舞う。中国に対しても、為替操作国だと非難していたが、北朝鮮に効果的な圧力を加えれば「為替操作国とは思わない」という。そろばん勘定をはじいてはいるが、長期的戦略に基づいて振る舞ってはいない。
 米大統領は、どうも米国民の国民性を一番持っている人物のようだ。建国の父らが抱いた「ピルグリム精神」を持っている。正義のためには力をも行使する。正義は米国の正義だ。客観的な正義などあろうはずもない。
 一方、北朝鮮の若い指導者、金正恩は太平洋戦争当時の日本の軍部指導者と同じだ。日本の軍部指導者が太平洋戦争前夜、日々強まる米国の経済制裁から米国が攻めてくると信じ込み、ハワイ・真珠湾を奇襲して13倍も国力が違う米国に敗北した。東条英機首相は当時、米国民の孤立主義やルーズベルト大統領の「ヒトラー・ドイツ政権打倒を最優先」する政策を理解していなかった。
 金正恩・国防委員長も「ミサイルと核開発が米国との交渉を開く唯一の道だ」と信じ込んでいる。明日(15日)は彼の祖父である金日成主席生誕105周年。金日成主席は、金正恩や父の金正日と違って、独裁者であることには変わりなかったが、まともな政治家だった。
 金日成主席は自国の国力と米国の国力を客観的に観察することができた。1994年の「北朝鮮核危機」の際、強行一辺倒の長男、金正日を一時、軟禁し、正日の異母弟、金平日を平壌に呼び戻した。そして、訪朝したカーター元米大統領との会談に同席させ、米国との交渉に臨んだ。
 金日成主席は、外交交渉は自らの弱さを体現するのもではないことを理解していたが、息子の金正日も孫の金正恩も国力のすべてが軍事力だと思い込んでいる。非常に危険だ。
 米国と北朝鮮の指導者に比べて、中国の最高指導者、習近平は現実主義者だ。ある意味、中国人の伝統である「権謀術数」に長けた人物であり、冷静に中国の国力を計算し、一歩一歩慎重に漸進している。「戦わずして勝利するは最上の策」は古代中国の兵法家、孫武の兵法書「孫子」の一説だ。
 米国に協調することをいとわない。だからといってすり寄らない。12日の国連での「化学兵器使用を巡るシリアのアサド政権の調査」決議に棄権した。シリア問題に関する7~8回の決議に対してロシアに同調していたが、今回は棄権した。今まで協調していたロシアを一瞬で見捨て、米国に味方した。それは中国が米国の真剣度を理解し、米国に楯を突いても勝ち目はないと踏んだからだ。まさに戦略的な接近であり、心から米国の政策を支持していない。
 中国のしたたかな計算が目に見える。このしたたかさが、日中戦争において、当時の国民党の指導者、蒋介石の戦略に日本軍部がはまった。中国人を見くびり、根拠のない優越意識を抱いた日本人と軍部が「一撃で中国を懲らしめる」という訳の分からない感情論で中国大陸の奥へ奥へと進撃した。蒋介石は広大な中国大陸を利用して、日本軍を泥沼へと引き込んだのだ。 現在、長期戦略を胸に秘めた中国は米国をなだめ、協力するとトランプ大統領にシグナルを送っている。朝鮮半島をめぐるトランプ大統領の「独断」を押しとどめようとしているようだ。
