現代を切る  ウィンストン・チャーチルと初代ハリファクス侯爵     

退職から9年。ブログを始めて4年。現実主義者として、歴史を紐解き、英国の二大政治家らの発言を下敷きにして記す。

他人の目で見る    12月の安倍外交での真珠湾とプーチン会談を考える

2016年12月29日 14時10分12秒 | 時事問題と歴史
 「日本人は目の前のことばかりに気を取られ、長期的な展望が立てるのが苦手だ」―。
  これは、太平洋戦争の引き金を引いた真珠湾攻撃作戦を立案した山本五十六元帥の言葉だ。
 山本元帥は自らの意思に反して真珠湾攻撃を決定し、最初の一撃をもって米国に大損害を与え、何とか和平にもっていこうとした。しかし逆に、米国人の「真珠湾を忘れるな」の合い言葉を引き出し、日本の無条件降伏まで闘う決意を固めさせた。
 山本元帥は米国留学中、テキサスの石油地帯やミシガン州のフォード工場などの米経済の最前線を見て回り、米国の国力を理解した。日本が戦うことができる相手ではないと心に刻んだ。しかし米国人の国民性を理解していなかった。米国民の中に入っていけなかったのだろう。日本海軍の将官として留学したが、米国民を理解する機会がなかったのだろう。 元帥が留学した1920年代初め、日米両国は互いに潜在的な敵国と見なしていたから、米国人を知る機会がなかったのだろう。米国民を知らなかったことが、元帥の致命的な失敗だった。
 筆者は半世紀前、英国の米カレッジで一人の米国人とルームメートとして9カ月過ごし、そのほかの100人ばかりの米国人と過ごし、少々米国人の国民性を理解したことを記憶している。ベトナム戦争が終結した1975年5月初めのことを現在でもはっきりと覚えている。詳しく拙書「歴史の視力」の94~96ページに記しているので、ここでは割愛するが、米国人は一つの目的の下に、その目的が正しかろうが正しくなかろうが、団結する。この精神は、米国の歴史を形成してきた「フロンティア精神」から由来しているのだろうと筆者は理解している。
 今月27日(日本時間28日)、安倍晋三首相はオバマ大統領と真珠湾のアリゾナ記念館を訪れ、日本軍の攻撃により戦死した米将兵を慰霊し、真珠湾が一望に見える場所で演説した。
 米国への謝罪や歴史認識には触れず、「寛容の心」「和解の力」を訴えた。敵国だった日米が「明日を拓く『希望の同盟』になったのは『和解の力』だ」と強調した。
 この演説に対し、オバマ米大統領や日本と戦った元米国兵は安倍首相の演説を好意的に受け取り、「騎士道精神」を示した。しかし、安倍演説に否定的な見解を示した人々もいる。
 朝日新聞の視点は「日米和解を唱えたからといって、戦後が終わろうはずもない。戦争の惨禍を与えたアジア諸国との和解、さらに悲願とする戦後の平和社会を形づくってきた憲法の改正にどう向き合うつもりなのか」と批評し、具体的な形で示してほしいと要求している。
 ノンフィクション作家の保阪正康氏は「日本は米国とだけ戦争してわけではない。・・・東南アジアや中国の人々らが犠牲になった。首相の演説は戦争の一部だけを切り取り、ポエムのように語っている感じだ」と批判した。
 京都精華大学の白井聡講師は保阪氏と同様、日本が米国だけでなく中国とも戦争したと述べ、「中国・南京を訪れ『日中和解の象徴』にするつもりがあるのか、と問いたい。そうした誠意がないのなら、・・・敗戦と東西対立で強いられた対米従属が日本が取り得る唯一の選択肢だと考える『永続敗戦レジームの無期限延長』だ。・・・日米が進化しているのではなく、安倍政権が米国に」すがりついているのが実情ではないのか」と述べている。
 中国外務省の華春瑩副報道官は28日、「アジアの被害国にとって、何度も抜け目ないパフォーマンスをするより、一回の誠実で深い反省の方が意義がある」「加害者の誠実な反省の基礎があってこそ、被害者との若いが真実で信用できるものになる」と安倍首相の真珠湾訪問を批判した。
 保阪氏、白井講師や朝日新聞の見解は一理あるが、あくまで理屈で有り、現実を反映してはいない。また白井講師の話は情緒的だとも思う。
 日本は中国とアジアを侵略した。それは現在の眼からも過去の眼からも言えることだ。安倍首相もこの点を真珠湾で触れてほしかった。ただ、中国が「過去」を現在の政策に利用し、国策に使っている。このことも事実だ。華春瑩副報道官の発言「謝罪」「被害者」「加害者」という言い方によく現れている。
 オバマ米大統領は真珠湾の演説で「人間は歴史を選ぶことはできない。しかしその歴史から何を学ぶかを選ぶことができる」と語った。大統領は歴史を学ぶ「要点」をものの見事に話したと思う。筆者が日頃からこのブログで何度も語っていることだ。
