現代を切る  英宰相ウィンストン・チャーチルからの批評     

退職から9年。ブログを始めて5年。現実主義者として、歴史を紐解き、英国の大宰相、チャーチルらの発言を下敷きにして記す。

小平と李両選手は感動の金メダルを日韓国民に見せる  平昌冬季五輪がやっと政治ショーからさよなら

2018年02月19日 21時48分13秒 | オリンピック
  平昌冬季五輪のスピードスケート女子500メートルで小平奈緒選手が、韓国の英雄、李相花の3連覇の夢を砕いた。ただそれだけなら、単なるニュースだが、二人の友情を知り、私は深い感銘を受けた。
感銘を受けたのは私だけではないようだ。世界中の人々、とりわけ、複雑な歴史を抱える日韓両国民が同じ感動の涙を流した。
 小平選手は日の丸を肩に掛け、満足感に浸りながら日本人観衆の歓呼の声に応えていたとき、韓国旗、太極旗を手にしながら泣きじゃくる李の姿を見つけた。
 小平は李のそばにそっと近づき、彼女を抱きしめた。「チャレッソ(韓国語で『よくやった』)」「サンファ、たくさんの重圧の中でよくやったね。私はまだリスペクトしているよ」。
 好敵手で良き友人である李にささやいた。李も小平に「ナオこそ『チャレッソ』よ」と返した。それから二人は日章旗と太極旗を掲げてスケートリンクをウィニング・ランした。戦前の植民地の歴史と戦後のわだかまりと対立の日韓の歴史が、素晴らしいスピードスケート選手の小平は李両選手によって氷解し、両国旗が江陵アイスアリーナに並び立った。あらためてスポーツの持つ不思議な力のすごさを知った。
二 人の素晴らしい友情と互いの健闘を称え合う姿を見て、私は1936年のベルリン・オリンピックでの二人の日本人選手を思い出した。もちろん私は生まれていないが、そのエピソードを若い頃読み感動した。二人は大江季雄選手と西田修平選手。
 ライバル同士であり切磋琢磨をしていた二人は同五輪の陸上の棒高跳びで、西田選手が銀メダル、大江選手が銅メダルを獲得。しかし二人の記録はともに4メートル25センチだった。西田選手が1回目で成功し、大江選手が2回目で成功ということでこの順位が決定した。だが、西田選手は納得せずに大江選手を2位の表彰台にあげた。そして、帰国後に二人のメダルを二つに割って半分ずつ交換して一つのメダルにした。二人はライバルだったのだが、とても仲が良かった。
 31歳の小平選手28歳の李選手の友情と互いに助け合ってスケートの技術を学ぶ姿は大江、西田両選手と同じだった。日韓のライバル選手は12年以上前からのつきあいであり、友情を育んできたという。2014年のワールドカップ(W杯)ソウル大会で小平選手が初勝利を挙げた際、小平選手に敗れた李選手は、帰りを急ぐ彼女のために、タクシーを手配し料金も払ったという。
 李選手も話す。「2007年頃に彼女が私の家に遊びに来てくれました。すごく仲が良かったので誘ったんです。それに、私が日本に行った時はいつも面倒を見てくれます。和食が好きな私のために、日本食も送ってくれるんですよ。特別な友達です」
 私は国境を越えた友情を見た。レースを終えた直後の小平が、ガッツポーズを控え、次ぎのレースに出場する李選手の集中力を欠かさないようにするため、観衆に静かにするよう口に手をあてたのも友情の証だった。
 五輪で久しぶりに心温まる光景を見た。それが日韓両選手だったのも何か因縁めいたものを感じた。平昌冬季五輪は韓国と北朝鮮の政治ショーのように感じていた私の目に涙が潤む感動は一時の清涼剤だった。

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北朝鮮はトロイの木馬を韓国に送ったのか   文在寅氏の現実無視の理想は思ってもみない災難をもたらす

