現代を切る  ウィンストン・チャーチルと初代ハリファクス侯爵     

退職から9年。ブログを始めて4年。現実主義者として、歴史を紐解き、英国の二大政治家らの発言を下敷きにして記す。

日本人の前途は厳しい 広い視野を持ち現実を見よう トランプ氏と中国の大波に翻弄される東アジア

2016年12月01日 11時02分58秒 | 世界の動き
 今日から師走だ。歳をとるごとに一年がたつのがより速いように感じる。今年一年は読者の皆様にとってどんな一年だったのだろうか。わたしにとっては平凡な一年だった。しかし日本国民と日本にとっては不吉な一年だったと思う。激動の時代がすぐそこまで来ているように思うのはわたしだけだろうか。
 ドナルド・トランプ氏の米大統領選の勝利、韓国の朴槿恵大統領への弾劾と韓国社会の不安定、北朝鮮の原爆・ミサイル発射実験、共産党が支配する中国の台頭、日本の野党の無能さなどが来年、津波のように日本人へ押し寄せてくるだろう。
 筆者はこのごろつくづく思うことがある。日本人ほど善良な人々は世界広しといえどいない。現実離れした理想を追い求める。相手の善良さに期待し信頼する。海が日本人の国民性を育んだ。20世紀初頭に飛行機が登場するまで日本ほど安全な国はなかった。海が日本人のそんな国民性を育んできたと思う。
 安全を確保できる人々はとかく自己中心的だ。自分の目からしか周囲の出来事を見ない。日本人は「憲法9条の戦争放棄」を守っていれば、他国から侵略されないと主張する。理想としては気高い。素晴らしい。しかし日本人のような善良な国民が、この地球上にそんなに多くはいない。個人としてはたくさんいても、利害や国益が絡んでくると、そんな人々も豹変する。
 日本人と真逆の国民が中国人だ。中国人ほど現実的な国民はいない。現実に即して行動する。ある意味で忍耐力のある、気長な国民なのかもしれない。中国共産党指導部は現在、小躍りしているだろう。ようやく好機が訪れようとしていると笑みを浮かべているに違いない。
 20世紀の英国の歴史家ハーバート・バターフィールド教授はよく言ったものだ。「時は変化する」。「今日は昨日と同じではない」。時の変化を捉える指導者や国家が最後には主導権を握る。長期的な展望に立って日々の出来事を観察している政治家が大政治家なのだろう。そんな政治家が信頼できる。
 日本に信頼できる政治家がいるのだろうか。冷厳な現実を見据え、理想の旗を掲げている政治家は少ない。日々起こる目の前のことのみに関心を示し、政敵を批判していれば満足する政治家ばかりだ。有権者や大衆に迎合し、自分の政治哲学や信念のない政治家ばかりだ。そんな政治家は気楽だ。だから、勉強もしない、人気だけで政治家になるタレントや有名アナウンサーが多い。
 今朝、サイトを呼んでいると次のような記事にぶつかった。転載する。
 
  野党第一党の党首である蓮舫氏だが、批判する言葉が示す政策方針が新たな問題を引き起こす可能性があることを理解しているのかは定かではない。
 TPP交渉関係者は「米国内で合意内容の反対の声が上がることは、協定交渉で日本がいい条件を勝ち取ったことも意味する」とも指摘する。
 合意を破棄して再交渉となれば、現在よりも日本の条件が厳しくなる可能性が高くなるという。交渉関係者からは、蓮舫氏の発言に「外交音痴」との不満も漏れる。蓮舫氏の新たな経済ビジョンは?