 中国政府も国民もオバマ米大統領の視点から歴史を学んではいない。中国政府が「歴史から学んでいれば」日本陸軍の失敗を現在の外交や軍事に取り入れているはずだ。「人の振り見て我が振り直せ」と言う態度ではない。南シナ海を軍事的に支配しようとする野望や西太平洋で米国と対抗して「アジアの盟主」なろうとする姿勢は日本軍部と同じだ。日本に「歴史の加害者」(ある意味ではそのお通り)だとなじる前に、「日本軍をめぐる歴史の失敗」を現代に生かしてほしいと強く願う。
 中国政府が「歴史」を現代の外交政策のバーゲニング・チップにするかぎり、歴史認識をめぐって日中の溝は決して埋まらない。日本国民が永続的に謝っても、日本から国益を引き出そうとして「歴史問題」を永遠に持ち出すだろう。中国が今までしてきたと同様、未来永劫するだろう。それは中国の5千年の歴史背景や、そこから形成された国民性から来ているように思う。批判しないが、やっかいな問題だ。
 チャーチルが日本軍部に忠告したように「自分の目だけから見るのではなく、相手の目からも見なければならない。そうすれば客観的な見方に近づくだろう」と言える。山本元帥は米国の国民性を見誤った。今日の日本人は中国の歴史、そこから形づくられた中国人のものの見方を勉強しなければならない。そうしてこそ、相手をよく知り、相手の性格を好きになれなくても、理解することでなんとかうまくやっていけるだろう。
 白井氏の言う「米国の従属」という多分に情緒的な言葉に左右されてはならない。「米国に従属してきた」という話は一つの窓から見ればそうだろうが、もっと大局的な観点から「なぜ」という疑問を持てば、違う窓から違う景色を見ることができる。そして自分で考え、自分で見つけた道を進むのだ。
 今月中旬のプーチン大統領の訪日では、日ロ首脳は共同経済活動を特別な制度の下で行うための交渉開始で合意したが、4島の帰属問題には踏み込まなかった。直後の17、18両日に共同通信社が実施した世論調査では、日ロ首脳会談を「評価しない」は54.3%と過半数を占め、「評価する」は38.7%。内閣支持率は54.8%と11月より5.9ポイント下落した。
 自民党の二階俊博幹事長は16日の記者会見で、日ロ首脳会談の結果について「国民の皆さんの大半はがっかりしているということはわれわれも含めて心に刻んでおく必要がある」と指摘した。
 この問題も多分に情緒が日本人を支配した。ロシア人の国民性からして北方4島は戻ってこないとみる方が冷静な見方だと思う。ロシアが米国を潜在的な競争相手と見なし、自国の安全保障を考えているかぎり、返還はないだろう。また時が重要になってくる。時は変化する。時がたてばたつほど、4島に住むロシア人は3代、4代とそこへ住み、自分の故郷だと当然思う。
 歯舞諸島と色丹島の2島返還も、これから時が進めば進むほどますます難しくなるだろう。われわれ日本人はこのことを銘記して、この問題の解決に知恵を絞るべきだと思う。「現実が諸君を見つめているのだから、諸君も現実を見つめなければならない」とチャーチルが今から90年以上前に議会下院で労働党左派のスノーデン議員に忠告したが、日本人にも言えることだ。
 安倍首相の真珠湾訪問とロシアのプーチン大統領の訪日は再度日本人の「ものの見方」を映し出した。日本人は気高い理想を抱くのだが、それを担保する現実を軽視する傾向が強い。
 感情的にならないことだ。絶えず相手を観察し、相手をより良く知ることだ。それには議論も大切だ。それも政敵や敵対者、潜在的な反対者のとの議論はさらに大切だ。安倍首相の最大の欠点は議論をしないことだ。特に政敵や野党ととことん議論しない。自分に好意的な人々を近づける。それは平均的な日本人にも言えることかもしれない。
 保守党のチャーチルと労働党のアーネスト・ベビィンは議場では激しい論戦をして互いの見解についての理解を深めたという。そしてたまにはパブで互いを尊重しながら酒を酌み交わし、さらに議論を深めた。チャーチルは「イエス・マン」を嫌ったと、彼の警護を長年務めたウォルター・トンプソン警部は語っている。ベビィンとチャーチルは生涯の政治上の敵であり、個人的な親友だった。1945年5月8日夕刻、ホワイトホールの厚生省のバルコニーに立ち、ヒトラー・ドイツを破った勝利演説をしたおりも、彼の横にいたのはベビィンだった。まさに真の民主主義精神を体現した人物だった。
 12月に起こった二つのイベントからわれわれが学ぶことは、相手の視点からものを見る目を養うことではないだろうか。そして考えの違う相手と尊敬の念を抱いて議論を交わし続けることだ。そうすれば必ず妥協点が見つかる。
 ことしもあと今日を入れて3日で終わる。わたしのブログにアクセスして私見を読んでくださった読者の皆さんに心からお礼を申し上げる。ありがとうございました。来年が皆さまにとり、今年以上に良い年でありますようにお祈りしています。