2018年02月11日 21時43分10秒 | オリンピック
  平昌五輪の開会式に合わせて訪韓した北朝鮮の金永南・最高人民会議常任委員長と金正恩・朝鮮労働党委員長の妹、金与正・党中央委員会第1副部長ら北朝鮮の高級代表団は11日夜、文在寅(ムン・ジェイン)大統領ら韓国政府の3日間にわたる大歓待の後、北朝鮮に帰国した。北朝鮮の最高権力者の妹で実質的にナンバー2の金与正氏が、金正恩氏からの親書を文氏に渡し、北朝鮮に招待した。これに対して、文氏は即答は避けたが、前向きに検討すると述べた。
  マイク・ペンス米副大統領はレセプションや開会式で、北朝鮮代表団と言葉を交わすのを避け、韓国と北朝鮮の選手たちが統一旗を掲げて「コリア」として合同入場した際、ペンス氏は座ったままだった。冬季五輪を機に北朝鮮が融和姿勢を重ねて示していることについて、米トランプ政権は強い警戒感を示している。
  金与正氏が韓国大統領に渡した兄の親書は”トロイの木馬”なのか。”トロイの木馬”はトロイ戦争で、ギリシアのオデュッセウスがトロイ攻略に用いた計略。オデュッセウスは巨大な木馬を作らせてその中にギリシア兵を隠し、トロイ市内に運び込ませた。この際、トロイ王女カサンドラは予言によりこれが罠であると忠告したが、市民は誰も聞き入れなかった。深夜になりトロイ市民が寝静まった頃合いを見計らって木馬からギリシア兵が抜け出してトロイを占領。これによりギリシアは勝利し、トロイは滅亡した。
  韓国の文大統領は南北融和が米朝融和につながり、それが朝鮮半島の平和へと進んでいくと信じ切っているようだ。米国は金正恩氏の計略を疑い、文大統領に日米韓の結束と北朝鮮への圧力を訴えている。
  私は思う。国連による経済制裁が北朝鮮に相当効いている。金正恩委員長は韓国の文大統領の平壌訪問を実現することで韓国を取り込み、経済制裁を骨抜きにしようとしている。北朝鮮の美女応援団や三池淵管弦楽団を海陸からそれぞれ韓国に向かわせ、制裁の封鎖網に風穴を開けた。
  文大統領の本音は北朝鮮訪問だ。日本の安倍晋三首相が米韓軍事演習を中止すべきではないと進言したとき、「内政干渉」だと反発したという。このことから推察すれば、この実現のために米韓合同軍事演習を中止する努力をするだろう。もし文大統領が米国の反対を押し切って軍事演習を延期か中止すれば、米韓同盟は危機的な状況に陥る。
  金正恩氏が米韓軍事同盟を葬り去れば、いよいよ彼自身の戦略を実施に移すだろう。つまり、米軍の朝鮮半島からの撤退を、韓国大統領に要求する。文大統領と韓国民がどう出るのか。ここが韓国の運命の岐路になるに違いない。文大統領が朝鮮半島の統一を夢見て、米軍の撤退を促せば、米軍は必ず撤退するだろう。このとき、韓国は完全に北朝鮮に取り込まれる。北朝鮮に手を焼いている中国も内心はほくそ笑むだろう。北朝鮮は全軍で韓国を攻撃。韓国の軍備は北朝鮮より勝っているとは言え、北朝鮮は中短核ミサイルで韓国国民を威嚇するにちがいない。それでも自由のために韓国国民は戦争するだろうか?
北朝鮮の核攻撃のさられたとき、米国は韓国を支援するだろうか。米国人の国民性からみて、支援の手を差し伸べることはしないだろう。米国民はいったん「裏切った」と思う国民には頑ななまでに支援しない。ただ、功利から判断するだろう。欧州から移民してきた白人米国人の国民性は、土地争奪をめぐる先住民のインディアンとの戦いの中で形作られてきた。私は、1944年に書かれたD.W.ブローガンの著書「The American Character(アメリカの国民性)」を読んで、そう思う。旧日本海軍の山本五十六元帥は米国の国力を知り尽くしてはいたが、米国人の国民性までは理解していなかった。真珠湾で米国に強烈な一撃を加えれば、米国人が交渉のテーブルにつくと読んだ。米国に大打撃を与えて、なんとか和平に持ち込もうとしようと考えた。しかし、米国人は「真珠湾を忘れるな」と叫び、日本の無条件降伏まで戦いの手を緩めなかった。