 習近平や中国指導部にとって、朝鮮半島の安定は最も重視する国益だろう。中国はひとつとする台湾問題と同列だと思う。最重要なのだ。
 中国は、朝鮮半島が混乱し、北朝鮮が崩壊、韓国が朝鮮半島を統一して、米国が中朝国境の鴨緑江まで来ることを脅威と見なしている。中国の視点から見れば、当然の考えである。
 中国は米国が長期的で潜在的な敵だと思っている。習近平が唱える「偉大な中華民族の復興」にとって、米国が大きな障害だと知っている。中国が1839~42年のアヘン戦争以前の状態に戻す「邪魔者」だと見なしている。中華圏をふたたびつくり、東アジアに君臨するのは中国指導部の夢であり、長期戦略だ。
 一方、中国は現在、米国の国力の足下にも及ばないことを理解している。米国との軍事力では以前よりはその格差は縮まったが、まだ大きい。ましてや、半導体などの最先端技術では米国にひじょうな遅れをとっている。中国指導部は、北朝鮮の若き独裁者と違って、国力は軍事力でなく、外交力、経済力、技術力、国民の民度・士気、地勢的な位置などすべての要素から構成されていると骨の髄まで理解している。それは正しい。
 中国は朝鮮半島の安定化と北朝鮮の自国への勢力圏を望み、米国との協力を目指す矛盾した外交政策を当面追求するだろう。このような米中の思惑の中で、将来の朝鮮半島をどうするのか?
 トランプ政権誕生を控えた昨年12月17日、アメリカ国務省でアジア地域を担当するダニエル・ラッセル東アジア太平洋担当国務次官補が、ひっそりと来日した。同氏はオバマ前大統領の幹部の中で、唯ひとりトランプ政権で引き続き仕事をしている。
 ラッセル氏は日本政府首脳にこう述べたという。「朴槿恵大統領の長年の友人で逮捕された崔順実は、北朝鮮出身者の娘だ。彼女は密かに北朝鮮と通じていた。このままでは、韓国が国家的な危機に陥るところだったのだ……」と話した後、「金正恩は暴発するだろう。北朝鮮が暴発する前に、こちらから行動する。そして朝鮮半島を信託統治下に置く」。
 要するに、米中ロの共同管理下に置き、三国が容認する北朝鮮の指導者を選ぶ、ということだ。
 中国がこの提案に乗ってくるのかどうかは疑問符がつく。共同管理下に置いたとしても、いずれ韓国主導の半島統一が交渉のテーブルにのってくる。そのとき、中国は拒絶するのは火を見るより明らかだ。
 筆者は思う。唯一の恒久的な解決策は朝鮮半島の永世中立化だ。日米中ロが保証し、韓国が同意する。朝鮮半島を東アジアの「スイス」にしてこそ、非核化が実現され、日本が長年かかえている「拉致問題」も解決する。そしてなによりも、中国の国益が保証される。それは半島を永続的に緩衝地域にすることができるからだ。また、半島の中立化は平和を維持する観点から、日米の国益にも適う。韓国民にとっても平和を保証される道である。北朝鮮国民は独裁の頸木から解放される。
 半島を恒久的な緩衝地帯にする保証をして初めて、習近平指導部が朝鮮半島問題の解決に真剣に取り組むようになると思う。それが半島を戦火に巻き込むことなく、北朝鮮の金一族の3代支配を平和裏に終わらせる唯一の道ではないだろうか。