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物づくりを忘れた日本人   カジノに走り国を壊す

2016年12月23日 12時17分43秒 | 時事問題
 日本人は12月を「師走」と呼ぶ。一年のうちで一番忙しい月だからだろう。わたしも忙しかった。年賀状を書き、ようやく一段落した。今月はロシアのプーチン大統領の訪日を始め、カジノ法の成立など私見を述べる機会もあったが、忙しくて書けなかった。
 筆者は12月中旬、私用で香川県の高松を訪れた。高松は父のふるさと。これまで何度も足を運んだ。そのたびに瀬戸大橋を渡る。瀬戸内海にかかる自動車と鉄道が同時に通れる大きな橋だ。この橋は、読者もご存じのように、河ではなく海にかかっている。
 この橋を渡るたびに、日本人は素晴らしい国民だと思う。海に橋を架ける技術を持っているのは日本人ぐらいだろう。この言葉は大げさだとしても、海に橋を架ける国民はほんの一握りにすぎないのは確かだ。
 世界に冠たる日本人の技術。巧みの世界だ。太古の時代から、日本列島に住む人々は器用で応用に富む。たとえ外国技術のまねをしても、それを日本独自の技術に作り替えてきた。
 日本人が長い間培ってきた技術力や研究心が鉄鋼、自動車、テレビなどの家庭電気製品などを世界一流に押し上げた。またロボット産業や電気自動車、自動運転カーの研究開発に余念がない。
 付加価値のある「ものづくり」が日本人を豊かにし、日本を世界のトップクラスの国にした。しかし、現在の政治家や多数の国民はこのことを忘れているようだ。
 筆者はカジノ法に反対だ。まさに近視眼的な法律である。個人が博打で努力もしないでお金を儲けようと夢見て悲惨な結末になるのと同じように、安倍首相や政府の連中は「濡れ手で粟」を狙っているとしか思えない。
 安倍首相はシンガポールのカジノを含む統合型リゾートを見て、日本に導入しようとした、とテレビで紹介されていた。しかしシンガポールと日本は国情が違う。シンガポールは統合型リゾートなどのサービス産業でしか国を豊かにできないのだ。これに対して日本は日本人が千年以上にわたって培ってきた「もどづくり」が脈々として受け継がれている。
 安倍首相は、大胆な金融政策・機動的な財政政策・民間投資を喚起する成長戦略を中心に据えた「アベノミクス」で日本経済を再生しようとしている。ただ、この政策の中には、カジノや観光という「どうでもよいもの」がある。
 観光についてはどうでも良いというのは言い過ぎかもしれないが、それでも日本経済の主要エンジンではない。補助エンジンだろう。主要エンジンはやはり昔も今も「ものづくり」だ。
 日本政府は観光を資金稼ぎの主要エンジンにしようとしている。裏を返せば、日本人が劣化しているのだろう。他人のフンドシでしか金が稼げないのだ。そう思われても仕方がいない。日本人の進取気性が薄れてきているのだけは確かなようだ。