 蓮舫氏にビジョンなどありはしないと思う。安倍首相を非難していればそれで良いのだ。気楽な政治家である。筆者は安倍首相の国家観や憲法観には異議を申し立てているが、外交に関しては評価している。よくやっていると思う。彼が現実主義者なのが、何よりの安心材料だ。この意味で日本国民は幸せだ。安倍首相を感情的に嫌うリベラルからは批判されるかもしれないが・・・。
 トランプ次期大統領はビジネスでは大成功したが、米国建国以来最悪の大統領になる可能性が非常に高い。ビジネスでも長期的な展望が必要だと思うが、それはあくまで自分の利益だけを考える。政治外交の長期的展望は、自分の利益だけでなく、他国の利益をも考える。他国の利益のために、自国に利益の一部を犠牲にする。しかし全体としてみれば自国の国益となる。商売では100%の利益を追求するのかもしれないが、政治外交では60%をもって良しとする。そこが政治とビジネスでは違うと思う。
 トランプ氏のTPP離脱提唱はアジア・太平洋の安全保障からの「足抜け」を意味している。次にこの空間を埋めるのは中国とロシアだろう。中国やロシア指導部もそれを望んでいる。中国は民主主義の経験がない。力こそ正義だと信じるロシアもほとんどない。
 歴史を紐解けば、19世紀に世界を支配したのは英帝国だった。それ以前はフランス帝国が欧州を支配していたが、世界を支配した最初の国は英帝国だった。英帝国に代わって米国が世界の支配権を握った。
 英帝国も米国も帝国主義的な行動に出たこともあったとは言え、民主主義国家だった。多分に協力と支配が交錯していた。しばしば命令調な言葉を投げかけ、小国に圧力も加えてきた。しかし、総じて対話があった。これからアジア・太平洋の経済・政治支配を目指す中国に比べれば「マシ」だと思う。
 かつて日本の軍閥がアジア・太平洋支配を試みて民主主義国家の米国に敗北した。今日、アジアで初めて独裁国家がアジア・太平洋を支配するのだろうか。
  中国は経済成長を背景に、すでに資本輸出国となっている。ここ数年、中国人投資家は日本の不動産に熱い視線を注いでいる。中国資本は2010年から15年にかけて、世界中で企業や不動産の買収を積極的に行っている。こうしたなかで「中国資本が日本の不動産を爆買いしていることは何ら驚くことでもない」と論じている専門家がいる。
 続けて、中国人投資家にとって日本は「米国、カナダ、オーストラリアに次いで人気のある投資先」であることを伝え、中国人投資家が日本の「土地」を購入する事例も多いことを紹介した。
  中国の場合、土地は人民のものであり、政府のものであるため、購入できるのは所有権ではなく、一定期間の土地使用権となるが、日本の場合は所有権を手にすることができ、土地に水資源があれば水資源に対しても所有権を手にすることができる。
 中国共産党政府は暗黙のうちに、中国人の海外での土地購入を認めている。この政策も中国指導部の遠い将来を見据えた戦略だろう。
 トランプ次期大統領が世界の現実を理解したときには、手遅れになっているのかもしれない。長期的な観点から判断すれば、トランプ氏の米国一国優先主義が米国民と米国経済をさらに苦しい状況へと追い込んでいくのは必至だ。
 米国だけが不利益を受けるのならまだしも、現代世界は、われわれが想像する以上に密接につながっている。世界を巻き込んだ国際秩序や経済が「暗転」するのはもはや不可避だ。
 トランプ氏の独善的な見方から、誤った政策が実施されようとしている。自由主義貿易の欠点ばかりに目を向け、利点に目を向けない。自由貿易を全体から見て判断できないトランプ氏。米国の政治家も相当小粒になった。
 われわれは、なぜ史上希にみる凶悪な独裁者アドルフ・ヒトラーが選挙で政権を握り、ドイツ人と世界の人々を塗炭の苦しみに陥れたかを考えなければならない。周近平ら中国指導部がヒトラーのような凶悪な人間だとは思わないが、独裁者であることには変わりはない。共産主義という衣を脱ぎ捨てることはないだろう。命令と支配は独裁者や独裁集団の特徴だ。
 日本国民と政治家は海図のない海に放り込まれたといってもよい。しかし、今まで良きにつけ悪しきにつけ、米国の「お父さん」に頼り切ってきた。自分で考えて行動してこなかった。
 これからはそうはいかない。自分で考える必要がある。ただ、無謀な太平洋戦争をした軍部指導者のように、独善的になってはいけない。広い視野から観察する。我慢ではなく忍耐力をもって行動する。勇気を奮い立たせ行動する。決して宿命感や思い込みで行動してはいけない。
 アメリカが頼りにできなければ、オーストラリアやニュージーランドの民主主義国家と手を携え、自由貿易を信じるシンガポールなどの国々と協力して中国を自国本位の利益追求の国から協力と共同繁栄のアジア太平洋の指導者国家へと導く努力をすべきだ。 
その過程には厳しい時が待っていよう。激しい対立があるだろう。それを忍耐心で乗り越えていかなければならない。なぜ?中国が21世紀のアジア・太平洋の大国になる現実を無視できないのだから。現実がわれわれを見つめているのだから、われわれも現実を見つめなければならない。

