現代を切る  ウィンストン・チャーチルと初代ハリファクス侯爵     

退職から9年。ブログを始めて4年。現実主義者として、歴史を紐解き、英国の二大政治家らの発言を下敷きにして記す。

安倍首相の前途は多難 トランプ氏と世界   日米首脳会談に思う

2017年02月13日 11時30分41秒 | 日米と世界
 安倍首相の訪米は終わった。米国内で物議を醸しているイスラム国7カ国からの米国への入国を一時禁止する大統領令を出したドナルド・トランプ米大統領は、前代未聞の厚遇ぶりをみせて日本の首相をもてなした。ワシントンでの首脳会談後、フロリダの大統領が所有する高級リゾート施設「マール・ア・ラーゴ」に招待し、ゴルフを二度もした。安倍首相は2日間もその施設に泊まった。
 英米メディアの多くは安倍首相がトランプ大統領に「おべっか」を使ったと論評し、冷ややかだ。朝日新聞などリベラルな日本の新聞は「予測できないトランプ大統領にあまりにも親しくなりすぎて、これから安倍首相は日本の主張を言い出せず、国益を損なう」と憂慮する。一方、ジャーナリストの有本香氏は産経新聞サイト上で、「アメリカのトランプ大統領に対する大半の報道姿勢について、彼に近づこうとすると、『こびる』とか言う。国同士が理解し合うための行為が、なぜこんな表現になるのか」「『入国禁止令』についても賛否両論あるにもかかわらず、反対が圧倒的のように報道される。正確な事実を伝えず、フェアではない」などとした上で「メディアによる操作は恐ろしい」と話している。
 どれも一見して一理ある。そして筆者はどちらかと言えば、安倍首相があまりにも親しくなりすぎたとする朝日新聞の見解に同調する。前回のブログで記したように、安倍首相の行動だけを見ていると「浅はか」なように映る。ただ、刻々と変化する時の流れの中に身を置いて、世界の動きを見ていると、安倍首相の気持ちは理解できる。
 安倍首相の目は中国に向いている。このため、予想がつかない、時として感情的になるトランプ米大統領に”おべっか”を使ってまでして、日本の安全を守ろうとしていることだけは確かだ。日本が米国の支援なしには中国の脅威に対抗できないのも事実だ。
 それでは中国は脅威なのかという問題が起こる。最近読んだ「米中もし戦わば」でのピーター・ナヴァロの見解を待つまでもなく、中国共産党が東アジアの覇権を求めていることだけは確かだ。既成の大国と、この大国が敷いた国際秩序を覆そうとする台頭する国家とが対立する構図は今に始まったことではない。16世紀前半のポルトガルからオランダ、フランス、英国、米国と覇権国家が移り変わってきた。その転換期には必ず戦争があった。第1次世界大戦前、ドイツ帝国は英国の覇権を奪おうと戦争をはじめ惨敗した。第1次、第2次世界大戦の戦間期にはドイツ、イタリア、日本は「持たざる国」として英国や米国に挑戦して惨敗した。