 約半世紀前、筆者は欧州にはじめて渡った。当時大学生の筆者には見るもの聞くものすべてが新鮮だった。欧州各国を「ユーレイルパス」と「ヒッチ」で回った。スペインとポルトガルを訪れたおり、感じたことがあった。
 スペインもポルトガルも観光立国(現在も同じ)だった。観光で国民が飯を食べていたといっても過言ではなかった。観光が外貨を稼ぐ主要産業だった。
 スペインのマドリッド、コルドバ、セビリア、サラマンカ、マラガ、マルベラなどを回り、ポルトガルの首都リスボン、コインブラ、ポルト、アベイロに足を伸ばした。そこで見たのは素晴らしい宮殿や博物館、地中海の海だったが、歴史的な建物は痛んでいた。特にポルトガルの歴史建造物は、修理する資金がなく朽ちていた。
 筆者は思った。観光立国というのは、それ以外に外貨を稼ぐ手段がないからなのだろうと。外国人が落とした金で食べている。しかし資金がなく歴史建造物を修復することができない。しかし日本は違う。われわれは観光に依存して生活していない。付加価値がつく製品を毎日つくり出し、それを輸出して食べているのだ。誇りを抱いてそう思った。
 当時の日本は観光に力をほとんどいれていなかった。日本経済は右肩上がり。生産ラインで国民が懸命に働き、セールスマンが外国で日本製品を懸命に売りさばいていた。それが日本の稼ぎ頭だった。それでも日本の風光明媚な景色を求め、伝統を求めて外国人が来ていた。観光はあくまで小遣い稼ぎだった。
 私が誇りに思ってから半世紀がたち、日本経済も技術力も右肩下がりだ。それを誰もが知っている。そして政治家は「苦労もしない儲け方」にうつつをぬかしているのだ。その象徴が「カジノ」のように思う。
 確かに一時的にもうかるだろう。外国人、特に中国人の富裕層が落とす金でわれわれは食べることができる。苦労もしないで儲けることができる。しかし、外国人の懐が寒くなれば、誰がカジノに行くのだろうか。誰も総合娯楽施設に行かないだろう。
 付加価値のあるものを生産して、儲け、そして疲れを休めるために家族連れで総合娯楽施設に行くのが常識的な考え方ではないのか。あくまでカジノや観光、娯楽施設は製品をつくりだしたことに伴う疲れを癒やす場所にすぎない。
 半世紀前の日本人、われわれ「団塊の世代」の親の世代の人々と違って、現代人はらくして儲けようとしている。それは可能だろうが、一時的な順風にすぎない。一時的な損得に惑わされている。
 日本人は長期的な観点から物事を見ることができない民族だと思う。太平洋戦争の指導者も今の人々も同じだ。現在の政治家の見方は国民の考え方の鏡になっていると考えざるを得ない。「楽して儲ける」。このままでは10年もすれば1000兆円以上の借金が国民の総資産を上回り、国民は悲惨な結末を迎えるだろう。
 安倍首相ら政治家は国民に「苦労してお金を稼ぐ」ものづくりの重要性を示すべきだ。そうでなければ、生活苦にあえぎ、悲惨な生活を強いられるであろう後世の人々から最悪の政治家だったと言われよう。あだ花のアベノミクスが一時的に成功しても、長期的な観点からは成功は見込めないのは確かだ。その兆候が現れている。