この記事をはてなブックマークに追加

老いて元気に生きるには?    老人ホームを訪問して思う

2017年04月12日 10時37分32秒 | 老人社会
歳をとっても元気に生きるにはどうしたらよいか。70歳の峠を目の前にした筆者の最大の関心事のひとつだ。結論を先に言えば①人と話す②運動する③適度に食べる④頭を適度に使うーではないだろうか。
 筆者には95歳の母がいる。幸い認知症もなく頭脳は明晰。ただ、耳が遠く、緑内障で右目が失明し、歩行器を使わなければ歩けない。
 完全退職して約1年半。筆者はほぼ毎日、母が住む老人ホームを訪問する。入居している老人を見ていると3つに大別される。頭脳が明晰で自分の足で歩くことができる人、頭脳が明晰だが、車いすか歩行器の力を借りる人、そして認知症を患い、ヘルパーさんの助けが必要な人だ。
 この中で、頭脳が明晰で、自らの足で歩ける人から、筆者のような老人予備軍が学ぶところは多い。法的規則に照らせば65歳以上は介護保険の対象者であり、老人になる。約半月前、東京へ行く用事でJR神田駅から乗車した折、筆者も人生で初めて若い大学生に席を譲られそうになった。「大丈夫」と笑みを浮かべながら、親切な好青年の申し出を丁重に断ったが、「俺も老人だ」と思った。
 話が脱線したが、元に戻そう。数日前、心身ともに元気な老人と花見見物をした。老人ホームが企画したイベントで、90歳以上の老人が対象だった。母のように歩行器や車いすの助けを借りる老人は、子どもや親戚縁者が付き添った。この企画に参加した老人は6人。そのうち96歳と93歳の女性二人は自力で歩けた。
 筆者が驚いたのは、ホームの従業員や看護婦さんら”若い人”が歩行を速めたとき、老人2人も歩行を速めたことだ。60歳代の介護者に歩行を合わせた二人には心から驚いた。
 あと4年もすれば1世紀を生きる96歳の女性は中学校の元家庭科の教師。本人は「家庭科の授業だけでなくほとんどの授業で先生は立ちっぱなしです。これが良かったのかもしれません」と話す。現在、ホームの長い廊下を歩き、庭を散策するという。またホームの周辺をヘルパーさんと歩く。
 「ここ数年、目が薄く(悪く)なり、新聞を読むことができなくなりましたが、それまでは毎日読んでいました」と笑みを浮かべて語った。
 朝昼夕の食事時には、”若い”同居者にご飯を茶碗についだり、お茶を入れたりして世話している。80歳代後半で車いすに座っている同居者に何くれとなく世話しているのを見かける。筆者の母と同じテーブルで食事するため、母もずいぶんお世話になっている。
 人と楽しく話し、適度の運動を欠かさず、その上、食欲も旺盛だ。この96歳の女性を見ていると、人間という動物が亡くなる兆候を見せるときは食欲が失われていくことだと感じた。ホームで入居者を見ているとつくづくそう思う。
 このホームを観察してもう一つ言えることは、好奇心を失わず、自助に努めることだと思う。栃木県下野市にあるこの老人ホームは、入居老人の自助努力を促している。いろいろな老人ホームを見たり、聞いたりしたが、従業員やヘルパーさん優先のホームが大半だ。つまり、能率的な仕事ができるように従業員優先の仕組みや規則をつくっている。朝食は7時から8時まで、何をしてはいけないなどの規則だ。
 この老人ホームは朝食の時間も「何時まで」としていない。比較的自由だ。ホームから事務所に通っている76歳の労務士もいる。
 ヘルパーさんがすべて介護するようなことはしない。付き添ってはいるが、できるだけ自分のことは自分でするように仕向けている。このため、入居当時、歩けなかった女性老人が歩行器を使い、ヘルパーさんの助けを得て歩くようになった。これも驚きだった。
 ここの34歳の所長の方針だという。「ホームは自由な雰囲気にしなければ、実りある最後の人生を過ごせない」というのが彼の考えだ。
 人間は「人と会話し、適度の運動をし、バラエティーに富んだ食事をする。そして死まで自分の趣味を全うする」中に、実りのある老年期を過ごせるのだと理解した。何よりにもまして、最後の息を引き取るまで、できることは自分でする、できないこともできるようになろうと努力することだと、この老人ホームから学んだ。