  米国の歴史学者ブローガンこう述べる。「いったんことを起こしたら、いったん決裂したら米国人は妥協しない。目標達成までとことんそれを追求する」。それはインディアンとの戦いで会得した。「欧州での戦術はアメリカ大陸では通用しなかった(和平や妥協)。インディアンが勝つか、植民地者が勝つかのどちらかしかなかった。勝利か滅亡か。、和平はなかった」
  金正恩氏は現在、”金王朝”体制を護ることに必死だ。これが最大の国家目標だ。核もミサイルも、このためにつくっている。米国本土に届く核搭載ミサイル発射の成功は間近に迫っている。この完全成功の前に、米国は北朝鮮に限定攻撃を仕掛けてくるのか。日韓両政府を無視して米国が単独で実施することはないと思う。単独実施は、必ず北朝鮮の韓国と日本への報復を意味する。それを文在寅大統領は決して認めない。また、日本の安倍首相もそこまで米国に同調できないだろう。日本国民もそれを嫌い許さないだろう。
  北朝鮮が米国を射程に収める核ミサイルを完成したなら、米国が認めるのか。米国は決して認めないが、北に攻撃できない状況が続き、その間に、米国は自ら韓国から軍を引き上げるかもしれない。多分引き上げ、日本を現在の韓国のように位置にして、30~40年後の中国の軍事的な脅威に備えるだろう。
  平昌五輪に合わせて訪韓した北朝鮮訪問団に対する韓国国民のうち訪問賛成派は「訪問は統一を促進する」と歓迎するが、「統一」とは「赤化統一」なのか。それを望んでいるのだろうか。「赤化統一」という言葉が嫌いなら「自由と民主主義のない世襲独裁北朝鮮への統一なのだろうか。北朝鮮との融和を望んでいる韓国人の誰一人として北朝鮮による独裁統一を欲してはいないと確信する。
  韓国人だけではない。大衆は、チャーチルが生前述べていたように、目の前の出来事に敏感で、遠い未来を見つめない。目の前の美辞麗句や感性上よいと思うことに賛成し、その背後にある相手の真意を見抜かない。目の前のことに酔う傾向が強い。そして、今日、チャーチルのような政治家がいない。大衆に未来を指し示し、彼らの誤りを指摘し、説得できない。大衆に迎合するポピュリスト政治家が大半を占める。
  歴史は皮肉である。理想の旗を高く掲げ、現実を顧みない理想主義者が、自ら抱く理想を実現した事実はない。フランス革命の理想は、ロベスピエールの独裁を生み、ナポレオンの軍事独裁を生んだ。ソ連社会主義革命はスターリンの独裁を生んだ。時の流れを無視した理想や、急激な改革は激しい反動を生む。それは歴史を愛し紐解ける歴史愛好家なら理解できるはずだ。
 金正恩氏が自由と民主主義を受け入れ、金王朝を閉じさせてまでして、韓国主導の統一を認めるなどと思うなら、幻想以外の何物でもない。自由と民主主義に基づく南北統一は現在、夢以外の何ものでもない。もし民族を優先し、それに基づく統一を韓国民が認めるのなら、彼らの未来は暗い。北朝鮮の金王朝に奉仕する社会の中で、後悔の念にさいなまれ、圧政の中で呻吟するだろう。
 厳しい現状を認識し、平和をいかに維持するかを考えることが、破滅的な戦争を回避する唯一の方法だと思う。経済圧力を強めながら、金正恩委員長に、自らの体制を維持する唯一の方法は非核化だと説得することが必要だ。しかしこれとて安倍首相のように前方ばかり見て、圧力だけをかけ続けると脅しても達成できないと思う。核保有は北朝鮮の破滅であり、話し合いだけが北朝鮮の体制を維持すると働き続けることだ。そこには巧妙で狡猾といえる外交術が必要だ。時として軍事圧力をもかけることが必要だ。なぜ、相手が現実的で策略に富んだ独裁者だからだ。  
  