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日本人の前途は厳しい 広い視野を持ち現実を見よう トランプ氏と中国の大波に翻弄される東アジア

2016年12月01日 11時02分58秒 | 世界の動き
 今日から師走だ。歳をとるごとに一年がたつのがより速いように感じる。今年一年は読者の皆様にとってどんな一年だったのだろうか。わたしにとっては平凡な一年だった。しかし日本国民と日本にとっては不吉な一年だったと思う。激動の時代がすぐそこまで来ているように思うのはわたしだけだろうか。
 ドナルド・トランプ氏の米大統領選の勝利、韓国の朴槿恵大統領への弾劾と韓国社会の不安定、北朝鮮の原爆・ミサイル発射実験、共産党が支配する中国の台頭、日本の野党の無能さなどが来年、津波のように日本人へ押し寄せてくるだろう。
 筆者はこのごろつくづく思うことがある。日本人ほど善良な人々は世界広しといえどいない。現実離れした理想を追い求める。相手の善良さに期待し信頼する。海が日本人の国民性を育んだ。20世紀初頭に飛行機が登場するまで日本ほど安全な国はなかった。海が日本人のそんな国民性を育んできたと思う。
 安全を確保できる人々はとかく自己中心的だ。自分の目からしか周囲の出来事を見ない。日本人は「憲法9条の戦争放棄」を守っていれば、他国から侵略されないと主張する。理想としては気高い。素晴らしい。しかし日本人のような善良な国民が、この地球上にそんなに多くはいない。個人としてはたくさんいても、利害や国益が絡んでくると、そんな人々も豹変する。
 日本人と真逆の国民が中国人だ。中国人ほど現実的な国民はいない。現実に即して行動する。ある意味で忍耐力のある、気長な国民なのかもしれない。中国共産党指導部は現在、小躍りしているだろう。ようやく好機が訪れようとしていると笑みを浮かべているに違いない。
 20世紀の英国の歴史家ハーバート・バターフィールド教授はよく言ったものだ。「時は変化する」。「今日は昨日と同じではない」。時の変化を捉える指導者や国家が最後には主導権を握る。長期的な展望に立って日々の出来事を観察している政治家が大政治家なのだろう。そんな政治家が信頼できる。
 日本に信頼できる政治家がいるのだろうか。冷厳な現実を見据え、理想の旗を掲げている政治家は少ない。日々起こる目の前のことのみに関心を示し、政敵を批判していれば満足する政治家ばかりだ。有権者や大衆に迎合し、自分の政治哲学や信念のない政治家ばかりだ。そんな政治家は気楽だ。だから、勉強もしない、人気だけで政治家になるタレントや有名アナウンサーが多い。
 今朝、サイトを呼んでいると次のような記事にぶつかった。転載する。
 