写真:母が入居している老人ホーム

この記事をはてなブックマークに追加

迫りつつある東アジアの危機  朴前大統領の逮捕に思う

2017年04月01日 11時07分16秒 | 東アジアと日本
 韓国検察は31日未明、前大統領の朴槿恵容疑者を収賄や職権乱用などの疑いで逮捕した。朴前大統領がほんとうに収賄と職権乱用にまみれたのかどうかを判断する立場にはない。しかし朴逮捕をめぐってあらためて韓国人の国民性と社会を認識し、この逮捕が東アジアの騒乱の始まりではないかと危惧する。
 きょうから4月。1日はエープリールフールだ。年度の変わり目でもある。このブログをエープリ-ルフールに書く。これから書くことが「フール」であることを祈る。
 総合情報誌「選択」の4月号に「朝鮮半島騒乱『前夜』」との見出しが躍っていた。筆者は息をのんだ。そう思うからだ。
 韓国民の激情とも思える国民性。目の前のことしか理解できず、目の前に起こったことを感情のままに行動に移す国民性がまもなく、「親北・親中」政権の樹立を促す。
 韓国各紙は最大野党の「共に民主党」元代表の文在寅(ムン・ジェイン)候補が最有力だと報じている。支持率は35%前後に達し、2位以下を大きく引き離している。
 文氏は筋金入りの対北・対中宥和主義者だとみられている。対日政策も根本から悪い方向へと変化するだろう。
対米政策についても「ノーと言える韓国にならなければならない」と唱えている。文氏が政権を握れば、トランプ米政府に地上配備型迎撃システム「高高度防衛ミサイル(THAAD=サード)」の在韓米軍への配備決定に対する再交渉を求めてくるだろう。
 「慰安婦」をモチーフにした少女像がソウルの日本大使館前や釜山の日本国総領事館前に設置されたことは、その設置の是非というよりも、東アジアの騒乱の引き金になる危険をはらんでいる。
 韓国国民と文氏ら左派勢力は過去を引きずり、日本による35年間の韓国併合が韓国の未来の窓を曇らせていると言える。日本が韓国にした過酷な植民地政策にばかり目がいって、韓国の危険な未来を見えなくしている。それは日本とロシア、清帝国(中国)の帝国主義諸国の狭間で、内紛にまみれて未来への政策を誤った当時の韓国の為政者とどこか似ているのかもしれない。
 韓国国民が目の敵にしている日本の現状はどうだろうか。日本では、一時の「韓流ブーム」は霧消し、嫌韓ムードが日本列島を覆っている。日本国民の韓国に対する見方は厳しくなっているように思う。これまた遠い未来を見据えて行動しているとは言い難い。
「慰安婦問題」で日韓両政府が合意したにもかかわらず、「罪意識もなく当然のごとくちゃぶ台をひっくり返す」韓国民に日本人は嫌気がさしている。法を尊重する国民と、そうでない国民。そこには長い歴史の相違がある。 
 日本政界も大局を見据えて行動することができる政治家がごく少数しかいない。要するにチャーチルのようなリーダーシップを発揮する指導者がいない。このことも東アジア状勢を悲観視させる原因だ。
 一右翼の情緒に満ちた籠池氏の右翼思想に共鳴した安倍晋三首相と妻の昭恵さん。たとえ首相が述べるように、国有地売却問題にかかわっていないとしても、籠池氏の思想に好感を抱いていたのは確かだ。昭恵さんが新設される予定だった小学校の名誉校長を引き受けていた(この騒動で辞退)ことでも明らかだ。これだけでも安倍氏の情緒的な右派思想の欠陥が露呈している。
 学校法人「森友学園」への国有地売却問題で、事実上国会審議が止まっている。野党4党が求める文部科学省の天下り斡旋問題に関する審議を野党自身が拒んでいる。
 情緒的な特性を持っている日本の右翼勢力を具現し、「教育勅語」を事実上肯定する安部政権と、大局が見れず、大衆迎合的な民進党など野党勢力が東アジア状勢をさらに不安定化させるだろう。
 米国はどうか。これまた情緒的で感情のおもむくままに政策を立案するトランプ大統領がいる。素晴らしい民主主義のチェック・アンド・バランスにより、議会がトランプの暴走を止めてはいるが、先行きは不透明だ。
 トランプ大統領は日々、北朝鮮に対する嫌悪感を強めているという。彼の性格からして、大局的な状況を理解できず、中国の対北朝鮮政策にしびれを切らして衝動的に平壌を攻撃するかもしれない。
 北朝鮮の独裁指導者、金正恩委員長も強硬手段のみが米国の指導者を交渉のテーブルに引き出せる唯一の道だと信じ込み、ミサイルと核爆弾の向上に躍起になっている。これまた過去を学んでいない。米国人の性格を理解せず、自分の窓からしか、朝鮮民族の国民性からしか判断していない。
 権謀術数に長けた中国はどうか。ひたすら国力の増進に努めている。米国の国力に追いつき、追い越すまでは、ひたすら米国に恭順の意を表し、東アジアでの紛争を阻止する努力をするだろう。しかし、北朝鮮の後ろ盾となる限り、努力はうまくいくだろうか。
 北朝鮮は中国に楯を突いている。中国の意向を無視している。それでも金正恩は中国が北朝鮮を守ると踏んでいる。中国は韓国主導の朝鮮半島統一を決して許さないからだ。米国のミサイルが中国ののど元に突きつけられるのを許さない。米国の韓国へのTHAAD配備決定でさえ許さず、中国旅行客を韓国に行かせないなどの嫌がらせをしている。
 東アジアや世界に、チャーチルのようなリスクと勇気を持つ指導者がいないことが、事態をますます悪化させている。
 文氏の韓国大統領就任は中国にとり、願ってもない東アジア環境を作り出すが、米国にとっては最悪のシナリオになる。そのとき、トランプ大統領がどう動くか。性急な動きだけはしてほしくない。
 カギは中国だ。朝鮮半島をめぐる中国の思惑を満たす方法はある。長期的展望に長けたチャーチルなら、きっとこう考えるだろう。「朝鮮半島を東アジアのスイスにする」。それは拉致問題の解決でもあると信じる。しかし、きょうは詳しく書くのを差し控える。
 いずれにしても、今後2~3年間は東アジアから目を離せない。日本と国民の平和な生活が続くことを祈るばかりだ。そして、与野党の政治家にチャーチルが記した政治家の心得を読めと言いたい。それは「Thoughts and Adventures」だ。