 シカゴ大学教授のジョン・ミアシャイマー氏は中国の平和的な台頭はあり得ないという。筆者もそう思う。もし中国が三権分立の民主主義国家であったら、平和裏に米国から中国へ覇権が移ったかもしれない。それは大英帝国から米国に平和裏に覇権が移ったことを考えるからだ。
 東アジアの平和は維持されるのか。ナヴァロは「70%の確立で米中は戦う可能性がある」と断じている。1500年以降、新興勢力が、世界や地域を支配する国家に対峙した15例のうち11例で戦争が起きている。
 日本一国で中国の膨張を押さえられない。そして中国の潜在的な脅威が増している。この国際環境の中で、安倍首相がトランプ氏の懐に深く入り込み、日本の安全保障を約束させたこと自体は大きい。ただ、潜在的に大きな代償をともなっていることを忘れてはならないと思う。
 英国のファイナンシャル・タイムズは、安倍首相は米大統領から日本の安全保障への確約を手に入れたが、その分だけトランプリスクが大きくなった、と報道している。
 トランプ大統領はビジネスマンだということを決して忘れてはならない。日中が固有の領土と主張している尖閣諸島を日米安保条約第5条に基づいて米国は護る、と今回の首脳会談後の会見でトランプ氏は述べた。それは経済・貿易問題との取り引きと引き替えではなかろうか。トヨタや日産などからなる日本の自動車産業を犠牲にする可能性を秘めている。
 トランプが「米国第一優先主義」と唱えても、建国以来の米国の理念「自由・民主主義」を前面に押し出す人物ではない。「自由、民主主義、人権、自由貿易」という現在の世界共通の価値観より「米国第一」が優先していることだけは確かだ。
 日米の経済問題がこじれれば、「日本から米軍を撤退する」と脅すかもしれない。安全保障を貿易の取り引き材料に使うビジネスマンになる公算が高い。安倍首相の立場は非常に危ういと思う。安倍首相が今までお経を唱えるように公言してきた民主主義の信条を時には世界に吐露すべきだ。
 第2次世界大戦中、英国を率いたウィンストン・チャーチルは「民主主義と自由」の旗を掲げて、日々移り変わる時の流れに対して現実的に動いた。安倍首相のように原理原則をかなぐり捨てて、現実に身をゆだねたわけではない。
 安倍首相がなりふり構わずトランプ大統領に”おべっか”を使っていれば、ある日、トランプ氏にハシゴを外されるかもしれない。そのとき、中国がほくそ笑むだけではなく、欧州諸国やオーストラリア、ニュージーランドなどの民主主義国家からも袖にされるかもしれない。
 安倍首相は難しい舵取りを強いられていることには同情するが、もう少し賢明な戦略を立てる必要があるように思う。それはトランプ大統領に必要以上に深入りするのではなく、親分肌で安倍首相を支配しようとするトランプ氏をあやしながら、欧州やアジア・太平洋の民主主義国家と手を携えて、自由貿易と平和を維持する努力をすべきだ。そして中国とのバランスを取りながら東アジアの平和を維持することだ。平和こそ日本と世界の国民が最も欲している宝物である。