  野党第一党の党首である蓮舫氏だが、批判する言葉が示す政策方針が新たな問題を引き起こす可能性があることを理解しているのかは定かではない。
 TPP交渉関係者は「米国内で合意内容の反対の声が上がることは、協定交渉で日本がいい条件を勝ち取ったことも意味する」とも指摘する。
 合意を破棄して再交渉となれば、現在よりも日本の条件が厳しくなる可能性が高くなるという。交渉関係者からは、蓮舫氏の発言に「外交音痴」との不満も漏れる。蓮舫氏の新たな経済ビジョンは?

 蓮舫氏にビジョンなどありはしないと思う。安倍首相を非難していればそれで良いのだ。気楽な政治家である。筆者は安倍首相の国家観や憲法観には異議を申し立てているが、外交に関しては評価している。よくやっていると思う。彼が現実主義者なのが、何よりの安心材料だ。この意味で日本国民は幸せだ。安倍首相を感情的に嫌うリベラルからは批判されるかもしれないが・・・。
 トランプ次期大統領はビジネスでは大成功したが、米国建国以来最悪の大統領になる可能性が非常に高い。ビジネスでも長期的な展望が必要だと思うが、それはあくまで自分の利益だけを考える。政治外交の長期的展望は、自分の利益だけでなく、他国の利益をも考える。他国の利益のために、自国に利益の一部を犠牲にする。しかし全体としてみれば自国の国益となる。商売では100%の利益を追求するのかもしれないが、政治外交では60%をもって良しとする。そこが政治とビジネスでは違うと思う。
 トランプ氏のTPP離脱提唱はアジア・太平洋の安全保障からの「足抜け」を意味している。次にこの空間を埋めるのは中国とロシアだろう。中国やロシア指導部もそれを望んでいる。中国は民主主義の経験がない。力こそ正義だと信じるロシアもほとんどない。
 歴史を紐解けば、19世紀に世界を支配したのは英帝国だった。それ以前はフランス帝国が欧州を支配していたが、世界を支配した最初の国は英帝国だった。英帝国に代わって米国が世界の支配権を握った。
 英帝国も米国も帝国主義的な行動に出たこともあったとは言え、民主主義国家だった。多分に協力と支配が交錯していた。しばしば命令調な言葉を投げかけ、小国に圧力も加えてきた。しかし、総じて対話があった。これからアジア・太平洋の経済・政治支配を目指す中国に比べれば「マシ」だと思う。
 かつて日本の軍閥がアジア・太平洋支配を試みて民主主義国家の米国に敗北した。今日、アジアで初めて独裁国家がアジア・太平洋を支配するのだろうか。
  中国は経済成長を背景に、すでに資本輸出国となっている。ここ数年、中国人投資家は日本の不動産に熱い視線を注いでいる。中国資本は2010年から15年にかけて、世界中で企業や不動産の買収を積極的に行っている。こうしたなかで「中国資本が日本の不動産を爆買いしていることは何ら驚くことでもない」と論じている専門家がいる。
 続けて、中国人投資家にとって日本は「米国、カナダ、オーストラリアに次いで人気のある投資先」であることを伝え、中国人投資家が日本の「土地」を購入する事例も多いことを紹介した。
  中国の場合、土地は人民のものであり、政府のものであるため、購入できるのは所有権ではなく、一定期間の土地使用権となるが、日本の場合は所有権を手にすることができ、土地に水資源があれば水資源に対しても所有権を手にすることができる。
 中国共産党政府は暗黙のうちに、中国人の海外での土地購入を認めている。この政策も中国指導部の遠い将来を見据えた戦略だろう。
 トランプ次期大統領が世界の現実を理解したときには、手遅れになっているのかもしれない。長期的な観点から判断すれば、トランプ氏の米国一国優先主義が米国民と米国経済をさらに苦しい状況へと追い込んでいくのは必至だ。
 米国だけが不利益を受けるのならまだしも、現代世界は、われわれが想像する以上に密接につながっている。世界を巻き込んだ国際秩序や経済が「暗転」するのはもはや不可避だ。
 トランプ氏の独善的な見方から、誤った政策が実施されようとしている。自由主義貿易の欠点ばかりに目を向け、利点に目を向けない。自由貿易を全体から見て判断できないトランプ氏。米国の政治家も相当小粒になった。
 われわれは、なぜ史上希にみる凶悪な独裁者アドルフ・ヒトラーが選挙で政権を握り、ドイツ人と世界の人々を塗炭の苦しみに陥れたかを考えなければならない。周近平ら中国指導部がヒトラーのような凶悪な人間だとは思わないが、独裁者であることには変わりはない。共産主義という衣を脱ぎ捨てることはないだろう。命令と支配は独裁者や独裁集団の特徴だ。
 日本国民と政治家は海図のない海に放り込まれたといってもよい。しかし、今まで良きにつけ悪しきにつけ、米国の「お父さん」に頼り切ってきた。自分で考えて行動してこなかった。
 これからはそうはいかない。自分で考える必要がある。ただ、無謀な太平洋戦争をした軍部指導者のように、独善的になってはいけない。広い視野から観察する。我慢ではなく忍耐力をもって行動する。勇気を奮い立たせ行動する。決して宿命感や思い込みで行動してはいけない。
 アメリカが頼りにできなければ、オーストラリアやニュージーランドの民主主義国家と手を携え、自由貿易を信じるシンガポールなどの国々と協力して中国を自国本位の利益追求の国から協力と共同繁栄のアジア太平洋の指導者国家へと導く努力をすべきだ。 
その過程には厳しい時が待っていよう。激しい対立があるだろう。それを忍耐心で乗り越えていかなければならない。なぜ?中国が21世紀のアジア・太平洋の大国になる現実を無視できないのだから。現実がわれわれを見つめているのだから、われわれも現実を見つめなければならない。