この記事をはてなブックマークに追加

将来の不安を隠せず    韓(朝鮮)半島と日本をめぐって

2017年03月11日 10時08分59秒 | 東アジアと日本
 私的な忙しさにかまけているとブログを書くことがおろそかになる。そして歳月は人を待たない。最後にブログを書いたのが2月13日。一カ月がたった。その間に時は変化して世界と日本の状勢も変わる。当然といえ当然だ。
 朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の創始者である金日成主席の直系の孫、金正男がマレーシアのクアラルンプール国際空港で猛毒「VX」で先月13日に殺害され、昨日は韓国の憲法裁判所が朴槿恵大統領を罷免した。大衆の弾劾訴追を受けた結果だった。
 前者は北朝鮮という独裁専制国家が深く事件に関与しているという。後者は目の前のことしか考えない大衆の愚かさ、民主主義の弱点をさらけ出した。
 マレーシア警察のカリド警察長官は昨日の10日、遺体の身元は正男氏だと確認したと発表した。しかし確認方法は明らかにしなかった。十中八九、正男氏の親族の安全と親族の安全にかかわった国々への配慮だろう。そこまでしなければならない異常さには驚きを禁じ得ない。まさに21世紀という現代に16世紀の戦国時代の国家が存在する明白な証だ。
 北朝鮮の独裁者、金正恩・労働党委員長は異母兄を殺害を部下に命じたと言われている。彼の母親は在日朝鮮人。これは北朝鮮では血統から見て弱いという。江戸時代にたとえれば、正恩は金正日が側室に生ませた子どもであり、金正男氏は父親が正室の妻に生ませた子どもということになる。正恩は正当性を気にかけて、異母兄を殺したのだろう。
 独裁者は古今東西、孤独で猜疑心が強い。それは権力を保持するためにはそうせざるを得ない必然だ。まさに1392年から1910年まで韓半島を支配した李氏朝鮮の姿そのままである。韓流ドラマの時代もので描かれている姿である。
 韓国の朴槿恵政権は10日、約4年間で幕を閉じることになった。韓国で大統領が国会の弾劾訴求で罷免されるのは初めてだ。大統領が刎頸(ふんけい)の友、チェ・スンシル被告の利益供与にどこまで便宜を与えたのかは定かではないが。大統領に責任がないとは言えない。とはいえ、そのことばかりに目を向けると、事は思いもよらない方向へと向かうのは必定だ。
 朴大統領は経済の構造改革を進め、社会の分断や格差などの問題に挑んできたが、ほとんど成果を上げられなかった。そして自身が招いた弾劾問題が韓国社会の亀裂を拡大させている。韓民族は日本人以上に感情的であるため、これからますます混乱は拡大するだろう。
 第2次世界大戦で自由と民主主義を死守した英国の宰相ウィンストン・チャーチルは大衆の愚行とポピュリスムについて1931年6月19日にオックスフォード大学の学生にこう述べた。「大衆は遠い将来の利益よりも目の前の損得に固執する傾向が強く、それがポピュリズムを引き起こす」。チャーチルの言葉は時代を越えてわれわれに感銘を与える。ドナルド・トランプ氏が米国の大統領になったのもポピュリズムのおかげだと言っても過言ではない。
 日本人にとって金正男氏の殺害や朴大統領の罷免がそれぞれの国の問題なのなら「対岸の火事」で済ませられるが、そうではないところに大きな問題がある。
 東アジアには台頭する独裁国家、中国の存在を無視できない。中国はもはや理論的な共産主義国家ではない。資本主義市場経済を基盤とした独裁国家である。国家と党が国民の未来を決定し、国策に基づいて国民を動員。自由と民主主義を否定した独裁国家である。それはある意味、1930年代のドイツの国家社会主義労働者党(ナチス)とどこか似ている。特に対外拡張、軍事増強政策はうりふたつだ。
 その中国共産党と国家は、在韓米軍の最新鋭迎撃システム「高高度防衛ミサイル(THAAD)」の配備に反対し、韓国社会に圧力を上げている。配備地を提供したロッテグループ(この提供はロッテの重光会長の逮捕を免れるための韓国政府との政治取引の説がある)をはじめ、韓流映画や韓国からの輸入製品を閉め出し、韓国への輸出を制限し、中国人観光客の渡航禁止を勧告した。
 われわれ日本人は独裁国家がいかにして国民の自由を奪い、国民の意思を一つの流れに向けさせているかを、中国の対韓政策から学ばなければならないと思う。このやり方は、チャーチルが生きた時代に目の当たりに見たヒトラー・ドイツと同じであり、独裁専制国家の特質である。