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貴乃花親方は頑なに沈黙してはいけない     日本相撲協会の役員候補選挙の結果に思う  

2018年02月02日 21時16分48秒 | スポーツ
 日本相撲協会の役員候補選挙が2日、東京・両国国技館で行われ、貴乃花親方(元横綱・貴乃花)が獲得票数2で落選した。貴乃花一門からは、阿武松親方(元関脇・益荒雄)が初当選したが、一門11票のうちの1票が他の親方に流れた。貴乃花一門には11人の親方が所属している。
 相撲界には旧態依然たる談合と非民主主義な体質があり、今回の選挙でも各一門の親方への締め付けが相当厳しかったことがうかがえるが、貴乃花親方にも問題があったと言わざるを得ない。確かに昨日2月1日に掲載された親方のブログは素晴らしかった。自らの主張を明確に記し、出馬への所信表明だった。
 親方は「相撲協会の現状を見てみると、社会的な責任を果たすよりも協会内の事情や理屈が優先され、公益性から逸脱しているのではないかという大きな疑念を抱いております」と述べる。私も同感だ。ただ、日刊スポーツ紙で取り上げられた町の声に「「全然声を発していない。相手があることだし、自分は理事になってこうしたいと話すべきだった」と指摘している下りがあった。この見解にも私は賛成する。
 貴乃花親方のブログでの見解は見事だったと思うが、日刊スポーツの読者が言うように、なぜ言葉で説明しなかったのか。不思議だ。元横綱、日馬冨士の暴行による弟子の貴ノ岩の負傷にしても、頑なに沈黙を押し通したのはいただけない。メディアのぶら下がりにいいちいち発言する必要はないが、節目節目で会見を開くか、せめて部屋の前に記者を集め、見解を話すべきだった。ブログに書かれた思いを記者を通して親方、力士、国民に訴えるべきだったと思う。語りを通して、親方の心に訴えていれば、これほどの惨敗にはならなかったかもしれない。
 もし貴乃花親方が必死に自分の考えを話していれば、各一門からの相当の締め付けがあったとしても、それを無視してでも貴乃花親方に賛成しようと思う親方が出てきたかもしれない。頑ななまでの沈黙で、それに反感や疑問を抱き、当初の考えを翻して、貴乃花親方に投票しなかった親方もいたかもしれない。貴乃花一門の一票がほかの一門に流れたことは、このことを示唆している。
 役員候補選挙は終わった。過去になった。貴乃花親方は過去から学ばなければならない。自らのやり方が正しいとはかぎらない。目的や理想がいかに崇高であっても、柔軟な姿勢で、時の変化を見極めながら漸進する必要がある。最終決断するまでは、相手の意見に注意して耳を傾けなければならないと思う。そして、良いと思った相手の考えは取り入れるが、最終決断した後は、ふらふらせずに自らの行動に信念を抱いて漸進してほしい。
 「公益法人としての社会的使命を全うしながら、透明性を持った健全な組織運営をしていくことが、私が思う理事の使命です。その使命を果たすために、相撲協会全体の器量を大きくし、大相撲一門として自由に意見を交わせる風土を作り上げることを私の目標といたしたいと思います」
 貴乃花親方の考える使命は素晴らしい。だからこそ新しい変化の時代に沿いながら伝統を守るために、仲間に話しかけていく努力をしてほしい。古きを温め新しきを知る、貴乃花親方の相撲への理想を実現するために、20世紀の雄弁家で英宰相ウィンストン・チャーチルがもっていた説得力を身につけてほしい。独善的になってはいけない。相手の話に耳を傾け、異見者や反対者を取り込みながら改革に邁進してほしいと願う。

 

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理想主義者が考える未来は実現することはほとんどない 平昌五輪の南北統一チーム結成に思う