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トランプは世界に偉大な貢献 大統領令に待ったをかけた司法に思う

2017年02月07日 12時10分20秒 | 世界の動き
 矢継ぎ早に発表する大統領令。その大統領令の中で、難民や中東・アフリカの7カ国の国民の入国を一時停止する大統領令は米国内だけでなく、世界の民主主義国家の国民から批判されている。ワシントン州の連邦地裁はこの大統領令の効力を一時的に停止する仮処分命令を発し、トランプ政権は猛反発している。
 米国は現在、トランプ大統領から「民主主義国家」であるかどうかを試されている。今のところ、民主主義国家の基本中の基本である三権分立は完全に機能している。
 この意味で、トランプは世界中の人々、とりわけ中国共産党が支配する中国の国民やほかの独裁国家で暮らしている人々に素晴らしい貢献をしている。
民主主義制度が、ウィンストン・チャーチルが述べたように、完全な政治制度ではないが、ほかの制度よりも良いことを如実に示している。
 皮肉なことだが、「司法の独立」を無視し、民主主義制度を軽視するトランプ大統領と彼の取り巻き連中が、中国などの専制独裁国家に民主主義の素晴らしさを示している。三権分立は中国にはなく、共産党が独裁を敷き、時として毛沢東のような独裁者が現れる。
 7日付の朝日新聞によれば、2015年夏に中国で人権派弁護士らが一斉に拘束された事件で、逮捕された弁護士の1人が取調中、当局から拷問や虐待を受けていたと報じている。「40時間以上休みなして取り調べを受け」「足が宙に浮く状態でイスに座らされ、下半身は腫れてマヒ状態に」
 日本の警察でも問題になる取り調べがあるが、それはチェックされ、公になれば、「虐待取調官」は罷免され、世間の批判を浴びる。中国では、共産党は自らに不都合なウェブサイトは直ちに削除される。
 トランプのおかげで、米国の民主主義は機能していることが世界に知らされた。チャーチルは述べている。民主主義制度は枯れやすい花だ、と。だから人々が自らの手で世話しなければならない、と。筆者は、民主主義を擁護する米国民とトランプを支持する米国民を目の当たりにして、民主主義制度の脆弱さと大切さを痛切に感じる。
 現在まさに米国と世界の民主主義が試されている。自国の利益」を優先し、保護主義政策や対外強硬姿勢をとっているトランプ政権だけでなく、欧州の極右政党、それに中国やロシアの強権国家が民主主義と自由を無視し始めている。一国優先主義を求めている。
 信州大学の真壁昭夫は「今後、トランプ政権が過ちに気づくことができるかを考えると、残念ながら大きな期待を持つことはできないだろう。トランプ大統領は『裸の王様』の振る舞いを続け、最終的には政権がレームダック状態に陥る可能性がある」と語っている。
 安倍晋三首相が10日にトランプと首脳会談をする。そしてフロリダで一緒にゴルフをするという。筆者は安倍首相がトランプ氏に取り入ろうとしているしか思えない姿勢を憂う。
 ゴルフをトランプと一緒にするなとは言わないが、安倍首相は言うべきことは言うのだろうか。もちろん正論を言ったところで反発を買うのは必定だろう。しかし長い目で見れば、それは正しい行動だ。それは日本国民のためになる。
 米国が主導してきた自由貿易と民主主義制度の中で、日本人は平和と繁栄を享受してきた。平和憲法もある意味では貢献してきたといってよい。それはあくまで二義的なことだ。一義的なことはいかにして自由貿易を維持・繁栄させるかだ。
 日本は自由貿易体制などを重視し、冷静に主張するスタンスを明確にすべきだ。自由貿易体制は日本だけでなく、世界の民主主義国、否、中国でさえその恩恵にあずかってきた。
  トランプ大統領が「米国優先主義」を実行し、保護主義に走れば、早晩、各国の経済・貿易競争を激化させ、1930年代と同じブロック経済になるだろう。そしてフランスなど欧州の国々が極右の手に渡れば、今まで思ってもみなかった大災害が世界にもたらさられるかもしれない。
 トランプ氏の行き過ぎを諌める側近もいない。それどころかヒトラー思想を体現しているスティーブ・バノン特別補佐官のような人物がいる。トランプ氏の「自分は人気者だ、何でもできる」という誤った認識と、政策を客観的にフィードバックする「組織の機能不全」が重なる。
こうした環境下、日本と日本国民は多国間の経済連携の意義、自由貿易体制のメリットをアジア新興国などと共有し、保護主義の動きに待ったをかけなければならない。真壁教授は言う。「真剣にそうした取り組みを進めることができないと、米国と中国などの対立が激化し、双方の陣営になびく国が増える中で、わが国は孤立する恐れがある」
「孤立する」とは何か。トランプ大統領に盲従すれば、長期的観点から日本国民の生命を危険にさらすと解釈できる。いまこそ安倍首相は日本国民の生命を守るため、豪州やニュージーランドなどの民主主義国家と手を携えて、自由と多国間貿易体制を護り、トランプ大統領の誤りを言い続ける努力をしなければならないと思う。