 韓国の大統領選挙では、最大野党「共に民主党」の文在寅前代表が支持率で独走している。彼が大統領になれば、THAAD配備を見直し、中国や北朝鮮への宥和政策を進めるだろう。どこの国のリベラルや左派も現実を直視しないで、理想を追い求める。相手の善意に期待する。そしていつも裏切られてきた。
 中国や北朝鮮が朴大統領罷免のニュースを直ちにそれぞれの国内に流したことでも韓国次期政権への期待感がわかる。自国の将来政策に有利だと踏んでいるのだ。中国共産党や北朝鮮の独裁国家には法の秩序も三権分立制度もない。ただあるのは独裁者と一党の専制命令があるだけだ。そんな国には個人が国家の道具になっている。女王蜂と働き蜂の「蜂社会」を専制指導者は目指している。
 また韓国の次期政権に最も近い野党は、ソウルの日本大使館前や釜山の日本領事館前に設置された慰安婦問題を象徴する少女像の撤去合意の見直しを求めてくるにちがいない。さらに韓国民の日韓併合をめぐる過去の歴史への感情的なまでのこだわりが東アジアの事態をさらに悪化させるだろう。慰安婦問題存在の成否や日本の韓半島併合の歴史評価はともかく、韓国国民の感情と中国共産党の野望は日本にとり将来、日本国民の安全を揺るがす事態になりかねないと思う。
 韓国が北朝鮮と中国という独裁国家の本質を見極めず軽率な行動をとると、韓国民の命取りになりかねない。韓国は北朝鮮に対する警戒は強いが、中国に対しては強くない。それどころか宥和政策を推し進めれば、中国も妥協するから自国の国益になると勘違いしている。特に韓国の左派の人々はそう考えている。
 第2次世界大戦中の1941年9月30日、チャーチルは議会下院の首相答弁でこう話した。「ギャロップ(の世論)調査の移り気な状況ほど危険なものはありません。特に戦争中には言えることです。調査はいつもその時々の人々の衝動と気分を表しています。・・・今日、私が英国民から好意的に見られているのなら、それはわたしが世論に迎合してきたからではありません。・・・わたしの政策は職務と職責から生じており、それが唯一の安全な道だと確信するからであります。正しいと考えることを試みているのです。諸君が正しいと信じることに従って行動し、(それについて国民に)話すことを恐れてはなりません。それこそがこの(ヒトラーとの闘いの)難事において偉大な国民(英国民)の信頼を勝ち得る道であり、信頼を得る唯一の方法であります」
 現在、ポピュリズムが世界を闊歩している。民主主国家の政治家は有権者や大衆の顔色ばかりを覗(うかが)い、自らの信念や政策に基づいて行動しない。日本の政治家も例外ではない。
 その間隙を突いて、ヒトラーが欧州を第2次世界大戦に導いたように、中国共産党国家も民主主義の弱点を突いて、自らの支配権を拡大し、自分の国力が米国に勝ったと確信したとき、日本をあごで差配するだろう。
 北朝鮮の”ならず者国家、”中国やロシアの”強権野望国家”、”広い視野から時局を観察できない民主主義国家”の韓国に囲まれた日本国民はある意味では不幸である。ただ、日本国民が投票用紙で国政を任せた政治家の多くは自分の意見を持たず、リスクを取らず、ただ有権者に迎合して政治家の椅子に固執している。日本の有権者にもその責任の半分はある。
 筆者は民主主義の短所を理解していても、それでも民主主義を信奉する。民主主義が共産主義制度やほかの独裁制度よりはましだからだ。
 現在の複雑な東アジアの状勢の中で、日本が自由と民主主義制度を守るには、大胆な発想と勇気が必要である。米国にも遠慮せず、自分の意見を述べる日本でありたい。もっと具体的に言えば、日本の政治家が与野党を問わず、大胆で、それでいて合理的な政策を打ち出してほしい。決して大衆のすべての意見が正しいとは思っておしくない。有権者に迎合してほしくない。有権者の見解に耳を傾ける一方、有権者に持論を述べ説得し、リーダーシップを発揮してほしい。
 一方、日本国民は目の前の小さな損得に左右されずに、遠い将来を見つめて貴重な一票をリーダーシップを発揮する政治家に投じてほしいものだ。大衆の目の前の損得に左右されない政治家を選んでほしい。それこそがわれわれが戦後70年間にわたって謳歌してきた民主主義を守ることにつながり、独裁国家のくびきから逃れることができる唯一の方法である。
 