2018年01月22日 14時32分14秒 | オリンピック
 北朝鮮の平昌五輪参加とアイスホッケーの南北合同チームを実現した韓国の文在寅大統領と支持者は南北融和の理想だけに目を向け、それと相容れない厳しい現実を一瞥もしない。北朝鮮はこの”休戦”期間を利用してミサイル開発をいっそう進めるだろう。現実無視の理想主義者はいつも国民を破綻の縁に追い込む。それは歴史を紐解けば直ぐ理解できることだ。
 私は南北関係の改善に向けて五輪を利用するという韓国政府のもくろみは幻想にすぎないと思う。文大統領は自らの実績づくりのため、韓国の選手を犠牲にしているようにも映る。しかし文大統領が心から南北の宥和と朝鮮半島の平和、非核化を実現するための第一歩だと信じているのなら、理想という”崇高”な磨りガラスが、厳しい現実を見えなくさせている。理想主義者や理念主義者がよく陥る弊害だ。
 これを支援した国際オリンピック委員会に(IOC)のバッハ会長も五輪の理念の前に、実質的な政治介入をしたことになる。それがわかっているのか、理解していないのかは即断できないが、いずれにせよ、平昌五輪の成功だけから判断したのだろう。換言すれば、北朝鮮のテロを警戒し、この大会を穏便に、成功裏に終わらせたい一心なのだろう。気持ちは十分理解できるが、われわれが北朝鮮のミサイル・核開発をこの20年間、観察していれば、北朝鮮の目的に実質的に手を貸していることになる。
  これに対し、国際的に孤立する北朝鮮の経済は相当苦しくなってきていると読める。北朝鮮の金正恩委員長はミサイル・核開発を継続する一方、平昌五輪を利用して北朝鮮の平和イメージをアピールしているのかもしれない。さらに大切なことを、この時間を利用し、ミサイル・核開発に拍車をかけようとしている。昨年来、国連安全保理事会は真綿で北朝鮮の首を絞めるように、経済制裁を強化してきた。この制裁を何とか緩和させる行動にうって出たとも読める。
 南北関係の改善に向けて五輪を利用するという韓国政府のもくろみは潰えることは確実だ。潰えるだけならまだしも、平昌五輪閉幕後の新たなステージにおいて、時間の流れがますます韓国に不利に働くことは十分に考えられる。日本もその余波を受けるのは必定だ。
 第2次世界大戦前の1930年代後半、英国のネビル・チェンバレン首相はヒトラーの要求をことごとく受け入れ、オーストリアやチェコスロバキアのズテーテン地方のドイツ併合を認めた。欧州の平和を維持し、何とか戦争を回避しようする一心だったが、ヒトラーの野望の前にもろくも崩れ去った。
 ヒトラーの目的は揺るがなかった。一貫していた。それは欧州とロシアのヨーロッパ地域をドイツの支配地域、生存地域にすることだった。その実現のためにあらゆる巧妙な戦略、狡猾な戦術を使った。
 英国宰相ウィンストン・チャーチルはチェンバレン氏の追悼演説で、「チェンバレン氏はヒトラーにペテンにかけられた」と話した。まさにチェンバレン氏はヒトラーの誠意を信じたが、見事に裏切られた。
 チェンバレン氏は現実主義者だった。それでも愛国者として私欲を捨て、ヒトラーと取引した。一方、韓国の文大統領はどうなのか。韓国選手を犠牲にしてまでして朝鮮半島の平和維持のため、南北の平昌五輪統一チームを作ったのか。もちろん朝鮮半島の平和維持のため、金正恩委員長と政治取引をしたのだろうが、自らの名誉と実績づくりをも考えているだろう。それを認めても、文大統領が歴史の汚点者となる可能性も秘めている。
 もし2月14日の対日本戦で、南北合同アイスホッケーチームが勝ち、一時的に韓国国民が文大統領に「この措置は正しかった」と絶賛しても、いずれそれは砂上の楼閣となる日がくることは変わらないだろう。理想と理念は現実という”悪魔”に食い尽くされ、その後に文大統領は予想もしていなかった厳しい現実に右往左往するにちがいない。どうしてそれが気がつかないのか不思議だ。広い視野に立ち、未来を見つめてほしい。過去の歴史を紐解いてほしい。過去を遠くまで見つめれば見つめるほど、未来がそれだけ理解できるようになる、とチャーチルが語っているではないか。文大統領が現実に立ち返ることを願う。大統領が朝鮮半島の統一という理想を胸に秘め、その理想実現のため、冷厳な現実と向き合ってほしいと心から願う。