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カストロ氏は独裁者でありヒューマニスト  キューバ革命家の冥福を祈る

2016年11月27日 21時59分07秒 | 時事問題
 キューバのフィデル・カストロ前国家評議会議長が11月25日に死去した。キューバ革命の父カストロ氏の評価は賛否両論だ。彼が搾取を正し、キューバの国民を貧困から救おうとした一方、半世紀にも及ぶ独裁政権を敷いたからだ。
 歴史は単純ではなく複雑だと筆者は何度もこのブログで主張してきたが、カストロ氏にも当てはまる。
 筆者はカストロ氏を非道な独裁者だと割り切りたくない。1953年7月、カストロ氏はチェ・ゲバラらとともに武装闘争を開始し親米のバティスタ独裁政権を打倒。59年1月に革命政権を樹立した。
 バティスタ独裁政権は腐敗しきっており、ごく一部の富裕層に支持され、90%以上のキューバ国民を搾取した。大多数のキューバ国民は貧困のどん底で苦しみ、社会正義とは縁がなかった。
 バティスタは、アメリカ企業、カジノを経営していた時代のパートナーのマフィアのキューバ国内における利権の保護と引き換えに私欲を満たすようになり、キューバの農業や工業にアメリカ資本が流れ込み、アメリカ企業による事実上の搾取が大手を振って行われることになった。
 カストロ氏の革命の動機は不平等な社会を憎む青年の正義心から来ていた。バティスタの悪逆な政治を終わらせ、国民を貧困から救い出そうとした革命だった。彼は富農の息子で有り、共産主義者ではなかった。不平等な社会を憎む青年の正義心が革命の動機だった。
 1961年4月、アメリカ(ケネディ政権)はカストロ政権の転覆を狙い、CIAの支援を受けた亡命キューバ人部隊をキューバに侵攻させた。3日間の戦闘の末、アメリカ側の部隊はキューバ軍に撃退され、カストロ政権転覆の目論見は失敗に終わった。
 この事件がカストロ氏の反米主義を確固としたものにし、社会主義体制へと追いやった。当時冷戦のまっただ中にあり、米ソが激しく対立していた。
 1962年、アメリカはキューバに対し国交断絶を通告し、全面的な禁輸措置を実施。カストロはキューバ革命を守るため、社会主義の盟主ソ連に近づいた。
 カストロ氏は同年、ソ連がキューバに核ミサイル基地を建設することを認め、米ソ両国が対立。人類史上最も核戦争の危機が高まったとされる「キューバ危機」が発生した。キューバは東西冷戦を象徴する国の一つとなり、カストロ氏は反米・左翼勢力の象徴的人物となった。 
 当時の米国政権がカストロ氏を社会主義者に追いやったといえる。17世紀初めに米国大陸に初めて上陸したピルグリム・ファーザーズがもつ伝統的な宗教精神と自由の精神が米国人の血に流れている。このため、米国人は時として現実を無視する教条主義におちいる。この血が2003年のイラクのサダム・フセイン大統領への判断を誤らせた。
 カストロ氏の50年にわたる独裁の原因の一端は歴代の米国政府の反キューバ政策に帰しているとみて間違いない。ただカストロ氏が反米でなかったとしても独裁を敷いた確率は高いと思う。
 カストロ氏独裁の50年間、キューバの教育水準は向上し、医療技術も進歩した。その一方、冷戦終結後にソ連が崩壊すると、サトウキビ栽培による砂糖の生産・輸出に頼ったモノカルチャー経済だったキューバ経済は立ち行かなくなり、多くの人々が国外へと亡命した。
 多数の人々が米国に亡命しても、カストロ政権は続いた。それはカストロ氏が無私の心を持った人物だったからだ。自分の銅像を建てることを禁止し、偶像化を嫌った。また、愛息といえど能力がなければ、冷徹に罷免して公平な判断を下した。
 人間の一生は完全無欠ではない。誤りもある。カストロは民主主義者では決しなかったが、ヒューマニストだった。しかし、自分の正義が絶対だと思い、異見を許さずに政敵や反体制派や反対者を容赦なく弾圧した。
 カストロ氏の政治信条には同調できないが、バティスタ独裁政権を倒した動機には、誰も反対しないだろう。この意味で、カストロ氏は偉大な革命家だった。人間に欲があるかぎり決して実現できない「公正で平等な社会」というユートピアを実現しようと孤軍奮闘した精神に敬意を表したい。彼の冥福を祈ります。

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中国共産党政府の韓流スター、ドラマの禁止    TPPと民主主義について思う

2016年11月25日 09時17分37秒 | 世界の動き
 筆者はTPPの重要性について23,24日のブログで話した。この問題は経済自由貿易圏をつくり、開かれた貿易体制を構築するところにある。このため各国が国内の産業の一部にもたらされる痛みを受け入れることになる。日本で言えば農業者だ。そして各国政府がTPPの犠牲になった産業分野に救いの手をさしのべるとともに、産業構造改革に着手する。こんな構想だったが、米国の次期大統領のトランプ氏はTPPを拒否した。国際経済のブロック化が起こらないように願うばかりだ。
  経済・貿易をめぐる米国と中国の対立はこれから激化するだろう。トランプ氏は中国が「不当な廉売国(ダンピング)」だと指弾している。現在のオバマ政権は中国を市場経済国だと認めないといっている。筆者もそう思う。
 そんな折、中国からこんなニュースが飛び込んできた。

 21日付の韓国紙・中央日報は、中国当局が韓国製ドラマや映画などの放映、韓国人芸能人の中国国内での広告出演を全面的に禁止する方針だと報じた。 中国の娯楽サイト・芸恩網などを引用して伝えた。 中央日報によると、中国の放送事業を統括する国家新聞出版ラジオ映画テレビ総局はまだ公式文書を出していないが、テレビ局の責任者は既に対策を練り始めているという。 外交専門家の間では、米韓両政府が韓国への地上配備型迎撃システム「高高度防衛ミサイル(THAAD)」配備の動きを加速させているため、中国側が対韓国圧力を強化したのではないかという見方が出ている。