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カストロ氏は独裁者でありヒューマニスト  キューバ革命家の冥福を祈る

2016年11月27日 21時59分07秒 | 時事問題
 キューバのフィデル・カストロ前国家評議会議長が11月25日に死去した。キューバ革命の父カストロ氏の評価は賛否両論だ。彼が搾取を正し、キューバの国民を貧困から救おうとした一方、半世紀にも及ぶ独裁政権を敷いたからだ。
 歴史は単純ではなく複雑だと筆者は何度もこのブログで主張してきたが、カストロ氏にも当てはまる。
 筆者はカストロ氏を非道な独裁者だと割り切りたくない。1953年7月、カストロ氏はチェ・ゲバラらとともに武装闘争を開始し親米のバティスタ独裁政権を打倒。59年1月に革命政権を樹立した。
 バティスタ独裁政権は腐敗しきっており、ごく一部の富裕層に支持され、90%以上のキューバ国民を搾取した。大多数のキューバ国民は貧困のどん底で苦しみ、社会正義とは縁がなかった。
 バティスタは、アメリカ企業、カジノを経営していた時代のパートナーのマフィアのキューバ国内における利権の保護と引き換えに私欲を満たすようになり、キューバの農業や工業にアメリカ資本が流れ込み、アメリカ企業による事実上の搾取が大手を振って行われることになった。
 カストロ氏の革命の動機は不平等な社会を憎む青年の正義心から来ていた。バティスタの悪逆な政治を終わらせ、国民を貧困から救い出そうとした革命だった。彼は富農の息子で有り、共産主義者ではなかった。不平等な社会を憎む青年の正義心が革命の動機だった。
 1961年4月、アメリカ(ケネディ政権)はカストロ政権の転覆を狙い、CIAの支援を受けた亡命キューバ人部隊をキューバに侵攻させた。3日間の戦闘の末、アメリカ側の部隊はキューバ軍に撃退され、カストロ政権転覆の目論見は失敗に終わった。
 この事件がカストロ氏の反米主義を確固としたものにし、社会主義体制へと追いやった。当時冷戦のまっただ中にあり、米ソが激しく対立していた。
 1962年、アメリカはキューバに対し国交断絶を通告し、全面的な禁輸措置を実施。カストロはキューバ革命を守るため、社会主義の盟主ソ連に近づいた。
 カストロ氏は同年、ソ連がキューバに核ミサイル基地を建設することを認め、米ソ両国が対立。人類史上最も核戦争の危機が高まったとされる「キューバ危機」が発生した。キューバは東西冷戦を象徴する国の一つとなり、カストロ氏は反米・左翼勢力の象徴的人物となった。 
 当時の米国政権がカストロ氏を社会主義者に追いやったといえる。17世紀初めに米国大陸に初めて上陸したピルグリム・ファーザーズがもつ伝統的な宗教精神と自由の精神が米国人の血に流れている。このため、米国人は時として現実を無視する教条主義におちいる。この血が2003年のイラクのサダム・フセイン大統領への判断を誤らせた。
 カストロ氏の50年にわたる独裁の原因の一端は歴代の米国政府の反キューバ政策に帰しているとみて間違いない。ただカストロ氏が反米でなかったとしても独裁を敷いた確率は高いと思う。
 カストロ氏独裁の50年間、キューバの教育水準は向上し、医療技術も進歩した。その一方、冷戦終結後にソ連が崩壊すると、サトウキビ栽培による砂糖の生産・輸出に頼ったモノカルチャー経済だったキューバ経済は立ち行かなくなり、多くの人々が国外へと亡命した。
 多数の人々が米国に亡命しても、カストロ政権は続いた。それはカストロ氏が無私の心を持った人物だったからだ。自分の銅像を建てることを禁止し、偶像化を嫌った。また、愛息といえど能力がなければ、冷徹に罷免して公平な判断を下した。
 人間の一生は完全無欠ではない。誤りもある。カストロは民主主義者では決しなかったが、ヒューマニストだった。しかし、自分の正義が絶対だと思い、異見を許さずに政敵や反体制派や反対者を容赦なく弾圧した。
 カストロ氏の政治信条には同調できないが、バティスタ独裁政権を倒した動機には、誰も反対しないだろう。この意味で、カストロ氏は偉大な革命家だった。人間に欲があるかぎり決して実現できない「公正で平等な社会」というユートピアを実現しようと孤軍奮闘した精神に敬意を表したい。彼の冥福を祈ります。