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30~40年後の東アジアはどうなるのか   新年に思う

2018年01月07日 16時14分45秒 | 日本と中国
  ことし初めてブログを記します。明けましておめでとうございます。ことしも暇なおりには、私のブログを読んでくだされば幸いです。時の流れは早く、きょうは七草。きょうの朝に七草粥を食べる風習があります。しかし、この風習はなくなっていくのでしょうか。「古きを温め新しきを知る」と古人が話しています。そうありたいですね。
 新年早々、訃報が飛び込んできました。「闘将」と呼ばれた、元中日ドラゴンズの投手で、名監督だった星野仙一さんが亡くなられました。私とほぼ同じ年齢。一抹の寂しさを感じます。現在では”禁止”されている古い「鉄拳制裁」のなかに、人一倍の愛情を選手に注いだ星野さんは、典型的な日本人だったと思います。叱られても、叩かれても、部下は彼を慕い、ついてきました。投手の与田剛氏らを酷使して野球人生を潰したという野球ファンが多いですね。多分、当たっているのでしょうが、それでも彼らは星野さんを慕っています。与田氏をNHKの解説者に推薦したのも星野さんだという。星野さんは指導者としての資質があったにちがいないと思います。

 話を本題に戻そう。ことしはどんな年になるのだろうか。このブログを読んでいる皆さんはそれぞれ違った見解をお持ちだろう。北朝鮮問題、数日前、暴露本が出て、差し止めまで試みたトランプ米大統領の動向。民主主義を侵すポピュリスムの台頭。色々あると思うが、遠い将来を見据えたとき共産党一党独裁国家の中国を思い浮かべる。思い浮かべるのは私だけではないと思う。
 中国の指導者は、中国史がそうさせるのかもしれないが、戦略に長けている。今を直視し、遠い将来を思う。現実に寄り添い、将来の理想と目的をたぐり寄せるために、あらゆる努力をする。 
 習近平が思い描く中国は東アジアと西太平洋の覇者になることだと私は信じる。それを習総書記は「中華の偉大な復興」と呼んでいる。それは中国の東アジア、ひいてはアジア支配だろう。そして世界の指導者を思い描いているにちがいない。16世紀のポルトガルにはじまる強国の支配はオランダ、フランス、英国と受け継がれ、現在は米国だ。地政学的に、ポルトガル時代はまだ欧州が世界だった。しかし現在は地球の隅々まで支配は及ぶ。
 現在から30年もすれば、中華人民共和国は世界一、二の軍事力を持ち、世界最大の経済大国となる。技術力も格段と高くなるだろう。しかし30年後も、中国が民主主義国家になる可能性は極め低い。また法治国家にあることもないだろう。確かに、中国の共産党指導者がもくろむ法は敷かれるだろうが、万人が法の前に平等になる法を敷くことはないだろう。ここに私は最大の危惧を抱く。
 20世紀最大の宰相ウィンストン・チャーチルは、なぜあれほどまでにナチス・ドイツのアドルフ・ヒトラーを憎んだのか。間もなく日本でも公開される「チャーチル ヒトラーから世界を救った男(原題 Darkest Hour)」で描かれるチャーチルは頑ななまでにヒトラーとの和平を拒んだ。彼が首相に就任した1940年5月10日からフランス・ダンケルクの英軍による全面撤退までの1カ月間は、チャーチルにとっては最も苦しい時だった。チャーチルの権力は完全に確立されておらず、ドイツ軍のフランス戦線での猛攻は日に日に強まっていた。
 米国の歴史学者ジョン・ルカーチが出版した書籍「ロンドンでの1940年5月の5日間」にも記されているが、英国政治の伝統をひきずっていたプラグマティストのハリファクス外相らは「英国の独立と領土保全が保証されるなら、ヒトラーとの和平交渉を始めること」を提案した。外相らは英国の独立が保証されるなら、帝国経営で英国は依然として世界に影響力を与えられると考えた。しかしチャーチルはハリファクス外相の見解に反対、彼と激論を展開し、大多数の閣僚を説得して「戦争継続」を勝ち得た。