 筆者はさもありなんと思った。共産主義国家の常套手段だ。結局は、経済も、文化も、軍事を含むあらゆる分野が共産党の野望の道具にされる。政治、外交に帰結している。中国共産党は文化という道具を使って韓国民に圧力をかけている。韓国にとって、韓流ドラマやスターは中国から外貨を稼ぐ「ドル箱」の一つ。
 東アジア地域包括的経済連携(RCEP)は中国主導で進められている。この枠組みに米国は入っていない。日本や豪州などの民主主義国が加盟しているが、時がたてばたつほど、中国の主導権は強まるだろう。米国が入ることでバランスがとれるのだが、米国は加盟していない。いまやTPPは風前の灯火だ。アジア・太平洋の経済と軍事などの勢力圏バランスをとらなければ、中国の力があすます強まるだろう。中国が民主主義国家なら問題はないのだが、共産党の一党独裁であり、4000年に及ぶ一君万民国家である。 
 いまのところ、アジア・太平洋の要になる米国に代わる国はないと思う。もちろん米国のやり方にも独善的なところがあるが、中国よりはましである。筆者はアヘン戦争(1839~1942)以前の中国中心の国際秩序「冊封体制」に戻ることだけは御免被りたい。われわれの先祖はこの体制の外にいた。海に守られた当時の日本人は冊封体制を拒絶して中華帝国の首都に朝貢外交をすることもなかった。しかし、もはや海はわれわれの砦ではない。
 いまや世界は好むと好まずとにかかわらず、経済的に深く結びついている。この結びつきは民主的でなければならない。しかし周近平をはじめとする中国共産党幹部はそうは思っていないようだ。中国当局の韓流ドラマの禁止装置が筆者の心配を増幅させている。
 民主主義と自由の体制の中で暮らしていると、この体制の素晴らしさを忘れてしまう。日本人の多く、生まれたときからこの制度の中で暮らしてきた若者はその傾向が強いと思う。
 この体制は先人の血と汗で勝ち取られ、守り抜かれてきたのだ。英国の大宰相チャーチルらが人類に希にみる凶悪な独裁者アドルフ・ヒトラーとナチ党と死闘を演じて、民主主義制度を守り抜いた。
 われわれは民主主義制度を葬ろうとする輩が国内から出現しようが、国外からやって来ようが、決然として彼らと闘い、この制度を守り抜く強い意思を持ち続けなければ、いつの間にか独裁者や独裁国家、権威主義国家に自由と民主主義を破壊されてしまう。そして破壊されたあかつきに待っているのは言論などあらゆる自由や人権のない息苦しい世界である。
 中国共産党政府は自らの意に沿わない人物を「国家に反逆する者」として不公平な裁判で投獄している。言論の自由がなく、それは中国の独自の文化だと詭弁を弄している。
 TPP問題、米大統領選でのトランプの勝利、中国共産党の対韓流ドラマの禁止措置は民主主義制度の素晴らしさと存立の危うさをわれわれにあらためて思い起こさせてくれる。

 写真 韓流ドラマの中国国内禁止を発表する中国政府スポークスマン

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俳優、渡辺謙さんが好演するミュージカル「王様と私」の虚実を描く書籍「現実主義者の選択」

 「現実主義者の選択」(ホルス出版)を紹介する。渡辺謙さんがブロードウェイで好演しているシャムの国王。ミュージカル「王様と私」は真実を伝えていない。歴代タイ政府はこの半世紀以上にわたって、この物語を描いた映画、演劇などの上映や上演を国内で禁じてきた。  「王様と私」を初めて映画で観賞したのは今から40年以上前。ユル・ブリンナーとデボラ・カーがすばらしい演技を見せていた。渡辺さんが演じているこの王様の名前はモンクット王。吉田松陰が足元にも及ばない当時の国際情勢を認識していた名君だった。タイ人もこの国王を知らないという。名君や名政治家ほど後世の人々に忘れ去られると感じる。  英国の名誉革命を指導者した初代ハリファクス公爵も同じだ。市井の英国人は知らない。17世紀後半に活躍した名政治家の格言や政治家心得を、この書籍は引用する。公私混同で公金を使った舛添要一・東京都知事も彼の書物を読んだほうが良い。彼だけではない、政治モラルとレベルが落ちた多くの日本の政治家も読むべきだ。  もう一人の人物は堀悌吉・海軍中将。このごろ、やっと光が当てられ始めている。NHK出版がこのほど「山本五十六 戦後70年の真実」を出版し、この書籍も読んだ。2011年に日本映画「聯合艦隊司令長官 山本五十六 -太平洋戦争70年目の真実-」が上映された。山本五十六元帥を役所 広司さんが演じ、歌舞伎役者の十代目坂東三津五郎さんが堀悌吉海軍中将を演じた。  堀提督は米英協調を唱えたため、1934年に旧海軍から追われた。彼の生きざまは日本の運命の裏返しだったと思う。日本人はこの立派な人物を知らない。  この頃、日本人は自信をなくし、日本は迷走している。この3人の生きざまを知って、未来に思いをはせてほしいと願う。