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中国共産党政府の韓流スター、ドラマの禁止    TPPと民主主義について思う

2016年11月25日 09時17分37秒 | 世界の動き
 筆者はTPPの重要性について23,24日のブログで話した。この問題は経済自由貿易圏をつくり、開かれた貿易体制を構築するところにある。このため各国が国内の産業の一部にもたらされる痛みを受け入れることになる。日本で言えば農業者だ。そして各国政府がTPPの犠牲になった産業分野に救いの手をさしのべるとともに、産業構造改革に着手する。こんな構想だったが、米国の次期大統領のトランプ氏はTPPを拒否した。国際経済のブロック化が起こらないように願うばかりだ。
  経済・貿易をめぐる米国と中国の対立はこれから激化するだろう。トランプ氏は中国が「不当な廉売国(ダンピング)」だと指弾している。現在のオバマ政権は中国を市場経済国だと認めないといっている。筆者もそう思う。
 そんな折、中国からこんなニュースが飛び込んできた。

 21日付の韓国紙・中央日報は、中国当局が韓国製ドラマや映画などの放映、韓国人芸能人の中国国内での広告出演を全面的に禁止する方針だと報じた。 中国の娯楽サイト・芸恩網などを引用して伝えた。 中央日報によると、中国の放送事業を統括する国家新聞出版ラジオ映画テレビ総局はまだ公式文書を出していないが、テレビ局の責任者は既に対策を練り始めているという。 外交専門家の間では、米韓両政府が韓国への地上配備型迎撃システム「高高度防衛ミサイル(THAAD)」配備の動きを加速させているため、中国側が対韓国圧力を強化したのではないかという見方が出ている。

 筆者はさもありなんと思った。共産主義国家の常套手段だ。結局は、経済も、文化も、軍事を含むあらゆる分野が共産党の野望の道具にされる。政治、外交に帰結している。中国共産党は文化という道具を使って韓国民に圧力をかけている。韓国にとって、韓流ドラマやスターは中国から外貨を稼ぐ「ドル箱」の一つ。
 東アジア地域包括的経済連携(RCEP)は中国主導で進められている。この枠組みに米国は入っていない。日本や豪州などの民主主義国が加盟しているが、時がたてばたつほど、中国の主導権は強まるだろう。米国が入ることでバランスがとれるのだが、米国は加盟していない。いまやTPPは風前の灯火だ。アジア・太平洋の経済と軍事などの勢力圏バランスをとらなければ、中国の力があすます強まるだろう。中国が民主主義国家なら問題はないのだが、共産党の一党独裁であり、4000年に及ぶ一君万民国家である。 
 いまのところ、アジア・太平洋の要になる米国に代わる国はないと思う。もちろん米国のやり方にも独善的なところがあるが、中国よりはましである。筆者はアヘン戦争(1839~1942)以前の中国中心の国際秩序「冊封体制」に戻ることだけは御免被りたい。われわれの先祖はこの体制の外にいた。海に守られた当時の日本人は冊封体制を拒絶して中華帝国の首都に朝貢外交をすることもなかった。しかし、もはや海はわれわれの砦ではない。
 いまや世界は好むと好まずとにかかわらず、経済的に深く結びついている。この結びつきは民主的でなければならない。しかし周近平をはじめとする中国共産党幹部はそうは思っていないようだ。中国当局の韓流ドラマの禁止装置が筆者の心配を増幅させている。
 民主主義と自由の体制の中で暮らしていると、この体制の素晴らしさを忘れてしまう。日本人の多く、生まれたときからこの制度の中で暮らしてきた若者はその傾向が強いと思う。
 この体制は先人の血と汗で勝ち取られ、守り抜かれてきたのだ。英国の大宰相チャーチルらが人類に希にみる凶悪な独裁者アドルフ・ヒトラーとナチ党と死闘を演じて、民主主義制度を守り抜いた。
 われわれは民主主義制度を葬ろうとする輩が国内から出現しようが、国外からやって来ようが、決然として彼らと闘い、この制度を守り抜く強い意思を持ち続けなければ、いつの間にか独裁者や独裁国家、権威主義国家に自由と民主主義を破壊されてしまう。そして破壊されたあかつきに待っているのは言論などあらゆる自由や人権のない息苦しい世界である。
 中国共産党政府は自らの意に沿わない人物を「国家に反逆する者」として不公平な裁判で投獄している。言論の自由がなく、それは中国の独自の文化だと詭弁を弄している。
 TPP問題、米大統領選でのトランプの勝利、中国共産党の対韓流ドラマの禁止措置は民主主義制度の素晴らしさと存立の危うさをわれわれにあらためて思い起こさせてくれる。