 チャーチルは言う。「たとえヒトラーが英帝国の存続を保証しても、欧州全土がナチス・ドイツの絶対的な支配下になれば、英国は事実上、ドイツに何も言えなくなる。その上、和平が成立すれば、ヒトラーは、米国と比肩する(当時)は世界1~2位に海軍をドイツに引き渡せと要求してくるのは必定」。チャーチルは和平を結ぼうが、最後まで戦おうが、その結末は同じだと同僚に説明した。
 ゴート将軍が率いる英国遠征軍はダンケルクに追い詰められていた5月27日には、ベルギーがヒトラーの足下にぬかづいた。英国軍と仏軍は北と南から挟み撃ちに遭い、逃げる道は海しかなかった。ダンケルクへ退却し、英国艦船の救援を待つしかなかった。この絶望的な状況を、ドーバー海峡を隔てた大多数の英国民は理解できなかった。英国民は遠征軍がフランスで敗北しているのは知っていたが、反撃すると固く信じていた。
 チャーチルの政治的な立場は弱く、国民もまだチャーチルに心服していなかった。その中で、チャーチルは、戦時決定権のない30人近くの一般閣僚の意見をあえて聞いた。ルカーチは「それはチャーチルのクーデタに等しい行動だった。戦時決定権者5人の主要閣僚を飛び越えて決定権のない30人前後(25人)一般閣僚に異見を聞いた」と話す。
 チャーチルは「この戦争は英国のためだけの戦争ではない。自由と立憲民主主義を護り、ナチスの専制と圧政、暴虐な支配に苦しんでいるドイツ占領下の欧州の人々を救う戦争なのだ。だから和平はありえない。勝利か、枕の並べてこの島で討ち死にするか、選択は二つに一つだ」と説いた。戦時決定権のない閣僚はチャーチルの言葉にうたれ、彼への支持を表明した。ハリファクスの見解は葬り去られた。そして史上有名な6月4日のチャーチルの議会演説へとつながる。
 今日、30年から40年後に、中国が東アジアを支配したら、どうなるか。現在でさえ言論統制を強め、異見論者や人権擁護者を次々と逮捕・投獄する独裁国家がアジアを支配したら・・・。確かにアジアの国々は独立は許されるだろう。領土保全は許されるだろうが、そこには自由も民主主義もない状況が生まれるのは必至。日本は事実上の従属国になるだろう。換言すれば19世紀前半前の冊封国家になるだろう。
 中国はまず香港と台湾を狙うだろう。事実、台湾との外交関係を結んでいる国々を経済援助という名目で、台湾から引き裂き、孤立させつつある。この目的を達成するため、ことしから本格的に動く可能性がある。この問題を巡って、中国人がたけた「戦わずして勝つ」を、字のままにいくだろう。中国は大戦略を立てている。台湾と香港の次は尖閣列島であり、その次は沖縄かもしれない。
 一方、米国の国力は相対的に今後30年には低下するだろう。この環境の中で日本はどうするか。米国一辺倒で日本の安全が保証されるのか。そしてどこまで軍備を増強しなければならないのか。アジア諸国とどんなつきあい方をすべきなのだろうか。遠い欧州の国々といかなるつきあいをすべきなのか。また中国と敵対するばかりではなく、巧みな外交を展開する必要があるのか。
 修辞的で大げさな言い方だが、日本には黒田官兵衛も竹中半兵衛もいない。ただいるのは、極論だが、頼りない政治家か、安倍首相のように一途に進む政治家だけではなかろうか。
 映画で描かれている1940年5月10日から6月上旬までの英国の国際状況が30~40年後には、ここ東アジアにも必ず来ると思う。日本人の英知が試されるときがくるだろう。日本人が現在、空気のようにしか感じていない自由と民主主義を守り抜く気概がそのときにあるのだろうか。チャーチルが示した決意があるのだろうか。この正月にこんなことを考えた。

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