(写真:大統領令を一時停止させたワシントン州の連邦地裁のジェームズ・ロバート判事)

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大統領令に何も語らない安倍首相  トランプ幻想は打ち砕かれるだろう

2017年02月01日 10時35分27秒 | 世界の動き
  トランプ大統領による一時入国の禁止措置について、安倍晋三首相は「コメントする立場にない」と繰り返し、明確な意思を示していない。安倍首相に対して、メルケル・ドイツ首相やオランド仏大統領ら欧州の指導者は明確に自らの意思を表示し、懸念と批判を投げかけている。英国のメイ首相でさえ「英国のやり方とは異なる」と婉曲的な表現で米大統領に批判的だ。
 確かに、2月10日に日米首脳会談を控えている安倍首相がトランプを公然と批判するのは難しい。また日本の移民・難民政策が世界の趨勢から非常に遅れており、日本人の意識や心理が他民族に慣用に見えても実は慣用でないことも理解する。
 ただ、もし安倍首相がトランプの排他的、「米国第一主義」という独善的な政策を批判するのを控えれば、日米関係がうまくいくと考えているのなら幻想だろう。
 トランプ大統領の素顔が時がたてばたつほど明らかになってきた。このブログで何度か申し上げているが、自分の非を認めない独善者だと言うことだ。心の中で自分の非を分かっていても、素直になれない。敗北や弱みを見せることを極端に嫌がる「弱い人間」なのだ。
 安倍首相は日中関係をにらみながら日米安保同盟を強固にしたい一心から意識してほかのことに目をふさいでいるようだ。「見ざる。聞かざる。言わざる」を貫いている。しかし、たとえそうしたとしても、トランプは2月10日に軍事費負担増、米国の日本駐留費増、自動車問題などの“経済不均衡”を言ってくるだろう。
 トランプとって自動車の対米輸出をめぐる事実がどうなのかが問題ではない。日本政府が米車の輸入関税をゼロにしても、日本の消費者が買わない事実などどうでもよいのだ。目に見える米国の貿易赤字が問題なのだ。トランプ大統領のような人間は思い込んだらテコでも動かないだろう。
 トランプはテロの激化とイスラム教徒を結びつけ、イスラム教徒を排斥している。それはかつてのドイツの独裁者アドルフ・ヒトラーがドイツ経済の不況や、そのほかのあらゆるドイツの負の問題は経済的に豊かだったドイツ国内のユダヤ人から来ていると思い込んだのと同じだ。
 トランプのような相手と交渉などできないことを安倍首相は2月10日思い知るだろう。記者会見ではトランプ大統領との蜜月関係を演出したとしても、筆者はその演出を疑うだろう。
 トランプ米大統領は31日、貿易相手国の通貨安を批判した上で、日本が「(過去に円安・ドル高誘導を)何年も行っていた」と語った。就任後、日本の為替に言及したのは初めてだ。同日、ホワイトハウスで開いた医薬品大手トップらとの会談で表明した。
 トランプが事実を無視した難癖をつけてくるときに、安倍首相がこのようなフラフラした状態でいれば、民主主義と人権の理念を抱く欧州の指導者から信頼されなくなるだろう。トランプ大統領を批判している世界の大多数の人々から軽蔑されるだろう。
 お経を唱えるように安倍首相が何百回も日米関係の基軸だと言ってきた「自由、民主主義、人権、市場経済」は何だったのか。結局、安倍首相は言葉だけを発していただけで、民主主義や人権は彼の理念ではなかったと言うことになる。ただの右翼にすぎないのだろうか?
 折しも,インド洋に面したスリランカが中国から借りた金が返済できず、首都コロンボの港湾の租借を求められ、中国共産党は租借地での治外法権を要請するなり振り構わない挙に出ている。帝国主義そのものの行動に出ている。約百年前の1915年、日本が中国に対華21箇条を要求したときの同じことを中国は現在している。時代遅れの中国の帝国主義政策は中国共産党が中国大陸を支配し続けるかぎり続くだろう。スリランカの運命はアジアの国々の手本である。中国経済圏に入る意味を明確に示している。
 トランプ大統領が独善的な内外政策を推し進めているうちに、中国はアジア・東太平洋に着々と支配権を確立するにちがいない。日本人は今こそ、英知を結集し、自らの運命を自らの手で切り拓かねばならないと思う。
 安倍首相にチャーチルの言葉を贈りたい。「行動すべきかどうか迷った時には、行動しないことだ。何を言うべきかどうか迷った時には、自分が思っていることを正直に言いなさい」
 もし安倍首相が本当に「自由、民主主義、人権」を尊重しているのなら、2月10日の首脳会談でトランプに明確に自らの意思を伝えるべきだ。もしそうでなければ、安倍首相が今まで何百回も公言してきた民主主義や人権に対する尊重という言葉はうそになる。

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トランプに振り回される世界       これからの4年間は長すぎる?