 写真 韓流ドラマの中国国内禁止を発表する中国政府スポークスマン

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蓮舫氏のTPP議論に落胆    彼女は理解しているのだろうか?

2016年11月24日 22時20分11秒 | 世界の動き
  安倍首相「APECは、TPPに入っている国だけではない。『自由貿易の持つ意義について、今こそしっかり発信していくべき。TPPも意義がある』ということを申し上げた。TPP首脳会議では、トランプ氏と話したうえにおいても、TPPについてしっかり国内手続きを進めていくべきだということで一致をしたところです。他の多くの国々の指導者も電話で話をして、しっかりとTPPを進めていこうと一致をしたところです」
 蓮舫氏「TPPは署名12カ国のGDPが85%を超える国が批准しなければ発効しません。米国は、12カ国の62%を占めています。米国が脱退をした場合、TPPは発効しますか」
 岸田文雄外相「発効要件は、署名2年後で、全参加国のGDP85%以上、あるいは、6カ国以上が締結するという要件を満たすということ。米国が参加しなければ、この要件を満たすことは難しいと考えます」
 蓮舫氏「つまり米国が脱退したらTPPは発効しない。トランプ氏は脱退すると公約し、ビデオメッセージでも脱退すると明言した。なぜ、ここで、貴重な時間、税金を使って、審議を進めるのか」
 安倍首相「TPPについては、日本か米国が参加しなければ、発効はしない。だが、まだTPPは発効していない。脱退ということには今の時点ではならない。かつて、北米自由貿易協定(NAFTA)などについても、米国の大統領が選挙中の発言と、結果が違ったこともある。状況は厳しいが、腰を据えていきたいと思っています。今、完全に脱退してしまうことは、TPPの性格上、できないということは申し上げておきたい」
 蓮舫氏「どんなにわが国が手続きを進めても、動かないものに、国会の貴重な人材と税金を使うのはやめた方がいい。セカンドオピニオンも含め、次の自由貿易、経済連携はどういうものがあるのか議論を進めるべきだと伺っている。日本が国内の批准手続きを得たら、トランプ氏が翻意をするとの確信を総理はお持ちですか」

 参院環太平洋経済連携協定(TPP)をめぐる安倍晋三首相と蓮舫・民進党代表の特別委員会の集中審議でのやりとりの一部を産経新聞から転載した。
 米国のTPPからの脱退をめぐるトランプ次期大統領の発言に対する安倍首相と蓮舫代表のやりとりから見えてくるのは、民進党代表の政治家としての理念のなさである。
 安倍首相は自由貿易の大切さを述べているが、蓮舫氏にはTPPに対する考え方が伝わってこない。TPPに反対なら、なぜ反対かを明確に述べていない。TPPに代わるアジア・太平洋貿易の仕組みを提言していない。
 蓮舫氏にはTPPが破綻した後の、アジア・太平洋貿易の枠組みをいかに考えているのだろうか。
 蓮舫氏は言う。「どんなにわが国が手続きを進めても、動かないものに、国会の貴重な人材と税金を使うのはやめた方がいい。セカンドオピニオンも含め、次の自由貿易、経済連携はどういうものがあるのか議論を進めるべきだと伺っている]
 安倍首相は「動かないもの」を「動かさなければ」将来のアジア・太平洋での貿易競争が激化、それが外交や政治に大きな影響を及ぼすと述べている。TPP問題では首相に理念ある。自らの考えがある。遠い将来を見つめている。
 蓮舫氏は「セカンドオピニオン」を具体的に述べてほしい。ニュージーランドがなぜTPPを批准したのか。遠い未来を考えてそうしたのだ。どんな政策にも100%良いものはない。TPPに調印した12カ国は、国内産業の一部にとっては不利なことを理解している。それでも調印したのは、長期的には加盟国すべてが60%ぐらいは利益を得られるからだ。トランプ氏はそこが理解できない。貿易で100%米国の利益を追い求めている。それが結果として米国の労働者の首を絞めるだろう。良いと思う政策が結果として最悪になるにちがいない。
 もし保護主義が台頭すれば、各国の経済的な競争の激化が外交、国際関係、」軍事の悪影響を生む。
 蓮舫代表と民進党は遠い将来を見つめているのだろうか。もしそうなら、TPPに代わる素晴らしい経済・貿易の仕組みを提示してほしい。それなくして、国会で安倍首相をいくら責めても、国民には納得できない。
 筆者は安倍首相の靖国神社参拝や憲法改正論議を批判したが、TPP問題については全面的に支持したい。この問題は長期的展望を持った問題であり、一つ間違えばアジア・太平洋の平和を不安定にさせかねない。
 蓮舫代表と民進党はTPP問題でもっと現実を見据えた建設的な議論をしてほしい。