この記事をはてなブックマークに追加

安倍首相の前途は多難 トランプ氏と世界   日米首脳会談に思う

2017年02月13日 11時30分41秒 | 日米と世界
 安倍首相の訪米は終わった。米国内で物議を醸しているイスラム国7カ国からの米国への入国を一時禁止する大統領令を出したドナルド・トランプ米大統領は、前代未聞の厚遇ぶりをみせて日本の首相をもてなした。ワシントンでの首脳会談後、フロリダの大統領が所有する高級リゾート施設「マール・ア・ラーゴ」に招待し、ゴルフを二度もした。安倍首相は2日間もその施設に泊まった。
 英米メディアの多くは安倍首相がトランプ大統領に「おべっか」を使ったと論評し、冷ややかだ。朝日新聞などリベラルな日本の新聞は「予測できないトランプ大統領にあまりにも親しくなりすぎて、これから安倍首相は日本の主張を言い出せず、国益を損なう」と憂慮する。一方、ジャーナリストの有本香氏は産経新聞サイト上で、「アメリカのトランプ大統領に対する大半の報道姿勢について、彼に近づこうとすると、『こびる』とか言う。国同士が理解し合うための行為が、なぜこんな表現になるのか」「『入国禁止令』についても賛否両論あるにもかかわらず、反対が圧倒的のように報道される。正確な事実を伝えず、フェアではない」などとした上で「メディアによる操作は恐ろしい」と話している。
 どれも一見して一理ある。そして筆者はどちらかと言えば、安倍首相があまりにも親しくなりすぎたとする朝日新聞の見解に同調する。前回のブログで記したように、安倍首相の行動だけを見ていると「浅はか」なように映る。ただ、刻々と変化する時の流れの中に身を置いて、世界の動きを見ていると、安倍首相の気持ちは理解できる。
 安倍首相の目は中国に向いている。このため、予想がつかない、時として感情的になるトランプ米大統領に”おべっか”を使ってまでして、日本の安全を守ろうとしていることだけは確かだ。日本が米国の支援なしには中国の脅威に対抗できないのも事実だ。
 それでは中国は脅威なのかという問題が起こる。最近読んだ「米中もし戦わば」でのピーター・ナヴァロの見解を待つまでもなく、中国共産党が東アジアの覇権を求めていることだけは確かだ。既成の大国と、この大国が敷いた国際秩序を覆そうとする台頭する国家とが対立する構図は今に始まったことではない。16世紀前半のポルトガルからオランダ、フランス、英国、米国と覇権国家が移り変わってきた。その転換期には必ず戦争があった。第1次世界大戦前、ドイツ帝国は英国の覇権を奪おうと戦争をはじめ惨敗した。第1次、第2次世界大戦の戦間期にはドイツ、イタリア、日本は「持たざる国」として英国や米国に挑戦して惨敗した。
 シカゴ大学教授のジョン・ミアシャイマー氏は中国の平和的な台頭はあり得ないという。筆者もそう思う。もし中国が三権分立の民主主義国家であったら、平和裏に米国から中国へ覇権が移ったかもしれない。それは大英帝国から米国に平和裏に覇権が移ったことを考えるからだ。
 東アジアの平和は維持されるのか。ナヴァロは「70%の確立で米中は戦う可能性がある」と断じている。1500年以降、新興勢力が、世界や地域を支配する国家に対峙した15例のうち11例で戦争が起きている。
 日本一国で中国の膨張を押さえられない。そして中国の潜在的な脅威が増している。この国際環境の中で、安倍首相がトランプ氏の懐に深く入り込み、日本の安全保障を約束させたこと自体は大きい。ただ、潜在的に大きな代償をともなっていることを忘れてはならないと思う。
 英国のファイナンシャル・タイムズは、安倍首相は米大統領から日本の安全保障への確約を手に入れたが、その分だけトランプリスクが大きくなった、と報道している。
 トランプ大統領はビジネスマンだということを決して忘れてはならない。日中が固有の領土と主張している尖閣諸島を日米安保条約第5条に基づいて米国は護る、と今回の首脳会談後の会見でトランプ氏は述べた。それは経済・貿易問題との取り引きと引き替えではなかろうか。トヨタや日産などからなる日本の自動車産業を犠牲にする可能性を秘めている。
 トランプが「米国第一優先主義」と唱えても、建国以来の米国の理念「自由・民主主義」を前面に押し出す人物ではない。「自由、民主主義、人権、自由貿易」という現在の世界共通の価値観より「米国第一」が優先していることだけは確かだ。
 日米の経済問題がこじれれば、「日本から米軍を撤退する」と脅すかもしれない。安全保障を貿易の取り引き材料に使うビジネスマンになる公算が高い。安倍首相の立場は非常に危ういと思う。安倍首相が今までお経を唱えるように公言してきた民主主義の信条を時には世界に吐露すべきだ。
 第2次世界大戦中、英国を率いたウィンストン・チャーチルは「民主主義と自由」の旗を掲げて、日々移り変わる時の流れに対して現実的に動いた。安倍首相のように原理原則をかなぐり捨てて、現実に身をゆだねたわけではない。
 安倍首相がなりふり構わずトランプ大統領に”おべっか”を使っていれば、ある日、トランプ氏にハシゴを外されるかもしれない。そのとき、中国がほくそ笑むだけではなく、欧州諸国やオーストラリア、ニュージーランドなどの民主主義国家からも袖にされるかもしれない。
 安倍首相は難しい舵取りを強いられていることには同情するが、もう少し賢明な戦略を立てる必要があるように思う。それはトランプ大統領に必要以上に深入りするのではなく、親分肌で安倍首相を支配しようとするトランプ氏をあやしながら、欧州やアジア・太平洋の民主主義国家と手を携えて、自由貿易と平和を維持する努力をすべきだ。そして中国とのバランスを取りながら東アジアの平和を維持することだ。平和こそ日本と世界の国民が最も欲している宝物である。