2017年01月28日 10時43分41秒 | 世界の動き
 「おごりが目に余る」-。「米の強圧外交」に驚き、怒り、批判した1月25日付朝日新聞の社説の見出しだ。「メキシコとの国境に壁をつくる。壁の費用はメキシコが払え」とトランプ米大統領。これに対してメキシコのペニャニエト大統領は「一銭たりとも支払わない」と反撃する。
 両者の言い合いがツイッターだったのには筆者も驚いた。これでは外交交渉もあったものではない。秘密外交を得意としていた第1次世界大戦前の欧州の指導者が生き返れば、その場で気絶するだろう。
 時代は変化するというが、ここまで変化したのかと思うと驚きと同時に言い知れない不安を感じる。トランプ大統領の特異な性格だと信じたい。それにしても、事実を捻じ曲げており、「米国第一主義」というよりも「米国以外のすべての国は負けもよい」と言うほうが正しい言い方だと思う。
 トランプ米大統領は本当にそう思っているのだろうか。それはあくまで戦術なのか。ただ米国だけが良い思いをすれば、他国の国民などどうでもよいと思っているのだけは確かなようだ。
 大統領就任式典につめかけた人数がオバマ大統領の時と比べて「3分の1」と米メディアが伝えた報道に怒り、就任演説をした連邦議会から約2キロ離れたワシントン記念塔まで聴衆で埋まったと主張。メディアは正確な報道をしていなと批判した。両者の就任式典を見比べれば一目瞭然なのに平気でうそをいうこの性格。
 昨年の大統領選の得票総数についても、民主党のクリントン元国務長官が300万票リードしていたとメディアが報じれば、それは不法移民の票だと述べ、「正確ではない」という。
 さらに困ったことには、ホワイトハウスのスパイサー報道官やコンウェイ大統領顧問までがトランプ大統領に追随し、「(メディアと)オルタナティブ・ファクト」だと言い切った。「もう一つの事実」と苦し紛れのメディアに対する答えだった。
 この状況に対し、サンダース上院議員は「われわれは巨大な問題に直面している。妄想を抱く大統領がいることだ」と述べている。
 トランプという男を、朝日新聞は「虚言」「誇張」と表現しているが、とにかく「敗北」を認めない人物だ。負けることが自らの尊厳を傷つけるとでも思っているのだろうか。自分が絶対に正しいと信じ込んでいる。自己中心的な男のようだ。自分に不都合なことは「黙っていろ」と恫喝する。裏を返せば精神的に弱い人間なのだろう。この点では第2次世界大戦を指導した英国のウィンストン・チャーチルとは真逆の人物のようだ。
 すべてを取引材料にしている。メキシコが壁建設費用を拒絶すれば、ペニャニエト大統領との会談は「無意味」だと公言した。会談を取引材料にして壁の費用を支払えと強要する。前代未聞だ。こんな外交交渉は聞いたことがない。この点だけでもトランプは歴史に残る大統領になる。
 ヒトラーは「嘘も100回つけば真実になる」と公言してはばからなかった。トランプも自分の言っているのは嘘だとわかって公言しているにちがいない。ヒトラーと同じように、計算しているのだろう。
 ただヒトラーとドイツ議会の関係と違って、米国の議会は大統領をチェックする力がある。大統領令をトランプは頻発して出しているが、議会がその大半を葬り去るだろう。またヒトラーやナチスが私兵SAやSSを持ち、反対者を次々と不法逮捕や殺害したが、トランプは私兵は持っていない。ほっとする。ただ、核兵器発射指令ボタンを持っている。
 米国が巨大な独裁国家になることはないが、これからの4年間、トランプに対して幻想を抱いてはならないと思う。自民党の茂木政調会長が「トランプは公正な貿易」を唱えている。「日米は自由と民主主義の価値観を共有している」と述べ、日米関係の将来を楽観的に見ている節がある。
 トランプは価値観などまったく重視していない。それどころか、軽視している。どうでもよいのだ。この10日間で明らかになってきた。「公平」は米国にとっての「公平」である。間違えないようにしてほしい。「良いように良いようにとる」癖が日本人にはある。事実を見れないのか、見ようとしないのか、筆者には理解できない。同胞よ、冷徹に現実と向き合え、と言いたい。
 トランプの外交政策を観察していたニュージーランドと豪州は米国抜きのTPP(環太平洋経済連携協定)を模索しはじめたと報道されている。これに対して、安倍首相は「米国に自由貿易の重要性を説く」「2国間貿易交渉もOK」と言い始めた。これがトランプの真意をさぐるアドバルーンならよいのだが、本当にそう思っているのなら「おめでたい」と思う。
 筆者は自由貿易、自由、民主主義は時代の流れだと思う。この流れに逆行すれば、国と国との紛争が多発するだろう。
 現在、安倍首相と日本人に求められているのは、自分の羅針盤を構築し、現実を見ながら漸進する。豪州やニュージーランド、シンガポールのアジアの自由貿易国との連携を強めることだ。
 TPPに参加を表明した国々のなかには、中国やロシアも取り込めという意見がある。中国も軍事、貿易などあらゆる面でトランプから叩かれよう。中国と政治、安保・防衛などの面で冷静に対処しながら、TPPに引き込み、自由貿易体制を強化することも一方だ。
 日本の指導者は遠い未来を見据えて、世界の経済繁栄と平和に貢献すべきだ。ゆめゆめ、米国に日本の安全を守ってもらおうとすることに目がいくあまり、日米貿易をめぐるトランプの主観的で事実から目をそむけた見解に従わないことだ。
 最後にチャーチルが政治指導者に助言した言葉を贈る。「広い視野、遠大な理想、道義、勇気、高い目標といったようなもの中に、われわれは人生の航海に必要な海図や羅針盤を求めていると言えるだろう。ただ、それだけでは不十分だ。確固とした不退転の決意や覚悟を持たねばならない。そうすることで初めて、船尾によりかかって航跡の渦を凝視するとき、船を動かすためには潮の流れが大きな役割を果たしていると感じ取ることができるのだ」