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TPP離脱はトランプ次期大統領の大失敗  ほくそ笑む独裁国家の中国 民主主義国家の危機

2016年11月23日 10時24分07秒 | 世界の動き
 トランプ次期米大統領は就任初日にアジア太平洋経済協定(TPP)を離脱すると宣言した。TPPに代わって2国間経済協定の締結を目指すという。彼は将来、この行動を後悔するだろう。 
  トランプ氏はこの2国間経済協定を米国に有利な形で締結することを目指す。しかし2国間協定に応じる国は少ないだろう。果たして米国にとって経済立て直しの「特効薬」になるのか。筆者にはそうは思わない。
 彼の思惑とは裏腹に米国の経済圏を狭め、今まで以上に国内の失業者が増すだろう。中国は米国が撤退したアジア・太平洋の空白を埋め、東アジア地域包括連携協定(RCEP)を使ってアジアでの経済支配を強め、経済支配力を利用して政治的支配を強めていくだろう。
 その支配は各国の協力に基づく支配ではなく、上意下達のヒエラルキー支配になるだろう。日本人、特に左派は戦後、米国人の政治、経済支配を嫌ってきた。米国は曲がりなりにも民主主義国家である。これに対して、中国は共産主義独裁国家であり、投票用紙ではなく鉄砲から政権が生まれた国である。ましてや4000年の歴史を通して一君万民専制皇帝国家だった。民主主義国家への脱皮は歴史上ない。歴史を遡れば、毛沢東の中国共産党、蒋介石の国民党、軍閥時代、大清帝国、明帝国、元帝国と続く。
 周近平が経済協定や経済同盟においていかに各国間の協調と協力を謳ったとしても、次第に中国の権威主義的独裁支配が強まるだろう。それは米国の支配とは異なった強制的な支配となるだろう。中国の台湾や香港に対する政治圧力を見れば理解できる。
 それは中国共産党や周総書記の意向と言うより、中国の専制独裁の歴史がそうさせるだろう。4000年の中国がそうさせるのだ。中国人が時の政府を信用してこなかったことでも明らかだ。
 RCEPは米国が加盟していない。これから中国主導のRCEPが力を強めていく。RCEP加盟国が米国との2国間経済協力に積極的な意向を示したとしても、中国の意に沿わなければ、中国は必ずRCEP加盟国に圧力をかけてくるだろう。そして米国の思うような2国間経済協力を手に入れることができず、米国は経済的な孤立の憂き目に遭うにちがいない。現在の歴史の流れは国境を越えた経済協力だ。
 筆者は中国という独裁国家が人類史上初めて、世界を経済的に牛耳ることを憂う。少なくともアジアが独裁国家の支配下に入ることを憂う。
 英国のウィンストン・チャーチルや米国のフランクリン・ルーズベルトは独裁国家ヒトラードイツの世界支配を阻止するために、民主主義制度、自由、自由経済、人権を守るために闘った。その遺産は中国共産党の遠大な戦略の前に平和裏に崩れ去ろうとしている。
 今日、独裁国家が史上初めて、イニシアチブを握り、東アジア・太平洋の経済・政治での主導権を握る機会が訪れようとしている。それは民主主義政治や人権に影響を及ぶすだろう。
 周氏は19日、「中国が開けた門は、永遠に閉じることはない」と演説し、アジア太平洋の経済圏づくりを主導する野心をあらわにする。中国は、シルクロードから欧州に向けて広大な経済圏をつくる「一路一帯」構想にも本腰を入れてきた。東西から経済的な主導権を握ろうとしている。
 トランプ氏と中国の動きに対して、TPP参加12カ国は19日午後、ペルーの首都リマで首脳会議を開き、TPPの戦略的重要性を認識し、引き続き発効に向けて国内手続きを進めることで一致した。
 トランプ氏が米国のTPPからの離脱を宣言したとはいえ、筆者は長期的な観点から12カ国の動きを支持したい。
 商売上の計算だけからしか米国の利益を見いだせないトランプ氏は政治・軍事・経済上の長期的な戦略的観点の重要性を理解していない。共和党の主流派がトランプ氏を説得し、国家は商売の観点からだけでは動かないし、米国民の長期的な幸福ももたらさないと教えるべきだ。チャーチルが生きていればトランプ氏の一国第一主義に反対するにちがいない。
 ある意味で、世界の民主主義が危機に陥ろうとしている。中国を支配する共産党は想像以上に長続きするかもしれない。トランプ・米国株式会社が中国の共産党一党独裁を長続きさせるために支援しているのかもしれない。たとえトランプが意識しなくてもだ。一人の成功したビジネスマンが独裁国家の野心を支援している。そして米国株式会社は破産しなくても苦境に陥るだろう。日本政府と与野党の政党、国民は重大な局面に直面するだろう。その事態をトランプ氏が理解したときは手遅れになっているかもしれない。逆に言えば、中国の共産党にとって待ち待った好機が訪れようとしている。
 民主主義制度は枯れやすい花だ。その中にどっぷりつかっていると民主主義の素晴らしさがわからなくなり、いつの間にか独裁者や独裁国家につぶされてしまう。アジアを侵略した日本軍部が夢見た「大東亜共栄圏」の支配体制は、中国により平和裏に達成されるのだろうか。