この記事をはてなブックマークに追加

俳優、渡辺謙さんが好演するミュージカル「王様と私」の虚実を描く書籍「現実主義者の選択」

 「現実主義者の選択」(ホルス出版)を紹介する。渡辺謙さんがブロードウェイで好演しているシャムの国王。ミュージカル「王様と私」は真実を伝えていない。歴代タイ政府はこの半世紀以上にわたって、この物語を描いた映画、演劇などの上映や上演を国内で禁じてきた。  「王様と私」を初めて映画で観賞したのは今から40年以上前。ユル・ブリンナーとデボラ・カーがすばらしい演技を見せていた。渡辺さんが演じているこの王様の名前はモンクット王。吉田松陰が足元にも及ばない当時の国際情勢を認識していた名君だった。タイ人もこの国王を知らないという。名君や名政治家ほど後世の人々に忘れ去られると感じる。  英国の名誉革命を指導者した初代ハリファクス公爵も同じだ。市井の英国人は知らない。17世紀後半に活躍した名政治家の格言や政治家心得を、この書籍は引用する。公私混同で公金を使った舛添要一・東京都知事も彼の書物を読んだほうが良い。彼だけではない、政治モラルとレベルが落ちた多くの日本の政治家も読むべきだ。  もう一人の人物は堀悌吉・海軍中将。このごろ、やっと光が当てられ始めている。NHK出版がこのほど「山本五十六 戦後70年の真実」を出版し、この書籍も読んだ。2011年に日本映画「聯合艦隊司令長官 山本五十六 -太平洋戦争70年目の真実-」が上映された。山本五十六元帥を役所 広司さんが演じ、歌舞伎役者の十代目坂東三津五郎さんが堀悌吉海軍中将を演じた。  堀提督は米英協調を唱えたため、1934年に旧海軍から追われた。彼の生きざまは日本の運命の裏返しだったと思う。日本人はこの立派な人物を知らない。  この頃、日本人は自信をなくし、日本は迷走している。この3人の生きざまを知って、未来に思いをはせてほしいと願う。