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子どもの手本になる稀勢の里  横綱昇進おめでとう

2017年01月25日 11時48分56秒 | 人生
 日本相撲協会は25日朝、東京・国技館で臨時理事会を開き、満場一致で、初場所で初優勝を果たした大関稀勢の里の横綱昇進を決めた。72代横綱が誕生した。19年ぶりで日本出身力士の横綱が誕生した。
 相撲協会から派遣された使者の前で稀勢の里は、「謹んでお受けいたします。横綱の名に恥じぬよう、精進いたします」と口上を述べた。
 過去4~5代の横綱のように四文字熟語を使用せず、平易に自分の気持ちを表現したのは素晴らしかった。記者会見で相撲が強くなるだけでなく、人格面でもますます磨きをかけ、誰からも尊敬される横綱になりたいと抱負を述べた。この言葉の中に彼の愚直さと良心がある。
 元横綱審議委員で脚本家の内館牧子さんが「裏切られても裏切られても、私は稀勢の里が好きだ」と話したと朝日新聞が伝えている。
 内舘さんが語った「裏切られても裏切られても」という言葉を言い換えれば「失敗しても失敗しても」ということだろう。
 稀勢の里は失敗しても失敗しても腐らずにあきらめずに稽古に励んで精進し、横綱という大輪をつかんだ。稀勢の里の先代師匠の鳴門親方(元横綱・隆の里)が生前、稀勢の里に「勝って喜ばず、負けて悔しがらず」と教えたという。読書家として知られた故隆の里ならではの言葉だ。
 稀勢の里は亡き先代師匠の遺言を頑なに守り、土俵上ではまったく表情を変えてこなかった。冷たささえ感じる表情だ。これに対してモンゴル出身の横綱は、勝って懸賞金を受け取る際に派手なパフォーマンスやガッツポーズをすることがしばしばある。私のような日本人にはどこか違和感がある。
 稀勢の里は負けても負けても歯を食いしばって精進した。その精神を英国の名宰相のウィンストン・チャーチルは天国から拍手しているだろう。「失敗にもめげずによく頑張った」と褒めることだろう。
 第2次世界大戦で不屈の精神により英国を勝利に導いたチャーチルは「失敗しても失敗してもあきらめてはいけない。失敗の連続から成功と勝利があるのだ」と語っている。また自分の信じる道を、それが他人から批判されようが、進みなさい、とも語り、「もしそうすれば、慈悲深い自然はあなたを見捨てはしない」と強調している。
 稀勢の里はチャーチルの信念の道を進んで横綱という大相撲の最高峰に至った。子どもにとって稀勢の里の生き方は人生の道を歩く教科書になる。少しばかり大げさな言い方かもしれないが、筆者はそう思う。

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俳優、渡辺謙さんが好演するミュージカル「王様と私」の虚実を描く書籍「現実主義者の選択」

 「現実主義者の選択」(ホルス出版)を紹介する。渡辺謙さんがブロードウェイで好演しているシャムの国王。ミュージカル「王様と私」は真実を伝えていない。歴代タイ政府はこの半世紀以上にわたって、この物語を描いた映画、演劇などの上映や上演を国内で禁じてきた。  「王様と私」を初めて映画で観賞したのは今から40年以上前。ユル・ブリンナーとデボラ・カーがすばらしい演技を見せていた。渡辺さんが演じているこの王様の名前はモンクット王。吉田松陰が足元にも及ばない当時の国際情勢を認識していた名君だった。タイ人もこの国王を知らないという。名君や名政治家ほど後世の人々に忘れ去られると感じる。  英国の名誉革命を指導者した初代ハリファクス公爵も同じだ。市井の英国人は知らない。17世紀後半に活躍した名政治家の格言や政治家心得を、この書籍は引用する。公私混同で公金を使った舛添要一・東京都知事も彼の書物を読んだほうが良い。彼だけではない、政治モラルとレベルが落ちた多くの日本の政治家も読むべきだ。  もう一人の人物は堀悌吉・海軍中将。このごろ、やっと光が当てられ始めている。NHK出版がこのほど「山本五十六 戦後70年の真実」を出版し、この書籍も読んだ。2011年に日本映画「聯合艦隊司令長官 山本五十六 -太平洋戦争70年目の真実-」が上映された。山本五十六元帥を役所 広司さんが演じ、歌舞伎役者の十代目坂東三津五郎さんが堀悌吉海軍中将を演じた。  堀提督は米英協調を唱えたため、1934年に旧海軍から追われた。彼の生きざまは日本の運命の裏返しだったと思う。日本人はこの立派な人物を知らない。  この頃、日本人は自信をなくし、日本は迷走している。この3人の生きざまを知って、未来に思いをはせてほしいと願う。