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俳優、渡辺謙さんが好演するミュージカル「王様と私」の虚実を描く書籍「現実主義者の選択」

 「現実主義者の選択」(ホルス出版)を紹介する。渡辺謙さんがブロードウェイで好演しているシャムの国王。ミュージカル「王様と私」は真実を伝えていない。歴代タイ政府はこの半世紀以上にわたって、この物語を描いた映画、演劇などの上映や上演を国内で禁じてきた。  「王様と私」を初めて映画で観賞したのは今から40年以上前。ユル・ブリンナーとデボラ・カーがすばらしい演技を見せていた。渡辺さんが演じているこの王様の名前はモンクット王。吉田松陰が足元にも及ばない当時の国際情勢を認識していた名君だった。タイ人もこの国王を知らないという。名君や名政治家ほど後世の人々に忘れ去られると感じる。  英国の名誉革命を指導者した初代ハリファクス公爵も同じだ。市井の英国人は知らない。17世紀後半に活躍した名政治家の格言や政治家心得を、この書籍は引用する。公私混同で公金を使った舛添要一・東京都知事も彼の書物を読んだほうが良い。彼だけではない、政治モラルとレベルが落ちた多くの日本の政治家も読むべきだ。  もう一人の人物は堀悌吉・海軍中将。このごろ、やっと光が当てられ始めている。NHK出版がこのほど「山本五十六 戦後70年の真実」を出版し、この書籍も読んだ。2011年に日本映画「聯合艦隊司令長官 山本五十六 -太平洋戦争70年目の真実-」が上映された。山本五十六元帥を役所 広司さんが演じ、歌舞伎役者の十代目坂東三津五郎さんが堀悌吉海軍中将を演じた。  堀提督は米英協調を唱えたため、1934年に旧海軍から追われた。彼の生きざまは日本の運命の裏返しだったと思う。日本人はこの立派な人物を知らない。  この頃、日本人は自信をなくし、日本は迷走している。この3人の生きざまを知って、未来に思いをはせてほしいと願う。